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時計売り場に並ぶシチズンの「TSUYOSAコレクション」(東京都新宿区のmove新宿マルイ本館店)
日本にも若者向けのビジネスを反転の原動力にした企業がある。
2024年にブランド創設から100年を迎えたシチズン時計。若者を開拓したことで創業以来、最も売れた腕時計が生まれた。ゼンマイで動く機械式の「TSUYOSA(ツヨサ)コレクション」だ。
21年の発売から3年間の累計販売数は過去10年間で最も売れた腕時計の4倍に達した。各商品の販売数は明らかにしていないものの、日の丸腕時計がクオーツ式で世界を席巻した1970〜80年代の製品をも上回る。
シンプルなデザインながら多数の色の文字盤をそろえ、価格を機械式では手ごろな5万円弱にしたところ欧州から人気に火が付いた。
20〜30代が主な購買層だ。ブランド名も当初はなかったが、SNSで若者が付けた愛称(TSUYOSA)をシチズンが正式名に採用した。
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若者は携帯電話の普及で腕時計をはめなくなっている。
人気のある商品も米アップルなどのスマートウオッチが中心だ。時計を売るなら中高年や富裕層という定石の逆を行く戦略で突破口を見いだした。
佐藤敏彦社長は「若者に向き合うことでアナログ時計の価値を復活させる」と語る。
国内の時計生産額はピークの85年から7分の1まで減った。大治良高常務は言う。「若者を捕まえないと10年後にブランドが消える。企業としても生き残れない」
ホンダ、原資稼ぐのは四輪車ではなく…
ホンダの成長も若者が支える。
ジェット機やロケット、空飛ぶ車と新たな事業への参入を次々と打ち出す。「夢」への原資を稼ぐのは最大事業の四輪車ではない。世界首位の二輪車だ。
日本経済新聞の調査によると、23年のシェアは約4割と過去最高になった。インドや中台の競合メーカーを寄せ付けない。若者を中心に高いブランド力を維持し、人口が増えている東南アジアやインドなどの新興国で需要を取り込む。
24年4〜12月期の二輪の営業利益は5016億円と四輪を2割上回る。稼ぐ力を示す売上高営業利益率も19%と5倍ある。成熟産業でも若者に挑み続け、未来を耕す。
日本へのブランドイメージ急落 憧れは中国に
若者の消費はグローバルサウスがけん引する。
欧州の調査会社ワールド・データ・ラボによると、20代以下の若者の世界の消費額は2044年に約40兆ドル(約6000兆円)と24年の2.2倍になる。全世代の3割にあたる。
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レッドブルは20歳前後の若者に照準を絞り急成長(東京都渋谷区のMEGAドン・キホーテ渋谷本店)
インドの伸びが主要国・地域で最も大きい。3.9倍の4兆3600億ドルまで膨らむ。世界の1割だ。次いでアフリカが3.1倍の3兆3100億ドル、東南アジアも2.9倍の2兆5900億ドルになる。若年層の増加と経済成長が重なり1人あたりの購買力が高まる。
米中の存在感も大きい。米国は9割増の8兆5900億ドル、中国も2.3倍の4兆7500億ドルになる。新興国の伸びで両国が世界に占める割合は現在よりわずかに下がるが、それでも3割強を占める。
日本は6割増の8200億ドルにとどまる。少子化で若者の人口が減り、経済成長が実現できてもインドの5分の1の市場になる。
日本企業の成長には一段と海外事業を伸ばすことが不可欠になる。懸念は日本製品のブランド力の低下だ。
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18日公開のNEO-COMPANY ②では日本最大の企業、トヨタ自動車の己との戦いを描きます。キーワードは「カローラ」と「再発明」です。自動車販売の常識をも変えようとする挑戦とは。
若者と中高年、富裕層と大衆層、できる社員とできない社員。日本で世界で隔たりが目立ってきた。新たな時代が生んだ壁に企業は何ができるのか。
目を背けず、立ち向かう経営者と働き手だけが成長できる。記者の取材とデータの解析で新たな潮流を可視化する。前へ進む動きを追う。
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日経記事2025.2.17より引用