rakitarouのきままな日常

人間様の虐待で小猫の時に隻眼になったrakitarouの名を借りて政治・医療・歴史その他人間界のもやもやを語ります。

日本のメディアは強烈な反米・反体制報道から何時転向するか

2017-01-31 00:15:16 | 政治

NHKを始めとする日本の主要なメディアは、トランプ氏が大統領に選出され、大統領に就任してからも激しいトランプ批判の報道を繰り広げています。彼らは気付いていないかも知れませんが、トランプ体制というのはもう「米国体制の主流」になっており、現在の日本のメディアの姿勢は「激しい反米・反体制報道」という1970年頃のベトナム戦争以来見た事が無かったような状態になっているのです。

 

トランプが政権を取るまでは、グローバリズムを主体としたネオコンが主導する民主党オバマ・クリントン体制というのが米国、日本を含む世界の趨勢であって、メディアとしてはこれをヨイショしてトランプやプーチンを批判していれば「親米・親体制側報道」として我が身を案ずる事無く権勢を誇って大きな顔をしていることができました。しかし今や体制はトランプ側に移行したのです。そしてトランプ暗殺や大統領就任までに事態をひっくり返そうとするあらゆる試みが失敗に終わっているのです。日本・米国を含む主要メディアは一体いつまで勘違いな反体制報道を続けるのでしょうか。

 

私はNHKのニュースウオッチ9を夕食の時に仕方なく見る事が多いのですが、先日違法移民を閉め出す方針を明らかにしているトランプ政権に対して、テキサス州で違法移民を住宅建設に使役している業者を取材して、「安く住宅を供給し、米国の経済を成り立たせるには違法移民もなくてはならない存在」などという報道をしているのを見て「唖然」としてしまいました。天下のNHKが違法移民を肯定するニュースを堂々と流しているのです。NHKには違法移民達が正規の労働者よりも補償もなく安い給料で劣悪な労働環境で働かされているという視点は全くないのです。あるのは「労働者を安く使役してたっぷり儲けるのが良い」という「グローバル強欲資本主義の視点」のみです。「反トランプ」を訴えられるならば「違法も有益」と言ってのける倫理観の劣化には吐き気を催すほどでした。それでいてトランプがいつ発言したか定かでないような差別発言には厳しく噛み付いてみせて自分達が倫理的に上位にあるように見せるのですから呆れたものです。

 

日本は違法移民に対しては厳しく対処し、見つけたら入国管理局の施設に収監して母国に強制退去させています。私の病院にもそういった人達が管理局員に手錠を把持されたまま受診することがあります。しかしNHKが彼らを取材して「日本人が物を安く買えるためには違法移民でも開放して労働者として安く使う必要がある」とニュースで報道したら日本国民はどう反応するでしょう。それを米国ならば良いとNHKはニュース番組で言ってしまったのです。普通ディレクターかキャスターが気づいて「さすがに倫理的に問題がある」とストップをかけるのではないでしょうか。

 

さて、激しい反米・反体制報道を続けるメディアですが、上層部の一部には「はしごを外されたらまずいからそろそろ転向することを考えねば」と焦り出している人達がいるのではないでしょうか。「君は明日から来なくて良い」と言われる事を何よりも畏れているのが現在のメディアのサラリーマン達ですから。私が予想するメディアが親トランプに転向する時期について候補をまとめてみました。

 

1)      米国の主流メディアが親トランプに転向したとき。

2)      安倍政権が反トランプ報道に難色を示し始めたとき。

3)      トヨタを始めとするグローバル企業や管理する電通など広告代理店がトランプ政権に忠誠を誓って反トランプ報道をするメディアを批判するようになるとき。

以上私が予想するメディア転向のきっかけなのですが、きっと今までの嘘も交えた反トランプ報道など何もなかったかのように粛々と米国の体制と政権について報道するようになるのではと思います。周りが皆親トランプ報道になっても反米・反体制を貫くメディアやジャーナリストがあれば、それはそれで筋の通ったあっぱれな姿勢だと私は思います。

 

「貧者の一票」渡邉哲也 著 扶桑社 2017年1月刊 は書店に並んだばかりの本ですが、私が今まで主張してきたようなBrexitやTranpismは反グローバリズム革命として庶民達が手を上げた結果であり、これからの世界の潮流であることを経済学者らしい視点で種々の事例を紹介しながら証明した好著だと思います。この本の中でいつも私が指摘する「混乱する右翼左翼の定義」についてまとめる良い図式があったので紹介します。175頁に「ポリティカル・コンパス」として紹介されている図なのですが、縦軸に保守からリベラルまでの政治的価値観の軸、横軸に国家などの制限をきらう自由主義経済(右派)から社会主義・福祉重視経済(左派)という経済軸を配置して各人がどの象限に属するかで立ち位置を示そうとするものです。日本の20世紀的固定観念に縛られた右翼・左翼観では、自由を社会としては制限しつつ経済はグローバリズム的自由を推進する安倍政権を右翼とするか左翼とするか決め難いですし、地球市民を主張するグローバリズム左翼は経済では国家福祉を重視するナショナリストだったりするのですが、この図を使うと比較的立ち位置が明確になると思われます。

 

また本書で紹介されている、ポストグローバリズムの世界のあり方として、各国の事情を尊重しつつ国際化を進めるインターナショナリズムこそが大事であるとし、「日本は現地に歓迎される国際化を進めている点で今後の世界の手本になれる」という主張はやや我田引水的ではありますが説得力のある主張に思えました。これからの世界の主流・体制派を理解する上で良い参考書になると思いました。

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資本主義経済下の新冷戦構造とは

2017-01-16 23:41:07 | 政治

トランプ大統領就任まで1週間を切る状況になりましたが、昨日(2017年1月15日)のテレビ番組の政治解説などを見ても、未だにトランプ大統領の政治家としての危うさ、グローバリズム経済が危ないといったレベルの時事解説しかなされておらず、周回遅れの時事解説を聞かされているようでレベルが低すぎるというか、全く参考にならず歯がゆいほどです。

 

「トランプを大統領にさせない。」と1%のグローバリスト支配者がマスコミ人(安倍総理にも明言してそれを彼は信じてしまって未だにTPPを推進しているのか)に宣言していたから現実に起こっている事が理解できないのだろうとは思いますが、CIAを中心にした旧支配層がいくら最期のあがきをしても世界はもう相手にしておらず、次のステージに進んでいることを早く理解すべきなのです。

 

英国のEU離脱に始まる新たな動き、トランプ新政権の米国内第一主義の動き、ロシア(軍備)敵視から中国(経済/軍備)敵視への動きはもう決まっている既定路線であって、今更オバマ・クリントンのグローバリズム時代(に基づいてNATO対ロシアで戦争になって最終的にグローバル支配層の価値観で世界が統一される路線)に戻る事はないのだと理解しないと現在およびこれから世界で起こる事が全く理解できなくなってしまいます。

 

世界は米国一強支配に基づくグローバル社会(世界統一政府)を目指す社会から、米ソ冷戦時代のような多極化時代に戻ろうとしているのです。それは既に社会主義経済圏が存在しないことから、全てが資本主義経済に基づく新・冷戦構造とも言える社会であると思います。ここで自分なりに考察してみた新・冷戦構造について備忘録の意味でまとめておこうと思います。

 

旧・冷戦構造においては、大きな世界の対立軸は資本主義+民主主義 対 社会主義経済+共産主義社会であり、西側vs東側にどっち付かずの後進国である第三世界からなる構造からできていました。対立軸は明確であり、西側の民衆は東側の平等社会への強い憧れを持っており、それが資本主義の欠点である豊かさの不平等性を政治的に均衡させる力の源になっていました。しかし東側の民衆にとっては、オリガルヒへの不平等感は是正される術はなく、政治的には非力で自由と豊かさへの憧れは強くなるばかりで結局は社会主義経済の破綻によって戦争は敗戦で終わる事になります。

 

旧・冷戦構造の崩壊によって、世の中は資本主義+グローバリズム(米国一強世界)となり、敵はグローバリズムを否定しようとするテロリズム(主体はイスラム原理主義だが、本心はグローバリズムを否定しようとする国家をバックに持たない民兵=ミリシアを敵と考えている)のみとなっていました。しかしいくらミリシアを殺す戦争をしても正規軍は疲弊するばかりで、ミリシアと民間人の区別もつかなくなり、悲劇のみが増殖してゆきます。また正規軍の構成員である民衆がグローバリズムの推進によって益々貧しくなってゆきます。一方でミリシアではない中国やロシアは国家を後ろ盾にした資本主義、国家資本主義を前面に立ててグローバリズムに対抗するようになりました。ここに「どうもグローバリズムではなくてやはり国家毎に経済を考えて行った方が個々の国民が幸せになるのではないのか」というナショナリズム回帰の波BREXIT/TRUMPISMが2016年に沸き起こって現在に至ったということです。

 

新・冷戦構造は資本主義+グローバリズムから資本主義+ナショナリズム民主主義(上から目線で言えばポピュリズム民主主義)(米国、ばらけたEU、日本などグローバリズムに向かっていた国)対 資本主義+国家資本主義(中国、ロシア、それに賛同する国でグローバリズムと距離を置こうとしていた国)の戦いであると言えるでしょう。ナショナリズム民主主義と国家資本主義は支配者が資本主義をどう統制するかが異なるだけで、本質的な違いはあまりないと言えます。だから経済的な帝国主義同士の戦いに近いものになると思います。

 

この新・冷戦構造において、戦争は起こるかを考察したのが3つ目のスライドで、全面核戦争は起こらないと思われるのですが、限定的な戦争は十分に起こりえると思います。それも地政学的にユーラシア大陸の中心(ハートランド)と新世界の際に当たるSpykmanのリムランドにあたる部分というのが多くの人達の予想です。つまり中東、東欧、中国朝鮮、東南アジアということです(結局現在を含むいつでもこの辺で戦争してますが)。

 

BREXIT/TRUMPISMの新冷戦構造の時代に日本はどうするべきかというのが次の課題であり、日曜の政治討論ではこれを中心に話してくれれば非常に面白い内容になるのですが、始めに述べたように「トランプでは世界経済が危ない」「米国の世界支配が崩れる」レベルの話しか出てこないから「幼稚だ」と私ごときに批判されるのです。

 

私は日本の進むべき道は「大国の駒にならない」「プレイヤーになる」事だと思います。そのためには自国内の経済的安定が第一です。日本は幸いにも国内経済が経済活動の7割り以上を占め、輸出入の経済に占める割合が少ないので国内経済を活発にしておくことがまず第一に求められます。そして節度ある軍備の充実が求められます。中国のような国が「日本に軍事的な侵略をしても何も得にならない」「日本を米国やロシアとの取引の駒にはしにくい」と思わせる軍事力と政治力を身につけておくことが第一なのです。その際、米国との連携は重要ですが、今までのような「お・ま・か・せ」は厳禁です。軍備に基づく政治を行う(戦争をする意味ではない)上で日本独自の世界戦略を持つ事(パククネのような米中あちこちに擦り寄るという意味でもない)が大事であると言えるのです。たとえ明日米国が消滅しても軸足がぶれない国家戦略を持てという意味であると理解すれば良いです。そのためにはどのような経済政策を打つべきか、どの内容の軍備を整備すべきかを専門家として討論してくれれば実に中身のある政治番組になると私は思います。

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何とかロシアと戦争を始めたい人達

2017-01-02 08:41:19 | 政治

【国際情勢分析】ロシアのサイバー攻撃で「選挙介入」の米大統領選 21世紀の謀略戦解明求める声強く

サイバー攻撃があった、という結論のみで具体的な内容、誰が行ったのか(機関など)も明らかでない状態で、米国は多数のロシア外交官を国外退去させてしまいました。プーチンが記者会見で述べたように「米国は世界一の(情報管理能力を持つ)国家ではないのか?」という指摘が実に当を得ているように、日本の政府機関、欧州、世界の情報通信をエシュロンやインターネットを米国に集約することで把握しているというのが常識であるのに「何を今更」という感があります。中国のサイバー攻撃についても専用の部隊が行っていることを全て把握していました。

集票結果がサイバー攻撃で改ざんされていない限り「選挙介入」と言えないことは明らか(メディアは投票前日までクリントン優勢と表明してましたから)ですから、結論も出ないうちから早々に外交問題化させたオバマ政権の拙速さ、本来の意図、次政権への迷惑行為の誹りは免れない措置だと言えるでしょう。

昨年の12月24日には国連によるイスラエルパレスチナ入植地への批難決議が採択され、米国は次期大統領のトランプ氏が拒否権発動を促したにも関わらず「棄権」(イスラエルは米国がむしろ主導したと見ている)によって採択が決まりました。イスラエルをあまり敵対視せず、イスラム同士の殺し合いをしてくれるISの存在でイスラエルによるパレスチナ迫害は最近目立たない状態でしたが、ロシアの空爆、シリア政府軍によるアレッポ開放、トルコのISへの決別(陰で支援することを止める)事で、トルコ国内ではロシア大使の暗殺や銃乱射テロなど何とかロシアとの再度敵対化やIS支援再開の方向付けを狙う動きがあるものの、今後ISは急速に存在感をなくしてゆくことでしょう。またトルコ・ロシア間での戦争はもう始まらない(トルコがNATO加盟国であるから必然的にロシア・NATO戦争開始)事になりました。ウクライナでもロシアとNATOが戦争する事態はほぼ避けられました。後は何とかイスラエルをけしかけて戦争を始める、ロシア外交官を追放して米露の関係を悪化させたい、といったCIA、米国政府に巣食うネオコン勢力の最期のあがきが現在行われているということのようです。プーチン大統領の自制と戦略眼は大した物と敬服しますが、次期トランプ政権と共闘して第三次大戦を避ける方向でうまく立ち回って欲しい所です。

あまり興味はないのですが正月の時事番組ではいまだにロシア脅威論をあおって何とかロシアを悪者にして世界情勢を説明しようという論調ばかりで「いかがなものか」と思いますが、トランプはむしろ中国の経済と軍事覇権主義を敵視しているのであって、日本は今中国がどうトランプ政権に対して対応してくるのかに注目すべきだと思います。しかしそれについて適確な論評を述べられるコメンテーターがいない(いても言えないのか?)ので実に番組がつまらないものに思えます。

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日独伊三国同盟とは何だったのか(2)

2017-01-02 00:29:31 | 書評

書評 ハンガリー公使大久保利隆が見た三国同盟 高川邦子 著 芙蓉書房2015年刊 

第二次大戦中イタリアが降伏し、ドイツの劣勢も明らかになり始めた1943年晩秋、赴任先のハンガリーから天皇に状況報告のため、自らの職と命をかけて帰国した日本人外交官 大久保利隆の主に大戦中の記録を自身の孫にあたる高川邦子氏が種々の一次資料を当たりながらまとめた記録です。ハンガリーという枢軸国でありながらドイツとは異なる立ち位置で第二次大戦を戦った国からみた三国同盟やドイツとの関わりは非常に興味深く、前回の松岡洋右の記録で未解決であった部分の疑問に答える内容もあり、有用な書籍でした。

 

駐ハンガリー行使であった大久保利隆(1895-1988)についてまとめます。

 

氏は軍人一家で父は日露戦争時に「大久保支隊」隊長として奉天の会戦で活躍した家系であり、一高東大時代の同僚には岸信介や大佛次郎がいたということです。外務省に入りベルギー・イタリアや米国の大使館勤務をします。二・二六事件の時には辛くも暗殺を免れた岡田啓介首相を自宅から救出した迫水常久(首相の娘婿)は大久保の甥でもあり、反乱軍を騙して救出する際にも迫水に呼ばれて協力したということです。一方で反乱軍の中にも甥にあたる将校がいて、悲しい思いもしたという、時代を動かす人達というのは狭い世界だと思わせるエピソードです。三国同盟成立時には外務省の条約局第一課長として不本意ながら条約作成に参画し、その功績で松岡洋右からハンガリーおよびユーゴスラヴィア公使に任命されます。開戦後、独ソ線でドイツが苦戦する状況を本国に伝えようとしますが、ドイツ大使の大島浩は、ドイツが不利である状況の報告を許さないため、意を決して自ら帰国して「ドイツは1-2年の内に負ける、それまでに戦争を終わらせないと日本はソ連を含む全世界と戦争をすることになり滅亡する」という報告をするために大戦途中で帰国の許可を得てソ連経由で帰国、外務省初め天皇陛下にも欧州戦の状況について上奏を許されます。帰国後は軽井沢の外務省出張所でスイスなど中立国の大使との折衝を努め、戦後はアルゼンチン大使として戦後復興に尽力して外交官としての努めを終えたとされています。

 

第二次大戦におけるハンガリーの動き

 

ヨーロッパ唯一のアジア系民族の国であり、第一次大戦まではオーストリアハンガリー二重帝国として栄えていたものの、敗戦による「トリアノン条約」で領土の2/3を失い、小国となった上に共産党政権になって恐怖政治が敷かれていたのを旧体制に戻したのが海軍提督「ホルテイ」です。ホルテイはテレキやベトレンといった部下を首相につけて何とか国家を安定させるのですが、ハンガリーの領土を取ったルーマニア、ユーゴ、スロバキアなどとは敵対関係になります。それが後にドイツとの連携を結ぶきっかけになります。ドイツは進駐したチェコやルーマニアの一部をハンガリーに帰属させて領土を戻すことで恩を売って枢軸国参加に慎重であったハンガリーを参戦させます。基本的に衛星国の優等生ルーマニアもハンガリーもソ連には恨みがないので独ソ戦に気合いが入っていなかったことは否めません。スターリングラードの攻防戦も気合いの入らない枢軸衛星国の陣地をソ連が集中突破することで戦争の帰趨が変わって枢軸側の敗戦に繫がって行くのですが、ハンガリーも1944年8月にルーマニアが政変で連合国側に付いてハンガリーに宣戦布告45年2月にブタペストが陥落して降伏します。戦後は東側陣営に組み込まれて領土もトリアノン条約どおりの小国のまま現在に至ります。

 

何故ヒトラーは日独伊三国同盟を締結したのか

 

統一した戦略を持つでもなく、戦争遂行に役に立たない三国同盟を何故ヒトラーが締結したのかが謎であると前回のブログでも書きましたが、同書によると明確に書かれてはいませんが、松岡がドイツでヒトラーと会談した帰路にモスクワで「日ソ中立条約」を締結した際、ドイツ外相リッペントロップは大層困惑し、ヒトラーは激昂し、駐独大使でドイツの意図を一番理解していた大島浩は「全然解っていない」と激怒した、とあるようにドイツとしては独ソ開戦に際して東から日本がソ連に攻め込むことを期待していたと考えるべきだと思われます。しかし1936年に日独伊防共協定を結んでおきながら1939年にノモンハンで日本がソ連と死闘を繰り広げているにもかかわらず同年8月に突然独ソ不可侵条約を結んでしまい、当時の平沼内閣は「欧州情勢は複雑怪奇」という有名な言葉を残して総辞職してしまうのですから、ドイツも日本の内情には無頓着で根回しも何も無く身勝手な外交を行っていたことは確かです。

 

何故ヒトラーは日米開戦を阻止しなかったのか。

 

1941年12月3日、日本は日米開戦に先立ってドイツ、イタリアに対して「日本と米英が開戦した場合に、独伊も宣戦して単独講和は結ばない」とする単独不講和協定を申し入れた、とあります。ムッソリーニは堀切大使の申し入れを即座に了解しつつも、正式にはドイツの了解を得てからという答え。ヒトラーは前線に視察に行って不在であったものの基本反対であり、外相のリッペントロップが「日本の英米開戦は英米の注意をアジアにそらす事になり、ドイツ軍の士気向上に貢献する」と言う詭弁とも言えるとりなしで渋々承諾、開戦後の12月11日にベルリンで署名したという経緯です。それでも本音は「ドイツが日本を助ければ日本もドイツを助けてソ連に宣戦布告するはず」という、独ソ線で苦戦している状況からの日本への期待がベースにあったことが本書に示されています。

 

「同床異夢」であった日独

 

前回のブログで記したように、日本は日独伊三国同盟に米国との戦争阻止、ソ連との共闘という夢を託したのに対して、ドイツはソ連を東西から挟み撃ちすることを期待していたことが解ります。つまり日独は「同床異夢」で同盟を結んでいたことになります。これはもっと高校の教科書などで強調されて教育されても良い事ではないでしょうか。日本は終戦間際においても中立条約を結んでいるソ連に対して米英との終戦の仲介を期待していた事実(1945年6月22日、東京では最高戦争指導者会議が開催され、鈴木貫太郎首相が4月から検討して来たソ連仲介和平案を国策として正式に決め、近衛文麿元首相を特使としてモスクワに派遣する計画が具体化した。)があります。

 

国際条約においてこの同床異夢ほど厄介で後々取り返しのつかない禍根を生むものはありません。どうやら雲散霧消しそうですが政府がろくな説明も検討もなく締結したTPPは日米の思惑は一致していたと言えるでしょうか。他にも日本が勝手に良いように解釈している国際条約は本当にないのか、日本の国益を十分に叶えるものとして締結したものなのか心配になります。

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