昨年末からしきりに喧伝されていたギリシャの債務危機、EUの首脳達が毎日のように鳩首談合して対策を練っていた問題。日本も増税しないとギリシャのようになると脅されて増税が政治の最優先課題になっている日本で、ギリシャの危機が具体的にどのように回避されて、また一方でこの所のアメリカの好景気はどのようにもたらされたのか、ニュースなどを見ていても良く判りませんし、テレビに出ている高名な日本の経済学者でこの辺を判りやすく説明している人もなさそうです。
副島隆彦氏の学問道場サイトではギリシャ危機克服のからくりが良くまとめられています。それによると返済期限が近づいているもののギリシャは返す金がないために踏み倒し(デフォルト)になりそうだった。デフォルトになるとなった場合に保障される保険(CDS)が大量に発生(実際の債務の数倍)し、CDSを引き受けている金融機関がつぶれてしまう。そこで返済期限のせまった国債を持っている銀行や投資家に元本の返済を政府(EU)が諦めるように強制的に迫った。契約通りにCDSが支払われないならばギリシャの他にも債務不履行になりそうなイタリアやスペインの国債も売り払ってしまおうという投機筋の動きが強くなった事が今回の欧州危機の発端だった訳です。
危なそうなPIIGSの国債を投機筋が売り浴びせたために暴落しそうだったこれらの国債は欧州の銀行に欧州中央銀行(ECB)が大量にユーロを発行して貸付けることで買わせてそれを担保にECBが預ることでしのいでいるのが現状で、ECBはこの半年でアメリカのFRBを上回る資産を持ってしまったということです。
ギリシャの国債は例えば元本100円の物を0円にしてしまうとデフォルトになってしまうので50円に値切らせて残りの50円は新たな低金利のギリシャ国債を買い替える事で返してもらったことにするという無理筋な解決を強行したということのようです。一部納得できない投機筋にはCDSの発行も認めたものの巨額の赤字にはならないので金融危機には発展せずに済ませたという顛末。
どうも一連の騒動で一番得をしたのは値崩れしそうなPIIGS国債を売り浴びせて一部CDSも認めさせたアメリカのシティ銀行一派で、リーマンショック後は虫の息だったものがかなり回復したという。一方でEU側はギリシャの問題は何とか先送りしたものの、暴落は防いだ他のPIIS諸国の国債償還問題を今後どのように解決するかの課題山積みという状態。ドイツはもうEUへの税拠出は勘弁してほしい状態だし、フランスは大統領選がどうなるかで先行き不明な状態。恐らく世界通貨としてユーロがドル取って代わる日はかなり遠のいたと明確に言えるのではないでしょうか。
そうなるとアメリカとしては世界通貨「ドル」を強い通貨として「ドル高」にするのが次の作戦になります。一時は一ドル50円代にまでゆくかと思われた円高も原発ストップによる天然ガス輸入増と原油高、この春から突然の日銀金融緩和によるインフレターゲット政策で円安に誘導されてきています。アメリカはシェールガスなどのエネルギー産出でも潤うようになってきており、ドルがアメリカ国内に一層還流して株価を押し上げています。不況で職を失った国民にも低金利でカードローンを組んで買い物ができるようなシステムを作り、消費を奨励しているので国内消費による景気回復傾向が出てきているというのが現在の状況のようです。
余談ですが、「貧困大国アメリカ」の著者「堤 未果」氏の近著「政府は必ず嘘をつく」(角川SSC新書2012年2月刊)によるとNATOの執拗な攻撃で崩壊し暗殺されたカダフィ氏のリビアは144トンの金塊をもとにアフリカ・アラブ統一通貨のディナの発行を計画していて、アフリカ・アラブの経済的統一によりアメリカ・EU或いはBRICS諸国への対抗勢力形成を画策していたので本気で潰されたのだという情報が乗っていました。ある意味ユーロで石油取引を認めたフセインのイラクがその直後に本気でアメリカに潰されたのと同じ構図と言えます。
中国との経済同盟を目指した小澤・鳩山内閣が無理やり潰された(日本人の今現在の日々の生活に政治と金の問題など関係ないでしょ)ことからも判るように、アメリカは強引に自分たちの利益を追求してきます。日本は実弾が飛んでこないだけまだましと言えるかも知れませんね。