競馬エッセイストでもある私。馬に関する映画の情報が来ると、真っ先に見たくなる。
馬が登場するだけで、馬バカの私は、その作品がいまいちくだらないと思っても、弁慶の泣き所、何でも絶賛する性癖がある。
映画ライターとしてはいささか不公平な判断をしかねないが、「お馬が好きなんですぅ!、だからしょうがないでんですぅ!」と、笑ってごまかしている。
「戦火の馬」は、競走馬でなく、軍馬の物語である。戦争に巻き込まれていく、1頭の馬・ジョーイの波乱万丈の人生をスティーブン・スピルバーグが微細にかつ壮大に描いている。
まず、軍馬に注目したスピルバーグ監督に拍手喝采。この作品は馬版「プライベートライアン」であり「シンドラーのリスト」なのだ。つまり、根底には反戦思想と平和への願いが込められている。
私は、「初の反戦馬映画」というジャンルを勝手に作っていた。
スクリーンの中で、軍馬ジョーイは暴走する。逃げる途中で有刺鉄線に絡まるジョーイの悲しさと悔しさ。戦争を起こしている人間たちに激怒の侮蔑の目を向けながら、彼は爆走する。まるでジョーイは人間たちに戦争の愚かさを教えようとしているかのように。
昨日、アカデミー賞が発表された。「戦火の馬」は作品賞にノミニーされたが、取れなかった。10年ほど前、競馬傑作映画「シービスケット」の劇場パンフにコラムを書いた。この時、ビスケット君も作品賞のノミネートされたが、無冠の帝王になってしまった。
馬は駆けるのが仕事。しかし、アカデミー賞の賞レースには負けてしまうのは、ちょっと皮肉といえば皮肉な話かも知れない。
しかし、元々アカデミー賞受賞作品も当たり外れのあるお祭りごとの結果。ノミネート作品の中に珠玉の一編もあるのも確かな事実なんですよね。
3月2日から公開
【監督】スティーブン・スピルバーグ
【出演】ジェレミー・アーヴァイン エミリー・ワトソン