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米国のグリーンランド購入、欧州に波紋 独首相が批判

2025-01-09 21:28:35 | NATO・ウクライナ・ロシア・中国・中東情勢


8日、ショルツ首相は欧州首脳らとの意見交換後に緊急声明を出した
(ベルリン)=ロイター

 

デンマーク領グリーンランドの購入に意欲を示すトランプ次期米大統領の発言が欧州で波紋を広げている。

ドイツのショルツ首相は8日、「国境不可侵の原則は全ての国に適用される」と批判する緊急声明を出した。軍事力の行使を否定しないトランプ氏の言動に緊張が高まっている。

 

トランプ氏は7日、グリーンランドの購入に向けて軍事力や経済的な手段の行使を排除しないと表明した。デンマークが拒否すれば関税を課す可能性も示唆している。

同盟国である欧州を狙った異例の威嚇で、ドイツなど欧州各国の首脳らは8日に意見交換した。

 

欧州の主要国からは反発の声が相次いでいる。ショルツ氏は「国境を力で動かしてはならない」と言明した。

国境の不可侵は「国際法の基本原則で、我々が『西洋的価値観』と呼ぶものの中核にある」と説いた。声明では名指しこそ避けたもののトランプ氏を批判した形だ。

 

フランスのバロ外相は仏ラジオ番組で「主権がある領土の攻撃は容認できない」と述べた。

グリーンランドは欧州連合(EU)加盟国の領土だと指摘し「世界のどの国であっても領土に対する攻撃をEUが認めることはあり得ない」と強調した。

 

圧力を受けるデンマークのフレデリクセン首相は8日、米国が軍事力や経済力を行使する可能性に否定的な見解を示した。

米国は「最も重要かつ緊密な同盟国」としつつ「(グリーンランドへの関心は)人々に敬意を払った上で持たれるべきだ」と釘を刺した。

 

欧州の主要国がトランプ氏の発言を看過できないのは、国際秩序の根幹に直結するためだ。

軍事力による国境の変更は脅しであれ、ウクライナ侵略を続けるロシアと同じ行動原理になる。覇権主義的な動きを強める中国にも隙を与えかねない。

 

ショルツ氏は声明でロシアを引き合いに出し、国境不可侵の順守とウクライナ支援の意義を訴えた。

トランプ氏は北大西洋条約機構(NATO)加盟国に求める国防費の目標を、国内総生産(GDP)比で2%から5%まで引き上げる考えも示している。

 

ショルツ氏はドイツの国防費拡大を説明した上で「NATOは欧州とカナダ、米国との関係の柱だ」と呼びかけた。

EUは第1次トランプ政権で貿易問題に悩まされてきた。ドイツでは2月に総選挙を控え、演説で全国を飛び回るショルツ氏が外交に時間を割く余裕も限られてくる。

 

要求を突きつけて譲歩を引き出すディール(取引)外交はトランプ氏の常とう手段だが、政治空白が長引けば交渉もおぼつかない。足元をみたトランプ氏が要求に拍車をかける恐れもある。

(ベルリン=南毅郎、ロンドン=児玉章吾)

 

 

 
 
 
 
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日経記事2025.1.9より引用

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