風に吹かれて旅ごころ

はんなり旅を楽しむはずが、気づけばいつも珍道中。

お城と水と火の国へ(熊本) 1-(2)

2015-09-17 | 九州
1-(1)からの続きです。

○ 清正公の城



熊本の主、クマモンへの挨拶を終えてから、次はお城を目指します。
前にツアーで訪れた時には下から眺めただけだったので、「お城の中に入りたいー!」と後ろ髪をひかれる思いで離れたのでした。
やはりお城の中のお城、熊本城には行っておかなくては、城好きは名乗れません。

建てたのは、虎退治で知られるリアル熊本の主、加藤清正。
ズイキが敷き込まれた畳に、かんぴょうが塗り込まれた壁、実を食糧保存するために城内に銀杏を植えるなど、災害時を見越した綿密な築城計画を施した、稀代の築城の名手。
日本各地で「清正公」として崇められています。私も好きな武将です。

○ 首なし巫女パネル

お城にまっすぐ行くはずが、隣の赤い鳥居が目立ったので、まずは熊本城稲荷神社に向かいました。
茅野輪巡りをし、巫女さんの顔出しパネルで、互いに撮影します。
さっちゃんとは、似ているところが割と多く、顔出しパネル好きな点も共通しているので、気楽。
巫女さんは、パネルの後ろから首だけを出すというスタイルのもので、繰り抜かれた穴に顔を当てるよりはナチュラルに撮れますが、誰も撮らない時には、首なし状態のパネルが拝殿前に立っているので、ちょっとだけホラー。
あまり怖い画像にならないよう、さり気なく写しています。



大正15年の狛犬とお狐さんにあいさつして、参拝します。
お賽銭箱の前にしゃもじがありました。
身体の悪いところを叩くといいそうです。
「よーし」と2人でやってみましたが、あちこち叩きすぎて、なんだか逆に身体が痛くなりました。



○ 魅惑の武者返し

そうして、念願の城内へと入りました。入城~。
さっちゃんは「うぇるかむパスポート」なるものを持っています。
引っ越してきた人への市からのプレゼントで、市の施設を1年間無料で利用し放題なんだとか。いいですね~。
平日なので空いていて、広さを堪能できます。混んでいなくてよかったわ。



入り口を入ってからすぐに櫓コースと石垣コースの分かれ道があり、石垣コースを選びます。
前から気になっていた武者返しをこの目で見て、感激!
なんて美しいカーブ!ああ・・・(シビレ中)。



二人とも石垣の曲線美にうっとりして、なかなか先に進みません。
興味がない人は、目にもくれずに通り過ぎるでしょうけれど、お互い趣味のポイントが合うと、ぞんぶんに時間をかけて鑑賞できるのがいいわ。
ここのお城はやっぱりすばらしいです。日本一の名城という名を誇るだけのものがあります。



人と比べると、こんなに大きいんですよ。当時の石垣技術の高さに脱帽です。
これでは武者も忍者も、あきらめて戻るしかありません。





石段の上から、和服の人が軽やかな足取りで下りてきました。
近づくと、本格的な和装だと気づきます。
まだ石垣カーブにぽーっとしていた私たちが、あやしい足取りだと思ったのか、
「こちらの方が歩きやすいですよ」と、親切に、すり減っていない石段の辺りを教えてくれました。

さっちゃんが「おもてなし武将隊の人だよ」と教えてくれます。
なんと、熊本城にも武将隊がいるんですね!最近ではどのお城にもいるようになったのかしら。
このお城なら、いなくても人はやってきそうなのに。



「おやつの時間だから降りていくのかもね」とさっちゃん。
えっ、さっきのくまモンと一緒?(笑)

○ 最高の顔出しパネル

上に上がると、お城の天守閣の全貌が見えました。
おもてなし武将隊はここにもいましたが、中国人観光客に囲まれて撮影の嵐。
ここで、目指す顔出しパネルを発見しました。
さっちゃんがすでにSNSのアイコンにしており、「何そのクオリティ!すごい!」と気になっていたのです。



顔出しパネルは、普通木製ですが、これは強化プラスチックでできているよう。見るからに丈夫です。
彩色もしっかりしているし、立体的なのがすごくいいわ。
日本中の顔出しパネルがこうなればいいのに!
強くかけあいたいわ!(どこに?)



石垣の武者返しの曲線美に魅せられ、威風堂々とした黒い本丸に魅せられ、クオリティの高い顔出しパネルに魅せられ、天守閣に入る前からもうすっかりメロメロです。

○ 銀杏城の大イチョウ

熊本城は、別名「銀杏城」といいます。あんまり強そうではありませんが、清正公が築城の際に手植えをしたとされる、城内の大銀杏に由来しています。



この木は大木ですが、当時のものではありません。
初代は西南戦争で燃えてしまい、芽吹いた若芽が成長したものです。
樹齢約130年。立派な巨木に育ちました。
鎌倉の鶴岡八幡宮の大イチョウが数年前に嵐で倒れて、いまは若芽が育っているところ。
130年後には、このくらいに育っているといいなあ。

○ 盆地だった熊本

5階建ての天守閣の上まで上ると、熊本の町が遠くまで一望できます。
どの角度も、青々とした山々に囲まれています。



長崎方面は海に近いはずですが、それでも海は見えずに山がそびえています。
熊本が盆地だということは今まで知りませんでしたが、四方を山に囲まれたこの景色を見ると、確かにそうだと納得。



○ 甦った本丸御殿

数年前に復元されたばかりの熊本城本丸御殿も見学しました。
畳数1570畳、部屋数53もあった建物で、まず通されたのは、大御台所(おおおんだいどころ)。
やんごとなき人をおもてなしする炊事場です。
担当の係の人が解説してくれました。
天井部分の梁には、長さ12mの赤松の木が使われているということでした。
吹き抜けの天井から、煙が外に出る仕組みでした。

有名な武将の手紙も残されていました。
秀吉や家康そっちのけで、私の好きな明智光秀の手紙に注目します。



千利休の自筆の手紙もありました。
戦国時代の手紙がきちんと保存されているというのは、すごいことですね。
誰も、破いたり燃やしたり飛ばしたりしなかったんですからね。



○ キラキラの書院造

本丸御殿の中でも一番格式の高い藩主の居間、昭君之間は、とてもきらびやかでした。
つくりは書院造。日本が誇る建築様式です。





天井に描かれた花の絵が、色鮮やかで美しく、見入りました。
どこを向いてもキラキラと豪華です。



壁や襖には、前漢時代に匈奴(モンゴル)に嫁がされた悲劇の美女、王昭君の物語が描かれていて、中国風でした。
個人的には、清正の虎退治の屏風でもあってほしかったのですが、雰囲気が違いすぎますね。



閉城の時間まで城内でゆっくりと過ごし、清正公に思いをはせました。
どこをとっても非の打ち所のない、素晴らしいお城で、惚れ惚れします。
ここを誇りに思わない熊本人はいないのではないでしょうか。

ここは「一日城主」制を敷いていて、1万円以上寄付した人には一日殿さまとしてもてなされるのだそう。
城主になった人の名前が、お城の中にびっしりと飾られていました。
「一国一城の主」気分を味わいたい人は、熊本城に来ればその希望が満たされますよ~。
私は、顔出しパネルで清正ごっこができたので、満足じゃ~。(小さい)



○ 桜の小路の太平燕

入ったのとは違う門から出たら、方角がまったくわかりません。
お城に併設された「桜の馬場 城彩苑」の桜の小路で、早目の夕飯をとることにしました。
きっと春にはすばらしいお花見スポットなんでしょう。
昔風の建物のお店が並んでおり、雰囲気たっぷりです。



くまモン可愛い!家まで曳いて連れて行きたいー。ガラガラと・・・



「肥後めしや 夢あかり」というお店で、太平燕(タイピーエン)を食べました。
太平燕とは見るのも聞くのも初めてで、読み方すらわかりませんでした。
中国福建省から伝わった熊本定番の食べ物で、こちらの人々はみんな、日本中の人々が食べていると思っているそうです。

「横浜のサンマーメンみたいなものね」とさっちゃん。
「でもサンマーメンは、地元でも知らない人がいるからね~」
横浜の崎陽軒のシウマイみたいなもの、かもしれません。

春雨に具がたっぷり乗ったヘルシーな食事で、だしが効いて美味しかったです。



○ ダイナミックな店内オブジェ

お店の大黒柱には、大きなオブジェが飾られていました。
ぐるりと一周して鑑賞しましたが、よくわからなかったので、もう一周してみました。
ぐるぐる。清正公にやっつけられる前に、バターになりそう。

3つの作品になっていました。こちら側は、清正公の虎退治の図。



反対側は、山鹿の灯篭祭の図。
この左側には、もう一つ、馬追い祭りの図がありました。
どれも、今にも動き出しそうな躍動感あふれるものでした。



○ 大男の長烏帽子

これはなんでしょう?
城彩苑内にあった、自動販売機のデザインです。
熊本オリジナルですね。ゴミ箱のところは清正公の立像写真です。



お堀のわきには、加藤清正座像がありました。
みんな、彼のことを愛しているんですねー。さすが肥後国初代藩主。
彼の長烏帽子形兜はとても細長くて特徴的。
前までは(小人さんの帽子みたい)とファンシーな想像をしていましたが、甲冑とあわせると、ビシっとサマになります。



普通は、おチビちゃんが、少しでも背を高く見せようとこうした兜を好むものですが、清正は身の丈六尺三寸(約190cm)の大男とされるので、この兜をかぶるといっそう巨大に見えたことでしょう。

○ 白夜とおてもやん

お堀沿いのバス停は、いろんな方向へのバスがひっきりなしに来て、路線図を見てもさっぱり頭に入りません。
少し歩いてアーケード街に行きました。

食事の後のデザートね♪と、旅行前に私がリクエストしていた蜂楽饅頭店まで連れて行ってもらいましたが、もう閉まっていました。
「えっ、そんな時間?」
時間は7時を過ぎていました。
熊本は日が沈むのが遅くて、日没時間は8時台なんだとか。
遅いですね。日本国内でもそんなに違うとは。
日本の白夜!スカンジナビア!

ポストの上に和服の女性の像が載っていました。「これは、おてもやんポスト」と教えてもらいます。
「おてもやんって、なに?」
時々聞く言葉です。ほっぺたが赤い人をそう呼びますね。
調べてみると、歌があるようです。熊本の娘さんだったんですね。



夜になったので、帰途につきます。
行きとは別ルートのバスに乗りました。
さっちゃんも、まだ熊本歴半年なので、分からないことが多い様子。
「きっとこの路線で、近いところまで行くはず!」
知らない系統でしたが、確かにかなり近くまで帰れました。すごいわ、野生の勘ね、

会ってからずっと話を続けていましたが、家でもお喋りは尽きません。
夜に、彼女のパートナーのヒロポンから電話がありました。
海外出張中の彼とは今回会えずに残念ですが、その分さっちゃんとこってり2人で過ごせます。
さらにおしゃべりタイムは続き、夜更けになって眠りにつきました。

2日目に続きます。


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