あたしは自立していたぞ!!と言うと、時代が違う、と娘に詰られてから、
3日間、私は子供のように娘と口を聞かなかった。
記憶が正しければ私の高校は日本で初めて、国内から海外へ修学旅行先を決めた。
選択制だったため、結局、私は海外ではなく北海道10日間の旅を選び、
サッポロのビール工場で泡だけで酔って、
時間に遅れそうだったため猛ダッシュしたら、泡のアルコール分だけでぶっ倒れたのだった。
生まれて初めてアルコールというものを口にしたのだが、
顔は真っ赤になるし、気持ち悪いし、
修学旅行の思い出といったら、ビールのようにほろ苦いものとなって、
今でも友人の誘いに乗ったことを後悔し続けている。
その張本人である友人はといえば、とっくに死んでしまった。
男に騙されて大金を貢がされたあげく、モデルができたほどの美貌を惜しげもなく捨て、
さっさとこの世とおさらばしてしまったのだ。
本当に綺麗な子だったから、みんなは美人薄命だねと口々に言っていた。
美人でもどこか物悲しさが漂う雰囲気が若いのにあって、
黒い塊に襲われる夢を見ていつもうなされるといっては、
夜中にうちに電話してきたものだった。
彼女が亡くなってから15年、
娘の修学旅行準備をしていたら懐かしくなって、思わずアルバムを引っ張り出しては
煌びやかなバブル時代の女子高生だった自分たちが、別人に思えた。
修学旅行という響きと彼女が重なってみえて、
なんだか切ない気分に浸ってしまうのだった。
若くして何人もの友人を失っていた時期だったために、
何が現実で、何が夢なのかの境界がわからないまま別離を言っていたように思う。
なぜ、今、それを思い出すのか?
娘の学校は修学旅行前日まで試験続きで、
親がその準備をする前提になっていることが妙に腹立たしく、
成田まで送り迎えをするとなれば、そりゃ爆発しない方がおかしい!!
段取が悪いのだ。
しかも、海外旅行にお金をかけない私からすると
とんでもない金額を支払っているにも関わらず、
全員参加の美術館観光の入館料などは別途、自費らしい。
昼食も旅費には含まれていない、という。
もう、知らん。
勝手にやってくれ。
普通、修学旅行というものは、3食付ではないのか?
しかも海外で。
二カ国行くうちの一カ国はパリだ。ストの最中だ。
現地では制服でいるらしく、この旅行でしか着ないダッフルや買い足したブラウスなど
その金額だけで私ひとりがニューヨーク旅行ができるほどだ。
そこに加えて前日まで試験に明け暮れるスケジュールを考えると、
今の高校生が飼育されているみたいで、なんだか気の毒に思えてしまった。
わざと自立をさせないシステムになっているのかと疑うほどだ。
たぶん、それは間違いではなさそうだ。
さて、成田へ人を見送るという行為は私がもっとも苦手としているひとつだ。
しかも、ニューヨークに行きたくて仕方ない私を置き去りにして。
じーちゃんに買ってもらった革製のスーツケース、
そのまま放浪の旅にでかけておいで、というと、そうする、と娘。
そういえば、友人も修学旅行のとき、そうする、と言って帰ってこなかったのだ。
ビール工場で酔っ払って、さきいかをかじりながら、
つまみを片手に真夜中にホテルへ戻ってきた。
どうして先生にみつからなかったのか、今でも私はその真相が知りたくて仕方ない。
お酒は飲まないだろうが、つまみはスーツケースの中に入れておいてあげよう。
きっと、同室のあみちゃんと、時差ボケで寝れない夜は語り明かせばいい。
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