子供のころはホラー映画が大好きだった。でも、大人になり年を取るにつれ、ホラー映画が嫌いになった。
というのも、大人になると、ホラー映画よりも、現実の社会や政治の方が、よっぽど恐ろしいことが判明するからである。つまり、ホラー映画が無用となった時に、人は初めて大人になるということか。
しかし、『IT』の原作者であるスティーブン・キングの作品だけは違う。
大人になっても、読みたい作家のままなのである。映画化されたものは、みーんな見たくなる稀有な作品を創り上げる天才であるからだ。それは、ホラーであっても、他のホラーと一線を画しているのは、人間の普遍的な心の闇を描いているからだろう。
思えば、大学生のころ見た『キャリー』『シャイニング』。ちょっと大人になってからは『ミザリー』『スタンドバイミー』『ショーシャンクの空に』。
いつまでも、心の中に火をともしてくれる作品ばかりである。
そして、今回の『IT イット “それ”が見えたら、終わり。』も、ちょっと大人になってから見た『IT』のリメイクである。
オリジナルもうまくできているが、今回のリメイクも頗る優れている。
登場人物の少年や少女が抱えるものは家庭の問題、家族間に起こりえる怒りであり、矛盾であり孤独感である。
いたたまれない家庭環境の子供たちの中から産まれた具現化された「それ」。「IT」。
「それ」「IT」は、過去でも未来でも、不幸な子供がいる限り、永遠に現れ続けるのだろうな。
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