ウォルツ氏は「少なくとも今後数日、数週間のうちに(トランプ氏がプーチン氏と)電話すると期待している」と述べた=AP
【ワシントン=坂口幸裕】
マイク・ウォルツ次期米大統領補佐官(国家安全保障担当)は12日、20日に就任するトランプ次期米大統領が数日内にもロシアのプーチン大統領と電話協議するとの見通しを示した。
米ABCテレビのインタビューで語った。
トランプ氏は9日、プーチン氏との会談を準備していると発言した。
ウォルツ氏は番組でウクライナのゼレンスキー大統領も含む協議になるかと問われ「枠組みは決めていない。作業しているところだ」と説明した。
そのうえで「少なくとも今後数日、数週間のうちに(プーチン氏と)電話すると期待している。
それが第一歩となり、そこからさらに進むことになる」と明言した。「我々が確認すべきは戦況が本当に安定しているかどうかだ」と述べた。
ウクライナとロシアの停戦を巡り「トランプ氏は相手側と何らかの関係や対話を持たなければ合意できないと考えている。今後数カ月の間に必ずその関係を構築する」と述べた。
トランプ氏は7日の記者会見で、ロシアによるウクライナ侵略について「(大統領就任から)6カ月で、できればそれよりずっと前に終わらせたい」と言及した。
20日の就任後から「24時間以内」の停戦を実現させると主張してきた自らの発言を後退させた。
ウォルツ氏はウクライナに徴兵年齢を引き下げ不足する兵士の確保に取り組むべきだと求めた。「ウクライナは人材問題を抱えている。現在の徴兵年齢は18歳でなく26歳だ」と指摘。「人員不足の問題に対処する必要がある」と促した。
ロシアが実効支配するウクライナ領について「クリミアを含め全てのロシア人を追い出すのは現実的ではない」と認めた。
「トランプ氏、全世界がその現実を認識しているのは大きな前進だ」と話した。
トランプ氏が購入に意欲を示すデンマーク領グリーンランド、全面返還を求める中米のパナマ運河の重要性についても説明した。
ウォルツ氏は「トランプ氏が真剣に取り組んでいるのは北極圏、西半球で直面している脅威に対してだ」と訴えた。
中国やロシアの進出で「我々の安全保障が脅かされている。米国が確実に防衛されるよう大胆な一歩を踏み出す用意がある」と唱えた。
目標実現のため軍事力を行使する可能性を聞かれ「トランプ氏は常にあらゆる選択肢をテーブルに残しておく。
既存の協定を修正するためにできることはたくさんある」と強調。「前任者(のバイデン大統領)と異なり、どんな選択肢も排除しない」と警告した。
トランプ氏はグリーンランド購入やパナマ運河返還を実現するため、軍事力や経済的な手段の行使を排除しないと表明した。デンマークが申し出を拒否すれば関税を課す可能性を示唆した。
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米国の政権が外交目標を達成するためのレバレッジ(テコ)は、関税や金融制裁という経済手段、軍事介入のような軍事手段と、軍事援助のようにその両方の要素を持つ手段が考えられます。
内向きなトランプ政権は軍事介入へのハードルが高いとみなされ、この点で相手国に対してレバレッジが効かない弱点があります。
ウォルツ氏はトランプ政権の中でも、米国の世界における優位性を維持することを目指し、軍事介入の手段も排除しない共和党の伝統的な「優越主義者」とみられており、「どんな選択肢も排除しない」という発言は彼の姿勢を体現しています。
トランプ氏は成果が得られれば政権内のどの人物が活躍してもいいと考えているはずです。
日経記事2025.1.13より引用