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ネコの遺伝子いじりネコアレルギー解決  人間は創造主か カッサンドラの絶景(日経2025.2.20)

2025-02-20 14:13:23 | 科学技術・宇宙・量子・物理化学・生命・医学・生物学・脳科学・意識・人類史

2月22日はネコの日だ。愛らしいネコが大好きなのに、近寄ると目がかゆくなり、くしゃみが止まらない。

そんなネコアレルギーの解決に役立つ技術が話題を集めている。生命の設計図である遺伝子を改変し、原因の物質が生じにくいネコが生まれたのだ。

 

究極と呼べる対策の出現に喜ぶ愛猫家もいるかもしれないが、人間の都合でどこまで生命を操作してよいのか。想像を超える技術の進歩は、簡単には答えが出ない問いも生む。


ネコのアレルギーに悩む人は多い

 

 

ネコアレルギーは、ネコの唾液や皮膚から出るたんぱく質の一種が主な原因だ。ネコのふけの6〜9割を占め、ネコアレルギー患者の9割に影響を与える。

いとしいネコと暮らしたいのに、不快なアレルギーが邪魔をする。このジレンマを解決できないか。人々の願いを背に科学者が手を伸ばしたのが、ネコの遺伝子改変だった。

 

2024年2月、韓国と米国の大学が英科学誌に論文を発表した。遺伝子を切り貼りする「ゲノム編集」技術を使い、アレルギーを起こしにくいネコが誕生した。ゲノム編集は20年にノーベル化学賞の授賞テーマになった。

ネコの受精卵の遺伝子を改変し、病原たんぱく質の一部を働かないようにした。代理母役を担うネコの卵管に移植すると、オスとメスのネコが生まれた。この2匹から生まれた子は健康で、遺伝子を狙い通り改変できていた。

 

生後半年たった子ネコの毛で、たんぱく質の濃度を調べた。すると体を洗う1日前で普通の飼いネコよりも72%少なく、体を洗った7日後には99%減った。

 

唾液のたんぱく質も減少した。研究チームは「ペットに向くほか、(わずかな原因物質に触れることで)アレルギー患者が病原に慣れる治療に使える可能性もある」と話す。事業としてネコを販売する予定はない。

 

 

 

待ち望まれたアレルギーを起こしにくいネコの誕生は、科学の急速な進歩を示す。

アレルギーに苦しむ愛猫家からみれば革新的な技術で、まさに究極の対策だ。新たにネコを飼い始めたり、ペットショップや友人の家でネコと遊んだりしやすくなる。だが、生き物の遺伝子を書き換える技術は光とともに影もまとう。

 

ゲノム編集に詳しい日本の研究者は「技術の精度は100%ではない」と警鐘を鳴らす。もし意図しない遺伝子の改変が起き、病弱な子ネコが生まれれば「飼い主が見つからず、廃棄処分することになるかもしれない」と話す。

病原のたんぱく質を働かないようにすることでネコの体質などが変わり、未知の病気を患う可能性も指摘する。

 

ネコの立場に立てば、人間の都合で遺伝子を改変されたあげく、理不尽に命を奪われたり、本来は苦しまずに済んだ病気に悩んだりすることになる。

当然ながら人間にネコを害する意図はない。むしろ歴史を振り返ると、ネコにかわいらしさや美しさを見いだし、めでてきた。

 

やがてその気持ちは膨らみ、約200年前からは交配による品種改良が進んだ。折れ耳がかわいいスコティッシュフォールドや短い足のミヌエットなど、数十種類以上の品種が生まれた。

ネコの遺伝子を書き換える技術は、古典的な掛け合わせよりも効率よく品種改良を進められる。

 

ゲノム編集技術を駆使して様々な体質や姿形を持つネコが生まれる世界が間近に迫る。

新たな生命を生み出す存在を創造主と呼ぶならば、科学の力を磨いた人間はその座を占めることになる。

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ゲノム編集で遺伝子を改変し、アレルギーが起きにくくしたネコ=韓国・慶尚大学校提供

 

低アレルギーネコの課題は他にもある。全ての個体の遺伝子を改変するのは手間と費用がかかる。

普及に向け、クローン技術で1匹から同じ遺伝情報を持つネコを多数作る選択肢が考えられる。ただ、同一人物ならぬ「同一ネコ」を作るこの技術は、唯一無二の存在である生命の意味づけを変える。命を物のように扱う姿勢につながるとの声もある。

 

様々な懸念を抱える新技術には警戒の声も上がる。だが、ネコの遺伝子改変をただちに悪と断じ、規制を進めるほど事態は明快ではない。

 

 

動物の倫理に詳しい京都大学の伊勢田哲治教授は、ネコが病気になるなどの不利益が生じないのであれば「動物の福祉や権利の観点からは、遺伝子改変そのものは問題になりにくい」と指摘する。

生命科学の進歩を正しく認識し、広く受け入れられる倫理観をつくる取り組みが求められる。

(藤井寛子)

 

 

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

 

 

 

 

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別の視点

ネコ以外にも、卵アレルギーのアレルゲンを含まないゲノム編集鶏卵、花粉症にならない無花粉のゲノム編集スギ、小麦アレルギーになりにくい低グルテンのゲノム編集小麦、牛乳アレルギーになりにくいウシなどの研究も進められています。

これらの研究は、アレルギーが増えている環境背景の中では有益性をもたらす可能性がある一方で、進めていくと際限がないため、倫理と相談でどこまで良しとするかの線引きが必要になってくると思います。

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カッサンドラの絶景

時に受けいれがたく、目を疑うような真実をサイエンスの視点で伝えていきます。まだ見ぬ世界の変化を捉え、いまの時代を記憶にとどめる連載企画です。

 

 

 

 

日経記事2025.2.19より引用

 

 



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