(http://www.ustr.gov/assets/World_Regions/North_Asia/Japan/Regulatory_Reform_Initiative/asset_upload_file931_15171.pdf)に10月15日付けでアメリカ政府の日本に対する年次改革要望書2008年度版が出ています。私は医師ですから気になる医療の所について主にレポートしたいと思います。
まず医療についての全体の印象は特に目新しい部分はないのですが、随分と具体的な指示を出すのだなあと感心する部分もありました。以下紹介します。
まず医療の前にあるIT関連の部分ですが、「電子カルテを導入してWHOなどの定める標準的記載と合わせるようにしなさい。」と言う部分があります。医療制度の遅れたアメリカに言われる筋合いはない、余計な御世話だという感想ですが、厚労省の電子カルテ推進委員会の報告(http://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/05/s0517-4.html)にあるように「医療分野の情報化の機運の高まり(=対日要望書でしつこく要望されるから)」もあってどこの病院も電子カルテを無理やり導入させられる運命にあります。何故アメリカがしつこく要求するかというとWHOなどが定める標準的記載(ICDなど記号で医療情報をまとめられる)という部分が重要な訳です。これは後の医療分野の要求の本文である「薬や器械を沢山買ってね」という部分に生きてくるからと思われます。(政府に来年3月までに電子調達システムを作れみたいなことを言ってる部分もあつかましいと思いましたが)
電子カルテの功罪についてはアメリカの学会誌などでも議論がなされていて良い面、悪い面があると指摘されています。情報の共有という点では良い事は間違いないのですが、人間の繊細な病状をフリーハンドで記載できないこと、また決まり切ったことを記号化や番号化するのは良しとして分類しがたいものを無理に分類することで真実から離れてしまう危険性が省みられていない事なども危惧されています。日本ではご主人様の命令があるので「始めに導入ありき」で議論が進められます。
医療と薬品分野での要望は前に紹介したような医療行為そのものの市場開放は命じられていませんが、アメリカで開発された薬品、医療機器などをより早く、より高く買いなさい、と指示されています。
具体的事項として、診療報酬改定の「前」にアメリカの医療産業の意向を聞きなさい。中医協はアメリカの薬品会社の意向を聞いて薬価を決めなさい。開発に費用がかかったものはその旨薬価に含めなさい。新薬の処方制限を30日にのばし(現在は14日)、その制限期間は半年にしなさい(現在は1年)。予防医学的薬やワクチンの使用範囲を広げなさい。診断用キットなどをもっと導入しなさい。血液製剤は金がかかるので薬価を高く設定しなさい。
新薬導入までの期間を短縮しなさい。そのためにはアメリカの臨床評価をそのまま受け入れる体制を作り、医療機器については導入審査をする人員を増やし、年2回はその経過と成果を公表すること。バイオマテリアルの素材基準はISO10993(要はアメリカ採用の基準)に合わせること。
血液製剤で買血か献血かという表示はしなくて良いようにすること(アメリカは買血が多い)。
健康食品やサプリメントはもっと輸入を簡潔にし、医薬品としての制限を少なくし、しかもその効果などについてはアメリカで表示して良いと認めたものは四の五の言わずに表示を認める事。
などが記載されています。来年の4月から新薬でも30日処方が可能になったら早速命令が実行されたと考えるべきでしょう。
医療以外の部分は少ししかまだ読んでませんが、例えば法律関係では外国人弁護士(gaibenと記されています)がもっと活動できるようにしろとかいろいろ厚かましく具体的に記載されています。
脳出血を伴った妊婦が急患として受け入れが遅れた問題では日本の産科救急の体制が問題になり、医師不足が原因であるとして舛添大臣が都立墨東病院に事情聴取に出向くなどパフォーマンスが繰り広げられました。日本の妊産婦死亡率は世界一低く、明治の頃までは妊婦の10人に一人は亡くなっていたこと(今でもサハラ以南のアフリカ最貧国の妊婦死亡率は7-10人に一人です)を考えると夢のような状態と言えます。それでも「現在の救急体制はけしからん、一体何をやっているのだ」と「本気」で怒っているのならば今朝の報道2001で厚労省副大臣が結論的に述べていたように「医療費の財源をより安定的に確保する」以外に道はないでしょう。但し確保した財源が真に日本の国民のために使われるのならば良いのですが、ご主人様の命令通りに「かの国」に吸い上げられてしまうのであれば、これらの事例を大げさに報道するマスコミを使った「医療費を上げようキャンペーン」も本当の意味で国民のためにならないことになります。我々は十分に医療費や診療報酬の動きについて注目してゆかねばなりません。
まず医療についての全体の印象は特に目新しい部分はないのですが、随分と具体的な指示を出すのだなあと感心する部分もありました。以下紹介します。
まず医療の前にあるIT関連の部分ですが、「電子カルテを導入してWHOなどの定める標準的記載と合わせるようにしなさい。」と言う部分があります。医療制度の遅れたアメリカに言われる筋合いはない、余計な御世話だという感想ですが、厚労省の電子カルテ推進委員会の報告(http://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/05/s0517-4.html)にあるように「医療分野の情報化の機運の高まり(=対日要望書でしつこく要望されるから)」もあってどこの病院も電子カルテを無理やり導入させられる運命にあります。何故アメリカがしつこく要求するかというとWHOなどが定める標準的記載(ICDなど記号で医療情報をまとめられる)という部分が重要な訳です。これは後の医療分野の要求の本文である「薬や器械を沢山買ってね」という部分に生きてくるからと思われます。(政府に来年3月までに電子調達システムを作れみたいなことを言ってる部分もあつかましいと思いましたが)
電子カルテの功罪についてはアメリカの学会誌などでも議論がなされていて良い面、悪い面があると指摘されています。情報の共有という点では良い事は間違いないのですが、人間の繊細な病状をフリーハンドで記載できないこと、また決まり切ったことを記号化や番号化するのは良しとして分類しがたいものを無理に分類することで真実から離れてしまう危険性が省みられていない事なども危惧されています。日本ではご主人様の命令があるので「始めに導入ありき」で議論が進められます。
医療と薬品分野での要望は前に紹介したような医療行為そのものの市場開放は命じられていませんが、アメリカで開発された薬品、医療機器などをより早く、より高く買いなさい、と指示されています。
具体的事項として、診療報酬改定の「前」にアメリカの医療産業の意向を聞きなさい。中医協はアメリカの薬品会社の意向を聞いて薬価を決めなさい。開発に費用がかかったものはその旨薬価に含めなさい。新薬の処方制限を30日にのばし(現在は14日)、その制限期間は半年にしなさい(現在は1年)。予防医学的薬やワクチンの使用範囲を広げなさい。診断用キットなどをもっと導入しなさい。血液製剤は金がかかるので薬価を高く設定しなさい。
新薬導入までの期間を短縮しなさい。そのためにはアメリカの臨床評価をそのまま受け入れる体制を作り、医療機器については導入審査をする人員を増やし、年2回はその経過と成果を公表すること。バイオマテリアルの素材基準はISO10993(要はアメリカ採用の基準)に合わせること。
血液製剤で買血か献血かという表示はしなくて良いようにすること(アメリカは買血が多い)。
健康食品やサプリメントはもっと輸入を簡潔にし、医薬品としての制限を少なくし、しかもその効果などについてはアメリカで表示して良いと認めたものは四の五の言わずに表示を認める事。
などが記載されています。来年の4月から新薬でも30日処方が可能になったら早速命令が実行されたと考えるべきでしょう。
医療以外の部分は少ししかまだ読んでませんが、例えば法律関係では外国人弁護士(gaibenと記されています)がもっと活動できるようにしろとかいろいろ厚かましく具体的に記載されています。
脳出血を伴った妊婦が急患として受け入れが遅れた問題では日本の産科救急の体制が問題になり、医師不足が原因であるとして舛添大臣が都立墨東病院に事情聴取に出向くなどパフォーマンスが繰り広げられました。日本の妊産婦死亡率は世界一低く、明治の頃までは妊婦の10人に一人は亡くなっていたこと(今でもサハラ以南のアフリカ最貧国の妊婦死亡率は7-10人に一人です)を考えると夢のような状態と言えます。それでも「現在の救急体制はけしからん、一体何をやっているのだ」と「本気」で怒っているのならば今朝の報道2001で厚労省副大臣が結論的に述べていたように「医療費の財源をより安定的に確保する」以外に道はないでしょう。但し確保した財源が真に日本の国民のために使われるのならば良いのですが、ご主人様の命令通りに「かの国」に吸い上げられてしまうのであれば、これらの事例を大げさに報道するマスコミを使った「医療費を上げようキャンペーン」も本当の意味で国民のためにならないことになります。我々は十分に医療費や診療報酬の動きについて注目してゆかねばなりません。