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地下鉄の駅前で「殴られ屋」を始めたが、三日後に警察に見つかって断念した。地下鉄の駅で寝起きするホームレスになり、道端の雪を食べて空腹をしのいだ。
ある日、チャイナタウンにあるパン屋から漂うパンの匂いをかぎながら、雪を食べていた。中国人の店員が出てきた。追い払われると思い立ち去ろうとした内田さんに、店員は「捨てるから」と袋いっぱいのパンを差し出した。
「涙が出るほどおいしかった」。内田さんはやり直そうと決意し、炉端焼き店で働き始めた。金をためて再びパン屋を訪れた。恩返しにパンを全部買い占めるつもりだったが、逆に店員に怒られた。
「そんな金があるなら、十ドルずつ困っている人に渡してこい。恩を受けたら、他の人に与えるものだ」
それまで人のために何かするとは考えたこともなかったので衝撃を受け、人を助ける生き方を目指す。
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(ひと ゆめ みらい / 内田洋介さん(38)=足立区 )