メキシコ・コアウイラ州にある米GMの工場=ロイター
【ニューヨーク=竹内弘文、メキシコシティ=市原朋大】
トランプ次期大統領がメキシコとカナダに対する25%の関税をソーシャルメディア上で突然予告し、26日の米州の金融市場は揺れた。
完成車・自動車部品の輸入コスト増が懸念され、米自動車大手「ビッグスリー」時価総額は約90億ドル(約1兆4000億円)消失。メキシコやカナダの通貨も急落した。
GM、株価一時9%安
ゼネラル・モーターズ(GM)の株価は一時前日比9%安となり、S&P500種株価指数採用銘柄で下落率トップになる場面があった。
フォード・モーターは同3%安。「クライスラー」を傘下に持つ欧州ステランティスは、重複上場先のニューヨーク証券取引所で株価が一時6%安となった。
3社の時価総額は米東部時間午後3時30分時点で、前日比90億ドル少ない約1420億ドルとなった。米自動車部品大手のアプティブ(旧デルファイ・オートモーティブ)も株価は一時4%安となった。
メキシコは米国向け自動車の輸出拠点の要となっている。「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」に基づき、一定の条件を満たせばメキシコからの対米輸出は関税はゼロ。自動車大手ともメキシコでの生産能力を高めてきた。
トランプ氏が実際に25%に関税を引き上げればUSMCAは事実上、機能停止に陥る。自動車大手は戦略の見直しを余儀なくされる。
トランプ氏は大統領選期間中も中国やメキシコなどに対する関税引き上げをとなえていたが、金融市場では就任後に現実的な路線を取るのではないかという期待があった。
トランプ氏が新政権の財務長官に指名した、投資家のスコット・ベッセント氏はインフレ再燃を招く高関税に慎重な姿勢も見せていた。
トランプ氏の投稿が市場の期待を打ち消した。
「次期大統領が周囲と相談せずに決定したのは明らか。財務長官などバランスを取る閣僚でなく、政権のかじ取りを担うのはトランプ氏であることを再認識するのが重要だ」。
米調査会社コーブのルネ・アニナオ氏は投資家向けメモに記した。
メキシコ株価指数1%安、大統領は対話呼びかけ
当該国経済への打撃も大きい。メキシコの代表的な株価指数、ボルサ指数は一時前日終値比1.3%安となった。
シェインバウム大統領は26日朝の定例記者会見で「必要なのは脅しや関税ではなく、協力と相互理解だ」と反論し、トランプ氏に対話を呼びかけた。
カナダのトルドー首相も対話を通じてトランプ氏に理解を求めていく方針だ。同国の主要指数S&P/トロント総合(TSX)も一時前日比0.5%安となった。
外国為替市場ではトランプ氏が「トゥルース・ソーシャル」上で関税予告をつぶやいて以降、メキシコペソやカナダドルが対米ドルで下落する。
英LSEGによると、メキシコペソは米東部時間26日午後に1ドル=20.83ペソ近辺まで下落し、2022年7月以来、約2年4カ月ぶりのペソ安・ドル高水準を付けた。
カナダドルはトランプ氏の投稿直後の25日夜に1米ドル=1.417カナダドル近辺を付け、20年4月以来、約4年7カ月ぶりの安値となった。