民主党新政権と同様米国のオバマ政権もマニフェストと言える改革パッケージを示して当選しました。それは1)医療保険改革2)景気刺激策3)金融・産業界の救済と改革4)環境対策の4つです。中でも全人口の16%にあたる4600万人が医療保険がない状態であることを改善しようと日本や欧州では当たり前になっている国民皆保険制度導入が一つの目玉になっていました。
しかしただでさえ高コスト体質の米国医療で国民皆保険になることは実質的な増税になることと同義であり、実際には巨大な政府であるものの「小さな政府」が米国の伝統的考え方であったところから、このような時に限り「米国の社会主義化」とか「医療が配給制になる」などのデマも飛び出し特に増税を否がる中間層を中心に反対が強まり百家争鳴の状態のようです。議会予算局(CBO)は皆保険には10年で1兆ドルの予算が必要との試算を出したこともあり民主党内からも反対意見が続出している由です。
国民皆保険が必定でありながら予算が限られるとすれば答えは医療の高コスト体質を改めるしかありません。米国の医療費は年間130兆円であり、日本の人口の2.5倍としても08年の医療費34兆円x2.5の85兆円よりも45兆円高い状態です。しかも欧米では医療を受ける回数は日本の1/4程度ですから患者一人当たりの医療費は日本が一回7千円程度であるのに米国は6万2千円もかかります(欧州は2-4万円)。
このような状態が何故おこるかというと単に日本の医療者がマルチプレイ(分業化せず)でオーバーワークで医療を支えているからです。例えば病院のベッド100床あたりの医師数/看護師数は日本が12,5/43,5に対して、米国71.6/221、ドイツ37.6/99.8、フランス35.2/69.7という統計が出ています。
日本は癌医療が米国より遅れている(そんな事実はありません)と指摘され、米国に見習って癌治療の専門医によるチーム医療を行いなさいという指導がなされ、日本にも「癌治療専門医」という制度ができました。本来各科の専門医とは別に「癌治療専門医」が存在してチーム医療を行うのがモデルなのですが、日本の場合日常癌治療を行っている我々各科の専門医が「癌治療専門医」の資格を取ることになりました。制度が始まったこの2-3年専門医資格を取るために日本中の各科専門医が続々と試験を受けています。しかし彼らは「資格を取った後も今まで通り自分たちの専門分野の癌患者を今まで通り治療している」に過ぎません。厚労省も我々もそんなことは百も承知、どこかのアメリカかぶれの阿呆が余計なことを言ったから何も変わらないけれど(天下りできる新しい財団法人はできたかな)余計な手間が増えたと思いながら試験を受けているのです。
さてオバマ民主党の医療改革が実行できるかどうかは、そのような訳で米国の医師や看護師達に「日本の医療を見習え」と言えるかどうかにかかっていると思います。私は米国に留学して実際の米国の医師達の働きぶりを見てきてます。勿論彼らは非常によく働きますし、勉強もします。かなり優秀でないと医者になれない。しかし我々日本の医師のように果てしない雑用に追われたり、休日がなかったりすることはありませんし、教授や部長が研修医と同じ仕事をすることもありません。数時間の手術をしても手当てゼロということも考えられません。「救急医療も急性期医療も終末期医療も皆同じ医師がやっている」日本の医療を見習え、と命令できるか(多分誰も言うことを聞かないでしょうが)どうかが米国の医療改革の成否の鍵と言えるでしょう。
まあ日米両方が歩み寄って欧州並になるというのが一番良いのではないか、というのが本日の結論ではあります。
しかしただでさえ高コスト体質の米国医療で国民皆保険になることは実質的な増税になることと同義であり、実際には巨大な政府であるものの「小さな政府」が米国の伝統的考え方であったところから、このような時に限り「米国の社会主義化」とか「医療が配給制になる」などのデマも飛び出し特に増税を否がる中間層を中心に反対が強まり百家争鳴の状態のようです。議会予算局(CBO)は皆保険には10年で1兆ドルの予算が必要との試算を出したこともあり民主党内からも反対意見が続出している由です。
国民皆保険が必定でありながら予算が限られるとすれば答えは医療の高コスト体質を改めるしかありません。米国の医療費は年間130兆円であり、日本の人口の2.5倍としても08年の医療費34兆円x2.5の85兆円よりも45兆円高い状態です。しかも欧米では医療を受ける回数は日本の1/4程度ですから患者一人当たりの医療費は日本が一回7千円程度であるのに米国は6万2千円もかかります(欧州は2-4万円)。
このような状態が何故おこるかというと単に日本の医療者がマルチプレイ(分業化せず)でオーバーワークで医療を支えているからです。例えば病院のベッド100床あたりの医師数/看護師数は日本が12,5/43,5に対して、米国71.6/221、ドイツ37.6/99.8、フランス35.2/69.7という統計が出ています。
日本は癌医療が米国より遅れている(そんな事実はありません)と指摘され、米国に見習って癌治療の専門医によるチーム医療を行いなさいという指導がなされ、日本にも「癌治療専門医」という制度ができました。本来各科の専門医とは別に「癌治療専門医」が存在してチーム医療を行うのがモデルなのですが、日本の場合日常癌治療を行っている我々各科の専門医が「癌治療専門医」の資格を取ることになりました。制度が始まったこの2-3年専門医資格を取るために日本中の各科専門医が続々と試験を受けています。しかし彼らは「資格を取った後も今まで通り自分たちの専門分野の癌患者を今まで通り治療している」に過ぎません。厚労省も我々もそんなことは百も承知、どこかのアメリカかぶれの阿呆が余計なことを言ったから何も変わらないけれど(天下りできる新しい財団法人はできたかな)余計な手間が増えたと思いながら試験を受けているのです。
さてオバマ民主党の医療改革が実行できるかどうかは、そのような訳で米国の医師や看護師達に「日本の医療を見習え」と言えるかどうかにかかっていると思います。私は米国に留学して実際の米国の医師達の働きぶりを見てきてます。勿論彼らは非常によく働きますし、勉強もします。かなり優秀でないと医者になれない。しかし我々日本の医師のように果てしない雑用に追われたり、休日がなかったりすることはありませんし、教授や部長が研修医と同じ仕事をすることもありません。数時間の手術をしても手当てゼロということも考えられません。「救急医療も急性期医療も終末期医療も皆同じ医師がやっている」日本の医療を見習え、と命令できるか(多分誰も言うことを聞かないでしょうが)どうかが米国の医療改革の成否の鍵と言えるでしょう。
まあ日米両方が歩み寄って欧州並になるというのが一番良いのではないか、というのが本日の結論ではあります。