映画欄に執筆、取材協力している女性誌「GRACE」(世界文化社刊)は12月号をもって、しばらくお休みになります。来年の秋、どこにもないような個性的で洗練された女性誌に生まれ変わりますので、読者の皆様、引き続き、「GRACE」をよろしくお願いいたします。
豊川悦司さん、竹中直人さんという、日本映画界を代表する、最高に個性的で最高の演技派の俳優さんと共にお仕事ができたことは、私の財産であります。そして、とても有意義な時間を過ごすことができました。
編集部の清水千佳子さんと一緒に、選りすぐれた作品に出会うまで、妥協を許さず、数百本の試写を見てきました。帰国子女の千佳子さんの英語の能力はハンパじゃなく、彼女のおかげで海外の映画情報は全て網羅することができました。
何よりも、清水千佳子さんは、気のいい人、ユーモアの分かる人、そして気配りの人でした。時々、お互いの意見がぶつかることもありましたが、そのやり取りは映画を愛するために生まれた純粋なディベートだったのです。
ご紹介できる作品はたった3本だけでした。ご紹介できなかった作品の中にも、たくさんの傑作、秀作、名作がありました。千佳子さんと私で、心を鬼にして、3本に絞る。候補から漏れた作品にいつも二人で「ごめんなさいね。紹介できなくて。本当にごめんなさい…。」と、心の中で謝っていました。
そして、読者の方から、「GRACE」の映画欄を参考に映画を見ているというおたよりを頂いた時、千佳子さんと私は感涙にむせびました。
原稿の最終チェックをしてくださった、副編集長の石川清子さんの多大なお力にも敬服と感謝です。超ベテランの編集者・清子さんのアドバイスのおかげで、私の原稿は、みるみるうちに立体感を帯び、実に説得力のある原稿に生まれ変わるのでした。清子さんは、まろやかで落ち着いていて、いつも笑顔を絶やさず、ちょっと見には若い頃の女優の八千草薫さんに似ています。そして、書き手は名編集者なくして存在しないと思いました。
映画作りが1つのプロジェクトに向かって、スタッフが一丸となって粉骨砕身努力し、全力投球するものなら、映画欄のページを作ることも全くそれと似ているのかもしれません。いずれにしても、楽しい思い出ばかりです。
ということで、今回ご紹介する作品は、竹中直人さんも絶賛なさった『未来を写した子供たち』です。12月号の「GRACE」に竹中さんの映画評が載っておりますので、ぜひともご覧ください。
本作はインドの売春窟に生きる子供たちがテーマです。売春をしなければ生活できない両親を持つ子供たちの境遇は、大ヒットした邦画『闇の子供たち』とダブる所がありますが、唯一違う点は『未来を写した子どもたち』には希望があるということでしょう。
アメリカから訪れた女性写真家・ザナ・ブリキスが、このインドの不遇な子供たちを救うために、ボランティアで写真を教える。カメラを持ち、自由に写真を撮ることで、暗かった子供たちの表情が活き活きとしてくる。
ファインダーを通して、今ある不遇から脱出し、希望に満ちた自分たちの未来が見えてくる。まさしく、そのタイトルの通り『未来を写した子どもたち』なのです。
何よりも、写真家・ザナの無償の救済活動は、「同情するよりも行動しろ」と、強く私に教え導いててくれました。
ぜひともご覧になっていただきたい、感動のドキュメンタリー映画です!!!
未来を写した子どもたち公式サイト
11月22日よりシネスイッチ銀座ほか全国にて順次公開
監督 : ロス・カウフマン 、 ザナ・ブリスキ
出演 : コーチ 、 アヴィジット 、 シャンティ 、 マニク