NHKを始めとする日本の主要なメディアは、トランプ氏が大統領に選出され、大統領に就任してからも激しいトランプ批判の報道を繰り広げています。彼らは気付いていないかも知れませんが、トランプ体制というのはもう「米国体制の主流」になっており、現在の日本のメディアの姿勢は「激しい反米・反体制報道」という1970年頃のベトナム戦争以来見た事が無かったような状態になっているのです。
トランプが政権を取るまでは、グローバリズムを主体としたネオコンが主導する民主党オバマ・クリントン体制というのが米国、日本を含む世界の趨勢であって、メディアとしてはこれをヨイショしてトランプやプーチンを批判していれば「親米・親体制側報道」として我が身を案ずる事無く権勢を誇って大きな顔をしていることができました。しかし今や体制はトランプ側に移行したのです。そしてトランプ暗殺や大統領就任までに事態をひっくり返そうとするあらゆる試みが失敗に終わっているのです。日本・米国を含む主要メディアは一体いつまで勘違いな反体制報道を続けるのでしょうか。
私はNHKのニュースウオッチ9を夕食の時に仕方なく見る事が多いのですが、先日違法移民を閉め出す方針を明らかにしているトランプ政権に対して、テキサス州で違法移民を住宅建設に使役している業者を取材して、「安く住宅を供給し、米国の経済を成り立たせるには違法移民もなくてはならない存在」などという報道をしているのを見て「唖然」としてしまいました。天下のNHKが違法移民を肯定するニュースを堂々と流しているのです。NHKには違法移民達が正規の労働者よりも補償もなく安い給料で劣悪な労働環境で働かされているという視点は全くないのです。あるのは「労働者を安く使役してたっぷり儲けるのが良い」という「グローバル強欲資本主義の視点」のみです。「反トランプ」を訴えられるならば「違法も有益」と言ってのける倫理観の劣化には吐き気を催すほどでした。それでいてトランプがいつ発言したか定かでないような差別発言には厳しく噛み付いてみせて自分達が倫理的に上位にあるように見せるのですから呆れたものです。
日本は違法移民に対しては厳しく対処し、見つけたら入国管理局の施設に収監して母国に強制退去させています。私の病院にもそういった人達が管理局員に手錠を把持されたまま受診することがあります。しかしNHKが彼らを取材して「日本人が物を安く買えるためには違法移民でも開放して労働者として安く使う必要がある」とニュースで報道したら日本国民はどう反応するでしょう。それを米国ならば良いとNHKはニュース番組で言ってしまったのです。普通ディレクターかキャスターが気づいて「さすがに倫理的に問題がある」とストップをかけるのではないでしょうか。
さて、激しい反米・反体制報道を続けるメディアですが、上層部の一部には「はしごを外されたらまずいからそろそろ転向することを考えねば」と焦り出している人達がいるのではないでしょうか。「君は明日から来なくて良い」と言われる事を何よりも畏れているのが現在のメディアのサラリーマン達ですから。私が予想するメディアが親トランプに転向する時期について候補をまとめてみました。
1) 米国の主流メディアが親トランプに転向したとき。
2) 安倍政権が反トランプ報道に難色を示し始めたとき。
3) トヨタを始めとするグローバル企業や管理する電通など広告代理店がトランプ政権に忠誠を誓って反トランプ報道をするメディアを批判するようになるとき。
以上私が予想するメディア転向のきっかけなのですが、きっと今までの嘘も交えた反トランプ報道など何もなかったかのように粛々と米国の体制と政権について報道するようになるのではと思います。周りが皆親トランプ報道になっても反米・反体制を貫くメディアやジャーナリストがあれば、それはそれで筋の通ったあっぱれな姿勢だと私は思います。
「貧者の一票」渡邉哲也 著 扶桑社 2017年1月刊 は書店に並んだばかりの本ですが、私が今まで主張してきたようなBrexitやTranpismは反グローバリズム革命として庶民達が手を上げた結果であり、これからの世界の潮流であることを経済学者らしい視点で種々の事例を紹介しながら証明した好著だと思います。この本の中でいつも私が指摘する「混乱する右翼左翼の定義」についてまとめる良い図式があったので紹介します。175頁に「ポリティカル・コンパス」として紹介されている図なのですが、縦軸に保守からリベラルまでの政治的価値観の軸、横軸に国家などの制限をきらう自由主義経済(右派)から社会主義・福祉重視経済(左派)という経済軸を配置して各人がどの象限に属するかで立ち位置を示そうとするものです。日本の20世紀的固定観念に縛られた右翼・左翼観では、自由を社会としては制限しつつ経済はグローバリズム的自由を推進する安倍政権を右翼とするか左翼とするか決め難いですし、地球市民を主張するグローバリズム左翼は経済では国家福祉を重視するナショナリストだったりするのですが、この図を使うと比較的立ち位置が明確になると思われます。
また本書で紹介されている、ポストグローバリズムの世界のあり方として、各国の事情を尊重しつつ国際化を進めるインターナショナリズムこそが大事であるとし、「日本は現地に歓迎される国際化を進めている点で今後の世界の手本になれる」という主張はやや我田引水的ではありますが説得力のある主張に思えました。これからの世界の主流・体制派を理解する上で良い参考書になると思いました。