米著名投資家ウォーレン・バフェット氏=ロイター
28日の米株式市場でダウ工業株30種平均は続落し、前日比23ドル(0.06%)安の3万8949ドルで引けた。注目度の高い1月の米個人消費支出(PCE)物価指数の発表を翌日に控えて積極的な売買は控えられた。
相場をけん引してきた巨大テック銘柄もこの日は小休止。一方で節目に向けて着実に歩みを進める銘柄がある。バークシャー・ハザウェイだ。
著名投資家ウォーレン・バフェット氏率いる同社のA種株は0.6%高で取引を終えた。
QUICK・ファクトセットによると時価総額は8971億ドル(約135兆5100億円)と、大台の1兆ドル突破が視野に入ってきた。米国で1兆ドルを突破した企業はテック銘柄しかなく、投資会社のバークシャーが達成できれば画期的だ。
企業価値の行方を左右するバフェット流投資の一端は、四半期ごとに垣間見える。
米証券取引委員会(SEC)に提出する「フォーム13F」という保有銘柄リストの開示だ。14日に発表した2023年末時点の開示ではアップル株の一部売却が話題となった。
一方で、ウオッチャーの目を引いたのは「1銘柄あるいは複数銘柄について掲載を省略した」とする報告書のただし書きだった。
前回報告に続いて2四半期連続で一部保有銘柄を伏せた。直近では20年9月末時点の報告書で同様に一部の保有銘柄を明かさなかった。
その期間に石油大手シェブロンや通信の大手ベライゾン・コミュニケーションズを買い進めていたことが事後に明らかになっている。
SECの規則によると、投資戦略を他者に知られないようにするなどの目的で、報告者は保有銘柄の一部秘匿をSECに3カ月単位で要請できる。
期間は最長1年だが、必要と認められれば延長を申請することも可能だ。20年9月末のシェブロンなどの保有は21年2月に追加開示した。今回は2四半期連続で秘匿が続いたため、すわ大型投資かと観測を呼んだ。
対象銘柄を探るヒントは、バークシャーが24日発表した23年の年次報告書にある。
保有株式の取得原価(簿価)の欄をみると「銀行、保険、その他金融株」分は同年9月末比10%弱増えた。
9月末分も6月末比で5%強多かった。フォーム13Fでは23年後半に金融株の追加取得はなかったのにもかかわらず、だ。「隠密買い」の対象は金融株である可能性が高い。
米投資情報誌バロンズは大胆に「保険のチャブか運用大手ブラックロック、あるいは金融大手モルガン・スタンレーだろう」と推測する。
ただ、候補になりそうな銘柄は他にもある。売買高が年後半に増えた金融株をふるいにかけると、取引所大手の米インターコンチネンタル取引所(ICE)や不動産投資信託(REIT)のサイモン・プロパティーズ、運用大手ティー・ロウ・プライスなどがある。
クレジットカード大手ディスカバー・ファイナンシャル・サービシズも条件に当てはまる銘柄の一つだ。
同社買収を2月19日に発表した米銀キャピタル・ワン・ファイナンシャルの株式を、バークシャーは23年1〜3月期から保有している。
年次報告書に毎年掲載する「株主の手紙」で「目を見張るような投資収益をあげられる可能性はない」とつづったバフェット氏は、どんな銘柄に投資妙味を見いだしたのか。明らかになるのは早くても次のフォーム13Fの開示時期である5月中旬だ。
5月4日にネブラスカ州オマハで開く株主総会で話題になることだろう。
(ニューヨーク=竹内弘文)