rakitarouのきままな日常

人間様の虐待で小猫の時に隻眼になったrakitarouの名を借りて政治・医療・歴史その他人間界のもやもやを語ります。

その後の日本の超過死亡

2023-06-27 15:01:18 | 医療

2022年は2021年に比べて13万人多く日本人が亡くなり、大きな災害や戦争もないのに一体何があったのかが問題となりました。2023年4月3日におけるコロナ陽性の死亡者数累計(コロナによる死者数ではない)は7万4千人であり、2022年の超過死亡数よりもはるかに少ない数です。5類に移行してからはコロナ陽性の死亡者数の発表もなくなりました。厚労省は6月23日に2022年の人口動態統計のまとめを上梓しました。2022年の総死亡者数は1,568,961名で、2021年の1,439,856名よりも129,105名増加しました。最も死者数が増加したのは75歳以上の高齢者で、1,229,484名が死亡、これは前年の1,108,900名よりも120,584名と大幅な増加でした。

また2023年4月までの人口動態統計速報も明らかにされましたので、2022年の日本人の死亡内容はどうであったのかまとめておこうと思います。死因統計は毎年医師国家試験にも出題されるので、大学教員としての仕事の一つでもあります。転載した図については大きさなどから少し解り辛いかも知れませんが、厚労省のサイトから誰でもダウンロードできますので、興味のある方はそちらで御願いします。

 

I.  全体の概要

 

これはグラフなどを見た私個人の「まとめの評価」です。全体では死亡数が大幅に増加し、死亡増加の兆候は今年の1月まで継続して次第に収まりつつあります(それでも2021年よりも多いが)。死因はがん、老衰、心疾患が増加し、亡くなる年齢は高齢者ほど増加の傾向がありました。若い特定の年齢の人が多くなくなる傾向はないと思います。

 

II.  超過死亡

今年の4月までの死亡者数を追加したグラフを載せます。グラフで明らかな様に、2022年1月7月11-23年1月にかけて顕著な死亡者数の増加があり、自然に起きた変化では100%ない何かが影響したと断言できます。死亡者の増加は幸い今年の4月には落ち着いてきている事が解ります。毎月自分の病院で確認している、心肺停止で搬送される救急患者を含めた死亡者数が1月頃に比べて減少していることも実感としてあります。

昭和22年からの死亡者数統計では、人口千対においてはまだ少ないものの、死亡者数の絶対値においては戦後最大数の死亡者で、前年に対する増加も最大であったことが解ります。幸いなことに15-64歳の生産年齢の死亡者数は伸びておらず、主に75歳以上の高齢者の死亡が増加したことが解ります。

 

III.  死因統計

図を見て明らかな様に、がんによる死亡は増加し続けていますが、2010年頃からの心疾患(ほぼ心不全)と老衰(これも大きくは心不全)の増加が目立ちます。

増加し続けるがんですが、男性は肺、大腸、膵癌が増加、女性は大腸、肺、膵、乳がんが増加しています。罹患率としては、男性については私の専門である前立腺癌が一位ですが、死なない癌なので死因統計の上位には出ません。

 

IV.  年齢別統計

年齢別死亡者を5齢毎にまとめて、2019年から22年までを比較したグラフを載せますが、超過死亡が月によって大きく変わっても、亡くなる人の年齢層は高齢者ほど亡くなると言う傾向自体は変化がない事が解ります。

年齢階級別に見た死因の構成割合を示します。大きくは例年と変わらないものと思います。 若い人の自殺が目立つのは残念ですが、(III)の死因統計と同じ結論と言えます。

 

日本、世界の超過死亡と、新型コロナ感染症、ワクチンとの関係について以前考察しましたが、月によって死亡者数が大きく変動すること、変動とコロナ感染症の流行、ワクチン投与率が関連していそうなことが超過死亡増加解明の手掛かりになると考えます。未だ明確な因果関係は解りませんが、すぐに結果が現れない統計もあり、今後も注視してゆきたいと考えています。

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ワグネル・プリゴジンの攪乱作戦

2023-06-26 16:23:13 | 社会

2023年6月24日にロシア政府に対して反乱を起こした様に見えた傭兵部隊ワグネルの隊長エフゲニー・プリゴジンはベラルーシのルカシェンコ大統領と交渉して1日でモスクワへの行進の停止と占領したロストフ市の明け渡しを公表、ロシア政府もワグネルの幹部への訴追は取り下げるという結末になりました。

 

I.  何が目的だったか

 

この騒動は何を目的にしたものかは、時間が経てば明らかになると思いますが、「兵士脳・娑婆脳」のコメント欄で述べた様に、「西側の諜報を攪乱するのが目的」だろうという推測通りだったと私は思っています。プリゴジン氏は反乱を起こす4日前にプーチン大統領と会っていた、という情報もあり、「会っていたのにプーチンは反乱を見抜けなかった?」よりは「綿密に打ち合わせしていた」が正解だろうと考えます。

反乱軍?のワグネルを歓迎するロストフ市民

元々ワグネル・グループはロシアの情報機関GRUによってロシア政府の予算で設立された民間軍事会社(PMC)であり、2014年のマイダン・クーデター後にロシア軍が表立ってドンバス軍に加われないための支援目的であったと言われます。ロシア軍のアレクセーエフ中将が後ろ盾で、ミハイル・ミジンチェフ上級大将が現副司令官として軍事を担当していたから軍務経験のないプリゴジンがconducting actor(司令官役)として表に出ていたに過ぎません。

6月25日ハリコフ方面から新たな攻撃に入ったとするロシア軍、ウ軍は北方へ移動か

新しい情報では、ロシア軍はハリコフからザポリジアにかけて新たな攻勢に出ているという事であり、プーチン体制の崩壊を期待して油断したウクライナ軍が慌てて対処しているという状況もあるようです。イギリス情報部は、ワグネルがベラルーシに移動したことで、再度キエフが攻略の目標となったと危惧する論説もあり、先週和平調停に従ってキエフから兵を引いたというプーチンの暴露があり、「次は容赦しない」という新たな作戦の一環と見る事も可能です。

ワグネルが再度キエフを攻略しやすいベラルーシに移動したことを危惧するsky newsの記事

西側のメディアは、ウクライナ軍が反転攻勢で優勢であり、プーチン体制はずっと軍事、経済で行き詰まっているという報道をしてきたので、今回のワグネルの反乱を「これでプーチン体制も終わりか?」とはしゃいで報道してしまいました。反乱があっさり終結して次の軍事作戦につながったとなると、派手に報道してしまった手前、どのように帳尻を合わせて次の報道をするかという困難に見舞われるでしょう。情報戦においては、西側メディアが「一方的にロシアを悪役、しかもウクライナ軍有利」「ウクライナ戦争は自由主義と独裁主義の戦い」と決めつけねばならない報道の制約がある分、ロシア諜報部の手のひらで踊らされる図が昨年の開戦時から続いている様に見えました。東西冷戦時には、東側のメディアが「社会主義経済が順調」「西側は庶民が困窮」という報道しかできずに苦労したことの裏返し(意趣返し)の様にも見えます。「自由な報道がなければ、戦争にも勝てない」という事でしょう。

 

II.  やはりザポリジャ原子力発電所の破壊抑止が目的か

 

何故この時期に西側メディアが色めき立つ様な事件を起こしたかについては、参考にしているSimpliciusブログが「ザポリジャ原発の偽旗攻撃の危険性迫る」という記事をあげていて、ダム破壊に続いて原発の破壊によるNATOを巻き込む紛争拡大の目論みが危惧されています。

ロシアが原発を破壊するテロを行うとSNSで予告するゼレンスキー大統領

最近ゼレンスキー大統領は2つのビデオを作成して、ロシアがカホフカダム破壊と同様にZNPプラントでの大規模テロ攻撃を準備していると世界に予告しています。戦争に勝っている側が、後々の処理が困難になるのに、自国が管理しているインフラを破壊することはあり得ないのは中学生でも分かる理屈ですが、どんなデタラメも通ると勘違いしている西側メディアはゼレンスキーの予告通り(原子力プラントが爆破されて核汚染が広がる)になれば、揃ってロシアを批難し、「世界の敵ロシアに対して西側は宣戦布告をせよ」と言い出す準備をしています。現在ZNPプラントは「冷温停止状態」であり、福島やチェルノブイリのような臨界に伴う大惨事はミサイル攻撃でも起きません。勿論プラントが破壊されれば核汚染は起きるので、周辺に長期に渡る核被害が広がる事は避けられません。英国は既に穀倉地帯のウクライナに劣化ウラン弾を供給し、ロシア軍による攻撃で弾薬基地が破壊されたことで基地周辺の放射線量が増加した経緯があり、「英米にとってウクライナが核汚染されても構わない」という認識であることは確認されています。

戦術核の使用に備えてNATOは参戦準備をと宣うグラハム上院議員

ウクライナが原子力プラントを破壊するのを「素早いキエフ占領」によって阻止するか、ハリコフへの攻撃開始で南部に終結しているウクライナ軍を北部に分散させ、ザポリジャからヘルソン、オデーサに至る地域を制圧することで紛争を終結させる事をロシア側は狙っているのかも知れません。

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兵士脳と娑婆脳

2023-06-21 17:58:29 | 社会

自衛官候補生が銃を乱射した事件は日本社会に大きな衝撃を与えましたが、その背景についてメディアでは種々の分析が進められている様です。勿論教育隊の実銃訓練で乱射事件など通常ではおこり得ない事ですが、犯人とされる候補生の心理的背景については、元自衛官としてある程度想像できる様に思うので以下説明します。

 

I  教育隊とは一度娑婆脳を棄てて頭に白いキャンバスを提出する場

 

一般人が自衛隊に応募して試験を受けて採用されると、陸海空に分かれて、まずは3か月程度自衛官としての基本を身に着ける「教育隊」に入ります。この教育隊を卒業するまでは、仮採用であり、給与は出ますが、まだ正式の自衛官(軍人)ではありません。この一番最初の教育期間で最も大事な事は、今までの人生の経験やしがらみを一度全て棄てて、頭の中をカラにして白いキャンバスを提出する事にあります。これが抵抗なくできるかが教育隊をソツなく過ごせるかの分かれ目ですが、戦後、日本社会に軍隊の経験・歴史がなくなってからは実はこれが一番困難な試練なのです。

 

日本の現代社会において、自衛隊に入るからには、それなりの覚悟や思い入れが必要なのは当然ですが、例えばゲームにおける戦場の知識やサバゲ―の知識といった物は「不要」もしくは「むしろない方が良い」になります。そのような知識は教官から徹底的に「否定」されます。むしろ学生時代ヤンチャでチョイ悪だった奴くらいの方が、入隊して真っ白なキャンバスを頭の中に容易に作ることが出来たりします。軍隊においては、教官(上官)の指示と教本に書いてある事が全てであり、「余分な知識を交えず教えられた通りに白いキャンバスに書き込んでゆく事」を要求されます。「それは違う」「この方が良い」は意味がありません。それは娑婆で考えれば良い事になります。兵士は目の前で砲弾がさく裂して前進すれば討ち死にするだけと解っている状態でも命令があれば銃を撃ちながら突撃しなければならない場合があります。そちらに敵を引き付けて背後から撃つ作戦で、最終的にその軍が勝利すれば良いからです。個人の命にとっては非合理的ですが、軍としては正しい作戦であり、兵士脳にはそれに無条件に従う事が要求されます。

 

その点を割り切って考えられないヒトは「教官は頭が悪い」とか「知識のある自分をいじめている」と考えるかも知れません。しかし教育隊の曹(下士官)は部隊の中でも優秀な人材が選ばれます。彼らは知識も経験もあり、部隊からも信頼されているからこそ教育隊勤務を推薦されて来ています。新入隊員が娑婆の知識を全て棄てて白いキャンバスを差し出す事が容易でないことは百も承知しているからこそ、その様な接し方をします。3か月の初期教育で娑婆脳を一度棄てる事ができなかった候補生は、任官できない=不採用になります。

 

これは日本に限らず、世界で共通した認識です。徴兵制のある国はどう対応するか分かりませんが、軍人が制服を着用している間は「兵士脳」でいる事を表します。日本では認識がありませんが、外国では制服を着た兵士はそれだけで尊敬の対象になります。それは利己的な煩悩に支配された娑婆脳を一度超越した兵士脳(国家社会の任務に忠実)に従って行動している事が前提になるからです。

 

II  兵士と士官の違い

 

伍長(自衛隊では三曹)以上曹長以下を下士官、准尉以上を士官と言い、兵士とは区別しますが、下士官が戦略を決めることはないので、基本的に言われた事をそのまま行うのは下士官まで同じです。但し実戦(演習も)で大いに役立つのはベテランの下士官であることは平時における自衛隊でも同じです。

 

兵士脳で士官と曹士に違いがあるか、と言われると基本的には娑婆脳は捨てている点で同じですが、情報や戦略に疑問や改善点がある時には「軍の勝利に結びつく事であれば上官に意見具申をして良い」という点が違います。全ての軍人が「ただのイエスマン」である軍隊は弱いです。上官が誤れば全滅するからです。しかし一度決定が下されれば異論があっても従うのが軍隊であり、映画「遠すぎた橋」では偵察写真でドイツ軍の機甲部隊が隠されている可能性を正しく指摘した英軍情報将校が干されて部隊が大惨事に陥った様が描かれます。

 

司令官(海では艦長)の決定は絶対ですが、例えば核戦争を始めてしまう明らかにおかしい命令を司令官が命じた場合、それを止める事ができる唯一の存在は副官(number 1と呼ばれる)だけです。勿論number 2以下の部下が納得しなければ司令官の命令を覆すことはできませんが、副官は場合によって「抗命」の汚名を着る覚悟が必要な重要な存在と言えます。

 

III  ウクライナ軍のデタラメ

 

士官と言えども、上記の様に娑婆脳を棄てる試練を理解し、実践しているのですから、兵士達の気持ちは理解しています。実戦においては、戦略上敢えて死地に部下を追いやる決定を下す必要に迫られます。全ての兵士一人ひとりには、それぞれに親も子も恋人もいる人生があり、生き延びれば社会を代表するような会社のオーナーになったり、子孫が大発明をして人類に貢献する可能性だってあります。戦争は外交の一形態であり、どうしても避けられない時に最小の犠牲で最大の利益が得られる様に外交官(政治家)が努力をした上で仕方なく行うのが戦争であると軍人は考えます。自分たちの身を棄てた貢献が国家社会の利益になるという前提があって初めて軍人は全力で敵と戦うことができます。

ウクライナ戦争におけるウクライナ軍の使い方を米軍の退役士官たち(ダグラス・マクレガー氏やトニーシェイファー氏ら)が「犯罪的」と激怒している理由はここにあります。

ウクライナと仮調印した機密文書をアフリカ代表達に敢えて暴露したプーチン大統領

プーチン大統領は6月17日ウクライナ情勢の和平仲介に向けてゼレンスキー大統領との会談後に訪ロし、10項目のロードマップを示したアフリカ7か国代表団と会談しましたが、その際、昨年3月にウクライナとイスタンブールで和平交渉を行って仮調印まで達した合意内容について暴露しました。その文書では、ウクライナの非軍事化について、ウクライナ側が希望する1/3程度の武力は認める内容になっていたようです。この段階ではロシア、ウクライナ双方に相当の損害が生じていたものの、現在に至るほどの取り返しのつかない損害は出ていなかった。2国間の顔を立てた状態での休戦が可能であったと言えるでしょう。どちらの軍人たちにとってもここで休戦協定を結ぶ事は納得がゆく結果であったと思われます。しかし地球の裏側から、グローバリストの要求に従わないロシアプーチン政権を破壊したい米英勢力が「金と武器を送り続けるから勝手に和平を結ぶな」と命令し、ゼレンスキー政権の交渉チームに加わっていたデニス・キリエフ氏を射殺(3月5日)して、その後既に署名もされていた「ウクライナの永世中立性と安全保障に関する条約」を反故にしました。停戦交渉の進展でロシア軍はウクライナ政府との約束通りにキエフ周辺から撤退を開始、3月末には撤退終了していたのですが、4月2日にウクライナのネオナチがブチャに入って親ロ派とみられる住民を虐殺して、ロシアがやったと宣伝、それらも含めて一度署名した条約を反故にするウクライナと交渉するつもりはない、と機密文書を敢えて暴露したのが今回のいきさつでした。

反攻が行われた地域と数千名の犠牲の後、実質ウクライナ側が得たとされる地域(右上の薄い黄色) 地雷原で団子になって破壊されたNATO供与のウ軍戦車

戦争という将来ある健康な若者の犠牲が不可避である場合、最小限の犠牲で最大の国家利益につながる様、命がけで交渉するのが政治家の役割であり、軍上層部は兵士の犠牲が最小限になるよう、可能な限り万全の戦略・戦術を立て、作戦開始を命じなければなりません。欧米NATO諸国はウクライナの若者を数万人集めて、使い古しの戦車装甲車を与え、各国バラバラに訓練して今回の春季攻勢と呼ばれる戦場に送り出しました。一応作戦らしきものはありますが、情勢判断から勝てる見込みはなく、訓練も形のみで未完成のままでした。後方からの航空支援や火砲の援護もなく、ただ万歳突撃を繰り返す命令を送るのみであり、当然のごとく数日で数千名の兵が死傷しました。無駄死にするためだけに戦場にゆくウクライナ兵たちは自軍の戦車を破壊する者まで出始めています。グローバリスト、ネオコンがプーチンロシア体制を自分たちの利益を獲得するという煩悩を満足させるために、自分たちには痛くもかゆくもないウクライナの若者を西側諸国の市民が払った税金で得た武器を与えて死地に送るだけのウクライナ戦争の欺瞞は、誰でも気が付く物でしょう。兵士脳の覚悟を知る米国の良識ある退役軍人たちが「これは犯罪である」と怒りを露わにするのは当然です。

前線における兵士の大きな損失を伝えるワシントンポストの記事(2023.06.13)

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ウクライナの万歳突撃称賛は犯罪

2023-06-10 11:22:09 | 政治

広島G7で停戦宣言をしなかったウクライナはいよいよ破滅に向かって「捨てばち」(desperateと欧米評論家は形容している)と言える攻撃を開始しています。西側メディアが「春季反転攻勢」などという戦略的にもっともらしい名前を付けてウクライナに実行を迫っていますが、「停戦を促さず攻撃を称賛する事」は、ウクライナの未来ある若者を無駄死にさせ、戦略も勝算もないまま万歳突撃を強制する「犯罪」に加担していると断言できます。日本の堕落メディアを見ていても一向に真実が見えないので、海外の客観的軍事解説から、この一週間の悲惨なウクライナ軍の現状をまとめておきます。

 

I.  数日間の春季攻勢開始で3700人の犠牲

ウクライナの兵力展開図 東部には多くの部隊がいるが、消耗激しく実効戦力に乏しい

2023年6月4日から6日にかけて、ウクライナ軍は6日に破壊されたノヴァ・カホフカダムの場所より東側のザポリジャ方面を中心に、数か所の本格的攻撃を仕掛けました。それは、4月に機密暴露された「西側各国で整備訓練された10個旅団」を用いた所謂「春季反転攻勢」に相当する内容で、ゼレンスキー大統領も攻勢開始であると認めていました。

春期攻勢の図  虎の子の10個旅団を用いた無謀な攻撃でわずか3日間で多くの死傷者を出した

ウクライナ軍はオレホフスキー線からメリトポリへの突破口を作るために、10個旅団のうち3個旅団を用いて複数個所から攻撃を仕掛けました。その大きな戦略自体は、将来的にクリミアへの補給路を断ち、ロシア軍を分断孤立させる狙いであるので正しいものではありますが、昨年夏ヘルソンからロシア軍が退却して以来、この戦線は動いておらず、半年以上かけてロシア軍はこの地域に誰にも邪魔されずに2重3重に防御陣地を構築してきました。一方ウクライナ軍は3ヶ月足らずの訓練を素人同然の若者に欧米各国バラバラに施して、合同演習もせずにいきなり実戦に投入しているのであり、通常第一線攻撃部隊の裏にはそれを支える後方部隊(logistics)が前線の3倍は必要であるのに、それらの準備もなく(初めの図参照)前線にただ投入されています。これを自殺同然の万歳突撃と言わず何と表現できるでしょう。米国の軍経験者で自由に物が言える人達は異口同音にウクライナ軍の無謀を「兵士達の人命軽視」と批難していますが、表のメディアや日本でも表面的に人権を口にする連中が一切口を閉じている欺瞞は永久に記録に残さねばなりません。

ウクライナ軍はまずはいくつかの攻撃地点に3万人を投入してロシア軍の弱そうな陣地を見極め、突破できそうな重点に後方で待機する残り7個旅団を集中して投入し、メリトポリへの進入路を確保するという作戦です。

6月4日から6日にかけて、この3個旅団が攻撃を開始したのですが、全ての戦線で完全にロシア軍に撃退され、多大な損害を出した。というのが結果でした。ロシア国防大臣のショイグ氏は、この3日で71名のロシア軍死亡、210名が負傷という数字を公表しましたが、ウクライナ側の損失は、3,715人の兵士、52台の戦車、207台の装甲車両、134台の車両、5機の航空機、2機のヘリコプター、48台の砲兵システム、53機のドローンであると発表しました。敵方の損失を多めに見積もる事はあり得るのですが、攻撃失敗であれば人員の10%程度の損失は妥当な所であり、バクムートで一日200-500名のウクライナ兵が損傷(戦死または負傷)していた事実、各所に上がって検証されているビデオ映像などからも真実の様です。つまりウクライナ軍は多大な損害を出しただけでメリトポリへの突破口は開けなかった(数百人が無駄死して、数百メートル前進した後、完全に押し戻された)のが結論です。ドイツ製のレオパルド戦車は確認できませんでしたが、暴露された機密書類に記載されていたフランス製の旧式AMX10等の戦闘車両は多数破壊された事が明らかになっています。

多くの犠牲が出た事を報ずる6月8日のCNN記事

 

II.  ダムを決壊させたのもウクライナ軍の攻撃

 

ドニエプル河のカホフカダムが破壊されて、下流の広い地域が水害にあっており、日本も500億円分の救援物資を緊急で送ると報道されました。ウクライナはあくまでロシア軍がダムを破壊したと主張していますが、客観情勢から判断する人達は結果的にウクライナ軍(ウクライナ国民には不利益だが、基本的にロシア語圏のウクライナ国民は犠牲にするのがキエフ政権の基本姿勢)に利益がある事から、決壊させたのはウクライナ側であると判断しています。

昨年夏の段階でウクライナ軍はダムの破壊を計画していました。また今回も破壊前から、上流のウクライナ側が管理するダムの水を放出させ、カホフカダムの水位を記録的に上昇させていました。ダムが決壊した後も下流の村落が水没する中、ウクライナは上流のダムの水門を閉じていません(つまり水害が大きくなる作為がある)。カホフカダムを管理しているのはロシア軍であり、水害を起こしたければ破壊せずに水門を開ければ良い。しかもダムからはロシアが管理するクリミア半島への水の供給が行われており、それを犠牲にする必然性がロシアにはありません。破壊したのはウクライナ側以外ないのです。

ウクライナ側がダムを破壊する準備があると報ずる昨年8月のワシントンポスト記事と実際に砲撃があったとする昨年8月BBCの記事

 

米軍が破壊したノルドストリームパイプラインも、当初ロシアが破壊したというヨタを平気で西側は報道していましたが、シーモア・ハーシュ氏に米軍が破壊したと暴露され、ウクライナ側がヨットで破壊したという無理筋な作り話を後付けで出しました。

 

III.  NATO加盟国の一首脳であるヴィクトル・オルバンの言葉

 

G7の項でも述べた様に、戦争開始以降ウクライナに勝算がなく、無辜の若者達が無駄死するばかりである現状から、責任ある政治家が取るべき行動は「停戦」と「平和交渉」以外ありません。しかし哀れな事にこの小学生でも解る「当たり前の事を堂々と主張する政治家」が数えるほどしかいません。NATO加盟国ハンガリーの首相であるヴィクトル・オルバン氏はその一人で、BBCの番組でロシア寄りの発言を引き出して批判しようとするインタビュアーに対して、堂々と「事実に基づいて判断すれば、ウクライナに勝ち目は一切なく、NATOは参戦もしない。国際政治が行うべき事は命を救う事だ。まず停戦して平和交渉をすることだ。」と明言しました。CNNの番組に出演したトランプ元大統領も、「殺し合いは直ちに止めるべきだ。私が大統領なら24時間以内に停戦させる。」と発言して聴衆から大喝采を浴びています。日本でも鳩山元総理や鈴木宗男氏が停戦を公の場で明言していますが、彼らを「ロシア寄りの怪しからん政治家」と印象づけようとするインタビュアーらの知性の軽薄さと品性の薄汚さが目立ち、私はこれらの犯罪者達に嫌悪感以外感じません。

政治家のやるべき事は戦争で失われる命を救う事だ      唯一の解決策は「停戦」であるとインタビュアーの誘導尋問に乗らずに堂々と答えるオルバン氏

 

全てのヒトに「戦争で死んで行く事」は止めねばならない。 私が大統領なら24時間以内に停戦させる、と明言するトランプ氏

 

グローバリストに嫌われて、表舞台から降ろされる結果になっても、堂々と当たり前の自説を述べる政治家やジャーナリストが増えれば、社会は変わる(実際西側社会以外の世界は既に変わって来ている)と期待するのは私だけでしょうか。

まず戦争を止めさせよ、と説く鈴木宗男氏 全ての政治家は見習うべきだ。

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