2022年11月の米国中間選挙は下院が共和党過半数越え、上院は半々の現状維持が11日の時点では見込まれています。選挙結果によっては、無尽蔵にウクライナに兵器とカネを支援する(バイデン政権は600億ドル8兆円?)と明言していたのですが、選挙結果によっては変わる可能性があり、結果が出る前に送ってしまおうと焦っています。また10月末にはルーマニアのウクライナ国境近くに米軍の101空挺部隊が展開して臨戦態勢に入ったと言いう報道もありました。
日本のメディアや専門家と称する人達は、ウクライナ軍がロシア軍が一度占領した地域を一部奪還した事で「西側・ウクライナ軍の反転攻勢でロシアが敗北しつつある」と決めつけた解説を繰り返していますが、諸外国でも冷静に戦略分析をしている人達のサイトを見ると「ウ軍優勢」という分析は浅いと感じます。今回はある程度明確な事実と噂を踏まえて、ウクライナ戦争の現状と将来予想をまとめてみます。
ウクライナ国境近くのルーマニアに展開する米101空挺部隊
I. 明確な戦略を誰一人語らない西側とウクライナ
戦争は外交の一部である以上、戦闘を行う上での明確な目標、目標を達成する戦略が語られなければなりません。今まで当事者であるゼレンスキー大統領は「侵略したロシア軍を領土から追い出す」「クリミアからも追い出す」という目標を述べて、その戦略として「西側は無尽蔵に兵器とカネをよこせ」「NATOは実戦に参加しろ」と言っています。バイデン大統領は「ロシア政権の崩壊」を目標として戦略として「NATO諸国の無尽蔵の兵器・カネ支援」は明言していますが、「実戦参加」は述べていません。
この様な小学生レベルの目標と漠然とした戦略で戦争に勝てるほど戦争は甘くはない、と軍略について少しでも理解のある人は悟るはずです。デタラメもいい所です。グローバリズム側の利点は「金が潤沢」という事ですが、所詮「金銭欲につながる煩悩」が唯一の動機であるのが最大の弱点であり、「儲からない」と結論されると「手じまいも早い」「平気で敵に寝返る」という特徴があります。「生き馬の目を抜く即断即決」が信条であり、臥薪嘗胆はしません。戦略家のキッシンジャー氏が「今の西側には戦略がない」と苦言を呈していましたが、刹那のみで出口を踏まえた段階的戦略がないのが、ウクライナ戦争における西側ウクライナ軍の戦い方であると思います。
NATOに展開する小型核のある米軍基地 戦闘機に搭載可能なB61-12(オレンジの弾頭)小型核爆弾
ロシアが戦術核を使った(或いは劣化ウラン弾のようなdirty bomb)と見せかけて、西側も戦術核を使う可能性もあります。既にドイツ、イタリア、ベルギー、トルコなどの米軍基地にはF15戦闘機に搭載可能なB61-12(mini-nuke50キロトン以下の戦術核/広島は15キロトン、長崎は20キロトン)を既に配備されていますが、必要になれば1時間で欧州のどこにでも戦術核を投下する事は可能です。しかしこの後どうするかは考えてない様です。
II. ロシアの今後の戦略
ロシアの今回の特殊軍事作戦の目標は、ウクライナの中立化、脱ナチ化、ドンバスの独立支持の3点でしたが、ゼレンスキーがクリミア奪還を目標にしたので、現在はオデッサ攻略と沿ドニエストルとの連結まで考えている可能性はあります。戦略として土地が凍結して機甲部隊の移動が可能となる冬までに招集した予備役30万人の再訓練を終えて戦力化する(既に即戦力となる87,000名は前線に出ている)。ウクライナの電力インフラを停止させて兵站のロジを断つ(これは既に施行済み)。平地でHIMARSや榴弾の目標になりそうな部隊は住民ともども一度退却させて、冬の反転攻勢の際、徹底した無差別攻撃を可能にする(現在ヘルソン地区で施行中)。
この撤退した地域に勝利を報道したいゼレンスキー側はウ軍を進駐させて「大勝利」と宣伝しています。しかし反転攻勢ではいままでと異なり住民を楯に使えないからロシア軍の精密砲火に集中的にやられることが見えているだけにウ軍としてはいつでも撤退できる状況にしておきたいでしょう。前線のウ軍の視線から報道しない状況を見ていると、「本気でウクライナを勝たせる気はない」「所詮ウクライナ人は鉄砲玉」としか考えていない西側の報道姿勢が良く見えます。私にはウ側の前線の兵士達が本当に気の毒に思います。
III. 展開のゆくえ
Judging freedomなどの分析によると、NATO各国で訓練を受けたウクライナ軍も犠牲が多く、実質的な指揮はNATOの指揮官が執っている部隊が多い。その部隊も現在兵站が滞っているため、前線を退きつつある。ポーランド正規軍1万人がウクライナ外国人部隊として既に前線に入っている。101空挺部隊4,700名はルーマニア軍と共同で港湾都市オデッサに展開する計画がある。来るべきオデッサの攻防がウクライナ戦争の雌雄を決する戦いになる。
NATOが正規軍としてロシア軍と戦闘する事になるかについては、グローバリスト以外米軍、ドイツ、ロシアも望んでいない。シリアでは政府軍を支援するロシア軍と反政府軍を支援する米軍が戦闘に入りそうな場合は、双方がhot lineを持っていて電話で実戦になる事を防いでいた(スコット・リッター氏)から、ウクライナでも本音では同様の対応を取りたいだろうがどうなるかは不明である。
NATO連合軍は実戦を経験したことがない。第二次大戦でもルーマニアやスロバキア、ハンガリーなどの枢軸国連合軍は弱く、やる気もなくほぼ役立たずであった。現在もロシアと本気で戦争をしたい国などないのは同じ。ウクライナに出張ってロシア軍と戦闘すればまず負けるだろう。
IV. 何とかNATO参戦を!
2022年11月15日 ウクライナ全域にロシア軍がミサイル攻撃をしかけているが、そのうち2発がポーランド領に落下して民間人2名が死亡(上図一番左)と騒然としています。
ロシア軍はポーランドを攻撃していないと声明を出していますが、NATO加盟国であるポーランドが攻撃された事を理由に「さあ戦争だ!」と喜ぶ人達が続出しています。バイデン政権側が参戦を急ぐ理由がいくつか挙げられています。
1)仮想通貨取引会社のFTX破綻でウクライナ支援金が民主党の選挙資金に使われた疑惑が出た。
2022年3月にウクライナ国立銀行はFTXに口座を開いて関連付けを行ったとされ、FTXからウクライナに6000万ドルが寄付された。一方FTXは今回の選挙で民主党に3800万ドル寄付している。FTXは100億ドル(1兆5千億円)をヘッジファンドのアラメダリサーチにつぎ込んで運用したが、それを嫌った使用者が60億ドルを現金化しようとして、資金が枯渇、FTXは破産宣告がされました。
2)米国経済の落ち込み懸念で、War economyが期待されている。
上図は第二次大戦以来、戦争によって米国人が亡くなる率が年々減少しており、戦争は米国にとって安全で割に会う経済政策である。という説明に使われる図です。
カネが全ての米国資本主義、特に米一強となって「テロとの戦争」を無理やり作り出した21世紀以降は上記の理屈がまかり通っているのが常識です。(日本では報道されませんが)だから何としても戦争を起こして儲かりたい、が超資産家集団(ディープステート)の本音なのです。
結論:しかし核戦争にならない限り、ロシア軍の勝利でウクライナ戦争は終結する。(は変わらない)
V. 同床異夢の休戦協定模索 2022年11月19日追記
1)ポーランドに着弾したミサイルは当初ロシアが撃ったと喧伝されましたが、射程75kmのS-300防空システム用であり、現在のロシア占領地からは射程距離外なので流石に「ロシアが撃った」は否定されました。今はウクライナ軍の誤射による事故か、NATOを戦争に巻き込むための偽旗による意図的なものかが問題となっていて、東から来るミサイルを打ち落とすには、東に向かって撃つ以外ないのに西側のポーランドに落ちることは事故でもありえないという意見が強いです。
NATOが参戦しても勝てないし、「関わりたくないもん!」が本音の欧州
2)米国統合参謀本部議長のマーク・ミリー氏は「ウクライナは(ロ軍が撤退したヘルソンにも進駐して)やることはやった」「休戦協定を結ぶなら今である」と国務省側の政府(DS支配)に先んじて見解を表明しています。米軍主流の情勢分析では、HIMARSなど高精度武器も枯渇し始め、一般の弾薬も韓国から緊急調達が必要(榴弾10万発はロシア軍が使用する数日分に過ぎませんが)とされるも断られる状況から、物的軍事支援(ウクライナへの武器支援の80%が米国)が限界であるのが現実です。
国務省側と外交交渉を勧める国防省側で意見が分かれると報道するCNNの記事(2022年11月11日)
ペンタゴンが韓国に弾薬送れと要求したというCNNの記事(2022年11月11日)
3)ヘルソンからロシア軍が一時撤退したのは、ロシア守備隊3000名に対してウクライナ軍1.2万人(3個大隊対10個大隊)が攻撃を始めたからで、まず10万人以上の市民をドニエプル川対岸に避難させてから守備隊が撤退し、橋梁を破壊した所にウクライナ軍とウクライナ側に避難していた住民が帰ったというだけの事です。冬にロシア軍の予備役20万人が訓練が終了して地面の凍結と共にヘルソンに投入されると、20万対1.2万ではウクライナ軍が蹴散らされて終わることは目に見えています。だから少しでも占領地が多い今がチャンスと西側全てが理解しているのです。
4)ポーランドから正規軍1万人、ルーマニアからも数千人が既にウクライナ軍の制服を着て外人部隊として戦争に参加しているようです。ウクライナ軍である以上、アゾフに属する上官の突撃命令に従う必要に迫られるのですが、勇ましいだけで指揮官として役に立たないアゾフの指揮に従うのをまっとうなポーランド軍は拒否、ウクライナ軍内で軋轢が強まっているという情報もあります。今回のミサイル攻撃、春のブチャの虐殺、住民への虐待、全てウクライナ政府主導の計画的行動というよりも「ネオナチアゾフの跳ね返りが勝手にやった行動」を政府が尻ぬぐいさせられているのが実態の様に思います。米CIAがバックについていたから大きな顔で好き放題していたアゾフですが、そろそろ梯子を外されて「鉄砲玉」としての存在を消される時期に来ていると思われます。
5)2022年7月にアルメニアで米ロが秘密交渉をした際に、「今回の紛争で核は使わないと決めた」という情報があります。核使用も辞さないとした英国リズ・トラスは首相の座を追われ、強硬派のEU委員長フォン・デア・ライエンは汚職疑惑を取りざたされて最近表に出なくなりました。今回の休戦調停には4月に調停を反故にされたトルコのエルドアン大統領が再びやる気になっているようです。プーチンはウクライナの中立化、非ナチ化、ドンバスの独立と現在の占領地のロシア割譲で手を打つでしょう。ポーランド、ルーマニアはヒトを出したからにはそれなりの分け前(領土)を要求し、大金をつぎ込んだ米国は実質残りのウクライナをほぼ永久的に金を搾り取れる仕組みを作って調停に合意し、トルコも欧州でのそれなりの地位を確立することになります。血を流したウクライナの市民が一番悲惨な目に遭う事はいつの世も変わりません。無責任にウクライナ軍を応援した日本人に猛省を促します。戦争はいつも市民が犠牲になる事をいい加減理解するべきです。