米ホワイトハウスでの共同記者会見で話すSBGの孫正義氏(右)=AP
ソフトバンクグループ(SBG)と米オープンAIは21日、全米で人工知能(AI)開発向けのインフラを構築すると発表した。
トランプ米大統領と共同記者会見に臨んだSBGの孫正義会長兼社長は全米にデータセンターを建設し、その電力需要を賄う発電設備も併設する構想を持つ。
SBGとオープンAIは新会社「スターゲート・プロジェクト」を設立する。5000億ドル(約78兆円)のうち、まず1000億ドルの投資に着手する。
孫氏はトランプ氏に対して「(大統領選の)勝利を祝うべく1000億ドルの投資を約束した際、あなたは2000億ドルに引き上げるよう求めた。米国の黄金時代到来を聞きつけ、きょうは5000億ドルにして戻ってきた」と語った。
新会社はSBGが財務管理、オープンAIが運営を担い、孫氏が会長に就く。孫氏は2024年末にひそかに来日したアルトマン氏と会い、構想の大枠を固めたもようだ。
トランプ政権はデータセンターについて米国の安全保障に関わると位置づけており、政権と緊密に連携しながら建設先を確保する方針だ。南部テキサス州のほか、中西部のラストベルト(さびついた工業地帯)を抱える州などが建設地の軸になりそうだ。
データセンターの運用に必要な膨大な電力を確保するため、SBGは傘下の米発電会社のSBエナジー・グローバルを通じてAIデータセンター向けの発電施設を拡充する。すでに24年10月にテキサス州で太陽光発電の商業運転を始めた。
今後も太陽光や蓄電池を手掛ける企業の買収を模索するほか、将来は核融合も視野に入れる。
トランプ氏に述べた投資額5000億ドルはパートナー分も含めた総投資額だ。
株式による資金調達は1割程度とみられ、SBGやオープンAI、オラクル、アラブ首長国連邦(UAE)アブダビ首長国のテクノロジーに特化した投資会社MGXが自己資金を出すほか、データセンターと発電施設を利用する事業者にも出資を求めていく。
資金の大半はデータセンターのキャッシュフローなど事業価値を担保に資金を調達する方針だ。
複数の銀行が同じ期間に同条件で融資するシンジケートローン(協調融資)やインフラ整備などの大型事業の資金繰りを支えるプロジェクトファイナンス(事業融資)、プライベートクレジットファンド経由で調達する見通しだ。
オープンAIの「Chat(チャット)GPT」の登場で生成AIの時代が幕を開け、23年1月にマイクロソフトがオープンAIに数十億ドルの追加出資を決めてテック大国である米国を中心に本格的な投資競争が始まった。
孫氏はかねてアルトマン氏と頻繁にチャットする間柄で、人類の1万倍の知性を持つ人工超知能(ASI)の実現で共鳴し、今回の構想でも核となるパートナーに選んだ。
SBGはオラクルにも接近している。
オラクルが出資する半導体設計会社、米アンペア・コンピューティングの買収もSBGや傘下の英半導体設計アームを通じて検討している。アンペアは大規模データ処理やAI推論の分野に強みがあるとされる。
孫氏はトランプ政権1期目に500億ドルの対米投資、5万人の雇用を約束した。
SBGは個別、全体の出資額や雇用数を開示していないが、ライドシェア大手のウーバーテクノロジーズなどに投資しており、当時の目標を達成済みとする。
トランプ氏も12月に「(SBGは)我が国に500億ドルを投資した」と語った。
今回は投資額に加えて、数十万の雇用創出も約束した。1期目以上に難しい課題だが、成功すれば米国にかつてないほど大きなビジネス基盤をつくることができる。
SBGは1990年代後半のインターネットの普及期には米ヤフーと共同出資でヤフーの日本法人を設立し、ネットビジネスを展開した。
2000年代後半には英ボーダフォンの日本法人や米スプリントの巨額買収に踏み切り、モバイル事業に傾斜した。17年のビジョン・ファンドの運用開始以降は投資事業に重心を傾けた。
今回の構想はSBGが近年の投資会社から実業会社に姿を変える一手との見方もある。
SBG自体にAIデータセンターの運営に向けた人材やノウハウの蓄積はほとんどない。技術面では傘下の英アーム、オープンAIの大株主であるマイクロソフト、米半導体大手エヌビディアの参加も取りつけており、世界の主要プレーヤーを巻き込んだうえで主導権を持てるかが課題になる。
(四方雅之)
2025年1月20日(現地時間)にドナルド・トランプ氏が再びアメリカ大統領に就任。政権の行方など最新ニュースや解説を掲載します。
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