マリリンの映画日記

エッセイスト瀧澤陽子の映画ブログです!新作映画からオールドムービーまで幅広く綴っております。

映画コラム「映画に学ぶ」連載が4年目に突入

2022年04月08日 | 映画

読売新聞姉妹紙「船橋よみうり」の映画コラム「映画に学ぶ」の連載が4年目に突入しました。好評とのことで、筆者冥利に尽きます。

引き続き、がんばりますので、どうかよろしくお願いします。

第2、4 土曜日に掲載されています。なお、ウエブ上でもご覧になれます。

funayomi.com/category/movie/ です。

ここまで頑張れたのも編集部の皆様のお力添えがあってのこと、感謝です。


「船橋よみうり」にて「映画に学ぶ」好評連載中

2020年11月14日 | 映画

日記、ずっと更新していませんでした。ところで、2018年から読売新聞姉妹紙「船橋よみうり」に映画コラム「映画に学ぶ」を好評連載中ですが、船橋よみうりの公式サイトでも閲覧できます。funayomi.com/category/movie/ にアクセスしていだけると、瀧澤陽子独自の映画コラムをご覧になれます。新旧問わず、私的に魅了された作品をピックアップして、好き放題書かせていただいています。

お時間がある方はぜひに!

因みに本日発行の11月14日号は、な、な、なんと社会現象にもなっている「鬼滅の刃」です。


6月23日から、「船橋よみうり」にて、映画コラムの連載が始まりました。

2018年07月23日 | 映画

 

第1号の作品が『カップ 夢のアンテナ』です。


実はこの日から、私自身もロシアに飛び、エカテリンブルクで日本対セネガル戦を見に行きました。

そのことは追ってまたご報告します。

お読みいただいている方からのご感想がいただければうれしいです!


因みに第2作目が寺島しのぶ主演の『オー・ルーシー!』を書きました。これからも、映画ファンが見たくなるような素晴らしい作品を紹介していきますので、よろしくお願いいたします。

『ビューティフル・デイ』

2018年05月22日 | 映画

ホアキン・フェニックスの印象とインパクトだけが残る作品だった。

しかし、作品には必須の監督や共演者がいる。

ということは、ホアキン・フェニックスだけの圧倒的存在感を脇が作ったということにも繋がる。

映画の手法は縦横無尽、なんでもありなんだと、感服するのである。

主人公は行方不明者の捜査を請け負うスペシャリスト。裏社会の救世主である。

人身売買で売られた少女を救う。物語は単純だ。

主人公の人生の背景にあるのは戦争のトラウマと父親の虐待。

このストーリーにロバート・デ・ニーロ主演した名作『タクシー・ドライバー』が重なる人は多々いるのではないかと思う。

実は私もその一人なのである。

ただ、決定的違いを一つ言えば、『タクシードライバー』は絶望の香りで幕を閉じるが、『ビューティフル・デイ』は絶望という闇の部屋に、真っ黒いカーテンに小さな穴が開き、一筋の光が射しこんでくるような余韻があるのだ。

だからこそ、タイトルが『ビューティフル・デイ』なんだと納得するのである。

6月1日から公開

【監督】リン・ラムジー

【出演】ホアキン・フェニックス  エカテリーナ・サムソノフ

 

 


『オー・ルーシー!』

2018年04月08日 | 映画

男と女の出会い方が面白かった。

場所が英会話スクールであるからだ。

寺島しのぶ演じる43歳の孤独な独身OL。会社でも、家族にもその個性の強さで嫌われ者になっている。

彼女の唯一の楽しみは、英会話スクールで、源氏名(?)ルーシーにならなければならないこと。本格的に英会話を学ぶには、アメリカ人になりきれっていう、怪しいが、コミカルな教育法である。

ルーシーになったとたん、彼女は今までにない自分を発見して、興奮し、高揚し、だらだらとした日常が一変するのだ。

彼女の中に成り得なかった自分が戻ってくる。いや、元に戻せば、なりたかった自分なのかもしれない。

作家の沢木耕太郎さんのご著書に「世界は使われなかった人生であふれている」という名作があるが、

まさに主人公は「使われなかった人生」を、現実という厚い壁の中で再現し、再生していく。

舞台が日本から、ロサンゼルス、サンディエゴに移るあたりも、ロードムービーとして楽しめ、実に小気味いい。

4月28日から公開

【監督】平栁敦子

【出演】寺島しのぶ 南果歩 忽那汐里 役所広司 ジョシュ・ハートネット

 

 

 


『スリー・ビルボード』

2018年02月09日 | 映画

『スリー・ビルボード』

実にいいタイトルだ。このタイトルがこの作品の核になっていることは間違いない。直訳すれば「3つの野外広告」とでもいいのだろうか?

私は、女がたくましく生きる作品が大好きだ。古くはシャーリーズ・セロンが主演した『スタンド・アップ』。そして、この『スリー・ビルボード』も然りである。

娘をレイプされた上、焼かれて殺された母親の復讐劇からこの物語はスタートする。警察が捜査に熱心でないことから、自らの手で犯人を探し出そうとして、片田舎の道路にポツンと立った、3つの巨大な看板に、犯人と警察に果たし状を訴えるかのようなキャッチコピーを書く。

復讐に獲りつかれた母親役がフランシス・マクドーマンド。この女優以外に誰が、この主人公を演じることができようか!!

そして、これが、単なる母親の復讐劇で終わっていないのが、この作品の奥の深さなのである。

捜査をあきらめていた警察の長官役のウディ・ハレルソン、人種差別主義の危険な警官役のサム・ロックウエル。

お互いに憎しみあっていたこの三つ巴の関係が、ウディ・ハレルソンの自殺から一気に流れが変わっていく。

この切り替えが実に見事なのである。

ラストに向けての展開に『スリー・ビルボード』の意味が鮮明に浮かびあがる。

3つの看板。しかし、これは「3人の人生の大きな看板」であったことに気づき、ハッとするのである。

こんな名作はめったに見れない。

見ないと損だと思う作品が減っている。

その中で、稀有な作品の一つになっていた。

上映中

【監督】マーティン・マクドナー

【出演】フランシス・マクドーマンド  ウディ・ハレルソン  サム・ロックウエル

   

 

 

 


『IT イット “それ”が見えたら、終わり。』

2017年11月15日 | 映画

子供のころはホラー映画が大好きだった。でも、大人になり年を取るにつれ、ホラー映画が嫌いになった。

というのも、大人になると、ホラー映画よりも、現実の社会や政治の方が、よっぽど恐ろしいことが判明するからである。つまり、ホラー映画が無用となった時に、人は初めて大人になるということか。

しかし、『IT』の原作者であるスティーブン・キングの作品だけは違う。

大人になっても、読みたい作家のままなのである。映画化されたものは、みーんな見たくなる稀有な作品を創り上げる天才であるからだ。それは、ホラーであっても、他のホラーと一線を画しているのは、人間の普遍的な心の闇を描いているからだろう。

 

思えば、大学生のころ見た『キャリー』『シャイニング』。ちょっと大人になってからは『ミザリー』『スタンドバイミー』『ショーシャンクの空に』。

いつまでも、心の中に火をともしてくれる作品ばかりである。

 

そして、今回の『IT イット “それ”が見えたら、終わり。』も、ちょっと大人になってから見た『IT』のリメイクである。

オリジナルもうまくできているが、今回のリメイクも頗る優れている。

登場人物の少年や少女が抱えるものは家庭の問題、家族間に起こりえる怒りであり、矛盾であり孤独感である。

いたたまれない家庭環境の子供たちの中から産まれた具現化された「それ」。「IT」。

「それ」「IT」は、過去でも未来でも、不幸な子供がいる限り、永遠に現れ続けるのだろうな。

 

公開中

 

 

 

 


『彼女がその名を知らない鳥たち』

2017年10月15日 | 映画

こんなこと言っちゃ、申し訳ないが、私は蒼井優ちゃんは超美人の女優だとは思えない。

「超」の除いた美人なのである。

だからこそ、その役柄の幅が広いのは一目瞭然。いろんな作品にチャレンジしている。

今回の『彼女がその名を知らない鳥たち』は、一言でいえば、男に騙されるアホな女、しかも、勤労意欲なしで、阿部サダヲ演じるきったない男の稼ぎにパラサイトして生きている。汚れ役である。

谷崎潤一郎の「痴人の愛」を思わせるような関係である。

物語はある種のミステリーが仕込まれていて、ストーリーテリングに富んでいる。とんとんと、蒼井優が物語を引っ張っていく。

終盤に向かった時に起きる大逆転。

その余韻を「純愛」とくくると、完結する。

10月28日から公開

 

【出演】
蒼井優 阿部サダヲ  松坂桃李 竹野内豊 村川絵梨 赤堀雅秋 赤澤ムック・中嶋しゅう 
【監督】白石和彌

 

 


『用心棒』

2017年05月14日 | 映画

恒例の船橋市南老人福祉センターでの、映画解説。ここんとこ、新旧問わず、どの作品を見てもピンと来なかった。

映画というのは、日常生活で、悲しいことや辛いこと、心配や不安ごとがあると、どうしても集中できない。これは致し方ない。逸脱できる時間の流れに身を任せるしかない。

やっと、なんとか、自分の平穏な日常に戻りつつあったのか、それとも、黒澤明監督の「用心棒」があまりにも、優れていたからなのか、私は、見終えると、しばらく茫然自失し、作品の持つ、躍動感やストーリーテリングに感服していた。

「用心棒」を初めて見たのが、確か、20代の後半だった。確かにその時も黒澤の世界、三船敏郎の男のダンディズムに酔っていた。

今から40年も前のことである。しかし、時空を超えて、再び、「用心棒」を見て衝撃を受けたのは、物語が単調でありながら、三船演じる「用心棒」の荒れた町を再生しようとするクレバーさ、それは姑息な手段をうまく使い、見ている私に驚くべき生命の力、平和への渇望、人が人として生きるには、自分のためでなく人のために生きる、そんな人間の矜持を心の中にぶち込んでくれたからだ。

世界の黒澤、世界の三船。この二人のマッチングは日本映画の誇りであり、この功績を抜けるものはないと言っても過言でないだろう。

先日、あのイケメンのアラン・ドロンが引退した。そのアラン・ドロンが一番尊敬していたのが、三船敏郎だそうだ。アラン・ドロンの「サムライ」はかなり三船敏郎を意識しているがよくわかる。

しかし、60年代の日本映画は奇跡が起きたかのように、良作。傑作が巷に洪水のように流れこんでいた。

優れた監督たち、俳優陣。

そう思うと、今の日本映画はちょっとかなぁ?なんて、過去を憧憬している。

 

 

 


『世界一キライなあなたに』

2016年09月30日 | 映画

 

「ラブストーリー」というキャッチコピーの作品に触手が動かなくなったのは、年老いてきた証拠なのである。

年を取れば取るほど、実はラブストーリーを見て、心身ともに活性化すべきなのかもしれない。

ただ、あまたあるラブコメの陳腐なからくりの作品には辟易しているので、できれば、上質なラブコメに出会いたい。しかし、そんな作品を探すのは至難の技である。

やっと探した。『世界一キライなあなたに』である。

プレスシートには「女性が喜ぶ要素が満載」とか、「今年世界で最もヒットしたラブストーリー」と謳われている。

確かに甘いラブストーリーであるのだが、そこに組み込まれている重いテーマは、ラブストーリーという括りだけではないところが最大の魅力である。

愛する人が事故で車椅子の生活になったら?いや、これは若い人だけにはとどまらない。高齢化の日本であるからこそ、この問題は痛切に絡んでくるのだ。

「生」は選ぶことができないが「死」は選ぶことができる。

そんな重い選択を抱えた、確かに上質なラブストーリーなのである。

 

10月1日公開

【監督】シーア・シェアイック

【出演】エミリア・クラーク  サム・クラフリン

 


『君の名は。』

2016年09月09日 | 映画

凄い人気の『君の名は。』をやっと、劇場で見た。口コミで、公開から興業収入を伸ばしている作品ということが理由の一つだった。

近所のシネコンは、台風にも関わらず、若い人で溢れていた。その人たちが前売りですでに購入しているチケットが『君の名は。』であることは、一目瞭然だ。他の作品は空席ばかりだったからだ。

上映30分前に着き、まだまだち空席がたくさんあるとばかり高をくくっていた私は、やっと一席得ることができた。

シネコンなのに、なぜか、昔の映画館の小屋のような活気がある。昔の映画館は、上映時間の前からごちゃごちゃし、人々の期待感で溢れていたからだ。映画しかレジャーのなかった時代だ。私はこのざわついた風景を見ただけで、至福の思いだった。

さて、本家本元の作品である。

先日、シャマラン監督の『シックスセンス』を見直し、その哲学に胸が打たれていた。こんなに素晴らしい作品であったのだと、改めて思った。その余韻が、まんま、『君の名は。』に繋がった。

時空を超えて、救済を求める者、与える者、それが、一本の組紐で繋がっていく。愛する者を失った悲しい人々にとって、夢物語になるかもしれない。しかし、一時の幸福の時間を取り戻すことができる希望の物語でもあるのだ。

大ヒット、納得!

 ラストの運命的な融合、泣けました。

公開中

監督:新海誠


『グッバイ、サマー』

2016年08月11日 | 映画

 

「旅」とはいったい何か?

私にとっての「旅」は自分が何者であるかを知るためのものである。異国の人々、異国の風景、異国の文化に出会うことにより、日本人という「私」を確認できるからである。そして、何よりも魅力的なのは、「日本人」という「私」が束の間、異文化の中にいつしか溶け込み、得難い経験をして日本に戻ることなのである。

 

今回の『グッバイ、サマー』は『スタンド・バイ・ミー』のフランス版のような作品である。学校や家庭で悶々とした悩みを抱えている14歳の二人の少年が、夏休みの間、手作りのキャンピングカーを作り、旅に出る物語である。

ここで、最大のエッセンスとなるのが少年たちの足となる「ログハウスつきの手作りの車」だ。

免許もない二人の少年たちが苦肉の策で作った「車」。それは、少年たちだけでなく、世界に生きる大人たちにとっても、夢のような「車」なのである。

この「車」は、学校や家庭、いや社会が管理するある種の「枠」から脱出するための、自由と解放の象徴なのである。

夏休みが終わり、新学期が始まる。そこで待っているものは?

子供のころ、友達との出会いと別れを経験をした者ならば、誰もが共感できるのではないだろうか…。

 

9月10日より公開

[監督・脚本] ミシェル・ゴンドリー

[出演]アンジュ・ダルジャン  テオフィル・バケ  オドレイ・トトゥ


『海よりもまだ深く』

2016年05月19日 | 映画

高度成長、中流階級の象徴。そして、憧れの集合住宅がかつての「団地」だった。

私も若い頃、2年間ほど、団地住まいをしたことがあった。緑に囲まれ、公園もたくさんあり、環境は抜群だった。

しかし、現在では、老朽化が進み、そこに住む人は高齢者ばかりになっているという。

是枝裕和監督ご自身も団地で青春時代をおくったことから、今回の『海よりもまだ深く』を撮ったという。

夫を亡くし、団地で一人住まいをしている年老いた母親役が樹木希林。そこに、夢ばかりを追う息子が訪ねてくる。

その展開は是枝監督の「歩いても歩いても」を見た人なら、誰もが想像できるだろう。

登場する家族たちの、何気ない所作と会話。

でも、そこには高齢化に向かう団地の未来への危惧が映し出されている。

とりわけ、母親役の樹木希林の存在は、この作品の重要な核になっている点は見逃せない。

樹木希林なくして、この作品は成立しなかったと言っても過言ではない。

5月21日から全国公開

【監督】是枝裕和

【出演】樹木希林  阿部 寛  真木よう子 小林聡美 リリー・フランキー  橋爪 功


『マイケル・ムーアの世界侵略のススメ』

2016年04月03日 | 映画

あのマイケル・ムーア監督である。最新作である。

今回、ムーア監督は、アメリカを出て、イタリア、フランス、フィンランド、スロベニア、ドイツ、ポルトガル、ノルウエー、チュニジア、アイスランドに上陸する。

それぞれの国には、それぞれの問題や病巣があるのだが、ムーア監督はアメリカが見習うべきそれぞれの国の優れた常識を発見する。

その痛快さったらない。たとえば、フランスの小学校の給食は食器はすべて陶器、贅を尽くしたフレンチフルコースが支給されている。しかも無料。スロベニアでは、学校の授業料がすべて無料。

アメリカでは考えらない常識である。そして、これはまさにアメリカを踏襲している日本の常識にも然りなのである。

ムーア監督が日本に来なかった理由もこの辺にあるのかもしれない。

いずれにしても、ムーア監督が侵略する9か国は存分に楽しめる。暗い世界観の中で、なぜかポジティブになれ、大きな希望が持てる痛快なドキュメンタリーコメディになっている。

改めて、マイケル・ムーア監督に感服である。

  

5月27日から公開 TOHOシネマズみゆき座、角川シネマ新宿などでロードーショー。


『キャロル』

2016年02月13日 | 映画

レスビアンをテーマにした作品で感動したのが、1961年の『噂の二人』。監督がウイリアム・ワイラー。主演がオードリー・ヘップバーン、シャーリー・マクレーンだった。オードリーもシャーリーも一番脂がのったころで、最高に美しかった。

『キャロル』を見た時、私はなぜか、ふっと『噂の二人』が頭に浮かんだ。

裕福な家に嫁ぎ、かわいい娘までいる主婦・キャロルを演じるのがケイト・ブランシェット。デパートの店員をしながらも、写真家を目指すのがルーニー・マーラー。

この二人の出会いは、売り子とお客の関係から始まる。

一見、ありそうでなさそうなミステリアスな出会い。お互いが惹かれ合うエクスキューズが、二人だけの車の旅によって露見されていく。

女性という同性であるがゆえに、お互いの心の病みへの憐憫の情が沸騰点に達した時、二人はついに結ばれる。

その狂おしい二人の姿を、優しく眺めるようにカメラが追う。まさに耽美と退廃である。

ラストのケイト・ブランシェットの表情は、もしかしたら、映画史上、最高の表情として、賞賛され、語り継がれるに違いない。