風に吹かれて旅ごころ

はんなり旅を楽しむはずが、気づけばいつも珍道中。

南海電車で高野山 1-(2)

2013-07-06 | 近畿(奈良・和歌山)
◆ 壇上伽藍【世界遺産】
◯ 金堂
◯ 御社(みやしろ)
◯ リリパット王国イン・ジャパン
◯ 三銛の松
◯ 根本大塔
◆ 金剛峯寺【世界遺産】
◯ 高野杉
◯ 柳の間
◯ 蟠龍庭
◯ 上壇の間
◯ 現代の高野聖
◯ 御朱印と御朱印帳
◆ 精進料理講座
◆ 宿坊(普賢院)
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1日目その1からの続きです。

◆  壇上伽藍【世界遺産】

高野山にたどり着き、壇上伽藍前でバスを降りると、黒い袈裟姿の二人の僧、藪僧侶と永崎僧侶に出迎えて頂きました。
お二人に、高野山を案内していただきます。なんて贅沢なんでしょう。



壇上伽藍への入り口である中門は、平成27年の「高野山開創1200年記念大法会」に向けて目下再建中。
8代目になるそうで、天下の大林組が携わっています。



こういう場合、普通は幌に隠されて、中の様子が全く見えなくなっていますが、ここはポリカーボネート製の透明な素屋根に覆われており、施工中の様子をが見られるようになっていました。
これは嬉しいです。見えないとなると、やけに見たくなるものですから。



◯ 金堂

入り口で塗香を手に塗り込めると、すっかり聖地に入っていく気持ちになります。
金堂のご本尊は高村光雲作の薬師如来ですが、秘仏のために非公開。
内部をぐるりと回り、木村武山(ぶざん)の壁画を拝見しました。
祭壇裏側の菩薩の絵は、移動しても視線が追ってくるように見えるため「八方睨み」と言われているそうです。



◯ 御社(みやしろ)

高野山にあるのはお寺だけかと思っていましたが、もともと地主神が祀られており、空海はその神様に土地を分けてもらう形で伽藍を建てたため、敷地内に神社があると聞きました。
それがこの御社です。
祀られているのは、真言密教の守り神になった地主神の丹生明神と高野明神(狩場明神)。



何もなかったところにお寺を建てたわけではなく、まず空海は高野山上に神様をお祀りし、その守護により高野山の大伽藍を建立したということで、やはりここも神仏融合から成り立っているのだなと思います。
毎月16日にはこの門が開き、高野山僧侶が神社に祈祷をあげるのだそうです。

空海をこの地に導いた、高野明神の白と黒の犬が、狛犬として鎮座していました。色も白黒になっています。
狛犬に、触りたかったー。
でも高野山の守護神の使いですから、おいそれとはそばに行けなさそうです。

◯ リリパット王国イン・ジャパン

境内のあちこちに生えている杉の巨木を見上げると、小人の国に来たような気分。
ここは日本のリリパット王国ですね。



緑に囲まれた広い敷地内を、西塔、准胝堂(じゅんていどう)、御影堂、根本大塔と巡っていきます。
「わあ、孔雀堂がある」と声を上げる私。
「なんですか?」とすかさず聞かれます。
「孔雀に乗っている明王がいるんですよ、ほら」とみんなで堂内をのぞきます。
きれいな像でした。
明王なのに怖くない、という話になると、長くなるので、さわりで説明はストップです。

准胝堂もあり、「これはどう読むのでしょう?」という質問から始まりました。
「じゅんてい」です。観音様です。
永崎僧侶曰く、高野山の僧侶の得度の本尊、つまり守り神だそうです。

◯ 三銛の松

この松の葉は三枚で、持っていると幸せが訪れるんだそうです。
渡邊課長にいただきました。いつの間に探して下さったんでしょう?
まさに四つ葉のクローバー・日本版!
三銛の松をバックに、写真に収めました。



◯ 根本大塔

高野山は二度目ですが、奥の院しか拝観していないため、この辺りは初めてです。
以前は夜の散歩の時に、暗がりの中で眺めた金剛峯寺。中に入れて感激。



曼荼羅世界を具現化した、堂内の鮮やかな色彩感覚に圧倒されます。
中心に座するのは、密教の中心仏である大日如来。
仏像を取り囲む16本の朱色の柱に描かれているのは、原色で描かれた菩薩たち。
鮮やかな金色と朱の色が、非日常感を醸し出しており、目が眩みそうです。

静かな蓮池。朱塗りの橋が映えています。



写真を撮る私たちを待ってくれている間に、僧侶はほかの参拝者にも声をかけられたり、質問されたりします。
そうすると今度は私たちがなんとなく待つことに。
ここではお坊さんは大人気です。



◆ 金剛峯寺【世界遺産】

壇上伽藍から、今度は金剛峯寺へと向かいます。
敷地は隣同士なのに、移動に10分はかかるという広さ。
狩野派が描き上げた無数の襖絵に圧倒されます。



木の廊下にダイソンの扇風機が置かれていました。
そういえば、少し前にダイソンが寄進したとニュースになっていましたね。
お寺の雰囲気を壊さないデザイン。悪くない共存でした。



◯ 高野杉

壇上伽藍でも天にそびえるような杉の巨木を見上げてばかりでしたが、ここには奥の院の高野杉の断面が飾られていました。
巨木の年輪にびっくり。
高さ57m、直径2.87m、株元周囲9mと書かれています。 
気になるのは樹齢。何百年なんでしょうか。



◯ 柳の間

秀吉に追放された豊臣秀次が自刃した部屋がありました。
はっとします。そういえば、彼は叔父の秀吉の命令で高野山に追放され、出家したのに、結局切腹を命じられたのでした。
聖職者を血で汚すなんて、あまりにひどい話です。
自刃の間は小さな部屋でした。



◯ 蟠龍庭

蟠龍庭は、日本最大級の石庭。
雌雄2匹の龍が建物を守っている様子を表しているそうです。
美しくウェーブの入った石庭を眺めて「これを作るのは大変そうですね」と永崎僧侶に言ったら「そうでもないですよ。でも曲がると"むむっ"と思います」とのこと。
どんどん気持ちが職人気質になっていくようです。



藪僧侶に、庭の池にモリアオガエルの卵が下がっていると教えてもらい、目を凝らすと、確かに白い塊が見えました。
古池や~



赤い毛せんの敷かれた大広間で、お茶と麩菓子をいただきました。



◯ 上壇の間

昔 天皇や上皇が滞在された時、謁見を行った部屋を拝見します。
右手の襖は護衛が隠れる「武者隠し」で、現在でも控えの者が待機する部屋として使用されるそうです。
SPは大柄の人が多いから、小さいスペースに身を隠しているのは、大変でしょうね。

◯ 現代の高野聖

藪僧侶も永崎僧侶も、現代の高野聖。
泉鏡花の影響もあり、高野聖といったら幽玄の境地に生きる真面目な修道者というイメージが強いため、はじめは「私の人生まるごとお説教されそう」と、こわごわと話をしていましたが、実際にはとても話しやすい方々でした。

藪僧侶が、先頭だって説明をしてくれてます。
その説明をきちんと聞きたいと思うものの、あちこち撮影していると、先頭集団からはつい遅れてしまいます。
しんがりは、永崎僧侶が見ていてくださいます。
まるで、運転手と車掌の関係。

なので、最後尾を守る永崎僧侶にいろいろと質問をしました。
たとえば、バスの中から見えた「波切不動」のお寺。
(こんな山の上まで、不動さんが波を切ってやってきたのかしら?)
と、すっかり「波乗りジョニー」的な想像をしていましたが、聞いてみたところ、
「遣唐使帰りに遭難しそうになった空海の前に不動が現れ、波を切って導いてくれた」ことが由来だそうです。
全然、サーファージョニーじゃありませんでした!

「目下、関東三十六不動を巡礼中です」というきちんとした話から、いつの間にか「金沢文庫の称名寺では"伽藍 DO!"というライトアップを行なっている」という話になっていましたが、どの話も穏やかに聞いてくださいました。
僧侶もなかなかくだけたお話をしてくださったので、つい話が弾んでしまったんです。
やはりお坊さんは、話題の広さと柔軟性ですね!

◯ 御朱印と御朱印帳

今回の旅にあたり、すでに高野山を訪れている父からは御朱印帳、母と叔母からは御朱印をいただいてくるよう、頼まれていました。
自分もいただきたかったので、「ゴシュイン、ゴシュイン」と、カワラヒワのようにつぶやきながら、御朱印と御朱印帳を、それぞれ3つずつ求めます。
御朱印帳は、檜か杉かさんざん迷い、僧侶のアドバイスも聞いた末に、どちらも入手しました。



これで親へのノルマ達成。ホッとします。
個人的にも、ここの御朱印帳はとても欲しかったので、大満足!

自分と母の御朱印帳2冊を持参し、さらに木の御朱印帳を3冊買ったため、持ち運ぶ御朱印帳は合わせて5冊。
もはや代行業者状態です。
木だけに、荷物がずっしり重くなりましたが、それを見越して今回はキャリーで来たから、問題ありません~ラララ~。

◆ 精進料理講座



お寺を後にし、精進料理のお店「さんぼう」へと向かいました。
山門を抜けたら、僧侶とお別れかとおもいきや、2名ともに一緒です。というより、先にたって案内してくれます。

気がつけば、お寺の敷地の外でも、お坊さんがナチュラルに歩いている高野山。
まるで両国界隈を着流しで歩く力士、もしくは秋葉原の客引きメイドさんのよう。(例えが悪い?)
他の場所なら目立って、みんな首を回して見るところですが、町にしっくり馴染んでいるため、人目を引く感じではありません。
やはりこの地域全体が宗教都市だからでしょう。



ここで、胡麻豆腐作りをします。
まずは精進料理の説明から。



何種類ものだしを使う事を教えてもらいました。
ぜーんぶレシピを教えてもらいます。
そんな太っ腹で、いいの?お店の秘伝ではないの?
油は米油を使うそうです。選りすぐりの材料で、身体によくないわけがありません。



ごま豆腐は、材料はシンプルですが、作るのに体力がかかるということがわかりました。
葛と水と胡麻粉を合わせて、火にかけながらダマダマにならないようにひたすらかき混ぜていきます。



馴染んでいくごとにだんだん鍋の中身が変わっていき、かきまぜるヘラが重くなっていきます。
3つのグループに分かれて協力しながら作っていきました。







ひたすら混ぜて、混ぜて、混ぜて、ペースト状になるまでかき混ぜ続けました。
この日はまだ食べられません。
お椀に小分けして、一晩寝かせて、私たちの明日の昼食になるそうです。
今から楽しみだわ~。



鍋に残った分をつまんでみたら、とてもおいしくて、みんな手が止まらなくなりました。
ここで、西京焼きの試食をさせてもらいました。
試食といっても、一人一皿出てきて、きちんとしたおかずでしたが。
上に山芋が乗っており、サクサクと食べやすかったです。
「ほっぺたが落ちそう!」「もうウナギを食べなくてもいい!」とみんなで言いました。



◆ 宿坊(普賢院)

さんぼうを出て、斜め向かいの宿坊へ。
この日の宿は金剛峯寺の塔頭、普賢院。素晴しい装飾的な鐘楼門に見とれます。
上階に上がってみたいわ。
お寺の前を、高野山の消防隊員が通って行きました。
この人達の手で、山は家事から守られているんですね。



扉には狛犬が浮彫りされていました。
こちらのご本尊は、名前の通りに象に乗った普賢菩薩さまです。



部屋は和室二室が使えて広々としていましたが、鍵が全く無く、すべて襖なので、がらりと開ければもう隣の部屋。
鍵がないなんて性善説ですね。外国人は驚くかもしれません。
隣の部屋からは「ジャジャジャーン」とサスペンス音楽が聞こえてきます。
(息詰まるシーンのタイミングを狙ってバーンと襖を開けたら、悲鳴が上がりそう)と考えました。
そんな大人げないことは、もちろんしませんでしたよ。やりたかったんですけどね。
(借りてきた猫だということをもう忘れてる)



夕食は、もちろん精進料理。
胡麻豆腐を必死にかき混ぜてきたばかりなので、みんな、出された豆腐につい注目します。









観光協会の方などとお話をしました。
高野山には宿坊が52院あるということも知りました。多いですね。
いろいろと興味深い話が聞けたものの、話に集中してしまい、せっかくの精進料理が食べきれませんでした。

日中暑かったため、お風呂に入ってホッとしました。
同室のアヤコさんはすぐに寝ましたが、仕事を持ってきたアッコさんと日記を書きたい私は「やらなくちゃ...」とモゴモゴ言いながら、がんばって少し起きています。
でも山の夜は早くて静か。せまりくる眠気にも負けて、早々に就寝となりました。

2日目に続きます。

南海電車で高野山 1-(1)

2013-07-06 | 近畿(奈良・和歌山)
◆ prologue
◆ 空からの富士山
◆ 関空着、空港急行
◆ 特急サザン「サザンプレミアム」
◆ 特急りんかん
◆ 滝ガールトーク
◆ 空海と真田の九度山
◆ 幸村庵で上田蕎麦
◆ 丹生官省符神社【世界遺産】
◆ 慈尊院【世界遺産】
◆ 真田庵(善名称院)
◆ 九度山散策
◆ 「天空」かぶりつき
◆ ケーブルカー
◆ 高野山駅
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◆ prologue

今回、ライターのアッコさんと、南海電鉄主催の高野山プレスツアーに参加しました。
プレスの方々にちゃっかり混ぜていただけることになって、感激!
皆さんの足を引っ張らないようにしなくっちゃ。
迷惑をかけないよう、借りてきた猫のようにおとなしく過ごそうと思いました。

高野山には、5年ほど前にツアーで行ったことがあります。
でもその時は、下からバスで登っていったため、延々と続くくねくねカーブにすっかり酔ってしまい、(とにかくアクセスが大変)という辛い思い出に。
ただ、毎年新丸ビルで開催される高野山カフェには足繁く通っているため、そろそろ久しぶりに本家本元を訪れたくなりました。
今回は、南海さんに連れて行っていただくため、バスではなく、南海電鉄を使って向かいます。
プチ鉄子の私。楽しみ~。

◆ 空からの富士山

当日は、早朝のフライトに乗り遅れないよう、頑張って4時起きしました。
5時に出発。空いていると思ったのに、空港までのリムジンバスは乗客で満杯。
こんな朝から、空港は賑わっているんですねー。ふわあぁ。
あくびを噛み殺しながら空港に着き、今回ご一緒する皆さんとご挨拶します。
総勢14人でした。



搭乗ゲートに進んでも、まだ目が半分しか開いていない私。
どこかからおいしそうな和の匂いがする~と鼻をひくつかせたら、築地のお寿司屋さんコーナーがありました。

ご挨拶をしたばかりのアヤコさんが、カウンターに近寄り、さらりとお寿司を頼んでいました。
しかも「おまかせ」で。旅慣れているわー。
今回の参加者は、旅行関係のプレスの方々のようです。(私?借りてきたレンタルキャットデス)

離陸後少しして、アッコさんが「そういえば、富士山ってもう過ぎたかな」と言いました。
「まだじゃない?」と言いながら、窓から覗いてみたら、雲海から顔を出す白い山が。
「あ、あれあれ」「え、カメラ出さなきゃ」とごそごそしている間に、飛行機はゆっくり富士山上空を通過して行きました。

いつも新幹線で関西方面に行く時に、富士山を見上げるとテンションが上がります。
飛行機から見下ろしても、やっぱり嬉しくなるものですね。
世界遺産登録、おめでとう!

関空まではあっという間。
アッコさんは仕事をし、私は眠っていくはずが、お喋りをしていたら、もう飛行機は下降体制に入っていました。

◆ 関空着、空港急行

関空に降り立ちます。暑い大阪に気づかぬふりをして、すぐに特急ラピード号に乗り込みます。
いえ、乗り込む・・・予定でしたが、フライトが遅れたため、ラピートには間に合いませんでした。
がっくり。
この車体、深い群青色で窓が丸く、銀河鉄道999かノーチラス号かといった感じで、かっこいいんですよね~。
ああ、乗りたかった~。
「空港急行」に乗り込む足を止めて、名残惜しく、隣のホームに停まっているラピートを激写していたら、「帰りに乗れますから」と慰められました。



関空は海の上にあり、市街へ向かう線路の両側が海で、とても気持ち良いです。
いつも、ヴェネツィアに電車が入っていく時の感覚を思い起こします。

◆ 特急サザン「サザンプレミアム」

泉佐野駅で「特急サザン」に乗り換えました。
関空から高野山までは、南海電車を乗り継いでいきますが、参加者の方々とお話をしていたら、この辺りから、よくわからなくなってしまい、後日、南海電鉄の方にしっかり教えて頂きました。



乗ったのは、特急サザン新型車両12000系の「サザンプレミアム」
おお~。
プラズマクラスター技術搭載の最新式です。



各席の前には大型テーブルノートとコンセントがあって、便利!
ビジネスマンが喜びそう。プレスの皆さんは、さっそくノートパソコンを広げていました。

◆ 特急りんかん

天下茶屋駅で「特急りんかん」に乗り換えました。
天下茶屋って、いい名前ですね。天下を見渡せる茶屋があったのでしょうか。
調べてみたら、秀吉が千利休に茶を点てさせたゆかりの地だそうです。
天下人、秀吉からきた名前だったんですね。
東京の御茶ノ水と由来が似ていますが、あちらは江戸だけに、お茶を飲んだのは家康公でした。



「特急りんかん」は「特急こうや」との併結列車。
こうやとりんかんの違いは行き先で、こうやは極楽橋駅、りんかんは橋本駅行きになるそうです。

◆ 滝ガールトーク

りんかんでは、アヤコさんと隣の席になりました。
前々から「知り合いに滝ガールがいる」とアッコさんに聞いており、今回とうとう初顔合わせができたわけです。
袋田の滝に癒されてきたばかりという彼女と、さっそく滝トーク開始ー、カンカンカーン。

日本の滝がお好みだそうで、海外の大飛瀑はイマイチだそうです。
イグアスの滝の話をしようと思いましたが、それを聞いて(あ...)と話題を引っ込めました。
滝行も好みではなく、あくまで滝のある自然の調和を愛でているとのこと。
「白糸の滝っていう名前がたくさんあって混乱しちゃう」と訴えて?みました。

私が好きな滝は何かしら?と考えます。
日光の「龍頭の滝」と「湯滝」がお気に入り。
「那智の滝」も外せませんが、好きというには神々しすぎて。
屋久島の「大川(おおこ)の滝」が、私の一番でしょうか。

ダムの放水もお好きとのこと。私もー♪
ダムカードのことをご存じなかったので、意気揚々と(笑)説明しました。

吊り橋好きの私とは、ネイチャーな感じが結構近く、話も盛り上がります。
今度、大分の九重“夢”大吊橋に行くと聞いて、うらやましさMAX!
日本一の高さ長さを誇る歩行者用吊り橋!渡りた~い!
「滝と橋で、いつかコラボを組みましょう!」と固く握手をしたところで、終点橋本駅に到着しました。

ここからは「快速急行」に乗り換えて10分。九度山駅で降りました。

◆ 空海と真田の九度山

九度山ですよ、九度山!
真田親子が蟄居していた雌伏の里にとうとう来ました!
前々から訪れたかった場所なので、嬉しさいっぱいです。
真田ファンですが、ここは真田の本拠地、信州上田とはわけが違い、東京からそう簡単に来れる場所ではありません。



名前も不思議で惹かれます。
空海の母君が、息子に会いたさに女人禁制の高野山のそばに住み、空海が月に9回、母の元へ通ったということからついた名前だと、最近知りました。
それまでは、真田のことしか眼中にありませんでしたが、もともと空海ゆかりの地だったわけですね。
歴女から仏女にシフトしていくと、入ってくる情報もまた変わるものです。

◆ 幸村庵で上田蕎麦

真田昌幸・幸村父子が配流された真田庵の隣にある「幸村庵」で昼食をとりました。



古民家を改築しており、全席お座敷。
六文銭の描かれた赤い座布団に、テンションが上がります。



九度山町と長野県上田市は、真田繋がりの姉妹都市。
幸村にちなんで、土地の人達が上田に行き、蕎麦作りを習ったのだそうです。
長野県産の蕎麦粉を使った、もっちりした二八蕎麦。
この味と食感を、真田三代も味わったんでしょうね。
紀州で味わう信州そばも、また乙なものでした。



またこの辺りは、日本一の富有柿の産地ということで、柿の葉寿司も一緒に出てきました。
「奈良のものとは少し味付けが違うんです」とお店の人が言いましたが、本場のものも食べ慣れていないため、味の違いが分かりませーん。
酢飯とキュッと締まった鯖が、おいしかったです。
真田親子は食べたのかしら?富有柿は食べたかもしれませんが。



さらに、高野山ということで、胡麻豆腐も出てきます。
これも親子は食べたのかしら?
つい、真田ファミリーのことばかり考えてしまいます。

つまりこの幸村膳は、高野山・九度山・上田の味がミックスされたものなんですね。
天ぷらのエビがとても新鮮で、忘れられない美味しさでした。



お店の床の間には、真田の鎧甲が飾られていました。
鮮やかな赤揃えは、さぞかし戦場に映えたことでしょう。
「甲冑の前に貼られているのは高野紙で、この地方独特の風習です」と教えていただき、たしかに中国の切り絵のようなものが貼られていることに気が付きました。
真田といったら真田紐ですが、高野紙もあるんですか。
紙と紐のコラボレーションですね。
食事も美味しいし、真田のことも気になるし、チェックしたいことが急に増えて、頭のなかは一気に大忙しです。

◆ 丹生官省符神社【世界遺産】

昼食後は、シティガイドに街を案内してもらいます。
この神社の名前が読めません。じんたん?うに?
「にうかんしょうぶ」神社と読み、丹生都比売大神を祀る、官省符荘にある神社という意味だとのこと。
空海によって816年に慈尊院と共に創建された、この地方の鎮守でした。



神殿横には巨大な絵馬が飾られ、空海を高野山へと導いた白と黒の犬が描かれていました。
「ここの神社には、狛犬が無い、ナイ」とキョロキョロする私に、何人もの人が「あの絵に描かれてるからじゃないの」と言いましたが・・・
あれは犬で、狛犬じゃないのよー。



入り口の鳥居の下には、茅の輪がありました。
見慣れたものよりも、かなり小ぶりで、男性は相当身をかがめなくては通れなさそう。
(あれをぐるぐるくぐるなんて、大柄の人ほど体勢がつらそう)と思ったら、ここは単に通り抜けるだけでした。
関西と関東の風習の違いかしら?



裏参道から神社を参拝したため、はじめは(おや?)と思いましたが、ほどなくしてそのわけがわかりました。
鳥居をくぐったところに、下へと続く石段があったのです。
暑い中、下から上に上がるのは大変なので、下るルートを考えてくれたのでしょう。

降りたところには、慈尊院がありました。

◆ 慈尊院(女人高野・結縁寺)【世界遺産】



空海が丹生都比売大神と一緒に創建した神社です。
もちろん、高野山真言宗の寺院。



空海の母が入滅して弥勒菩薩に化身したとされ、奈良の室生寺などと並ぶ「女人高野の寺」として賑わっています。
女性の厄除けや乳がん治癒祈願のために、無数の乳房形の絵馬が奉納されていました。
女性が作ったものだけに、一切いやらしさはなく、かわいらしい手作り絵馬でした。



古さと伝統の漂う境内。
御朱印をいただこうと思いましたが、ちょうど観光バスが到着して、ご年配の女性たちがワーッと寺務所に押し寄せたところだったので、やめておきました。



◆ 真田庵(善名称院)

寺社の参拝を済ませ、今度は幸村庵の左側にある真田庵を訪れました。
蟄居生活を送った真田父子の屋敷跡に建てられた尼寺。
お寺というよりは、小さな城郭、もしくは大きな古民家のようです。



古めかしい木の山門には、真田の家紋である六文銭が彫り抜かれていました。



もう片方には雁(かり)の家紋が。
真田イコール六文銭のイメージが強いですが、この雁金紋も、真田の家紋です。
六文銭は戦いの時、雁金紋は平和な時に使い分けて用いたそうです。



気のせいか、古めかしさのせいか、門の内側から見えない迫力を感じますが、勇気を出して足を踏み入れます。
境内にお社があり、真田地主大権現が祀られていました。
真田三代の御霊を合祀しているとのこと。



この地で亡くなった真田昌幸も神様になっていたんですね。
慰霊と鎮魂の祈りを捧げました。



上田の後にここを訪れ、これでようやく真田詣でが完結できた気がする私は、大満足。
でも「あれ、カメラのシャッターが降りない。もしやこれは・・・」なんて言い出す人もいました。
いえいえ、真田は神様として祀られているんですから、もう大丈夫。
菅原道真が学問の神様になったように、真田昌幸は武術の神様になったのでしょう。



屋根瓦に、反り返った小さな狛犬が乗っています。
「かわいい!」という声が聞こえたので、思わず「あれは出雲型なんですよ」と言ってしまいました。
「え?それ何ですか?」と聞かれ、真田権現の前でプレスの方々に「狛犬の出雲型とはですね・・・」と説明をしてしまいました。
目立たないようにするはずが、マニアックな人扱いされてしまうわ~。

本堂には「おびんずる様」の像があり、「これは誰ですか?」「なぜこんなところにいるんですか?」という質問に対して、また解説をしました。
ここですっかり歴女・仏女のカミングアウトをしてしまいました。(まあ、時間の問題だったという話も)

◆ 九度山散策

それにしても、暑い!
アスファルトの照り返しと立ち上る熱気にクラクラします。
幸村は、お兄さんの信之に「こっちは雪が降って寒いから、服とか食べ物とか送って」と懇願の手紙を送っていたので、てっきり寒い山の中なのかと思っていましたが、なんなのこの暑さー!

まあある意味、暑くてよかったところはあります。
でないと、私一人で羽が生えたように、「幸村ー♪」とフラフラどこかに行ってしまいかねなかったので。
温度計は30度をさしていたそうで、「九度山のイメージが変わっちゃうね」と話しましたが、東京はもっと暑かったようです。

町には紀ノ川が蛇行して流れており、涼しげです。
紀の国~紀の川~♪
「紀の川」は「モルダウ」や「大地讃唱」と並んで合唱コンクールの定番曲ですが、近くの金剛出身の方は、「歌があるんですか?有吉佐和子の小説しか知りません」という反応でした。
現地の人は歌わないのでしょうか。

九度山散策を終えて、駅へと戻ります。
関東からは、なかなか行きづらそうなイメージがありますが、真田ファンにとっては、ここは特別に訪れたい場所のはず。
九度山は真田以外にも見どころが多い、魅力的な場所でした。

駅のホームに「好きっぷ」のポスターが張ってあり、去年これを使って徳島に行ったことを思い出しました。
そういえば、南海の企画チケットでした。

◆ 「天空」かぶりつき

九度山駅で電車を待っていたら「天空」がやってきたので、小躍りしました。



前々から乗ってみたかった天空。
しかも今回は、一車両目の一番前の席と横の席を確保してもらっています。
うれしい!リアル鉄子のアッコさんと浮かれます。
後ろにはオープンデッキがあり、自然の風を味わえます。



最前列は、やはり子供達に押されぎみ。
最近の子供達は、一眼レフをめいめい首から下げていて、本格的ですね。(そしてリッチ)
ひたむきな目で、車窓を眺めています。



見渡す限り、のどかな里山風景が広がり、緑はどんどん深くなっていきます。
線路はくねくねと蛇行しながら、傾斜を登っていきます。



急勾配トンネルが23もある、山深い路線。
線路は単線で、ところどころですれ違うためにふた手に分かれています。

●YouTube:「天空」に乗って「こうや」とすれ違う


この動画を撮っているところを、激写されていました。ああかぶりつき(笑)。



車両内に「東急車輌」という表示がありました。
おやと思ったら、南海では車輌をいつも東急車輛製造株式会社に依頼して作ってもらっているとのこと。
知りませんでした。まさか、和歌山で東急の名前を見ようとは。
東急ユーザーとして嬉しくなりますが、「でも今は、東急車輛がJRに組み込まれたので、名前が変わって、もうこの表記はなくなったんですよ」という話になりました。

「えっ、東急車輛はもう無いんですか?今は何になったんですか?」
「うーん、JRの子会社になった名前はなんだったかなあ?」
その場にいる人達で考えていたら、そばにいた小学生が「総合車両製作所!」と教えてくれました。
「おお~、さすがは鉄っちゃん!」「将来有望!」「でも学校の勉強もするんだよ!」
みんなで少年をやんやと褒め称えました。



この天空、一日2本しか走らないらしく、予約をとるのが大変な人気列車だそうです。
一番前のかぶりつき席に座れて、本当にラッキーでした。

◆ ケーブルカー
 
天空は終点の極楽橋に到着。名残惜しくも降りて、ケーブルカーに乗り換えます。
駅のそばには朱色の橋がかかっていました。これが極楽橋ですね。
ホームには、無数の風鈴が飾られていて、涼しげでしたが、風が吹かないため、静かなままでした。





ケーブルカーがホームに停まっている段階で、かなりの斜めっぷりに驚きます。
延長0.8km、最高勾配30度。傾斜日本一なんだとか。



動き出してすぐ、スカイツリーの高さを越えたとの表示がありました。
上を見ても下を見ても、バランスを崩しそうなほどの急斜面。
これはすごいです。



かつてルーズベルト大統領夫人は、イグアスの滝を訪れた時に、その巨大さに「かわいそうな私のナイアガラ!」と言ったそうですが、私は「かわいそうな私の大山ケーブル!」と言いたくなりました。

今年二回乗った大山ケーブルカーも、かなりの傾斜でしたが、こちらのほうがはるかにうわて。
5分間で、340m上の高野山駅まで上り詰めました。

◆ 高野山駅

とうとう高野山駅までやって来ました。



九度山はうだるような暑さでしたが、さすがにここまで来ると、肌寒くなって上着をはおりました。
ひたすら山を登ってここまで来たのです。
これから路線バスの臨時便に乗り換え、貸切状態でさらにカーブ道を上がっていきます。



以前訪れたときは、麓からバスで登ったため、死にそうなほどヘビーに酔ってしまいましたが、今回のこの距離では全く問題ありませんでした。
10分程度で、壇上伽藍前に着きました。

1日目その2に続きます。

天空の郷、吊り橋三昧 index

2013-02-13 | 近畿(奈良・和歌山)


◇ 1st day-1 新宮・瀞峡・北山村
南紀・十津川旅行1日目です。
道の過酷さにめげそうになりながら、なんとか飛び地にまでたどり着きました。

◇ 1st day-2 玉置山・本宮
霊峰玉置山にある最古の神社をお詣りしました。
下界で食べためはりずしがおいしかったー。

◇ 1st day-3 本宮・湯の峰
日本最古の湯の峰温泉に泊まりました。
湯治客の似合う、小さな温泉街。
発見されたのは、なんと弥生時代ですって!

◇ 2nd day-1 十津川
いよいよ十津川での吊り橋巡りの日です。
とってもワイルドでした。。。
YouTubeにもちょっぴり載せてみました。

◇ 2nd day-2 十津川
吊り橋巡りは続きます。
さらにすごい橋が待っていました。
ダムもトンネルも満喫!

◇ 2nd day-3 十津川
ついに辿りつきました、はるか天空の郷へ。
野猿はとってもハードでした。昔の人は、すごい!

◇ 3rd day-1 十津川
この日もやっぱり吊り橋ざんまい。
そしてダムの放水シーンを見られました。

◇ 3rd day-2 白浜、飛鳥
十津川を離れて、南紀白浜へ。
白浜はパンダ一色でした。
海沿いに大阪を経由して、飛鳥へと向かいました。

◇ 4th day-1 橿原神宮、桜井
紀元祭翌日の橿原神宮を参拝して、霊峰三輪山から大和三山を眺めました。
この旅で「にゅうめん」と「そうめん」と「うーめん」と「冷や麦」の違いがわかりました。
みなさんご存知ですか?

4th day-2 斑鳩、奈良
今回のワンダー奈良旅行も、これでおしまいです。
最後に普通の斑鳩観光をして、帰途につきました。


天空の郷、吊り橋三昧(斑鳩、奈良)4-2

2013-02-12 | 近畿(奈良・和歌山)
4-1からの続きです。いよいよ旅も終りに近づきました。

○奈良へ

三輪駅に戻り、次の電車が来るまで40分、小さな駅舎で待ちました。
和風のグラデーションの美しいボディカラーの電車を見かけました。
桜井線は、「万葉まほろば線」とも呼ばれているそうです。
「万葉集」の歌を乗せて走る電車なんて、風雅。名所・旧跡の多い大和ならではの車体ですね。





県庁所在地の奈良行きの電車だというのに、乗客が少ないことに驚きます。
ワンマン電車イコール、ローカル線というわけですね。

先ほどの近鉄・「畝傍御陵前駅」には驚きましたが、この線も読みづらい駅をたくさん通ります。
天理駅を過ぎると、「櫟本(いちのもと)」、「帯解(おびとけ)」、「京終(きょうばて)」と続いて、難しい読みに眼をぱちぱちさせました。

奈良駅に到着し、荷物を置いて、再びJRで法隆寺へ向かいました。
ボックス席で、こちらもほとんど他に人が乗っていません。



電車の中も外の景色もとても静かで、銀河鉄道999に乗っているような気分になります。
汽車は~闇を抜けて~光の海へ~♪
山あいの地から出てきたので、もっと温かいかと思いきや、結構寒く、冷え込んでいます。

○法隆寺

法隆寺に着きました。ここには3か月前に訪れたばかりですが、バスで行ったため、電車からのアクセスがわからずウロウロ。
思ったよりも歩きました。



駅からまっすぐの道をたどって現れた法隆寺の伽藍は、やはり完璧な構図で絵になります。
空気ががらりと変わり、一瞬にして時代が戻ったかのよう。



人気の高い世界遺産といえども、シーズンオフの平日なので、閑古鳥が鳴くほど閑散としています。
(そういえば、閑古鳥ってどうやって鳴くんだろう?)と調べてみたら、閑古鳥はカッコウのことなんですね。
知りませんでした!じゃあ「カッコウ」って鳴くんだわー)



チベット僧侶のようなグループとすれ違いました。遠い外国にも聖徳太子の名は知られているのでしょうか?
単に観光地巡りをしているようではなかったので。

○中宮寺

pino希望の中宮寺に向かいます。



聖徳太子の母親が祀られている小さな尼僧院で、ここの観音菩薩に会うのを楽しみにしてきました。



伽藍は工夫されたデザインではあるものの、コンクリ製なのでどうしても武骨。
でも中に国宝を鎮座させているので、耐久性最重視なのはいたしかたありません。



菩薩半跏像とも如意輪観音とも弥勒菩薩とも呼ばれるここのご本尊。
漆を塗られて今は真っ黒。岩鋳製のように黒々と光っています。
優雅で優美な像に、言葉もなくしばし見とれます。
これまで見てきたうちで、一番優美な仏像かもしれません。



これまで私は、仏像というと、勇ましいものが印象に残っていましたが、この観音様は他を凌駕しています。
見ても見ても見飽きることなく、pinoと「きれい・・・」と、その優しい微笑みにしばし魅了されました。

この観音様は、ダ=ヴィンチのモナ=リザ、エジプトのスフィンクスと、世界三大微笑とされているそうです。
わかるわー。宗教を偏らせない三択なのかもしれません。
でも、あれれ?
スフィンクスって笑っていたかしら?風化されて表情まではもうわからなくなっているような。
謎だわー。(スフィンクスだからねー)

スフィンクスはさておき、すべての人を癒すような微笑みをたたえるこの像が、すさまじい政治的陰謀が織り成す中で作られたということを考えると、1300年間のさまざまな火の粉をくぐり抜けて、今ここにあり続けることに、ただ感動します。
静かな謎めいた微笑は、さまざまな経験を経てこないと出せないなのでしょう。

○夢殿

観音菩薩にぽーっとなったまま、隣の夢殿にも入りました。
でも、あれ、中に入れない!
夢殿の中には、仏像が何体か安置されていますが、外から覗くことしかできません。
えー、中に入りたかったのにー。



『日出づる処の天子』を読んだのは、中2の時でしたが、厩戸皇子が夢殿に引きこもって鬱々としていたシーンが印象的でした。
絵では、夢殿は少年のごろ寝サイズにちょうどいい、6ー8畳くらいだったように思います。
pinoに「その話の聖徳太子は、エスパーでマザコンで蘇我毛人(えみし)LOVEで引きこもり」と説明したら、「ええー、漫画なんだよね…?」と、少し引いていました。
(言い方悪かったかしら?)



ここの仁王様は、こわいくらいに迫力満点!
東大寺南大門の仁王像が日本一だと思っていますが、ここはその次くらいかも。



○ 斑鳩三塔めぐり

法隆寺の手水舎は、龍のモチーフのものでした。
でもどれも微妙に怪物っぽく、ノートルダムのガーゴイル風でした。





法隆寺を見た後、前回は西にある藤ノ木古墳や龍田川へと向かいましたが、今回は東方面の、斑鳩三塔めぐりをしました。
でも中宮寺を参拝するという目的を達して大満足し、もうホテルで休みたそうなpinoは、「え~」と気が乗らない様子。
まあ、人生直線だけではおもしろくなくってよ。寄り道して行きましょう。

どれも聖徳太子所縁の塔です。
まずは法輪寺の三重塔が見えました。



犬の散歩をする住民の人たちと、数人すれ違います。この辺りはたしかに気持ちのいいお散歩コース。
ただ、雲が広がり、空が暗くなってきたため、急ぎ足になりました。
法輪寺を見ながら、次の法起寺へと向かいます。
「近道しよう」と、pinoはショートカットを始めました。

辺りはのどかな田園風景。
絵になる斑鳩の里の絵の中に入り込んでしまったような気分。



法輪寺の前についた時には、もう門は閉まっていました。
それでも、角度を変えてみると、美しい三重の塔が見られます。
秋にはコスモスが咲くという田圃に囲まれ、落ち着いた雰囲気でした。



田圃道を通って隣の駅へ向かって歩いていると、心配していた通り、ぽつぽつ雨がふってきました。
この辺りは、JRひと駅の間隔がかなり遠いです。新宿と代々木くらいの距離かなと思っていると、えらい目に遭います。
もともと鉄道なんて通っていないような、昔と変わらぬ斑鳩の里風景を目の前にすると、そういうものかなとも思えてきますが。



雨はだんだん降って来て、小さい傘だと心もとありません。
途中のお地蔵さんのところで休憩したりしながら、無事に大和小泉駅まで辿り着きました。
空が暗いと、気持ちもなんだかブルーになってしまいます。旅の時は、特に。

○ 奈良で解散

ふたたび奈良駅に着き、そこでpinoと解散しました。私は一足先に帰り、pinoはもう少し旅を続けます。
想像もしなかった冒険を共にこなし、時には命も張ってきた旅の同士との別れに寂しさを感じますが、pinoは「じゃ、お疲れさま~!」と、いそいそとホテルの中へと姿を消して行きました。
取り残されて切ないわ~。おまけに雨はどんどん激しくなってきます。



帰りは大阪から。雨だし早めに移動しようと路線図を見ましたが、目指すなんば駅がありません。
そういえばここはJR。駅構内でうろうろと近鉄乗り場を探しますが見つけられず、旧駅舎にある観光案内所に行って聞きました。
「ここから15分ほど歩きます」と地図をもらいます。
近くではありませんでした。これまで奈良にくる時は、近鉄ばかり使っていたので、JR駅に馴染みがなかったんだとわかります。
さっきpinoに「あれが旧駅舎」と教えてもらっても、ピンとこなかったわけです。
少しでも明るいうちにと歩き始めました。雨はどんどん強くなり、旅行用の小傘では頼りなくなるほどの大雨になっています。



途中、天皇陵の前を通りかかり、のぞいてみました。
第9代開化天皇・春日川坂上陵(かすがのいざかわのさかのえのみささぎ)。読みづらいわー。
天気なら猿沢池のあたりを散策したかったのですが、そのまま電車に乗りました。

○ キラキラ道頓堀



一本でなんばまで行き、地表に上がってみたら、ネオンキラキラの場所に行き当たりました。
ここは、TVでよく見る道頓堀!わあ、グリコって巨大!



大阪はほとんど知らないため、初めて見ました。
それまで、星光りしかないほどの自然の中にいた眼には、まぶしすぎてどうにかなっちゃいそう。
あまりにコテコテのザ・ネオンに、一人のさびしいモードはどこかに吹き飛びました。



大阪から帰浜し、これで今回の旅はおしまい。
無事に旅を満喫できて、まずはpino、そしてマツミンさんに、感謝です。
その後、pinoがどんな旅をしたのかも聞きたいなあ。

帰ってからも、なかなか現実復帰できずにいます。
おそらくずっと忘れられない、すばらしい体験ができました。
いい旅でした!またいつか、訪れたいと思います。
今回の旅行記はとりわけ長く、なかなかマニアックでしたが、最後までお付き合いいただき、どうもありがとうございました。

天空の郷、吊り橋三昧(橿原神宮、桜井)4-1

2013-02-12 | 近畿(奈良・和歌山)
3-2からの続きです。


○ 民宿の朝
○ 橿原神宮
○ 神武天皇陵
○ 大神神社
○ 大和三山
○ 三輪素麺と柿の葉寿司
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○ 民宿の朝

チュンチュンと小鳥の声がする、絵にかいたような爽やかな朝の目覚め。
気になっていた天気も、大丈夫そうです。
宿の周りには畑が広がり、ああ、明日香村に来ているんだなあと、すがすがしい空気を胸いっぱいに吸い込みました。



朝食は和食。素朴な感じで食べやすいです。
夕べの飛鳥鍋といい、こういう食べ物が一番身体に馴染むなあと思いながらいただきました。



チェックアウト時に、おかみさんにお別れのご挨拶をしながら、大神神社への行き方を聞きました。
まっすぐ行く道が、ありそうでなさそうなので。
すると「飛鳥には行かないの?」と驚かれました。
今回は残念ながら、ちょっと時間が足りないのです。
橿原神宮を参拝するついでに、隣の明日香村まで、雰囲気だけでもと足を伸ばしてみたわけなので。
すると、旦那さんに駅まで車で送ってもらえることになりました。





宿の各部屋に生け花が飾られており、そのどれもが違う花だということに心動かされたとおかみさんに話したら、どれも旦那さんの手によるものだと教えてもらいました。
生徒をとっていたこともおありだという腕前。さすがという立花の存在感です。
特に冬の水仙を活けたものが素敵で、車に乗せてもらっている間、そのお話しをしました。



○ 橿原神宮

駅前で下ろしてもらい、まずは橿原神宮へ向かいます。
伊勢や善光寺などのように、ここも神宮の周りが栄えて町になった場所。
駅前にホテルも多く、隣の明日香村とはまた雰囲気の違う、開けた町です。



少し歩いて、神宮の大鳥居をくぐり、境内に入りました。
だだっ広い駐車場を眺めながら、(昨日はここに、たくさんの街宣車が集まったんだろうなあ)と考えます。
一夜明けると何事もなかったかのような静けさ。タイミングに乗り遅れた車の姿は一台もありませんでした。



平日の静かな朝に、シャクシャクと音を立てて石砂利の上を歩いて行くのはとても気持ちがよいですが、キャリーケースをゴロゴロと引いているpinoは大変そう。
振り返ると、くっきりと轍がついています。
祭殿へ向かうと、大きな巳年の絵馬が奉納されています。
神武天皇の即位から、今年で2673年目。
玉置神社の巨木杉群は、樹齢三千年なので、神武天皇が訪れた頃にはすでにあの場所に生えていたことになります。



お賽銭箱のある一般の参詣場と神殿の間に、広い空間があり、そこにおびただしい数のパイプ椅子が折りたたまれて重ねられてありました。
昨日、ここで行われた紀元祭の名残です。さぞかし盛り上がったことでしょう。



広々とした気持ちのよさはあるものの、それ以上の感覚はありません。
夕べのタクシー運転手も、「あそこには神様がいないからね」と言っていました。
みんな知っているのね。落ち着いた造りではあるものの、この神宮の歴史はそう古くはありません。

○ 神武天皇陵

正面参拝口の反対側から出て、次に神武天皇陵へ向かいました。
またもや石砂利の道。pinoは引くのを諦めて、キャリーケースを抱え出しています。
まるで羊を抱きかかえる牧人のよう。(ってこれ、キリスト教のモチーフですね)



静けさが漂う界隈でした。
謎に満ちた神話の世界の神武天皇。今回の旅は、熊野を巡り、気がつけば神武天皇ゆかりの地をあちこち巡ってきています。
冬だったため、道路凍結を避けて熊野超えはせず、海沿いに大回りでここまでやってきましたが。



そこから少し歩いて、畝傍御陵前駅へ。
ここの駅名、雅ですが、難しいですね~。書こうとすると遠い目になっちゃいます。
橿原神宮も難しいー。樫じゃないんですものね。
ちなみに、橿も樫も同じ木を指し、もともとは「橿」という文字で、「樫」は後に日本で作られた国字なんだそうです。



大和八木で橿原線から大阪線に乗り換えました。
こっちの大福駅の方がなじみますね、ハイ(笑)。
両隣の桜井も耳成も、なんだか縁起がよさそうな名前で、バランスのよい三位一体型ですね。



桜井で今度はJR桜井線に乗り換え、三輪へ。
小さな無人駅です。この線は、ほとんど無人みたい。
さりげなく駅に張られたポスターを見て、なかなか驚きました。だってほとんど無人駅…。



この駅で降りた人たちは、みんな大神神社へと向かったようです。

○ 大神神社

今年、是非とも参拝したかった大神神社。
なぜかというと、蛇の神様をお祀りしているからです。
巳年の参拝が叶って幸せ。
日本最古の神社の1つといわれる割には、あまり知られておらず(私が知らなかっただけかもしれませんが)、周りで行ったという人の話を聞いたことがありません。
三輪山全体がご神体という、大きなパワーの源です。
大神と書いて「おおみわ」と読みます。



神社の一の鳥居を過ぎ、二の鳥居を前にして、さあ参拝しましょうと気持ちが引き締まりますが、奥へと続く石砂利と石段を見て、キャリーケースを引くpinoの気持ちと体力がしぼんでしまいました。
「参拝してきて。ここで待ってるから」と言われますが、せっかく前まで来たのに、入口で待っているというのは、あまりに残念。
近くにコインロッカーはないかとパーキングの人に聞くと、「ロッカーはないため、お店に置いてもらえるか聞いてみたら」という返事。
近くの食事処・福神堂で聞いてみると、ありがたくもすんなりOKしてもらえました。
これで一件落着です。
身軽になって参拝。入口にある木の杖をつくと、山の巡礼者の気分が出ます。
ここの手水舎は、もちろん蛇。見つめられているみたい。
後ろは、三輪の大神があらわれたという「しるしの杉」です。



参道のまっすぐ奥に、本殿がありました。
迫力と風格があり、空気に圧されます。



参拝する場所に幣(ぬさ)が置かれていました。身を清めてお参りせよとのこと。
参拝者向けの幣があるところは、初めて。
空にも届くご神木「巳の神杉」がありますが、柵があって触れません。



熊野の神社、玉置神社、そしてこの大神神社と、今回の旅では日本最古と言われる神社をお参りできています。
どこも自然と一体化したような深さのあるお宮ばかりで、心が洗われるよう。
ご祭神がヘビの神様なので、そこかしこのお社には生卵がお供えされていました。
ハッ、生卵・・・。夕べの飛鳥鍋で、おいしく食べちゃった!
まあ、腹が減っては参拝もできぬ、ということで。



智恵の神様もおいでです。
国王神社のことがあるため、今度こそは!と久延彦神社をお参りしました。
ご祭神の久延毘古命は、古事記に登場する、八百万の神々のうちで一番記憶力のいい神様。
頭はよくなくてもいいので、もの忘れさえひどくなりませんように・・・(よく鍵を失くす私は真剣)



○ 大和三山

大神神社全体が山中の高台にあるため、久延彦神社のところからは、大和三山を一望にできました。
くぐってきた、大神神社の一の鳥居も見えます。
吉野に行ったら、どこか大和三山を一度に見渡せる場所から眺めてみたいと、つねづね思っていたので、とても嬉しい気持ちになります。
やまとは国のまほろばー。
千年単位の時がたっても、三山の雅な形は変わらないものですね。

池のほとりには、市杵嶋姫神社の祠がありました。
素盞嗚大神の娘で、水の守護神。弁天さまです。
見たこともない楽器から妙なる調べを奏でている参拝者がいました。



奥宮の狭井(さい)神社にも足を伸ばしました。
ここの神社の鳥居には、どれも上に木が通っていない、変わった形をしています。



病気治癒で知られた神様で、神殿には女性3名の姿が見え、父親の手術が成功するようにという祈祷を受けていました。
その裏には、薬井戸と水琴窟があります。
霊泉の薬井戸から湧き出る、万病に効くといわれるご神水を飲み、水琴窟に耳を近づけると、かすかに水が流れていく音が聞こえました。



三輪山への登山口はここから上に伸びていました。
山道巡礼用に、今ついているものよりもぐんと太い木の杖が置かれています。



手続きが必要でなかなか本格的な登山になるとのことなので、入山はしませんでしたが、境内に三島由紀夫の碑があり、彼は登ったことを知りました。



神水の調べを聞き、神水をいただいて、すっかり心が落ち着きました。
自然と一体化しているような神社が好きな私にとって、ここはとてもしっくりくる場所でした。

○ 三輪素麺と柿の葉寿司



参拝を終え、荷物を預かってもらっている食事処・福神堂へ。
ここでお昼にします。三輪は素麺が有名なことを思い出して、にゅうめんにしました。
白石温麺が好きな私は、味比べをしてみました。ここは両手を挙げて、文句なしの美味しさ。
優しい味で、心まで温まりました。もっと東京で食べられる機会が多ければいいのに。



pinoは柿の葉寿司にしました。こちらもおいしかったです。
今まで、奈良の食べ物といったら奈良漬くらいしか思い出せませんでしたが、しっかりほかの名産も覚えました。
食べるべきは、やはり本場の味ですね。



今回、にゅうめんとそうめんとうーめんと冷や麦の違いがようやくわかった私。
奈良に行って良かったー。
そんなこんなで、いよいよ最後の4-2に続きます。