朝の時間帯に週3日、晴海―日の出間を4往復する(東京湾クルージング提供)
東京都は22日から、日常の通勤手段として舟を利用する「舟通勤」の航路として、晴海(東京・中央)―日の出(同・港)間の運航を開始する。
都は2023年10月に豊洲(同・江東)―日本橋(同・中央)間の運航を始めた。身近な観光・通勤手段として舟運の活用を目指す。
15日正午から「東京舟旅」のホームページで予約を受け付ける。運賃は500円で所要時間は約5分。
毎週火・水・木曜日の朝の時間帯に運航する。午前8時30分に晴海を出発し、10時ごろまで約25分間隔で4往復する予定だ。
使用する舟は44人乗りで、車椅子やベビーカーの利用者も乗船できる。専用の容器やケージに入れればペットの乗船も可能。予約をしていなくても、定員に達しなければ乗船できる。
日経記事2024.05.12より引用
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朝から船で通勤なんて、カッコいいね。
2024年から新NISAの導入が始まり、投資信託の購入を検討する人が増えている。
ただ、これまで貯金がメインだった人からすれば、株式投資はリスクが大きいというイメージがあり、どう投資すればよいのか悩んでいる人も少なくないだろう。
どうすれば、もっと安心して投資を楽しみ、リターンを得ることができるのか。
約204兆円の運用資産残高を誇るティー・ロウ・プライスで約3.9兆円を運用するファンド・マネジャー(顧客から集めた資金を運用する責任者)のデイビッド・J・アイズワートさんに、「資産運用の初心者」を自認するフリーアナウンサー新井恵理那さんが話を聞いた(本文内敬称略。表記した純資産残高は2023年12月末時点で1米ドル=140.98円で円換算)。
初心者が投資や資産運用で成功するためには?
新井新NISAの導入が始まり、投資信託がますます注目されています。本日は「資産運用の現場監督」ともいえる運用責任者のアイズワートさんにお話を伺い、投資信託の素晴らしさの本質に迫ってみたいと思います。
まずは株式市場の動きについて伺いたいのですが、日経平均が4万円を超える水準まで上昇してきました。この動きをどう見ていますか。
アイズワート
私が初めて来日してから、もう15年がたちます。その間に多くの日本企業を訪問し、日本文化に対して非常に大きな敬意を抱くようになりました。
日本には、仕事を正確にきちんとやり遂げることを重んじる文化があり、AIや半導体も含めた多くの成長分野において、重要なテクノロジーを持つ企業が数多く存在しています。
新たなトレンドがグローバルに生まれつつある中、その重要な一翼を担える企業が日本にはあるのです。
だからこそ、日本企業の株式が上昇しているのだと分析しています。ところで、新井さんはどのように資産運用をしているのですか。
新井
実は、資産運用を始めたばかりの初心者です。あまりリスクは取りたくないので、インデックスファンド(日経平均など市場の指数に連動した投資信託)を購入して分散投資をしています。
米国やグローバルサウス(インド、ブラジル、インドネシア、サウジアラビアなど、経済的に発展途上にある新興国や発展途上国)の株式にも投資していますが、今後の成長に期待したい半面、損をする可能性もあるので、いつも不安はありますね。
アイズワート
投資を始めたことは賢明な決断だと思います。長期にわたる株式投資は、 資産を形成する上で大変有効な方法の一つといわれているからです。
ただし、資産運用には難しい面があるのも事実です。人間は進化の過程で、「猛獣に襲われそうになったら、危険を察知して逃げる」「自分が所属するコミュニティから追い出されないよう、周囲と歩調を合わせる」といった行動特性を身に付けました。
つまり、人間は生き残るためにリスクを避けることを学び、本来は「投資に向いてない」存在として進化してきたわけです。
そのため、人間が投資や資産運用で成功するためには、かなりのトレーニングや経験が必要です。著名なジャーナリストであるマルコム・グラッドウェルは、その著書の中で、「音楽であれスポーツであれ、習熟するためには少なくとも1万時間を費やさなければならない」と書いています。
その考え方によれば、積極的な株式運用で成果を上げるためには、1万時間をかけて経験や訓練を積む必要があります。
資産運用の世界には、「感情は冷静な思考を妨げ、損失をもたらす」という言葉があります。人間誰しも損はしたくありませんから、株価の変動に一喜一憂しがちです。
しかし、感情的になればなるほど、冷静な投資判断ができなくなってしまいます。だからこそ、感情に流されることなく、論理的な意思決定ができるようにするためのフレームワーク(枠組み)が必要なのです。
インデックス運用にはないアクティブ運用の魅力とは
新井
アイズワートさんは、アクティブファンド(市場に関連した指数以上のリターンを目指し、株式銘柄を入れ替える積極的な投資)の運用責任者を務めています。
アクティブファンドのメリットとは何でしょうか。
アイズワート
1つ目は、「インデックス運用にはないアイデアを生み出せること」。2つ目は、「リスク管理を重視して資産を守ること」、逆にいえば「リスクを取るための高度な能力を発揮して運用すること」です。
そこには、「豊富な知識や経験を生かし、ほかの誰もマネできないようなリスクを取ることによって、高い収益を上げる」、あるいは「リスクをしっかりと認識した上で資産を守る」「ほかの人たちが株高で多幸感に浸っているときに、冷静に市場の動きを見る」といったことも含まれます。
しっかりとファンドを運用するためには、人間が抱く感情を理解した上で、規律を適用していくことが重要です。
最近の例でお話ししましょう。新型コロナウイルスがまん延し始めた2020年初期のことです。みんなパニックでした。私も21世紀の世界で、こんなことが起きるのかと恐怖を抱きました。
しかし、私はフレームワークに立ち返り、冷静に自問自答しました。「これは構造的な問題か? 一過性の天災か?」「天災だとして、何がきっかけで世の中が変わる?」 私たちは医学界で先端を行くジョンズホプキンス大学へも出向いて調査しました。
結論は、ワクチンはいずれ開発され、経済は徐々に正常化へと向かう、したがって目先のリスクには注意しながらも、その後の世界を想定して運用していくべきだと考えました。
そしてパンデミックのさなかでしたが、私はアナリストに一斉メールを配信しました。「市場の下落リスクについては私が考える。君たちアナリストは銘柄選択に集中し、今後数年を見越して最も魅力的と考える銘柄を挙げてほしい。
株価が下がったからという安易な理由はいらない」と。アクティブ運用を行うためには、適切なタイミングで的確に判断しながら、難しい意思決定をするための高度な判断力が求められます。
その能力こそが、長期の株式投資に生きてくるのです。
新井
ファンド・マネジャーも生身の人間ですから、時には失敗することもあるけれど、プロである以上は自分を律する強い意志が求められる。
そのためには、立ち返るべき原則や規律を持つことが大事だということですね。
アイズワート
一見難しいことを、楽々とこなしていくことが、真のプロだと思います。新井さんはキャスターとして活躍していますが、この仕事で成果を出すために、どのようなスキルを磨いてこられたのでしょうか。
新井
キャスターとして一番大事なことは、つくり手の意図をくみつつ、視聴者に役立つ情報を提供できるよう、バランスを見ながら会話することだと思います。
アイズワート
なるほど。それはある意味、ファンドの運用に似ているかもしれません。 私たちは運用にあたり、「お客様の利益を第一に考える」ことをうたっています。
実は、私が運用するファンドに、私の母も投資しているのですが、母からは常々「あまり大きなリスクは取らないで。でも、リターンを上げるための必要なリスクは取ってね」と言われています。
この母の言葉は、まさにお客様を代弁するメッセージとして、私が資産運用をする際の指針となっています。
「お客様の利益」を第一に考え、長期的な成果を重視する
新井
やはり「相手の立場に寄り添う」ことが大切だということですね。ところで、アイズワートさんが所属するティー・ロウ・プライスとはどんな会社なのですか。
アイズワートティー・ロウ・プライスは1937年に設立された85年以上の歴史を持つ運用会社です。創業者であるトーマス・ロウ・プライスJr.は「成長株投資の祖」として知られる伝説のファンド・マネジャーです。
その当時、株式投資といえば、市場環境や投資家動向から株価の上げ下げを予想して売買するのが普通でした。
そんな中、プライスJr.は「お客様の豊かさのために最善を尽くすこと」をミッションに据え、予想すべきは「株価」ではなく、会社の「将来の業績」と定め、投資先企業についてしっかり調査を行い、長期的な視点から投資することを目指したのです。
面白い逸話があります。プライスJr.は会社設立前に証券会社に勤めていました。
営業成績はひどいものだったそうです。というのも、調査に時間をかけ、株を購入させたらお客様にずっと保有することを推奨したからです。
これでは、株の売買から得られる手数料がもらえません。しかし、数年後にはお客様から信頼を得て、預かり資産やお客様が増えていったそうです。
現在でも、私たちは短期的な成果よりも長期的な成果を重視していますし、市場変動に対する耐性を高め、お客様の利益を考えることを第一に据えています。
ITバブル崩壊から顧客を救った勇気ある決断
新井
今もティー・ロウ・プライスには、創業理念が脈々と受け継がれているということなのでしょうか。
アイズワート
はい、そうです。相場というものは、時として非常に理不尽で、非合理的な動きを見せることがあります。2000年にITバブルが崩壊したときのお話をしましょう。
当時ティー・ロウ・プライスは、ITバブルで株価が高騰したため、お客様にとってのリスクが高すぎると考え、IT 銘柄への投資を避けるという判断を下しました。
このため、 著名な経済紙は私たちが「リターン機会を逸している」といって、私たちを揶揄(やゆ)しました。しかし、まさにこの決断によって、私たちはITバブル崩壊の大津波から、お客様を守ることができたのです。
ちなみに、この時期にティー・ロウ・プライスと同様に一部からバッシングを受けていたのが、「自分が分からないものには投資しない」と言ってIT銘柄への投資を避けていた投資家のウォーレン・バフェット氏です。
必要ならば、私たちが批判の矢面に立ってでもお客様を守る、それが私たちの仕事です。そうすれば、短期的には期待したほどの運用成績が上がらなかったとしても、長期的には成果が出て、お客様の資産保全と長期的な目標達成につなげることができる。
こうした考え方が、ティー・ロウ・プライスに根付いています。
新井
「目先の利益を追求するのではなく、お客様の資産を守ることが第一」という考え方は、とても安心感が持てますね。
そんなアイズワートさんにとって、ファンド・マネジャーのお仕事とは何でしょうか。
アイズワート
グローバルなファンド・マネジャーは、たくさんの子どもを持つ親のようなものかもしれません。実際、私には4人の子どもがいます。
子どもが成長する過程ではいろいろなことが起きますが、親が目先の些末(さまつ)なことに気を取られて右往左往していたら、子どもたちはどうなるでしょう。本当に大事なことだけに集中して、子どもたちがしっかりと育つよう心血を注がなければならないのです。
ファンド・マネジャーも同様です。自分が選定した企業が健やかに成長してほしいと心から願いつつ、長期的な観点から見て重要でないことには一喜一憂しない。
もちろん、 短期的なファンドの価格変動に対応する必要はありますが、それは子育てで紆余曲折(うよきょくせつ)を経験しながら対応していくのと同じことです。
そのためにはストレスへの対応能力も必要ですし、重要なことだけに集中する能力も求められます。
グローバル市場に投資し、様々な成長機会をとらえる
新井
アイズワートさんは現在「ティー・ロウ・プライス 世界厳選成長株式ファンド」の運用責任者を務めています。これはどんなファンドなのですか。
アイズワート
当ファンドは、世界の幅広い企業の成長機会をとらえるという運用戦略に基づいてつくられたファンドです。その元となる運用戦略は1996年1月末に運用を開始し、25年以上の長きにわたって良好な運用パフォーマンスを達成し続けてきました。
投資先範囲をグローバルに幅広く持つことで、様々な成長機会への投資が可能になるというメリットがあります。
経済サイクルやテクノロジー普及の度合い、ビジネスモデルは国・地域ごとに異なるため、グローバル市場に投資することによって、様々な成長機会をとらえることができるのです。
私たちは「成長株投資」を、「あらゆるセクター、あらゆる地域において、収益の改善を見いだせるものに投資すること」と定義しています。
当ファンドと同じ運用を採用する米国籍ファンドは、長期実績や変化に柔軟な安定した運用が高い評価を受け、DC(確定拠出年金)など長期性年金資金の投資先ファンドとして数多く利用されています。
私自身も、社内のファンド購入プログラムを通じて長期で投資しています。そうすることで、投資家側の立場に立った運用を心がけられるからです。
新井
年金資金運用でも利用されているというのは、投資の初心者にとっては安心材料ですね。
今までアクティブファンドは選択が難しいと感じていたのですが、アイズワートさんのように「お客様第一」をモットーとするプロのお力を借りれば、安心して楽しく投資ができそうですし、わくわくしながら資産成長を楽しめそうです。本日はありがとうございました。
日経記事より引用
NTTドコモは10日、海外事業を統括する新会社を7月に設立すると発表した。
NTTグループとして、通信大手への出資を巡り計2兆円を超える損失を出した鬼門に再び挑む。キャッシュカウ(金のなる木)の国内通信事業は低迷する。海外で新たな収益源を構築し、「内向きの巨人」からの脱却を急ぐ。
「それぞれがグローバルビジネスを伸ばしていくことを期待したい」。NTTが10日開いた決算会見で島田明社長はこう強調した。
グループの海外事業はNTTデータグループに集約してきたが、BtoC(消費者向け)が中心のドコモを加える。
ドコモが約280億円を出資し、新会社「NTTドコモ・グローバル」を7月1日付で立ち上げる。ドコモの井伊基之社長は「子会社単位の海外展開は限界がある。グループ横断のサービスをそろえ、顧客に提案する手法が望ましい」と狙いを語った。
具体的には、次世代インターネット技術のWeb3(ウェブスリー)に関わる基盤を開発し、モバイル端末を起点にしたサービスで先行を狙う。複数メーカーの機器を組み合わせた低コスト通信網のオープンRAN(ラン)も展開し、アジアを中心に需要を見込む。
これまでグループの海外シフトを支え、海外売上高比率が6割に上るNTTデータグループにも手を打つ。
6月、海外事業会社の社長にアビジット・ダビーEVP(エグゼクティブ・バイスプレジデント)を充てる。米マッキンゼー・アンド・カンパニー出身で同社初の外国人トップだ。
NTTの海外挑戦は失敗の歴史だ。
ドコモは2000〜01年に、オランダのKPNモバイルや米AT&Tワイヤレスなど海外の通信大手に出資した。携帯電話のインターネット接続サービス「iモード」を世界展開する狙いだった。NTTコミュニケーションズも約6000億円で米通信ベリオを買収した。
だが、現地の規制変更などで携帯電話ビジネスは広がらず、IT(情報技術)バブルもはじけた。数千億円規模や1兆円を超える巨額資金を投じた海外事業の失敗は実に5度。損失は合わせて2兆円を超える。
失敗を教訓に海外の通信事業者は買収しない戦略に転換した。これが「内向きの巨人」と呼ばれる体質をつくる遠因になった。
事業環境を考えれば、グローバル化は差し迫った課題だ。グループの収益の半分を稼ぐドコモは携帯電話の官製値下げをきっかけに通信収入が低迷する。
NTT東日本とNTT西日本は固定電話事業の赤字が続き、35年度以降は年900億円と22年度の3倍に拡大すると試算する。
ドコモを巡っては、前田義晃副社長が6月14日付で社長に昇格する人事も正式発表した。非通信分野を開拓してきた前田氏へのトップ交代で海外事業拡大の足場も固める。
NTTを縛ってきたNTT法改正という追い風が吹き、海外展開のスピードをあげる素地は整った。「内向きの巨人」を返上できるか。もう失敗は許されない。
(宮嶋梓帆、高槻芳)
日経記事2024.05.12より引用
SBGの孫正義会長兼社長は「AI革命」の実現を目指す
・AI向け半導体の開発・製造にファブレス形式で参入
・データセンターや発電事業にも進出、総投資額は10兆円規模
・「世界で最もAIを活用するグループ」へ脱皮図る
ソフトバンクグループ(SBG)の孫正義会長兼社長が掲げる「AI(人工知能)革命」が動き出す。AI向け半導体の開発・製造を皮切りに、データセンターやロボット、発電事業にも事業を拡大する計画だ。
投資額は最大で10兆円規模となる見通し。米マイクロソフトやグーグルもAI分野に巨額の投資をしており、世界の大手が成長分野に一斉に参入する構図となる。
孫氏は昨年7月のシンポジウムで「(人間の知能を超えるAIは)水晶玉に未来を聞くかのごとく課題を解決してくれる。
日本は一番ど真ん中の光り輝く水晶玉を作らないといけない」と強調した。その後、決算発表の場には姿を見せない一方で、構想の実現に向けて世界を飛び回ってきた。
半導体の先端拠点である台湾や米国を次々に訪れただけでなく、自身の別荘に海外の協力会社の幹部を招くなどしてAI向け半導体分野への参入に向けた交渉を重ねてきた。
孫氏の掲げるAI革命はAIや半導体、ロボティクスの最新技術を融合し、あらゆる産業に革新をもたらすことだ。
その中核となるのが、大量のデータを効率的に処理できるAI向け半導体の開発・製造事業だ。米エヌビディアのような自社工場を持たないファブレス形式で参入し、2025年春をメドに試作品を完成。同年秋までに量産体制を作ることを目指している。
AI向け半導体開発については、SBGが約9割の株式を持つ英半導体設計大手アーム内に新部門を立ち上げる案を軸に検討を進めている。
アームは半導体の開発に必要な回路設計図をエヌビディアなどに提供しており、特にスマートフォン向けは世界シェアの9割超を握るプレーヤーだ。
数千億円規模が見込まれる当初の開発資金はアームの自己資金とSBGの支援でまかない、大量生産の体制が確立した後は開発部門をアームから切り出し、SBG傘下に置くことを検討する。
製造は台湾積体電路製造(TSMC)などファウンドリー(半導体受託生産会社)に委託する。既にTSMCなどと交渉し、生産枠確保のメドをつけた。
SBGがAI向け半導体分野への参入を検討するのは、この分野の加速度的な市場拡大が見込まれるためだ。
カナダの調査会社プレシデンス・リサーチの推計では、24年に300億ドル(約4兆6500億円)程度の市場規模は29年に1000億ドルを超え、32年には2000億ドル超に達する。AI向け半導体のシェア首位はエヌビディアだが、需要の急拡大で供給が追いついていない状況で、SBGは収益拡大の余地が大きいとみている。
現在主力の投資事業の損益が改善し、攻めの戦略を打ち出せる財務余力がついてきたことも大きい。
13日発表の2024年3月期決算は前の期の1兆円近い最終赤字から大幅に改善し、手元流動性なども十分な水準を維持する見通しだ。
孫氏の構想はAI向け半導体分野の参入にとどまらない。昨年10月の講演では人間の知能を超える汎用人工知能「AGI」に言及し、運輸、製薬、金融、製造、ロジスティクスと全ての産業に影響を与えるとの見方を示した。
こうした認識を基に、まず26年以降に自ら開発した半導体を備えたデータセンターを欧米やアジア、中東に建設する計画だ。データセンターは大量の電力を必要としており、発電需要も高まることから発電分野にも進出する。
核融合発電など次世代技術の進展をにらみつつ、太陽光や風力といった再生可能エネルギーを中心とした発電インフラの構築を目指す。
産業用ロボット分野については2月に、サウジアラビアの政府系ファンドの傘下企業と組み、製造に乗り出す方針を公表している。
各事業の拡大にはM&A(合併・買収)も活用する方針で、一連の投資に数兆円規模の自己資金を投じる計画だ。さらに、中東各国の政府系ファンドなど外部投資家からも出資を募り、合計で10兆円規模のリスクマネーを投じることを目指す。
孫氏が率いるSBGはこれまでもテクノロジーの進展に合わせて、何度も主力事業を転換してきた。
1990年代後半のインターネットの普及期には米ヤフーと共同出資でヤフーの日本法人を設立し、ネットビジネスを展開。2000年代後半には英ボーダフォンの日本法人や米スプリントの巨額買収に踏み切り、モバイル事業への傾斜を強めた。
17年のビジョン・ファンドの運用開始以降は投資事業に重心を傾けてきたが、今後は「世界で最もAIを活用するグループ」(孫氏)への脱皮を目指す。
世界の巨大テック企業もAI分野に多大な経営資源を投入しており、マイクロソフトやグーグル、アマゾン・ドット・コムなどは独自の半導体開発に乗り出している。
SBGはこれらの米テック大手にアーム設計の半導体の回路図を提供したり、データセンターなどのインフラを提供したりすることで、競合ではなく、協業関係を築きたい考えだ。
ただ、AI半導体の開発やデータセンターの運営に向けてこれから人材やノウハウを蓄積していく必要があり、巨額投資のリスクは少なくない。何度も大胆な「賭け」に打って出て、今のSBGを築き上げた孫氏だが、今回の構想実現も難易度の高いものとなる。
(四方雅之、ロンドン=山下晃)
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。
明日の決算内容に注目してます。
過去3四半期の実績をみると当期利益が昨年3月期の9701億円の赤字から大きく改善しており、2024年3月期はさらに改善が見込まれています。
英国アーム社の2024年1-3月期の業績は好調で純利益が大きく改善していること、およびソフトバンクビジョンファンドの投資損失が大きく減少していることが主因のようです。
アーム社の決算で2025年3月期の売上見通しが市場予想を少し下回ったことで株価が低下しましたが、GPUを開発し圧倒的な競争力をもって躍進するエヌビディアとの取引もあり将来性が高いと思われます。
半導体市場はブレが大きいですが需要はさらに拡大していくことが見込まれます。