山童さんのコメントにどのように応えようかと思っていたのですが、トルコ情勢というのがとても複雑で自分でも良く整理できない状況であり、答えに窮していたというのが本音です。
昨年、トルコリラが下落をして、トルコ経済が窮地に立たされました。原因はエルドアン大統領に対するクーデター計画(2016年7月)に関係したとされる米国人神父が当局によって長期に拘束されていることに対してトランプ政権が経済的な圧力をかけているからであると説明されました。このクーデターは実行に移されたものの、エルドアン大統領を排除する寸前でロシアのプーチン大統領から直々に電話でクーデターを知らされたエルドアン大統領が命からがら静養先を飛行機で脱出し、首都から反乱軍に占領されていない放送局を使って国民に反クーデターのデモを呼びかけて軍を鎮圧し、クーデターは失敗に終わりました。ウクライナではマイダンにおける反ロシア勢力による政変(2014年2月)で内戦が勃発し、反ロシア政権になってしまったウクライナの教訓を生かして今回はプーチンが先手を打った結果と言えます。クーデターに関係した軍人や政治家達は大量に粛清され、エルドアン体制がその後より磐石になったように見えます。しかし、NATOの一員として欧米側の立場を取り続けるか、ロシア側に寄って中東における独自の地位を築くかは迷うところであると思われます。
ウクライナの件もトルコのクーデターも米国のCIAが影で糸を引いていた事は明らかですが、とらわれている神父というのもCIAのエージェントであり、だからこそ早期の解放を米国が威信をかけて迫っていると思われます。トルコはもともと西側陣営であって、NATOの参加国でもあります。シリアの内戦においても反アサド政権側を支援する立場を取っていて一時はアサド政権を支援するロシア空軍機を撃墜したこともありました。しかしエルドアン大統領の強権的手腕には西欧諸国からの批判も多く、またトルコからシリア難民が多数EU域内に流入してくることから西欧諸国の中ではトルコはやや孤立した状態でもあります。
中東ではロシアの存在感が増していて、シリアはロシアの支援でアサド体制の勝利で内戦が終わり、イランも米国と対立する中、ロシア・中国とのつながりを深めています。トルコのエルドアン大統領もプーチンを訪問してロシア機撃墜を謝罪してエネルギーや経済のつながりを強め、関係改善に努めてきました。特に米国を背景にしたクーデター未遂事件とそれをプーチンに救われてからは、エルドアン大統領はロシア側に友好関係を結ぶようになっていると言えます。
エルドアン大統領が欧米かロシアかで選択に迷う要因の一つにクルド人問題があると言えます。国内で独立運動を進めるクルド人たちはシリアの内戦では米国に支援されてISと戦闘し、逆にトルコは間接的にISを支援していた節があります。ISがロシアに滅ぼされて、トルコにとってはクルド人も一緒にいなくなれば良いのでしょうがそうは行きません。2018年のノーベル平和賞の一人はヤシディ教徒でクルド人のISの性奴隷から開放されて戦争で犠牲になる女性達への活動を続けるナディア・ムラドさんが授賞しました。彼女は米国からの支援も受けていたクルド民主党(KDP)とも関係しています。そしてまさにエルドアン大統領と敵対関係にあるとも言えます。トルコとしては国内異端であるクルド人を排除しようとしてはいるけど、中国がウイグル民族に対して行っているような非人道的な事はしない、というアピールも西側の一角を占める国家として存在を示すためには必要なのでしょう。
トルコについてはまとまりのない内容になりました。トランプ大統領は中国とは貿易関係で激しく対立していますが、米国の輸入が圧倒的に多いので貿易戦争では米国が間違いなく勝ちます。その点で周金平氏は国内問題でも劣勢に立たされているように見えます。2月末にトランプ氏は2回目の金正恩との会談を持ちます。3月に中国への関税制裁延期の期限が来ますので、中国は北朝鮮にあまり強気な事を言わせないと思われます。前回周金直接会談の時にプランをいくつか想定して今後の米国への対応を相談したと思いますが、どこまでトランプ氏を満足させるプランでゆくのか見ものです。