落選が確実となり、支援者に頭を下げる下村博文氏(27日、東京都板橋区)
衆院選で自民党の旧安倍派議員ら政治資金収支報告書に不記載があった前職に逆風が吹いた。
特に旧安倍派は関連した候補42人のうち26人が落選した。2023年12月時点で54人いた同派の衆院議員は6割減の22人まで減った。
今回の衆院選での当選者全体を派閥・旧派閥別にみると、麻生派が最も多い31人で、次いで旧茂木派、旧岸田派の順だった。
旧安倍派は不記載議員が多かったことが響き、23年12月比の減少幅が最も大きかった。
不記載議員は党本部が公認しなかったり、比例代表との重複立候補を認めなかったりしたため、当選のハードルが上がった。
不記載議員全体でみると、公認を得られず無所属で出馬した9人のうち6人が落選した。比例と重複立候補できなかった前職は34人中20人が落選した。
比例での単独立候補が認められず、小選挙区に転出した上杉謙太郎氏も議席を失った。
離党して無所属で和歌山2区から出馬した世耕弘成元経済産業相は、自民公認だった二階俊博氏の三男・伸康氏に勝った。
閣僚経験者でも落選が相次いだ。非公認で無所属で出馬した下村博文元文部科学相や高木毅元復興相、比例との重複立候補を認められなかった武田良太元総務相や西村明宏元環境相が敗れた。丸川珠代元五輪相、鈴木淳司元総務相らも議席を失った。
旧安倍派幹部の「5人衆」のうち、高木氏以外の4人は当選した。世耕氏のほか、公認を認められず無所属で出馬した西村康稔元経産相、萩生田光一元経産相、比例と重複立候補できなかった松野博一前官房長官は勝利した。
自民、公明両党は衆院選で過半数割れの大敗を喫した。少しでも議席を増やすため、非公認で出馬した議員の追加公認を検討している。
石破茂首相は27日の日本テレビ番組で「それぞれの地域、選挙区で有権者の方々が厳粛な判断をしたわけで、尊重していかなければいけない」と述べた。
勢力が縮小した旧安倍派の議員からは「選挙が終わったら仕返しだ」といった党執行部への不満が出ている。
衆院選の終盤には党執行部が非公認候補の政党支部に活動費2000万円を支出したことが批判の的となった。非公認候補や自民候補の失速を招き、「いらぬ誤解を招いた」「ありがた迷惑だ」といった反発が出ていた。
与党が衆院で過半数割れし、首相の政権運営も厳しくなる。党内は不協和音が広がりやすい状況になっている。
第50回衆議院選挙が2024年10月15日公示―27日投開票の日程で実施されました。候補者や開票速報・結果などをお伝えします。