次期航空自衛隊主力戦闘機として導入が決まったF35の艦上戦闘機バージョンでこれも購入が決定したF35Bタイプの模型を作りました。通常戦闘機仕様のAタイプとB型の大きな違いはSTOL/VL(短距離離着陸と垂直着陸)と呼ばれる機能が付いている事です。垂直離陸も可能ではあるのですが、兵器などを積載している状態では制限があるので空に近くなった状態で着陸は垂直で行うことを前提にしているそうです。これを使うと大型の空母は不要で上陸強襲艦などの甲板を利用して戦闘機の離発着が可能であり、大型空母1隻の値段で小型艦艇6隻を運用して同等以上の航空打撃力を運用できると言われています。自衛隊ではいずも型のヘリ母艦で運用することで島よの防衛に活かす事を考えています(米軍の公開訓練風景)。
VTOL機で有名なのは英軍のハリアー攻撃機ですが、これは1970年代から実用化され、島よを守る戦争であったフォークランド紛争でも活躍した記憶があります。当時米軍よりも小型の英国空母のジャンプ状の滑走路からSTOL離陸したハリアーがアルゼンチン軍のシュペルエタンダールと互角に張り合った事からこの手の戦闘機の有用性が確認され、その後米国海兵隊でも正式採用されて改良型は21世紀の中東紛争でも活躍しました。
大分昔に作った1/72のハリアーと並べてみましたが、F35は1.5倍以上大型になり、乾燥重量もハリアー6tに対してF35は14tと倍増、エンジン出力もハリアーのロールスロイス・ペガサスが95.6kNに対してF35はプラット&ホイットニーで180kNと増加しています。垂直離着陸の推力は、ハリアーが4本のジェット排出ノズルの方向を変える事で得ているのに対して、F35Bはターボファンから得た回転力を機体中央に設置されたリフトファンの回転に変えて推力を得た上で、後方のジェット排出ノズルも下方に変更し、その2点の推力で垂直方向の力、両翼の車輪外側の部位にある排出口から圧縮空気を排出して調整を得ています。恐らくこの複雑さが、F35Bの実運用実績が半分(調整が大変で故障も多い)で、飛行寿命も通常のジェット戦闘機が6,000-8,000時間であるのに対して(A型は8,000)2,000時間程度しかない原因となっているようです。使えない高い買い物になるか、持ってて良かったと結果的になるかは戦略的運用と時の運とは思いますが、ステルス性を含めて他に同等の変わる物がないことも確かです。
実質2世代古いハリアーよりもかなり大型になったF35B 中央に下方を向いたジェットノズルが見える。ハリアーもそれなりに美しいフォルムと思う。
さて、模型はさすがにハセガワ製で細かい作り込みも見事で機の特徴が良く表れています。デカールが130番位まであって、機体の塗装はニュートラルグレーと明るいグレー(スカイグレーで代用可能)です。メインの組み立ては単純ながら組み上がってから130種類ものデカールを貼って行くのは大変であり、尾翼やハッチなどを付ける前に塗装して貼ってしまった方が作り易かったと反省しました(これは一度作ってみないと解らない)。B型のリフトファンとそれを動かす軸も再現されていて、スタンドと合わせると垂直着陸時の臨場感溢れる姿を再現することも出来ます。
リフトファンの空気取り入れ口や排気口が再現されていて、デカールも細かく、数が多い。