降雪すら予報されていた寒空の下、テムズ川に架かる橋を徒歩で渡り今年初めてロイヤルフェスティバルホールへ向かった。今日は殿(シャルル・デュトワ)の指揮、ロイヤルフィルハーモニーオーケストラでストラヴィンスキーのSymphonies of Wind Instruments、チャイコン(Vn:ヴァディム・レーピン)、リムスキー=コルサコフのシェヘラザード。
殿はフランス物のほか、リムスキー=コルサコフ、ストラヴィンスキーなどのロシア物も得意としている、ということになっているが、ロンドンのオケではなかなか難しいか。最初のストラヴィンスキーは、「春祭」を小さくしたような曲なのだが、チャイコン目当ての客向きとは言えないだろう-拍手もまばら、ちょっと寂しかった。ま、殿も譜めくりに忙しいようだったから、仕方ないかもしれないが。
レーピンのヴァイオリンでチャイコン。1736年製ガルネリ「Von Szerdahely」を使用、ということで期待たっぷりだったのだが、最初の一音を聴いてテンションがすっかり下がってしまった。音がそこで鳴っているだけで、会場全体に響く感じがまったくしなかったのである。まるでこの間シカゴでジョシュが競売にかけられるガルネリを弾いたときと同じような感想を持ってしまった。楽器は小ぶりに見えたけれど、(見た目の)状態は良いように思われた。
レーピン-17歳でエリザベートコンクールに優勝した実力の持ち主、勿論下手ではない。特に弓使いは非常に上手い。重音でもまるで単音を弾くかのように軽快に飛ばすことができる。しかしテンポ設定にしても、第三楽章をすごいスピードで始めたので、思わず笑みが漏れたが、その後結局テンポプリモがテンポプリモにならず、期待が大きかっただけにがっかり。技術的にはレーピンに劣るかもしれないシュナイダーやカプソンのチャイコンの方が音楽として豊かで楽しめた気がする。それでも会場からはブラボーが飛んでいた。どなたか、この演奏会を聴いた方、本当にブラボーだったのか、どうぞあなたの感想をお聞かせください!!
今日一番楽しかったのはシェヘラザード。ま、これは曲が良い。リズムがとても楽しいし、メロディーもわかりやすくて美しい。チェロのトップや管楽器(特に木管、中でもクラリネット、ファゴット、フルート)の出来が良かった。クラリネットのリズム感(リズムの揺れ感)はブラボー!だった。オケメンバー全員が彼のようなリズム感をもっていたら、どんなに素晴らしい演奏になるだろう??
「シェヘラザード」がこんなに楽しめたのは、大学のM先輩の指導のおかげ-などと、昔のことを思い出しながら帰途についた。M先輩、お元気ですか?