36度にまで気温が上昇した酷暑の7月初旬。
六本木シネマート。
ジョン・レノンとオノ・ヨーコの共通のお友達でいらっしゃる作家の小中陽太郎さんと一緒に、ジョン・レノン生誕70歳記念映画ともなる、『ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ』の試写を初日に見た。
べ平連運動の重鎮でもいらした小中陽太郎さんは、60年代のベトナム反戦運動からジョンとヨーコと交流があり、ジョン亡き後もヨーコさんと仲良しである。
そんなビートルズの原点、いや、ジョン・レノンの原点を知っている方と試写にご一緒できることは、見終えた後に、私だけの個人的な感想だけに留まらず、そこに計り知れないジョン・レノンへの愛情や薀蓄を聞くことができるのも醍醐味だった。
メインテーマは、「ジョン・レノンには対照的な二人の母親がいた」ということ。自由奔放で音楽を愛する母親(アンヌ・マリ・ダフ)と、厳格で知性的な伯母で実母に捨てられたジョンの母親代わりをしたクリスティン・スコット・トーマスである。
ジョンに二人の母親がいたことを全く知らなかったので、ビートルズを扱った作品の中では群を抜いて面白く、ビートルズのジョン・レノンが、かくして登場したんだと、唸っていた。
物語がストーリーテリングに満ち溢れているだけでなく、何よりも、ジョンを育てた50年代のリバプールの町の風景が魅力的だった。
「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」が生まれた、どことなく閉塞された雰囲気の赤い鉄柵の門の孤児院。ビートルズデビュー前後にビートルズファンで沸かした「キャバーン・クラブ」などなど。
ロンドンには何度か行ったことがあるが、そのシークエンスを見ているうちに、リバプールという町に、このまんま飛んでみたくなっていた。
リバプールとビートルズ。
リバプールという港町でなければ、ビートルズは生まれなかったのかもしれない。
母親を亡くした若き頃のポール・マッカートニーとの出会いと友情も素晴らしく、何よりもジョン・レノンを演じたアーロン・ジョンソンの演技も卓越だった。
サム・テイラー・ウッドという女性監督が撮ったとわかり、「そうか、そうか、やっぱり、そうだった。母親と息子の確執は母親やった女でなければ撮れないですよね、これはある種の女性映画でもあり、ホームドラマでもありますよね」と、小中陽太郎さんに言うと、「ジョンの平和主義も反戦思想も、この母親という女性たちが礎だったんだよね」と、意見が一致。
試写を見た後、六本木のカフェで小中陽太郎さんから、ジョンとヨーコの超有名な「ベットイン」のエピソードなどの、とっておきの思い出話を聞いて、なおさら、ジョン・レノンの偉大さが、心に沁みた私だったのだ。
11月5日から公開
【監督】 サム・テイラー=ウッド
【出演】 アーロン・ジョンソン 、 クリスティン・スコット・トーマス 、 アンヌ=マリー・ダフ