NATOは28日、外相会合を開いた(ブリュッセルの本部)=AP
【ブリュッセル=辻隆史】
北大西洋条約機構(NATO)は28〜29日の日程で外相会合を開いた。中国の脅威に対処していくための方策などを議論した。中国が新技術に多額の投資をして軍事的な優位を占めようとするなか、加盟国が連携して技術革新を進める。
会合はブリュッセルの本部で開催した。ストルテンベルグ事務総長は同日の会合後の記者会見で、NATOの集団防衛の対象はあくまでも北大西洋地域だと強調した上で「中国の強圧的な政策が我々の安全保障に与える影響を認識しなければならない」と主張した。
NATOは2022年にまとめた戦略概念で、中国が「体制上の挑戦」を突きつけていると明記した。中国によるサイバー攻撃や偽情報の拡散といった新たな脅威が、防衛対象である北大西洋にも及ぶことに警戒を強める。
ストルテンベルグ氏は記者会見で、中国が「新興破壊的技術」(EDT)と呼ぶ分野に積極投資し、軍事力をさらに向上させようとしていることに言及した。軍事転用が可能な人工知能(AI)やバイオ、量子などの先端技術によって、いまの防衛体制が無力化されかねないとの懸念がある。
NATOも加盟国が資金を出し合い、同分野で対抗する動きを加速させる。同氏は中国と地理的に近い日本や韓国などインド太平洋の国とも協力する考えも示した。
会合では、中国などから通信網など重要インフラを守るための連携策も議題になったとみられる。
ウクライナ侵攻を続けるロシアへの対応策も協議した。フィンランドはこのほど、ロシアとの国境に設置したすべての検問所を一時的に閉鎖すると発表した。ロシアが難民認定を求める中東出身の入国者を大量に送り込んだことへの対抗措置としている。
ストルテンベルグ氏は「移民を道具として使い、圧力をかけようとしている」と批判した。
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日経記事 2023.11,29より引用