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中ロ、核燃料で欧米揺さぶり 原発維持へ新たなリスク

2025-01-13 21:09:31 | 環境・エネルギー、資源


核燃料の原料になるウラン鉱石=ロイター

 

中国とロシアが原子力発電に用いる核燃料である低濃縮ウランの供給を通じ、欧米への揺さぶりを強めている。

ロシアは対米禁輸を表明した一方で、中国は急に米国への輸出を拡大させた。それぞれ世界的に需要が高まる核燃料の輸出を米国に対する外交カードにする思惑が透ける。

 

 

最大シェアのロシアが供給制限発表

ロシア政府は2024年11月、米国への低濃縮ウランの供給制限を始めたと発表した。

バイデン米政権が5月に成立させたロシア産ウランの輸入を原則禁止する法律への対抗措置と説明した。

 

22年に米国が調達した核燃料のうち、24%がロシアからの輸入だった

米国の禁輸法は対ロ制裁の一環で、ウクライナ侵略を継続する資金源を断つとともに、エネルギーのロシア依存から脱却する狙いだった。

 

すぐに代替供給源を確保するのは難しいことから、原子炉の稼働を維持できない場合は27年末まで適用を猶予できる条項を設けていた。

今回のロシア側の決定により今後、供給は一気に絞られ、調達コストの上昇につながる可能性がある。

 

原発の稼働には鉱山から採取する天然ウランを濃縮処理する必要がある。

特殊な遠心分離機を使った濃縮には3〜5年の工程が必要で、ロシア企業が世界トップの4割程度のシェアを持つ。

 

残りも核保有国である英国、フランス、中国の企業が占めている。

ノルウェー国際問題研究所のインドラ・オバーランド教授は「濃縮ウランへの加工法は非常に危険で貴重な情報であり、世界で十分に知っているのは一握りに限ってきた」と語る。

 

新規参入が難しい産業であるだけに、ロシアの輸出減を補う新たな供給体制を整えるには大規模な投資と、数年単位の時間がかかる。

米国は対ロ制裁でロシア産の化石燃料の輸入を禁止したが、ウランは対象外にしていた。

 

米国は23年にロシアからの輸入を前年比で2割増やしていた。禁輸を前にした備蓄の一環とみられる。

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中国の対米輸出、ゼロから急増

世界の電力需要は人工知能(AI)などの台頭で増加し続け、核燃料の需要も高まっている。世界原子力協会は30年までに世界のウラン需要が23年比で28%増加すると予測する。

米国内で供給不安が広がるなか、中国は対米輸出を増やしている。米政府の統計によると輸出量は20〜22年はゼロだったが、23年には約293トンとロシアの対米輸出の4割の水準に拡大。24年も米国の禁輸法が成立した5月に約124トンを輸出した。

 

中国が戦略物資の供給で米国の電力会社に助け舟を出す格好になった背景には、習近平(シー・ジンピン)指導部の対米戦略がある。

中国はレアアース(希土類)の輸出を安全保障政策などの外交カードに使ってきた経緯がある。米国がウラン調達で対中依存を深めれば、中国にとって供給自体が対米交渉のカードになる

 

中国は近年、ロシア産の核燃料を大量購入しており、実質的に西側の対ロ制裁破りを助けている疑惑も浮上する。

ロイター通信は9月、ロシアが中国に濃縮ウランを輸出し、中国が余剰になった自国産を米国に送っている可能性についてバイデン政権が調査していると報じた。

 

 

欧州、対ロ依存脱却の道遠く

欧州連合(EU)では米国のような対ロ依存の脱却に向けた法整備が進んでいない。冷戦期に旧社会主義圏だった中東欧では旧ソ連型の原発が多く、対ロ強硬派であるチェコでも大量のウランを輸入し続けている。

 

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ロシアは民間軍事会社ワグネルなどを通じてウランの産地であるアフリカ諸国にも影響力を広げ、欧州の供給ルートは絞られつつある。

仏紙ルモンドによると電力の6〜7割を原子力に頼るフランスはこれまで、原発に使うウランの2割を旧植民地のアフリカ西部ニジェールから調達していた。

 

だが、23年のクーデターで誕生した親ロの軍事政権は仏企業のウラン採掘子会社の経営に介入。代わりにロシア企業を鉱山開発に誘致しようと動いている。

マクロン大統領は最近、モンゴルやカザフスタンを訪問し、調達先の開拓に躍起になっている。それでも「欧州の代替供給網の確立は米国よりはるかに難しい」(オバーランド氏)。

 

ロシア依存の脱却のメドが立たないことが、フランスがウクライナの停戦交渉を急ぐ一因になっているとの見方もある。

日米英仏カナダは23年12月、対ロ依存を減らすために核燃料の生産能力の強化に取り組むことで合意した。

 

この5カ国では関連投資の動きが相次ぐが、急ピッチで生産能力を高めてもロシア産を代替するまでに10年以上かかるとの見方が多い。

(ウィーン=田中孝幸、パリ=北松円香)

 

 

 

 

日経記事2025.1.13より引用

 

 

 



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