I. 指揮官のいない米国
ずっと拒否していたロシア国内への長距離ミサイル使用許可を2024年11月19日バイデン不在中に米国は決定、同21日には英国のストームシャドウを、23日にはフランスがスカルプ(フランス版ストームシャドウ)の使用を容認する決定を行いました。もっともATACMSは60基(既に10基使用)、ストームシャドウは各10基ほどしかウクライナにはなく、戦局を変える力はありません。ゼレンスキーはドイツの長距離ミサイル(射程500km)タウルスの供与を希望し、米国製の陸上発射トマホーク(射程3000km)の供与を切望しています。これらが使用されれば間違いなくロシアはNATOに対して核の使用も辞さない戦争拡大を進めてくるでしょう。これは紛争終結を狙うトランプ就任の2025年1月20日までに紛争拡大を狙う米国ネオコン勢力が画策した結果生じている動きと思われます。
来年1月までの米国政治は誰が責任を持って取り仕切っているのか、誰も答えられません。イエレン財務長官は10月23日に200億ドル(3兆円)の追加支援をロシアの凍結資産を活用して行うと表明していますが、凍結資産の現金化など誰が具体的に行えるのか不明です(米国が買い上げて現金化するとなると結局税金)。現在大統領失格と民主党から烙印を押されたバイデン大統領がアフリカを訪問して6億ドルの支援を表明(ウクライナに比べてちゃちい)していますが、CNNではその内容説明をCSIS(戦略国際問題研究所)の解説員がしていた所からも、政権に通じたネオコンシンクタンクの一部が政策を決めている様です。当然終わりを迎える政権が行ったことなど誰も責任を取らないでしょう。
II. ウクライナの行方
領土割譲に言及しはじめたゼレンスキー ロシアが検討しているとされるウクライナ分割案
ゼレンスキーは最近やっと領土割譲の上での和平交渉の可能性に言及し始めましたが、戦争に負けている側が口にする内容ではありません。プーチンが提案するウクライナの未来図は図の様な3分割で、西から「紛争地域」「親ロシア国」「ロシア領」の3つに分かれます。戦勝国のウクライナ統治の出発点はこれであり、ここからどこまでロシア側から譲歩を引き出せるかです。西の紛争地域はポーランドやルーマニアなどが分割統治する決着になる可能性もあります。ウクライナ国民が平和に暮らすには、親ロシア国で欧米の資本を排除した上で自分達が統治できる態勢を作ることが大事でしょう。
一時北朝鮮の兵がクルスク戦線に一万人投入などというヨタ記事が西側諜報部経由で盛んに流されましたが、前線のウクライナ兵で朝鮮軍を見た兵士は一人もいないそうです。この北朝鮮フェイクニュースが今回の韓国戒厳令騒ぎにも一枚かんでいることが解ってきました。
エコノミスト誌などによると、ウクライナは毎月約19,000人の「兵士」を募集していると述べているため、1か月あたり23,000人の死傷者と推定できるが、これには脱走兵も含まれるようです。ウクライナの脱走兵の多さは救いようがないほどですが、今年の脱走兵が10万人(一説には20万人)だとすると、1日あたり274人、つまり1か月あたり約8,300人となる。これを23,000人から引くと14,700人になる。これを30で割ると、1日あたり約500人の死傷者となる。言い換えれば、ウクライナ兵の1日の損失は、死者250人、重傷者250人、脱走兵274人で、1日あたり約770人の「死傷者」、つまり1か月あたり23,000人の損失となる。この中には軽傷の死傷者は含まれていません。一日も早く戦争を終わらせる(無条件降伏でも)事がウクライナの国民を守る唯一の方策であることが解ると思います。
III. 突然のシリア内戦の再燃
シリア情勢を解説したmiddle east eyeの記事 レバノンからアレッポへの反政府軍の動きヒズボラも関与か
2024年11月、ハヤト・タリハール・アル・シャム(HTS)などの反政府勢力がシリア第二の都市アレッポとその空港、軍事基地などを突然占領したというニュースは世界を驚かせました。シリア内戦はロシアがISなどを掃討した結果ある程度沈静化していたと思われたからです。米国が間接的にIS他の反政府勢力を支援していた事は明らかでしたが、ウクライナ戦争やイスラエルへの支援でそれどころではない状況でした。今回イスラエルがヒズボラと停戦に至ったタイミングでシリア内戦の激化に至ったのは偶然ではない様です。この4年間500万人のシリア難民がシリア北部の反政府勢力の支配地域で過ごしていましたが、極度の貧困と生活苦で困窮していたことは知られていません。またトルコにも300万人のシリア難民がいて、シリア北部のクルド人支配地域がトルコと対立しているため、今回の攻撃にはトルコの後押しもあるとされます。イラン、ロシア、シリア政府(アサド政権)は、反政府勢力と対峙していますが、今回の内戦再燃が組織立って行われていない、資金の出所と流れが明確でない事などからアサド政権を倒すほどの広がりは見せないと思われます。
数週間前、イスラエルのギデオン・サール外相は、トルコとイランを弱体化させるために、クルド人やドゥルーズ派など、この地域の無国籍少数派との正式な同盟を 構想してい た、と言われます。この試みはうまく行かないと思います。
IV. グルジア(ジョージア)内紛
ジョージアのコバヒゼ首相は政府がEUへの加盟交渉を中断(延期)すると表明し、首都トビリシほか複数の都市で親欧米派の市民が抗議行動を起こす事態になっています。米国は12月1日に独裁的傾向(親ロシア傾向の言い換え)が強まるジョージアとの戦略的パートナーシップを停止すると通告したとされ、3000人以上の公務員らがEU加盟手続きの延期に抗議する署名が出ています。親欧米派のサロメ・ズラビシヴィリ大統領は、あと数週間で任期満了により辞任するため、その後継の如何でジョージアの親欧米か親ロシアかの行方が変わります。つまり2014年のウクライナマイダン革命の再現が行われていると考えると分りやすいです。CIAやソロス財団は親欧米グループに反体制騒乱を仕掛ける試みを、金をかけて行っている最中でしょう。今後の展開が注目されます。政府側が民主化勢力(親欧米)のデモに発砲(CIAが金を出して政府側を装った民間軍事会社などにやらせるのがウクライナ方式)などするとCIAネオコン好みの展開になること必至です。
V. 韓国のクーデター失敗
2024年12月3日午後10時に韓国尹大統領は緊急談話で45年ぶりとなる戒厳令を宣布し、突然の発表に世界が騒然となりました。午後11時には韓国軍が国会に突入し、議事堂周辺には軍が出動し、市民と対峙する状況になりました。これは1978年の朴政権が民主化運動に対して発した戒厳令以来でしたが、何故今戒厳令かが疑問とされました。
まだ推測の域を出ませんが、少数与党の尹政権は、予算や種々の法案が通らず、次の選挙でも勝つ見込みがない状況から切羽詰まった状態であったという背景はありそうです。北朝鮮ウクライナ参戦デマを韓国軍諜報経由で盛んに出して危機感を煽りましたが、韓国民衆は乗ってきませんでした。米ネオコン、CIAとしては、韓国軍もウクライナに派兵させることを念頭に尹政権に揺さぶりをかけていましたが、米国覇権からの独立を主張する「共に民主党」多数派は反対していました。今回の戒厳令は、米国黙認(推奨)の軍主導(国防相は大統領の高校の同窓、金龍顕)クーデターであった公算が強いです。消息筋は「今回の戒厳令は『清岩派』が画策したものとみられ、金国防長官が尹大統領と直接調整している」と言われます。(「清岩派」とは、ソウルの清岩高校の卒業生)これらの情報は前から流出していたらしく、国会民主党側の反応は異常に早く、韓国国民の抗議のための集合も非常に速やかであり、6時間で戒厳令無効決議が議決されて解除される結果になりました。大統領の発表からわずか150分後、国会議員300人のうち191人が戒厳令の即時解除に投票した。軍隊と警察が議会に突入したが、戒厳令反対の投票はすでに行われていました。労働組合はストライキを行うと発表し、人々は大統領の行動に抗議するために街頭に繰り出していました。尹氏の側近たちは総辞職を申し出、譲歩する以外に賢明な道は残されていなかったと言えます。
バイデン政権のアジア担当副国務長官カート・キャンベル氏は次のように述べました。
「したがって、我々は韓国の最近の動向を深刻な懸念をもって注視しています。我々はこことソウルの両方で、あらゆるレベルで韓国のカウンターパートと連携を図っています。大統領、国家安全保障担当大統領補佐官、国務長官はいずれも状況の進展について報告を受けており、状況の進展について随時報告を受けています。韓国との同盟関係は堅固であり、不安定な時期に韓国の側に立つことを強調したい。また、いかなる政治的紛争も平和的に、法の支配に従って解決されることを強く望み、期待していることも強調したい。」
ほぼ同じ内容を石破首相も国会で答弁していたようです。
クーデターが続く中、韓国の米国大使館は法の支配や民主主義については何も語りませんでした。注目すべきは、駐韓国米国大使フィリップ・ゴールドバーグ氏が、ボリビアとフィリピンの現政権転覆を企てたとして、以前に両国から追放されていたことです。同氏は1月に韓国を離れる予定です。ゴールドバーグとワシントンDCはユン氏の戒厳令計画についてCIAと下部組織のKCIA経由で知らされていたと思われます。
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