また、ここに実力派女優誕生の予感があった。
彼女の名前はジェニファー・ローレンス。『あの日、欲望の大地で』でシャーリーズ・セロンの子供時代を演じていた。しかし、この時のジェニファーの演技はあまり印象に残らなかった。
しかし、『ウィンターズ・ボーン』での圧倒的な存在感に度肝を抜かれたのだ。心を病んだ母親、幼い兄弟を養いながら、行方不明になった父親を捜す少女役。父親はどうも麻薬に絡む怪しい一面もあったらしく、闇の世界に単身乗り込んで父親を捜し出すたくましい少女。
舞台となるミズーリ州南部の風景は荒み、息苦しいほどの退廃の香りを放つ。この荒地に、少女はまるで一輪のバラを咲かせるかのように、自らの力を振り絞って未来に向けて開拓していくのだ。
時々、物語にカルト的なホラーの要素も加わって、これを疑問を感じる人もいるだろうが、私はこのエッセンスがあったからこそ、ミズーリ南部オザーク山脈という大自然の不気味さと貧しさを、より深くリリーフさせたのではないかと思う。
で、思った。これと全く同じ感想を持った作品が『トゥルー・グリット』である。ジョン・ウェイン主演の往年の名作『勇気ある追跡』をコーエン兄弟がリメイクした作品だが、父親のかたき討ちに命をかける少女役を演じたヘイリー・スタインフェルド。まさに、この少女のために作られたような作品で、彼女一人勝ちの作品だった。
ジェニファー・ローレンス、ヘイリー・スタインフェルド。
彼女たちの次作が楽しみになってきた。
10月29日から公開
【監督】デブラ・グラニック
【出演】ジェニファー・ローレンス
ジョン・ホークス ケヴィン・ブレズナハン