今夜はウィグモアホールにて、前半がセルゲイ・ハチャトリアンのヴァイオリンでバッハの無伴奏ソナタ第1番、パルティータ第2番、後半は彼の参加する四重奏団Nairi QuartetでKomitasの14 Armenian folklore miniatures。
ハチャトリアンは2005年のエリザベート王妃国際音楽コンクールで優勝、日本音楽財団から4年間ストラディヴァリウス「ハギンス」を貸与されていたようだが、彼のサイトによれば今は同財団からのストラディヴァリウス「Lord Newlands」を使用しているとのこと。今日の演奏はこの楽器だったのだろうか。
ヴァイオリンなのにヴィオラに近い感じの音質のする楽器であった。第一ポジションでも、少し篭った感じの-極端に言えば弱音器をつけたような音がする。思わず、駒の先を覗き込んで弱音器がついていないことを確かめてしまったくらい。でも、何とも暖かな音質で、まるで暖炉がパチパチと音を立てている、そんな部屋が思い浮かぶような音だ。
後半はアルメニアの独特の音階を持った音楽で楽しかった。バッハのソナタ第一番プレストなどでも披露された超絶技巧はこういう音楽的な土壌で育てられるのだろうか。
ハチャトリアンは大きなコンクールにも優勝しているし、CDもリリースしているし、もっと堂々としたタイプの演奏家なのかと思っていたら、大変にシャイな人のようであった。演奏を始める前の呼吸の整え方、ソナタ第一番アダージョの最後、pで演奏を終える時の弓がコントロールしきれない位の緊張、演奏家も戦っているのだ。がんばれっ!
この緊張は後半に行くほど解け、カルテットは本人も楽しんでいたようであった。良かった。