JR名古屋高島屋は直径10センチメートルの小さなケーキを用意しお得感を打ち出す
クリスマスケーキやお歳暮など年末商戦が本格化している。今年は中部で盛んな製造業を中心に賃上げが相次ぎ、冬のボーナスも高水準だ。
それでも食品などの値上げの影響で節約志向は変わらない。百貨店などは小さなケーキで単価を抑えるほか、特別感のある商品でお得感を訴求し年末商戦を乗り切ろうとしている。
JR名古屋高島屋(名古屋市)では多様な種類のクリスマスケーキが並ぶ。サンタクロースの砂糖菓子が付いた生クリームとイチゴのホールケーキを選んだ50代男性は「小学校3年生の子どもがケーキを選んだ。
単身赴任で名古屋に来ているが、クリスマスは家族で過ごせるので楽しみ」と目を細めた。
原材料の高騰で同社が扱うクリスマスケーキは平均単価で約6000円と前年比で約1割値上げし過去最高となった。そのため、今年はサイズを小さくしたケーキを前年比で約4割増やした。
人気菓子店、パティスリーエス(名古屋市)の「苺のリースタルト2024」は直径約10センチメートルのケーキで3456円。食べ切りやすいサイズで手に取りやすくした。
ケーキの装飾をシンプルにし価格を抑えるといった商品もある。人気菓子店、ケーニヒスクローネ(神戸市)の「スイートクリスマス」は風船など装飾が付いて5400円だったが、今年は装飾をシンプルにし価格を約3割下げた。
今年の消費動向についてJR名古屋高島屋の担当者は「おせちなどハレの日の商品は好調だが、クリスマスケーキは値上げが大きく売り上げが振るわない。値上げにシビアになっている一面がある」とみる。
名古屋マリオットアソシアホテルは、「ドクターイエロー」のクリスマスケーキを数量限定で販売した
ケーキでも特別感のある商品には財布のひもも緩むようだ。
名古屋マリオットアソシアホテル(名古屋市)では、2025年1月に引退する予定の東海道・山陽新幹線の点検用車両「ドクターイエロー」がデザインされたクリスマスケーキ(1万円)を60台限定で販売し、約2時間で完売したという。
担当者は「従来の想定よりとても早く完売した。鉄道ファンや子どもがいる家族に人気なのではないか」と話す。
70周年を迎えた名鉄百貨店(名古屋市)は名古屋鉄道グループの高級ホテル「ホテルインディゴ犬山有楽苑」(愛知県犬山市)のパウンドケーキ(5000円)を初めて準備。愛知で作られた地域の商品を届けたいと考える地元客が多く好調だという。
名古屋三越はお歳暮に温かい食品を取りそろえ「温活」を前面に打ち出す
値上げは食品にとどまらず、暖房など光熱費の高騰も大きい。そのため、体を温める「温活」を前面に打ち出す店もある。
名古屋三越(名古屋市)は鍋やスープのほか、ジンジャーシロップや温めて食べる焼き菓子などのお歳暮を用意する。
賃上げの一方で値上げも止まらず、消費者の将来に対する不安は払拭できていないようだ。
帝国データバンクの調査によると、予定されている食品の値上げが25年1〜4月累計で約4000品目に上る。
一方で、三菱UFJリサーチ&コンサルティングによると、全国の24年冬のボーナスは前年比3%増で、中部に多い製造業では同2%増となる見込み。愛知県では10月から最低賃金が50円引き上げられるなど、賃上げの機運も高まっている。
ただ、名目賃金から物価変動の影響を除いた10月の実質賃金は前年同月比で横ばいだった。21〜23年の実質賃金の水準は低下しており、個人消費は低調が続く。
名鉄百貨店の担当者は「近年では福袋も内容がわかるようにして売り出している。消費者は本当に欲しい物ならお金を惜しまない傾向にある」と説明する。消費の二極化を捉えた工夫が年末商戦の勝敗を左右する。
(竜田菜美子)