米ブラックストーンが日本で開発するデータセンター
海外の大手投資ファンドによるデータセンターの買収が急増している。2024年の買収額は既に23年通年の2倍強に達した。
米ブラックストーンがオーストラリアの大手運営会社を2.3兆円で取得して日本やアジアへの本格進出への足がかりをつくるなど、投資競争が激しくなっている。
ブラックストーン、日本・アジアへの足がかりに巨額買収
米調査会社のディールロジックによると、プライベートエクイティ(PE=未公開株)ファンドによるデータセンターの買収額は24年1〜9月に286億ドル(約4.2兆円)に上った。
既に23年通年の2.1倍の規模となり、ここ数年で増加傾向に拍車がかかっている。
「アジアの空白地帯を埋める上で非常に意義のある買収だった」。ブラックストーン日本法人の代表で、不動産部門を率いる橘田大輔氏は豪エアトランクの買収の成果をこう話す。
ブラックストーンは北米を中心に買収を重ね、建設中のものを含めると世界最大の550億ドル規模のデータセンターを保有する。さらに700億ドルを超える開発計画を抱えているが、データ利用の増加が見込まれるアジアでどう展開していくかが課題だった。
アジア最大の運営会社であるエアトランクの買収はカナダの公的年金のカナダ年金制度投資委員会(CPPIB)との共同で、金額は240億豪ドル(約2.4兆円)に上る。
エアトランクのデータセンターは4割が豪州、2割がシンガポールにある。日本も全体の2割で、国内で既に4つの施設が開発済みという。
世界で急増するデータセンターの主な顧客は米グーグルや米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)といった一部の巨大IT(情報技術)企業だ。
ブラックストーンはスピード重視の巨額投資で早期に需要を囲い込む戦略を描く。
日本での開発も加速させる。橘田氏は「エアトランクは施設の安定運営に必要な優秀な社員が多く、ブラックストーンによる土地確保や資金調達などを組み合わせればさらに伸ばせる」と強調する。
日本勢はSBGが建設の構想
世界最大の運用会社、米ブラックロックは米マイクロソフトなどとの合従連衡に動く。
両社はデータセンターや電力網に投資する300億ドル(約4.3兆円)規模のファンドを立ち上げる。インフラ投資ファンドとして世界最大級になる見通しだ。
ファンドを運用するジェネラルパートナーは、人工知能(AI)戦略を打ち出しているアラブ首長国連邦(UAE)アブダビ首長国の投資会社MGXが務める。
AI向け半導体を開発する米エヌビディアも画像処理半導体(GPU)を提供して支援する。
米KKRも24年6月にシンガポールの通信最大手、シンガポール・テレコム(シングテル)と提携し、同国のデータセンター運営大手に30億シンガポールドル(約3400億円)の投資を決めた。
日本勢ではソフトバンクグループ(SBG)が傘下の英半導体設計アームのもとでAI向け半導体を開発する構想を水面下で温めている。
自ら開発した半導体を備えたデータセンターを26年以降に欧米やアジア、中東に建設する道筋を描く。
孫正義会長兼社長は6月の株主総会で「AIデータセンターを次々と、グループ総力を挙げて世界中に作っていく」と強調した。
資金の拠出元として中東の投資家と連携を探るほか、世界の投資ファンドを巻き込む可能性がある。
国内では通信子会社ソフトバンクを通じて北海道でAIデータセンターの整備に着手し、26年度の開業を目指している。
ブラックストーンの橘田氏は「データセンター運営には高い専門性が必要で、一朝一夕で参入できる領域ではない」と指摘する。
稼働に支障が出た場合の影響が大きいため、リスク管理などのノウハウも重要になる。
クラウドやAIの利用拡大を背景に経済産業省は世界のデータセンターの市場規模が19年の6兆円から30年に25兆円に伸びると予測する。
投資額が大きいためファンドの陣取り合戦の様相が強まっており、競争が激しくなっている。
データセンターへの投資は不動産やインフラ用のファンドから資金を出すのが一般的で、資金の出し手には中東や米欧の機関投資家も多く含まれるとみられる。
日本での施設整備に日本勢の関与を増やすことも課題になる。
(上田志晃、四方雅之)
ひとこと解説
世界でAIやビッグデータ、ブロックチェーンの利用がふえていきデジタル化が大きく進みつつあります。
ただ電力を大量に使用するため、温室効果ガスの排出をいかにへらしていくかが課題になります。
世界的に企業の情報開示の標準化と義務化が進みつつあり、企業はサプライヤーをふくむスコープ3排出量の開示が必要です。
再生可能エネルギーの供給を増やし、それと需要の大きい都市をむすぶグリッドへの投資が重要になってくるでしょう。
ガスをつかった電力を使う場合には、その排出を回収するCCUSや、大気から回収するCDRへの投資も必要になってきますのでその費用も考えることが重要です。
世界のトレンドにも目配りが必要になります。
日経記事2024.09.27より引用
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