カナダのトルドー首相(9日)=ロイター
【ニューヨーク=朝田賢治】
カナダのトルドー首相は12日、米MSNBCの番組でトランプ次期米大統領がカナダからの輸入品に25%の関税をかける計画を示していることに対し、「前回と同様に対抗関税をかける用意がある」と述べた。
「米国企業にも大きな損失が出る」とも語り、トランプ氏をけん制した。
トランプ氏はカナダに対米貿易黒字の是正や不法移民の取り締まり強化などを求め、経済力を背景に譲歩を迫っている。「カナダを51番目の州に」と発言するなど、強硬姿勢を強めている。
トランプ氏が第1次政権時の2018年にカナダ産の鉄鋼やアルミニウムに関税を課した際には、カナダも対抗してバーボンウイスキーや機械類に対抗関税をかけた。
トルドー首相は「カナダは米国の35の州にとって最大の輸出相手だ。対抗関税を導入すれば米国製品の価格が上がり、カナダ人は代替品に切り替えるため米国の企業に多くの損失が出る」と語り、トランプ氏をけん制した。
トルドー氏は今月上旬、首相を辞任する意向を示した。物価高や移民政策への国民の不満の高まりに加え、トランプ氏の関税政策をめぐり政局が混迷したことが追い打ちをかけた。
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2018年米国がカナダに鉄鋼やアルミニウムへの関税をかけた時、カナダは米国の鉄鋼やアルミニウムだけではなく農産物や消費物資にも幅広く対抗関税をかけ、その額は128億ドルに達した。
関税のかけ合いは約1年で収束したが、2020年には再度米国はカナダからの鉄鋼やアルミニウム輸入に関税をかけている。
関税のかけ合いは結局両国の産業や消費者にとって痛手となった。
米国はカナダから石油消費量の約4分の1を輸入しており、35の州でカナダが最大の貿易相手国となっている。
カナダからの不法移民や薬物フェンタニルの流入はメキシコと比べかなり少なくトルドー首相も追加の措置を取っているが、政治的に関税は避けられそうもない。