三菱UFJフィナンシャル・グループは27年3月期に1兆6000億円以上の純利益を目指す
三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)は2025年3月期からの新しい中期経営計画をまとめた。最終年度にあたる27年3月期の連結純利益を1兆6000億円以上にする方針だ。
24年3月期までの前中計の1兆円以上の目標から引き上げる。金利上昇を追い風に、利ざやの改善や積極的なM&A(合併・買収)を続けるアジアビジネスで収益を拡大する。
ROE、9%程度目指す
同社は15日の24年3月期の決算発表にあわせて3カ年計画の内容を説明する。
24年3月期の連結純利益は目標値の1兆3000億円を上回る水準だったとみられ、3年間でさらに引き上げる。24年3月期まで3カ年の純利益の平均と比べ、推定で3割程度積み増す形になる。
1兆6000億円を超える純利益は日本企業ではトヨタ自動車に続く規模となる。1兆円前後で推移する総合商社を上回る。
本業のもうけを示す営業純益は27年3月期に2兆1000億円をめざす。24年3月期の計画比で4割増を見込む。自己資本利益率(ROE)は9%程度を見込み、24年3月期の計画から1.5ポイント改善する。
収益拡大の追い風になるのが金利上昇だ。三菱UFJの連結総資産は23年12月末時点で397兆円と他の大手行と比べ100兆円規模で上回る。資産が多いだけに金利上昇の恩恵も受けやすい。
マイナス金利政策の解除で企業や個人の預金も運用収益に貢献する。
インドのノンバンクや東南アジアのフィンテックなど出資先の成長を取り込むほか、大企業向けの営業では脱炭素化を見据えた企業の設備投資を後押しする。
新中計では社会課題の解決に向け、KPI(重要業績評価指標)を設定する。
低所得者向けの小口融資などアジアでデジタル技術を使った融資を1400万人に提供するほか、支援先のスタートアップの時価総額を20兆円まで増やす。
環境や社会分野に対する19〜30年度での投融資目標は従来の35兆円から100兆円に積み増す。
経費削減から攻めの成長投資へ
新中計は「成長を取りにいく3年間」と位置づける。
亀澤宏規社長は23年末に実施した日本経済新聞のインタビューで「(21〜23年度の中計では)経費削減をやってきたイメージがある。攻めの姿勢で収益や成長を取り込む」と強調していた。
次の3年はリテール(個人向け営業)や資産運用・管理など各事業で成長投資にかじを切る。
リテールでは顧客基盤の維持に向けて新型店舗の出店も検討する。新規事業分野は出資先の「のれん」を除いた営業純益ベースで300億円を目指す。
新中計で1兆6000億円以上の業績目標を掲げるのは、従来進めてきた経営の効率化が成果をあげている面も大きい。
マイナス金利下の18年3月期に515だった店舗数を足元では約320まで削減。低採算のリスク資産も減らし、企業向け貸し出し利ざやの拡大でも先行した。
米地銀MUFGユニオンバンクの売却など、収益性が低下した事業の整理も進めてきた。
金利ある世界への回帰で楽天やKDDIなど異業種も含めた競争環境は厳しくなる可能性が高い。リテール分野では三井住友FGがSBI証券などと連携して始めた総合金融サービス「オリーブ」の顧客数が200万を超えた。
QRコード決済ではPayPayの存在感が高まり、銀行口座を使ったサービスの利用者を増やそうとしている。
株価の面では三菱UFJは3月にPBR(株価純資産倍率)で一時1倍を突破して以降、伸び悩んでいる。投資銀行業務に強い米大手銀の水準とはなお開きがある。
守りから攻めに転じる投資強化の裏には三菱UFJの危機感もにじんでいる。
【関連記事】
日経記事2024.05.14より引用