GDPが横ばいなのに年収が低下するのは何故か
バブルの崩壊から失われた20年などと揶揄される日本経済ですが、GDP自体は増加をしていないだけで横ばいから軽度下降程度が続いています。つまり日本の経済規模はそんなに変っていないのに何故若い人が就職できず、日本人の年収が減って貧しい人が増えているのか考えて見ました。
日本との比較として好況の続く中国と比べてみました。内容は「いなっち」さんのブログ「中国と日本のGDP推移と中国人と日本人の年収比較2000-2009年」(http://www.china-b-japan.org/archives/460)からのものです。
——(転載はじめ)——
日本人の年収推移
年 日本人の年収(円)
_2000年 ¥4,610,000
_2001年 ¥4,540,000
_2002年 ¥4,480,000
_2003年 ¥4,440,000
_2004年 ¥4,390,000
_2005年 ¥4,370,000
_2006年 ¥4,350,000
_2007年 ¥4,370,000
_2008年 ¥4,300,000
_2009年 ¥4,060,000
2000年以前の年収も探せばあるのですが、実は2000年がピークです。。。。_そこからはずっと下降傾向。
_日本の名目GDP推移
年 日本のGDP(円)
_2000年 ¥50,298,990,000,000
_2001年 ¥49,771,970,000,000
_2002年 ¥49,131,220,000,000
_2003年 ¥49,029,400,000,000
_2004年 ¥49,832,840,000,000
_2005年 ¥50,173,450,000,000
_2006年 ¥50,736,470,000,000
_2007年 ¥51,552,040,000,000
_2008年 ¥50,511,290,000,000
_2009年 ¥47,429,690,000,000
ほぼずっと横ばい。
_ニュースでよく見る通り全体の経済規模はこの10年間同じで、_またこれから上がる要因が思いつかないので横ばいか下降すると思われる。
_中国人の平均年収
年 中国人の年収(元)
_2000年 15,420
_2001年 17,764
_2002年 19,473
_2003年 22,160
_2004年 24,398
_2005年 26,823
_2006年 29,569
_2007年 34,707
_2008年 39,502
_2009年 42,789
アップ傾向。
_人件費上昇がニュースでも流れていますが、その通り。_毎年、中国人の年収は上昇しています。
_中国の名目GPD推移
年 中国のGDP(元)
_2000年 9,921,460,000,000
_2001年 10,965,520,000,000
_2002年 12,033,270,000,000
_2003年 13,582,280,000,000
_2004年 15,987,830,000,000
_2005年 18,493,740,000,000
_2006年 21,631,440,000,000
_2007年 26,581,030,000,000
_2008年 31,404,540,000,000
_2009年 34,050,690,000,000
給料と同じく、アップ傾向。_2010年度は総量でいえば日本を超えているそうです。
_日本人と中国人の年収比較(ドル換算)
年 日本人の年収(ドル) 中国人の年収(ドル)
_2000年 $54,946.59 $2,317.23
_2001年 $54,112.26 $2,669.47
_2002年 $53,397.12 $2,926.29
_2003年 $52,920.36 $3,330.07
_2004年 $52,324.41 $3,666.39
_2005年 $52,086.03 $4,030.80
_2006年 $51,847.65 $4,443.45
_2007年 $52,086.03 $5,215.56
_2008年 $51,251.70 $5,936.12
_2009年 $48,391.14 $6,430.07
確実に中国の年収が近づいてきているものの、その差はまだまだ大きい。_2009年ベースで日本人の平均年収は中国人の7.5倍程度。
_疑問点
中国の名目GDPが上がっているものにともなって、中国人の年収もアップしています。_経済規模(名目GDP)の上昇にともなって、個人レベルでの給料アップというのは_道理にかなっているので、理解ができますし、然りです。
しかし、日本の名目GDPはほぼ、横ばいにも関わらず、_日本人の給料は下降傾向となっています。_中国の例を取れば日本人の給料も横ばいになるはずなのに。
——(転載終了)——
非常にわかりやすくまとまっていたのでデータも含めてそのまま転載させていただいたのですが、疑問点で述べておられるように何故日本はGDPが横ばいなのに景気が安定していると言われずに不景気でしかも国民が貧しくなってゆくのか不思議です。
よく言われるように貧富の差が開いて「勝ち組」「負け組」の給与差が大きくなったとしても、日本人全体の中央値でなく平均値を取れば全体の杯が変っていないのですからその平均も変っていないはずです。従って考えられるのは日本人が所得として本来得るべきものが「所得以外のもの(企業内の余剰資金とか)」に回っているか、日本人以外の所得としてどこかに消えているか、のどちらかではないかと思われます。
企業の内部留保についてはWikipediaに下記のような資料があり、特に2000年以降利益剰余金(狭義の内部留保というらしい)が年々増加している傾向にあることが分りました。
ただし現金や預金としての内部留保は減少傾向にあるので、これらの資産は他の投資に使われるか、配当に回されるか、設備投資に使われたかになるのでしょうが、生産拡大のための設備投資が積極的に行われたとも思えないのでこれらの剰余金は日本以外の外部(国外の設備投資とか)に消えてしまって国内には還元されていないと考えた方がよさそうです。
また日本人以外の所得としては、在日外国人情報センター(http://gaikokujin-jp.info/p02.htm)の資料で「約200万人の在日外国人が7兆円の所得を得ていると推定される」とありますが、平均年収では350万円位であり、日本人の平均所得を下げるほどのパワーはないように思います。
やはり日本人の稼いだお金が日本人の所得にならずに海外に流出していたと考えられるので「日本における資本の流出」で調べて見ると藤沢数希氏の金融日記(http://blog.livedoor.jp/kazu_fujisawa/archives/51652727.html)の記事に、
(引用開始)
GDP - 国内消費 - 政府支出 = 国内投資 + 輸出 - 輸入
ここでGDP - 国内消費 - 政府支出は国内貯蓄です。
国内投資は、日本人と外国人の日本国内への投資総額を表します。
具体的には工場を作ったりすることです。
ところで、単に証券会社で株を買っただけでは、国内投資にならないことに注意しましょう。
なぜなら株を買っても、それと同額だけの株を売っている人がいるわけで、トータルでの投資はゼロだからです。
しかし、たとえばソニーが新たに増資する場合に、それを中国人が買えば投資になります。
新たに増資で調達されたお金は工場などの投資に変わるからです。
結局のところ投資を左辺に持ってこれば、最初の資本と貿易の恒等式、
国内貯蓄 - 国内投資 = 輸出 - 輸入、になります。
以上のことを別の観点からいうと、自国での生産(GDP)以上に自国で使いたかったら輸入してくる他なく、その分のお金は何らかの方法で海外から借りてくる(投資してもらう)ことになり、逆にGDPを自国で使い切れなかったらそれは輸出になり、余ったお金は海外に貸し出される(投資される)ということになります。
—(引用おわり)—
という記載があって、要するに日本のGDPで日本人の給与(国内消費)に当てられなかった分はアメリカの国債を買う(投資)に当てられていたのだろう、という答えがやっと出てきます。緻密さを欠くざっくりとした分析でしたが、どうやら日本の経済が横ばいなのに日本人の給料が減り、生活が貧しくなっているのはアメリカのせいかもしれないという結論になりそうです。