『スリー・ビルボード』
実にいいタイトルだ。このタイトルがこの作品の核になっていることは間違いない。直訳すれば「3つの野外広告」とでもいいのだろうか?
私は、女がたくましく生きる作品が大好きだ。古くはシャーリーズ・セロンが主演した『スタンド・アップ』。そして、この『スリー・ビルボード』も然りである。
娘をレイプされた上、焼かれて殺された母親の復讐劇からこの物語はスタートする。警察が捜査に熱心でないことから、自らの手で犯人を探し出そうとして、片田舎の道路にポツンと立った、3つの巨大な看板に、犯人と警察に果たし状を訴えるかのようなキャッチコピーを書く。
復讐に獲りつかれた母親役がフランシス・マクドーマンド。この女優以外に誰が、この主人公を演じることができようか!!
そして、これが、単なる母親の復讐劇で終わっていないのが、この作品の奥の深さなのである。
捜査をあきらめていた警察の長官役のウディ・ハレルソン、人種差別主義の危険な警官役のサム・ロックウエル。
お互いに憎しみあっていたこの三つ巴の関係が、ウディ・ハレルソンの自殺から一気に流れが変わっていく。
この切り替えが実に見事なのである。
ラストに向けての展開に『スリー・ビルボード』の意味が鮮明に浮かびあがる。
3つの看板。しかし、これは「3人の人生の大きな看板」であったことに気づき、ハッとするのである。
こんな名作はめったに見れない。
見ないと損だと思う作品が減っている。
その中で、稀有な作品の一つになっていた。
上映中
【監督】マーティン・マクドナー
【出演】フランシス・マクドーマンド ウディ・ハレルソン サム・ロックウエル