韓国のお母さんが主人公の作品が大好きだ。その中でも、数年前に見た『母なる証明』のインパクトったらなかった。
韓国映画は、母親を描かせたら、多分、世界一なんじゃないかなって思っている。
『ポエトリー アグネスの詩』の主人公は、釜山で働く娘のために、その息子、つまり孫を預かり育てる初老のオバーサンである。だから、この作品は母親ではなく、祖母を描いているが、祖母と母親というのは、名前が変わるだけで、原点では同じなのではないかと思う。
このオバーサンの仕事はホームヘルパー。ある日、物忘れが酷いことから医師から初期の認知症を宣告される。
平穏無事に平和に生きてきたオバーサンに、この日を境に軒並みにアクシデントが押し寄せる。学校の友達の自殺に関与した孫への不信感と、孫を守る深い愛情が出たり入ったり。
どんどんと状況はオバーサンを孤独にしていく。
たった一つ、このオバーサンを救ってくれるたのが詩を書くことであった。
これだけの淡々とした物語なのだが、全身全霊を込めて、詩作に耽るこのオバーサンの姿を見ているうちに、なぜか泣けてくる。
試写を見て数ヶ月たった今でも、あのオバーサンの一つ一つの表情やしぐさが、心に焼きついて離れないのはなぜだろう?
2月11日から公開
【監督】イ・チャンドン
【出演】ユン・ジョンヒ キム・ヒラ パク・ジョンシン