虚しい逡巡を繰り返している。
今年の南アフリカで開催されるサッカーワールドカップ日本戦のチケットを息子がすでに手に入れてくれ、現地に行けばいいだけになっている。おまけに「カテゴリー1」というかなりいい席なのでなおさらだ。日本の初戦相手はカメルーン。インテルの覇者・エトーがいる国だ。多分、日本は苦戦するだろう。
サッカーファンでもある私は、その試合を見たいのだが、まだ踏ん切りがついていなかった。開催国・南アフリカの危険性をニュースで聞いたりすると、気の強い私でも、ちょっとだけビビってしまうのだ。
南アフリカを舞台にした最近の作品では、『ツォツィ』にはかなりの衝撃を受けた。貧困や黒人差別がまだ強く根付いているヨハネスブルグで、犯罪でしか生きることのできない荒んだ心の少年が、ある日、人を愛する(これは赤ちゃんだが)ことの素晴らしさに目覚める物語。衝撃作であるとともに、心の汚れを洗い流してくれる感動作でもあった。
次に深い印象を残したのが、『マンデラの名もなき看守』。アパルトヘイト、つまり黒人差別を撲滅し、人種差別のない国にするために、牢屋に27年も投獄されながらも、平和と平等を訴えたネルソン・マンデラ大統領と、彼の生き方に自らも自由と平等と平和の大切さを思い知る白人看守のヒューマン物語だ。
極東の日本に住んでいる私は、ネルソン・マンデラ大統領が、かくも偉大な人物であったのかと、この作品を通して痛切に教えてもらった。今の日本に、マンデラみたいな無償の愛で国民を包んでくれる政治家がいれば、この不況や雇用削減体制は解決できただろう。そんなことを思った。
そして、『インビクタス 負けざる者たち』である。こちらは、『マンデラの名もなき看守』のその後のネルソン・マンデラ大統領を描いていると言っていいだろう。平和と平等、人種差別のない心豊かな南アフリカにしようとするマンデラの勇気ある行動とその姿を微細に描ききっている。
南アフリカでは、ラグビーファンとサッカーファンと2つに大きく分かれている。マンデラの時代にはまだラグビー選手は白人が多く、黒人が少なかった。ゆえに、南アフリカの黒人たちは、決して自国のラグビーチームを応援せず、他国のチームを応援していたとは皮肉な話である。
1995年、マンデラが大統領に就任した翌年にラグビーのワールドカップ開催国に南アフリカが選ばれた。マンデラ大統領はこれを機に、本当の意味で黒人と白人との融合を企て、バラバラになっていた南アフリカをラグビーというスポーツを通してまとめようとするのだ。
「スポーツには世界を変える力がある。人々にインスピレーションを与え、団結させる力があるのだ。ほかの何かには、まずできない方法で。」と、マンデラは語る。
けだし名言である。
マンデラ演じるモーガン・フリーマンの演技がどんなに素晴らしいかは、言うまでもないだろう。チームのキャプテンを演じるマッド・デイモンは、実を言うと、私は苦手な俳優さんなのだが、この作品ではキラ星のごとく光っていた。そして、監督はクリント・イーストウッド。『グラントリノ』を去年のベストワンにした私だが、またも今年もイーストウッド監督から始まるとは…。ただただ畏敬の念を捧げるだけ。
この作品が逡巡していた私の南アフリカ行きの肩を押してくれた。
こんな素晴らしい大統領を産んだ南アフリカに行ってみよう。そして、この目で、肌の色が虹色で染まる球場で、世界の人々が人種を超えて一体になり、輪になり、サッカーというスポーツに自らの人生を投影しながら、自国を応援する姿の素晴らしさを堪能してこよう!
岡田ジャパン、がんばれ!
【監督】クリント・イーストウッド
【主演】マット・デイモン、モーガン・フリーマン
2010年2月5日より丸の内ピカデリーほか全国にて公開
今年の南アフリカで開催されるサッカーワールドカップ日本戦のチケットを息子がすでに手に入れてくれ、現地に行けばいいだけになっている。おまけに「カテゴリー1」というかなりいい席なのでなおさらだ。日本の初戦相手はカメルーン。インテルの覇者・エトーがいる国だ。多分、日本は苦戦するだろう。
サッカーファンでもある私は、その試合を見たいのだが、まだ踏ん切りがついていなかった。開催国・南アフリカの危険性をニュースで聞いたりすると、気の強い私でも、ちょっとだけビビってしまうのだ。
南アフリカを舞台にした最近の作品では、『ツォツィ』にはかなりの衝撃を受けた。貧困や黒人差別がまだ強く根付いているヨハネスブルグで、犯罪でしか生きることのできない荒んだ心の少年が、ある日、人を愛する(これは赤ちゃんだが)ことの素晴らしさに目覚める物語。衝撃作であるとともに、心の汚れを洗い流してくれる感動作でもあった。
次に深い印象を残したのが、『マンデラの名もなき看守』。アパルトヘイト、つまり黒人差別を撲滅し、人種差別のない国にするために、牢屋に27年も投獄されながらも、平和と平等を訴えたネルソン・マンデラ大統領と、彼の生き方に自らも自由と平等と平和の大切さを思い知る白人看守のヒューマン物語だ。
極東の日本に住んでいる私は、ネルソン・マンデラ大統領が、かくも偉大な人物であったのかと、この作品を通して痛切に教えてもらった。今の日本に、マンデラみたいな無償の愛で国民を包んでくれる政治家がいれば、この不況や雇用削減体制は解決できただろう。そんなことを思った。
そして、『インビクタス 負けざる者たち』である。こちらは、『マンデラの名もなき看守』のその後のネルソン・マンデラ大統領を描いていると言っていいだろう。平和と平等、人種差別のない心豊かな南アフリカにしようとするマンデラの勇気ある行動とその姿を微細に描ききっている。
南アフリカでは、ラグビーファンとサッカーファンと2つに大きく分かれている。マンデラの時代にはまだラグビー選手は白人が多く、黒人が少なかった。ゆえに、南アフリカの黒人たちは、決して自国のラグビーチームを応援せず、他国のチームを応援していたとは皮肉な話である。
1995年、マンデラが大統領に就任した翌年にラグビーのワールドカップ開催国に南アフリカが選ばれた。マンデラ大統領はこれを機に、本当の意味で黒人と白人との融合を企て、バラバラになっていた南アフリカをラグビーというスポーツを通してまとめようとするのだ。
「スポーツには世界を変える力がある。人々にインスピレーションを与え、団結させる力があるのだ。ほかの何かには、まずできない方法で。」と、マンデラは語る。
けだし名言である。
マンデラ演じるモーガン・フリーマンの演技がどんなに素晴らしいかは、言うまでもないだろう。チームのキャプテンを演じるマッド・デイモンは、実を言うと、私は苦手な俳優さんなのだが、この作品ではキラ星のごとく光っていた。そして、監督はクリント・イーストウッド。『グラントリノ』を去年のベストワンにした私だが、またも今年もイーストウッド監督から始まるとは…。ただただ畏敬の念を捧げるだけ。
この作品が逡巡していた私の南アフリカ行きの肩を押してくれた。
こんな素晴らしい大統領を産んだ南アフリカに行ってみよう。そして、この目で、肌の色が虹色で染まる球場で、世界の人々が人種を超えて一体になり、輪になり、サッカーというスポーツに自らの人生を投影しながら、自国を応援する姿の素晴らしさを堪能してこよう!
岡田ジャパン、がんばれ!
【監督】クリント・イーストウッド
【主演】マット・デイモン、モーガン・フリーマン
2010年2月5日より丸の内ピカデリーほか全国にて公開