rakitarouのきままな日常

人間様の虐待で小猫の時に隻眼になったrakitarouの名を借りて政治・医療・歴史その他人間界のもやもやを語ります。

「偽情報・誤情報、キャンセルカルチャーと忖度」=現代メディア

2025-01-30 16:12:22 | 社会

中居正広氏の女性問題から派生したフジテレビバッシングは、局の執行部退陣のみならず存続まで危ぶまれる事態になりました。しかし混乱の文春が報じた元情報である「フジテレビ幹部のA氏が食事会をセットしてドタキャンすることで中居氏と女性のみが残る設定をした」が全く偽情報であったことが明らかとなると、10時間に及ぶ「吊し上げ中継会見が必要なモノだったのか?」を含めて出席していたジャーナリスト全員が情報の確認(ファクトチェック)さえせずに責任追及をしていた事が露呈してしまいました。正にフジから広告撤退した空き時間に放映されている「ACジャパン、決めつけ刑事」(嶋田久作氏出演、ハイ人生終了!というキャンセルカルチャー問題も盛り込まれている)の実写版が繰り広げられるという大型バラエティになってしまいました。しかも会見が長引いて中止になったものの記者会見後の番組が「全国女子アナ選手権」的な特番が予定されていたというから完璧です。

ACジャパンの傑作 決めつけ刑事

ヒトも組織も「良い点」「悪い点」があるのは言わば社会の常識に当たるモノですが、一部の悪い点をあげつらう事で対象の存在全てを否定する「キャンセルカルチャー」の流行は社会の幼稚化を表す現象です。上記決めつけ刑事の「ハイ、人生終了!」のセリフに象徴される批判される内容の意義付けや改善の機会などを考慮せずに「全否定」というのは善悪二元論に基づくものであり、携帯という小さい情報提供メディアで結論だけを得る事に慣れた現代人の知性劣化を物語るものでしょう。

 

〇 失敗を社会全体の改善につなげる根本原因分析

Root cause analysisの手法 Fishbone diagram

東京大学名誉教授の石川馨氏は、世界の見本となった日本のQCサークルの生みの親とも言われて、品質管理の向上に多用される根本原因分析(Root cause analysis)を1960年台に築き、それが世界中で建設、航空、医療などの安全管理にも応用されています。To err is human「ヒトは誰でも間違いを犯す」という前提で、個人の責任を問う事はせずに、間違いを犯しても大事に至らないシステムを作るFail safeとかFool proofといった改善が社会の安全に繋がるという思想が大事にされています。ブレーキが自然にかかるとか、逆の接続は端子自体がつながらない仕組みになっているといった事で至る所で応用されています。個人の責任を問わない文化が伸びた一方で「一事を持って全否定につなげるキャンセルカルチャー」が何故全盛になってきたかは主に政治的社会的理由が背景にありそうです。

 

〇  司法の政治利用 娯楽としての公開裁判(炎上)

キャンセルカルチャーは善悪二元論による全否定と安易な娯楽としての公開裁判の意味を持つ

巨大資本でメディアと米国民主党を牛耳るグローバリスト権力層にとって、米国をグローバリズムの中心ではなく、多極化を認め、米国を極の一つとして再構築しようとするトランプ大統領は「政治生命を消したい対象」でしかありませんでした。2020年選挙時の「議事堂襲撃扇動問題」や「機密書類持ち出し」、「ロシア疑惑」、果ては「ポルノ女優口止め料問題」と数々の無理筋提訴でトランプ氏の政治生命を絶つ事をグローバル陣営は試みましたが結局失敗、暗殺も2回試みて失敗し結局トランプ氏は大統領に返り咲きました。CNNのファリード・ザカリアはハリスの敗因の一つが「司法の武器化」に米国市民が拒否反応を示した事だと明確に評しましたが、こういった指摘は日本のメディアで聞いたことがありません。「トランプはレイシスト」「トランプはヒトラーと同じファシスト」「分断を煽る」などという「社会正義に反する」という印象操作による政敵排除を目的としたキャンセルカルチャー発動をメディアは繰り返してきましたが結局失敗に終わっています。

日本のメディアも同様の印象操作を繰り返してきましたが、「社会正義に反する」と規定した「芸能人」や「贅沢な立場にある者」を公開の場で吊るし上げる「公開裁判」は日本のメディアにとって「金のかからないバラエティ」としてワイドショーの時間つぶしにこの10年以上使われてきたネタと言えるでしょう。今回のフジテレビの一件はその「悪しき集大成」と言えるように思います。メディア全体が「安易な自らの在り方」を真剣に反省し、新たな「ジャーナリズムの規範」を作って立ち直れるか否かに既存メディア再生存続の可能性が問われていると私は思います。

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NHK映像の世紀 戦争のトラウマ 感想

2025-01-23 14:02:43 | その他

2025年1月20日に放送されたNHK映像の世紀「兵士達の消えない悪夢」は内容、編集ともに素晴らしい番組であり、どんな戦争番組よりも戦争の実態を伝える内容であったと思います。備忘録を兼ねて医師の視点を交えて感想を記します。

内容は一般の国民、民衆が徴兵によって、国家の要請で兵士となり戦争をさせられる結果各国共通に生ずる精神的障害を、精神科医学の発達の視点、殺される側の視点、殺す側の視点から考察した内容です。メンタルヘルス全盛の現在からは想像がつきませんが、精神医学が発達していなかった20世紀初頭の第一次大戦の世界戦争で多くの兵士に生じた「砲弾病」と言われる外傷を伴わない原因不明の痙攣や自己喪失状態は「詐病」なのか「真の病」かも分らず、軍も医師も対応に苦慮するものであったことは明らかです。

 

I.  殺される側の戦争神経症 Shell shock(砲弾病)

 

第一次大戦は戦線が膠着したまま年単位で動かない「消耗戦」(war of attrition)で塹壕に兵士達は籠って何日も続く砲弾の雨を耐え続けて、攻撃になると昔ながらの列をなして突撃を繰り返していました。死や手足を失う恐怖が終わりなく続く状態を強いられる事でshell shockと言われる不随意運動や痙攣、夢遊病や茫然自失状態が多発する様になりました。この塹壕に籠る消耗戦は21世紀の現在もウクライナで再現され、陣地を守らされるウクライナ兵のみが体験しています。砲爆撃の量は1:10でロシアが一方的に優勢であり、現在のウクライナにおける砲弾病の実態がいかなるものか報道が待たれます。

激しい痙攣と不随意運動の症状 電気ショックによる治療

Shell shockの治療法として外力による強制的な運動や電気ショックといった当時の治療法が紹介されます。軍はより強い恐怖「戦場離脱による銃殺」で対応し、その犠牲者が21世紀にやっと名誉回復するニュースも紹介されます。精神心理学の泰斗であるフロイトはこれらの反応を「心因性疾患」と考えて「戦争神経症」という病名を付けます。

 

II.  生き残る者の罪悪感survivor’s guilt

日中戦争において、皇軍は戦争神経症がないことになっていましたが、実際は同様の患者が出現しており、陸軍国府台病院で治療と研究が行われていた事が紹介されます。私は自衛隊病院の精神科病棟も受け持った事がありますが、当然ながら戦争神経症の患者はおらず、通常の精神疾患の患者だけでした。市川市にある国立国府台病院は戦後も戦争神経症の患者が入院を続けていて、朝になると起床ラッパを吹く患者がいるという話を聞いたことがあります。日本の国府台病院で治療された例で紹介されたのは、激戦で一人生き残ることで罪悪感を感じて立ち直れなくなるsurvivor’s guiltという症状でこれも戦争神経症の形態とされます。戦争のトラウマは殺される側から戦う側、殺す側のトラウマに焦点が移ります。

 

III.  殺す側の戦争神経症 PTSD

国家の存立危機と関係ない戦争に駆り出されて、精神を病む帰還兵   ソンミ村虐殺を伝えるメディア

第二次大戦の沖縄戦では、抵抗する民間人を米軍軍が殺戮します。女性や子供を殺すことにまっとうな米兵達は「罪悪感」を覚えます。また一方的な殺戮にも嫌悪感を示します。これは敵を殺してほしい「軍」にとっては邪魔な感情です。「人間は同じ人間を殺したくない」という自然の感情を持つのが普通なのです。1947年、米軍のマーシャル将軍は戦闘で実際に敵に銃を撃つのは兵の25%だと記して物議をかもします。そこで米軍は新兵の訓練方法を変え、「敵は同じ人間ではなく家畜以下」標的も動かない的ではなく「人形をした動く物」にして銃を撃つ抵抗を無くすようにします。

自殺したシンプソン氏  冬の兵士の聴聞会(1971)で想いを語る帰還兵

しかしベトナム戦争ではゲリラ戦法を採るベトコンに対して、一般人虐殺であるソンミ村虐殺事件などが起きてしまいます。その時19歳の黒人兵であったシンプソンは無抵抗の民間人25人を殺した罪悪感のPTSDで30年後に自殺をしたことが紹介されます。ベトナム帰還兵達の証言からPTSDという病名が1980年の精神医学の病名に追加されました。

 

IV.  兵士脳、娑婆脳を共存させる21世紀の戦争

 

2023年6月に自衛隊教育隊で候補生が銃を乱射した事件を受けて、軍の教育隊における教育の基本は「娑婆脳を一度棄てさせること」だと説明しました。軍務経験のない日本人にはこれを理解することは難しいと思いました。余分な知性、知恵を一度全て棄てて頭を白紙に戻し、教範と教官の言う事だけで動ける体にする事は、二等兵にとって作戦上も部隊にとっても重要なことです。

しかし21世紀の「テロとの戦争」においては、本来警察が行うべき「犯罪者と一般人を見分けた上で発砲する」という状況判断の連続を強いられます。これはイラク・アフガン戦争に従軍したペトレイアス将軍が策定したCOIN(counterinsurgency)という戦闘教範に即した戦い方で、イスラエルの「ハマスも民間人もまとめて虐殺する」現在のガザ紛争を彼が批判したことでも有名です。COINは本来の軍の戦い方(任務)ではない事は、かねてから私は主張してきましたが、この戦場において兵士脳と娑婆脳を共存させる事は多くの兵士達の精神を破壊する結果になり、この番組でもイラク・アフガン戦争における戦闘による米軍の死者が7,057名であるのにPTSDによる自殺が3万人を超えていることが紹介されました。クリント・イーストウッドの映画「アメリカン・スナイパー」は伝説的狙撃兵としてイラクに従軍したクリス・カイルが自らのPTSDを克服しながら、最後は心を病む帰還兵に銃殺されてしまう実話の映画化でした。2008年のグラン・トリノでは朝鮮戦争で朝鮮の少年を殺してしまい罪の意識に悩む老人を演じ、硫黄島2部作は米軍の「殺す側の論理」がこれ(星条旗)でよいのか?という問いかけを日本側から描いた「手紙」との対比で描きました。彼は兵士の立場からの「心の葛藤」と向き合った監督と言えます。

番組は現代の戦争における実相を暴き出します。イスラエルはガザにおけるハマス攻撃にAIを活用することでヒトが攻撃の命令を下す心理的負担を減らしていると紹介。一方でウクライナ戦争ではロシアは今回の戦争で10万人のPTSD患者を産んだ(英国国防省)と言い、ウクライナは民間人を含め1,000万人のPTSDを産んだ(WHO)と紹介して番組を閉じました。

罪悪感をなくすためAIによる殺人を活用  パレスチナ人はhuman animalとして扱うという国防相の発言

 

V.  国家という共通幻想はヒトとしての道徳より優先するか

法は道徳に優先するものではなく一部であるのが法学の基本中の基本 イスラエルでも帰還兵の自殺が増加という記事

貨幣が経済を成り立たせるための人類の共通幻想であるのと同様、国家は社会を機能させるための人類の共通幻想でしかありません。また「社会」は「個人の我欲煩悩を調整」するための決まり事として存在しているに過ぎません。尽きるところ「個人の我欲煩悩の調整」であり、調整するための共通幻想としての国家の要求が絶対的なものと言えるか疑問です。法は道徳の一部であることは法学の基本であることは述べましたが、法で「ヒトを殺せ」と命じられても道徳として「ヒトは殺せない」と心が命じてその葛藤で神経症になるとすれば間違っているのは「我欲の調整を行う社会の法」の側です。戦争は外交上万策尽きた最期の手段であり、一刻も早く終わらせるために最低でも「出口を決めて行う」事が、人類が決めた知恵であったはずです。現在のガザ紛争、ウクライナ、始まりそうなイランや中国との紛争は本当に万策尽きた結果でしょうか。自分の心身は傷つかない人間に限って「戦争やむなし」と気軽に口にしていると私には思われます。

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米国の外交は米国が決める(by Trump)

2025-01-18 14:01:24 | 社会

次期米国大統領のトランプ氏就任まであと数日になり、就任式の会場が急に屋内に変更になるなど無事に就任自体が行われるか注目される所です。またLame duck状態のバイデン政権が、ウクライナにロシア本土攻撃を米国製ミサイルやドローンで行う事を許可する(米軍情報機関のバックアップが必須)などトランプ就任後の行政へ様々な妨害工作をしている一方で、パレスチナ停戦合意、カナダやパナマ運河を合衆国の管轄にするとか、グリーンランドを買収するとか既に多くの話題を次期トランプ政権は打ち出しています。それらの実効性は未定ですが、これらの新たな外交政策に共通して見られる根本思想は「米国の外交は米国が決める」という事だと思います。イスラエルへの無条件の支援は主権の放棄だという論考で述べた様に、バイデン政権のイスラエル支援は自国内のみならず国際社会を敵に回し、国益を無視した「イスラエル隷従」でしかないものです。他国を支援・干渉するにしてもそこに米国の国益がなければ意味がありませんし、隷従支援のために国内の反対意見を取り締まる法律まで作るようでは完全な主権放棄と見なされても良いでしょう。これらトランプ外交の実効性については、メディアなどでは様々な意見が出されています。多くは悲観的(どうせうまく行かないという反トランプ的期待もある)なものですが、昨年7月の暗殺を免れて「神がかり」の啓示を感じたトランプ氏が失敗を恐れずにレガシィを残す偉業を画策することは大いに考えられます。また反対勢力側もある意味「一定の諦観」を持ってトランプ政権を迎えるであろうことは、選挙結果を見ても明らかだと思います。そこで種々の懸案事項についての見通しをrakitarou視点からまとめておこうと思います。

イスラエル虐殺に武器を送り続けたブリンケン国務長官は退任記者会見で(虐殺長官)などと揶揄される始末

I.  パレスチナ停戦合意

停戦合意についての3段階の概要  この狭い地域を15か月かかってもイスラエルは非武装住民の虐殺しかできず、ハマスの人数は不変という

2025年1月16日イスラエルは正式にハマスとの停戦に合意したことが伝えられました。第一段階は6週間続き、ハマスはイスラエル人人質33人を解放し、イスラエルは最大1,000人のパレスチナ囚人を解放することになっています。トランプ就任式前日から発行される停戦初日には、イスラエル軍はガザの人口密集地から撤退して7日目にはガザ北部への住民帰還が許可されます。また食料や医薬品を積んだトラックの毎日600台ガザ搬入が許可されます。

第二段階でイスラエルはガザから撤退を完了し、エジプトとの国境間のフィラデルフィア回廊に駐留を続ける一方ラファ国境検問所は明け渡す。第三段階では戦争の恒久的終結への交渉を行うことになっています。

トランプ次期大統領は「この壮大な停戦合意は、11月の歴史的勝利の結果としてのみ実現した。この合意は、我が政権が平和を追求し、すべての米国人と同盟国の安全を確保するための協定を交渉するというメッセージを全世界に送ったものだ」と彼はトゥルース・ソーシャルの投稿で述べた、とされます。

彼は、ウィトコフ特使と彼の次期国家安全保障チームは「ガザが二度とテロリストの避難場所にならないようにするためにイスラエルと同盟国と緊密に協力し続ける」と述べ「我々は、この停戦の勢いを基盤に歴史的なアブラハム合意をさらに拡大し、地域全体で力による平和を推進していきます。これは、アメリカ、そして世界にとって素晴らしい未来の始まりに過ぎません!」と付け加えました。イスラエルとしては、トランプの就任式に花を添える形での停戦は「あり」と考えたということでしょう。

 

ベギン、ラビン、ネタニヤフの系譜

イスラエルの二枚舌外交(というより約束を守らない国民性)は歴史では定番

1979年に、エジプトのサダト大統領とイスラエルのメナヒム・ベギン首相はカーター大統領の仲介でキャンプ・デービッド合意に達しましたが、パレスチナに対する自治容認は実行されませんでした。1993年のオスロ合意ではビル・クリントン大統領の仲介で、イスラエルのイツハク・ラビン首相とPLOのアラファト議長がヨルダン川西岸からのイスラエル撤退やパレスチナ国家の成立が合意されましたが、ラビン首相、アラファト議長は暗殺され闘争は継続されました。

一段落置くには良いタイミングか?

今回も恒久的停戦と2国家並存はないだろうと十分予測可能ですが、15か月戦争を続けて1万人の戦傷病者と891名の戦死(うち38名は自殺)、経済は回復に数年かかるほど下降し、米を除く世界から犯罪国家として扱われている現在、ネタニヤフは使用期限切れとして排除し、一度矛を収める事をユダヤの陰の支配者達が決断することもあり得るでしょう。シリアの半分はイスラエルが占領できそうで、トルコと新たな支配者ジョラニらの軍をいなして地盤を固める事も「大イスラエル建国」の準備段階としては重要と考えそうです。

大イスラエル国の範囲(先は長いがシリア領土獲得は大きかった) シリア反政府軍は味方にあらず、早速攻撃対象とするイスラエル

 

2.ウクライナ停戦

 

ウクライナとの戦争に勝ちつつあるプーチン大統領にとって、今譲歩を伴う停戦交渉をするメリットは全くありません。北朝鮮兵の目くらましに西側メディアが翻弄されているうちに粛々と東部戦線で支配領域を広げてゆけば良いと考えているでしょう。北朝鮮兵のニュースについては、未だにメディアの報道どおりではない様に私は思っています。毎日600-800名の戦死者が出ているウクライナで(政府は年間20万人のリクルートが必要と正式に認めている)2-3人の北朝鮮兵と見られる(言葉が話せない負傷をしている)捕虜の映像が、それほど意味があるものには思えません。多数のNATO諸国国籍の義勇兵(一部正規兵)捕虜が明らかにされる方が西側メディア的には怖れている内容ではと思います。

その意味でトランプが「就任24時間で停戦は無理だ」と言ったのは現実でしょう。早期にトランプが大幅な譲歩をして停戦したとなると沽券にかかわります。武器弾薬の供給の窓口を目立たない様に狭めつつ、ロシアの自然な進撃でドネツク・ルガンスク共和国を占領しきった所で残った領土での米国の権益を認めさせた上で脱NATO、非ナチ化、中立化した新ウクライナの存続をプーチンとディールすることになる様に思います。

砲爆撃力の差で消耗戦におけるロシア、ウクライナの戦傷病数は1:8でロシアが圧倒的に勝利しているのが現実

 

3.NATO、EU、グリーンランド

 

プーチンはウクライナの次はバルト三国、ポーランド、西ヨーロッパ諸国にも攻め込むつもりだ、などと威勢の良いヨタを飛ばしていたEU首脳達はトランプが「グリーンランドをよこせ」と逆侵略の意図を聞かされて驚いたことでしょう。各国首脳達は「もごもご・・」と歯切れの悪い反応を示すのが精一杯でした。選挙で国民から選ばれないEU首脳や官僚は単なるグローバリスト権力層の駒でしかなく、昨年来各国で正式に選挙で選ばれる「極右とレッテルを貼られる国民目線の政治家」達に徐々に排除されてゆくでしょう。

グリーンランドについては、領有するデンマークが「住民の意思で決めてゆけば良い」と言い、住民は「売り物ではない」と言いつつ協力関係は拒まないと言っているので、今後協定を結んで基地などの建設が進むだろうと思います。カナダが米国になることはないでしょうが、隣同士の国は協力して経済を盛り上げるのが最も両国の繁栄につながる事は古今東西問わない真実なのでカナダは妥協しつつも良い関係を続けるでしょう(医療保険制度などはカナダが明らかに良いし、住みやすい)。中日、ウクライナ・ロシアも隣国同士経済協力関係が良い方が両国にとって繁栄と幸福につながるのは米国・カナダと同じ。隣国同士を地球の裏側からけしかけて戦争をさせる(divide & rule)のが薄汚い英米欧の常套手段。油断すると飲み込まれるからけじめは大事ですが、他国の鉄砲玉として隣国同士で戦争させられるのは最悪の選択です。

 

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Felixtowe F.2A 1/72 Roden

2025-01-12 17:23:12 | プラモデル

第一次大戦時の英国海軍航空隊(RNAS)の飛行艇Felixtowe F.2A1/72を作りました。1/32モデルはニュージーランドのWingnut wingsから非常に精密な量産キットが発売されているのですが、1/72はウクライナのRodenが唯一作っていて、希少で非常に良い多くのキットを作るメーカーであり、現在まだ会社が存続できているか危惧されるところです。F2AはアメリカのカーチスH8飛行艇を基に345馬力のロールスロイス・イーグルVIII十二気筒エンジンを2基搭載して1918年から実践に投入されました。最高速度は154km、航続距離は950km(約6時間飛行可能)で、230ポンド爆弾(104kg)2発を翼下に搭載可能でした。北海哨戒任務に就く際目立つダズルペイント(赤白の縞模様とか)が用いられました。第一次大戦中に約100機が製造され、その後も70機が製造され、スーパーマリン・サザンプトン、スーパーマリン・ストランラーに引き継がれるまで中心となる飛行艇として活躍したと言われます。

ゆっくりと海上を飛ぶ飛行艇はドイツ水上戦闘機の獲物になりやすく、回転銃座を前後2丁、胴体横に各1丁ルイス7.7mm機銃を装備する他、上翼中央に追加の回転銃座を持つ機体もありました。このキットはその3丁回転銃座を持つタイプだったのですが、ダズルペイントではない機体を作りたいと思ったので胴体は後期型のまま銃座を持たないタイプにしました。

箱絵はダズルペイントの機体 細かいリギングの資料も豊富

モデルは決して作りやすい設計ではないのですが、ゆっくり作れば合わない部品は余りありません。問題は主翼や尾翼の昇降舵まで細かく張られた鋼線をどこまで再現するかです。最後までリギングとの戦いになることを覚悟して組み立ててゆく必要がありました。1/32キットもあるので細かなリギングの図解や綺麗に張った模型を展示したサイトなど多数あって資料には事欠かないのですが、この多数のリギングに何を使うかで悩みました。結局韓国のインフィニ・モデル製の0.05mmナイロン糸を使いました。これは2-3倍まで伸びるので長さの融通は効くのですが、一度丸まると形が崩れてしまうので、出来上がりの見た目は非常に良いのですが張るには慣れとコツが要ります。とにかく長めに切ってから使う方が良さそうです。

翼上面はダークグリーン、下面はダークイエローと肌色を混ぜた物、胴体下面はレッドブラウン、上面はミドルストーンとダークアースにしました。乗員は付いていないのでハセガワ製の海軍要員を流用しました。主翼幅が大きいので、翼と胴体はリギング張りまで別々に作って最後に接着。それでも翼を猫にタ大破されて作り直しなど苦心作となりました。好敵手はハンザ・ブランデンブルグと言われますが、アルバトロスの海軍版と並べてみました。アルバトロスは0.2mmの真鍮線でリギングしたのでやはり太さが目立ちます。

アルバトロスのリギングが太く見えます

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トランプ、プーチン、習近平の第二ヤルタ会談

2025-01-09 15:26:09 | 政治

I.  2025年はやはり波乱の年になるのか

2025年は核戦争を含む第三次大戦が本格的に始まるとか、大きな災害が発生して日本を含む世界が大被害を被るとか、いろいろ言われてきました。確かに世界の情勢は波乱含みで、ウクライナ、シリア、イスラエルなどは戦乱が続き、欧州やカナダも今までの体制に民衆がノーを突きつけて新しい自国に目を向けた体制を作り直そうとしています。1月20日には米国でトランプ体制が始まり、早速既存の権力体制を破壊する転換が始まろうとしています。ドイツの新体制はロシアとの融和による産業再興とNATOからの脱退も視野に入れていると言われます(歴史的にはそちらが正統)。

1945年2月、クリミア半島のヤルタにおいて、第二次大戦後の世界の在り方を決定づけたチャーチル、ルーズベルト、スターリンによる3者の会談が開かれた事は有名です。この会談によって東部、中部の欧州におけるソ連、米国の棲み分けとなるヤルタ協定や戦後日本の体制を決めたポツダム体制が決定づけられたとも言えます。当時は現在の様なヴィルダーバーグ会議やダボス会議でグローバルな金持ち権力者のみで世界の情勢が勝手に決まる事はなく、勿論各国の政治指導者の背後にはスポンサーがいたはずですが、現在よりは「誰が決めたか」の責任の所在が明らかであったと思います。ジャーナリストの渡辺惣樹氏によると、ヤルタ会談の時には2か月後に死亡するルーズベルトは既に現在のバイデン大統領と同等の知的状態に陥っていて、会談ではただ座っていただけで、実務はソ連のスパイとされた国務省のアルジャー・ヒスが担ったと言われ、かなりスターリンに都合が良い結論が出されたとも考えられます。

2025年はグローバル経済の権力者を中心とした利益誘導ではなく、大国の指導者が各国の利益を第一に政治を行う方向に舵が切られようとしています。それをグローバル権力者達は「極右勢力」として蛇蝎の様に嫌い、彼らが支配する大手メディアに「民主主義の敵」「独裁専制政治」とレッテルを貼って批判させています。しかし未だに大手メディアしか情報源とせず、自ら考える事を放棄した人達は別として、多くの「目覚めた民衆達」は、自分達で社会の在り方を決める「真の民主主義」の方向に再度向かいつつあり、ドイツのAfD(ドイツのための選択肢―現在勢力2位アリス・ヴァイデル氏が率いる)、フランス国民連合(RN-ルペン氏率いる。24年国民議会選挙で第一党になる勢いだった)、スペインVOX、イタリアの同胞(FDI)のメローニ首相、英国のリフォームUK(トランプ氏を支持するナイジェル・ファラージ党首)が支持を伸ばしています。クロアチアは現職のゾラン・ミラノヴィッチ氏が親グローバリズムのプリモラツ氏を大差で破り大統領を継続、ハンガリーのオルバン氏と親ロシア路線を継続するでしょう。カナダはグローバリストのトルドー首相が辞任を表明、反グローバリズムのポワリヴル氏が次期首相候補と言われています。

マスク氏が応援するドイツAFDのヴェイデル氏 再選されたクロアチアミラノヴィチ氏

 

II.  2025年は第四転換期の中心になるか

コンドラチェフの経済循環(これから良い方向に向かうかも)

種々の歴史循環理論は科学的証明や反証ができず、非科学的とされますが、現実の事象としては当てはまる事が多く、帰納法的には真実に近いものです。レイ・ダリオ氏の「変わりゆく世界秩序」における覇権国の推移(覇権は、(1)教育、(2)イノベーション・技術、(3)競争力、(4)軍事力、(5)貿易、(6)産出、(7)金融センター、(8)準備通貨という8つの要素から構成され、覇権のピークに対して、(1)、(2)、(3)は先行、(4)、(5)、(6)は一致、(7)、(8)は遅行すると分析)とか、経済ではロシアのコンドラチェフの波による60-70年周期の経済循環もあります。米国の作家ウイリアム・ストラウスとニール・ハウによるストラウス・ハウ理論は、アメリカや西洋史が21年ごとに4つの世代でサイクルを形成して80-90年周期で入れ替わるというもので、よく言われるZ世代という語彙もこの理論を発祥にしています。実際に「The Fourth Turning第四転換期」という本を訳した奥山真司氏の興味深い解説によると、1958年生まれのrakitarouは預言者世代として時代を送り、ゆとり世代の70-80年台生まれの人達は遊牧民(ノマド)として飄々とした諦観の世代ということになります。90年台以降の生まれは、現在は潜伏期ながら英雄としてこれからの乱世の時代を切り抜ける戦士として活躍が期待され、2010年以降生まれ(Z世代?)になると芸術家(適応者)として次サイクルの社会を実りあるものにすることが期待されます。

 

奥山真司氏の解説図 冬の時代の現在、預言者世代の1950-60年台生まれは老年期にいる。

日本について言うと現在のサイクルは第二次大戦終了が開始点となっていて、その前のサイクルは明治維新が開始点でした。前サイクルの英雄世代は第二次大戦を戦った若者達の世代で、社会の破壊に抵抗しようとする世代として私の父親も入っていました。預言者(理想主義)として老年期にある我々世代は、次の乱世を見据えた的確な理想を経験に基づいて実現しようとするのが仕事と思われ、今行っているブログや雑誌の記事もその一環かと思っています。

2025年はグローバリストのバカ達が核戦争を起こさなければ、トランプ、プーチン、習近平と多極主義と自国(の平和と繁栄)第一を掲げる各国の愛国者達が次のサイクルに向けて動き出す鬨と思いますが、そうスムーズに次のサイクルに移るとも思われず、今後自然災害、人災を含む大きな出来事が起こりそうな予感がします。

各時代サイクル(サキュラム)は80年周期で混乱と繁栄を繰り返すという。これから2030年に向けて混乱に入り、ミレニアル世代が英雄として自己犠牲的に活躍?

 

III.  抵抗の核は米国のメディアと経済官僚機構か

 

 グローバリズムの強固な機構は、米国のドル基軸体制、超富裕層と巨大企業による政治とメディア支配が簡単に崩せないほど構築されている現状だと思います。その支配はFBIやCIAなどの情報機関、国務省などの官僚機構も取り込んでいるために、この官僚機構をいかに整理するかというイーロン・マスク氏の政府効率化省(DOGE)の働きにかかってくるでしょう。「DOGEによって福祉が削られるという虚報・宣伝」をグローバリスト達が広めていますが「政府から君たちクズを排除するのが目的なのだ。」というのがよほど怖いのでしょう。言論の自由については、検閲産業複合体(Censorship Industrial Complex)がメディアのみならずSNSなどのプラットフォームを自由に検閲削除することでグローバリズム体制の維持と民衆の愚民化に貢献してきましたが、マスクのXのみならず、フェイスブックのザッカーバーグもバイデン政権からの検閲強制をメタのCEOとして正式に24年8月24日に暴露した上で大統領選挙には前回の様に露骨な民主党支援(4億2000万ドル)はしないと発表し、今回はあからさまな選挙不正が阻まれた結果になりました。そして25年の1月8日にメタの検閲は終了すると宣言したようです。いずれにしても次の大国のリーダーたちは、核戦争を起こさないようにさえしてくれれば何とか次の社会機構にソフトランディングができる様に他の中小国リーダー達が協力できるのではと夢想します。

 2024年12月4日にドバイで核保有国5か国の代表が中国の仲介で「核兵器の在り方」(nuclear doctrines)を相談したと報じられました。詳細は不明ながら米国とEUの政治中枢がグローバリストに握られて核戦争を起こそうと狂ってしまっている現在、多少はまともな核保有国である中ロが調整役を買って出る事は悪い事ではありません。

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BSスペシャル欲望の資本主義2025「成長神話の虚実」感想

2025-01-06 14:45:05 | その他

新年恒例の番組である「欲望の資本主義2025」を見たので感想をまとめます。最終章は「まとめ的」な内容がなく、スパッと終わってしまったので一回視聴しただけでは掴みどころがないように感じたのではないかと思いますが、全体を見直してみると、「量的な成長の持続には多極主義(グローバルサウス)の台頭を認める他はない。先進国が経済成長を続けるには、<量の成長>から<価値の成長>に成長の定義を広げねばならない。」という事です。

出演はフィナンシャルタイムズ記者のロビン・ウイグルワース、ロンドン大学経済学者ハジュン・チャン、ニュースクール大学クララ・マッティ、ケンブリッジ大学アンタラ・ハルダル、MITノーベル賞学者ダロン・アセモグル、サイモン・ジョンソンといった識者が代わる代わる出演していますが、余りにコマ切れなのでまとまった論説として捉えがたいものがありました。今回も以下各章ごとに内容を、感想を含めてまとめます。

 

第一章 全てがディールになるとき

 資本主義の勝者が報酬と権利を独り占めしすぎて民衆に再配分をする段階で不平等感が出てしまった。それは先進国と後進国の間でも起こり不満が強くなった。再配分の不手際が成長を抑圧する元にもなった。

 

第二章 合言葉は世界分散(グローバリズムから多極主義へ)

 先進国のみでなく、新興国の株式を含めたオールカントリー(オルカン)インデックス投資が世界の潮流になりつつある。それは「量の成長」からみると量が成長する余地がある新興国を含むから安全投資に見えるが、量の成長は必ずしも一方通行とは限らない。

 

第三章 成長をめぐる迷宮の中で

 各国や社会の制度によって、技術革新が成長につながる内容が異なってきた。AIの発達によって技能が低い仕事の効率化は図れるが、高度な技能の効率化は行われない。今までは中流層の雇用喪失が消費成長の障害になってきた。AIやITが雇用を奪うか創出するかの境界は、先進国産業の3/4を占めるサービス業の生産性にどのようにITが食い込むかにかかる。サイバー空間の様な「無形資産」の成長は無限大なので成長の余地は十分にある。

 

第四章 グローバル化の果ての光景

 人口ボーナスが後進国に移るにつれて、世界のなかで経済成長が起こる地域が移動してきた。グローバリズムは資本、資源、労働といった国際分業によってより安く、より多くの経済成長をビジネスモデルとしてきた。しかしそれは先進国のエゴを生み、後進国社会の成長を阻んできた。米国自体が欧州に対抗して工業成長する際に国家主体の保護主義をアレキサンダー・ハミルトンが取ってきたはず。「国家資本主義」によるグローバルサウスの成長は受け入れざるを得ないのである。

 

第五章 倫理が企業を救う?

 ボン大学のマルクス・ガブリエルは、企業の倫理を重視して、道徳と経済の融合が必要と説きます。一橋ビジネススクールの名和高司教授は、日本は「巧み」に優れ、海外は「しくみ」に優れて海外の方がスピードとスケールで優位なので、いかに「巧み」を仕組みに付け替えてゆくかが大事だと説きます。他番組でやっていた「餃子の王将」が「調理法を巧みに改善」してそれを「制度として全国のチェーン店に拡散徹底」させてゆくやり方はまさにそれかと思いました。また経営者デビッド・アトキンソン氏は、日本は「巧みを価格」に反映できていない、と価値を価格に反映させることをしない事で「成長を自らあきらめている」と解説します。マルクス・ガブリエル氏も量でなく質を成長とみなす転換が必要と説きます。

 

第六章 本当の価値の作り方

 アメリカ型資本主義(グローバリズム)以外の価値をアジアやイスラムなどの異文化の中で見つけてゆくことで新たな価値が生まれる。ヴェトナムの例は労働供給地から消費地としてヴェトナムを成長の土壌とみなす例が紹介。

 

第七章 成長神話は歴史の勝者が作る?

 これは第一章の後くらいに位置付けた方が分かりやすい内容。第二次大戦の勝者がマーシャルプランで欧州の戦後復興の歴史を作り、ワシントン・コンセンサスで民営化や規制緩和などの既定路線を決めて世界に従わせてきた。これは結局権力を持った者が他者の成長を押さえつける役にたってきた。だからこの規制にこだわることなく、新たな成長の定義を行ってよいだろう。

 

最終章 反転する成長の物語

 中国の経済成長を見ても、量の成長は民主主義や自由主義に必ずしもつながらない。量(数値)の成長のみの資本主義は「正義」や「倫理」を重視しない傾向がある。

 ヒトは他者の欲する物を見てそれを模倣して、自分も欲しいと思う。これはルネ・ジラールが提唱する「欲望の三角形」といい、ソースタイン・ヴェブレンも「ヒトは他者の眼で欲望を形作る」と説いた。量でなく、「価値や倫理を欲する事による成長は無限」であって、ヒトがこれらを欲する事で経済の原動力となる道があるのではないか。量や効率性のみを重視したAIやITのみに拘っていたら成長や雇用に限りが生ずる事は必定だろう。

コメント (4)
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