![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/53/28/cd13cf720f03ab6f25e2d8a57e0a8cbb.jpg)
◇ 4th day-(2)[浦河→様似→襟裳岬→→→苫小牧]
◯ 一路えりもへ
◯ えりも岬到着
◯ 帰りはこわい
◯ 浦河神社の石段
◯ 倒木
◯ 台風ショック
◯ 命からがら
◯ 白老牛ステーキ店「びび」
◯ なごみの湯
◯ 夜のはくちょう饅頭
4-(1)からの続きです。今回は、怖い思いをした話です。
◯ 一路えりもへ
シベチャリ橋を通った後、車はさらにえりも岬を目指して走りつづけました。
だんだん雨がひどくなってきます。
海沿いの道なので、波の荒さをダイレクトに感じ、(やっぱり北海道は、波が高いのね)と思っていました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7a/f6/b0c253b3d886d518595ec3a912835ae9.jpg)
気がつけば、道を走る車の数も減っています。
「結構風も強くなってきた」と梢さん。
ハンドルをギュッと握りしめます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7c/ab/b661a0f3e9fad872e4d5224322f9bb14.jpg)
浦河町の辺りで、車の前を三台のバイクが走るようになりました。
全員仙台ナンバーなので「きっとえりも岬に行く旅行者だね」と、親近感を覚えました。
嵐の中の友。このまま、私達の前で、岬までリードしてほしいわー。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/71/8f/f57ad164678cc489ae631662884e2f44.jpg)
二人でどんどん心細くなり、心配を募らせていたところだったので、ほっとしました。
私達よりもタフそうな男性3人組。
旅は道連れ、世は情けです。
ただ、心の頼りにしていたバイク3台は、襟裳(えりも)前の様似(さまに)で突然ガソリンスタンドに入りってしまいました。
ええ~、いなくなっちゃうの~。
寂しくなる私達。
給油後にたらあとを追ってくるかと思いましたが、そんな様子もなさそう。
「やっぱり嵐だから、やめないかってことになったんじゃない?」
なんとなく声が震えてしまう私達。
それでも、悩みながら進んでいきます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/10/de/d309f5351ffa3a17c309ebd73e2390e9.jpg)
バイクがいなくなり、突如さびしくなった道。
車の数も少なく、私達の前を走る車がいたかとおもうと、スッと道からそれていなくなってしまいます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/18/3c/fc2bb3de8b6332653f485b182b12baa2.jpg)
大丈夫かしら・・・?
道を知っている梢さん、「もうちょっと、あとちょっとで到着するから・・・」と、うわ言のように言っいながら、ハンドルを握っています。
どんどん雨風は強くなり、ザーッという音に黙りこむ私達。
灯台がありました。灯台公園ですって。
でもそのまま通り過ぎます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/73/7d/dd5d545cfe4ed51c061b1483c615bd83.jpg)
◯ えりも岬到着
いよいよ岬が見えてきました。
荒れ狂う海がさらに近くなります。
「この辺りではアザラシが見えるんだけど、さすがに今日は無理ね」
前を走っていたライトバンがいましたが、さらに道を進んでいきました。
「この岬の下に一つ集落があるから、そこの人なのかも」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/36/c1/4501bcd5f769b3d9d3cbbcda1a2c27ee.jpg)
ようやくのことで到着した襟裳岬。
広い駐車場には、車が一台も止まっていません。
大雨が風にあおられ、アスファルトの上を、ザーッと波のように流れていきます。
ものすごい風に、梢さんの大きく頑丈な車ごと揺らされました。
ここで完全に危険を感じた私達。
「とてもじゃないけど車のドアを開けられないね。もういられないから、今すぐ帰ろう」と、車をUターンさせる彼女。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/53/28/cd13cf720f03ab6f25e2d8a57e0a8cbb.jpg)
駐車場の先には、灯台と風の施設「風の館」が見えました。
風の館には、電気が付いているように見えましたが、こんな日に人は常駐しているんでしょうか。
車がないので、点灯させているだけなのでしょうか。
動画を撮ったものの、追い詰められて切羽詰まった私達の声が録音されており、とてもここに掲載できるものではありませんでした。
観たみんなが、怖くなっちゃうから・・・!
◯ 帰りはこわい
明らかに非常事態だと、本能的に悟ります。
帰り道となり、助手席の私側が、海になると、荒れ狂う波がすぐそばに見えて怖気づきました。
でも、「こわい、風に車ごとあおられる、こんなの体験したことがない」と、相当怖がって余裕が無い梢さんのために、(自分は落ち着かなくちゃ)と心に言い聞かせます。
これまで7,8回襟裳岬に来たことがあるという彼女ですが、こんなに悪天候なのは初めてだそうです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/77/f6/57770f0165cabd93c07d784157bdc8a9.jpg)
恐怖を感じての帰り道、数台の車とすれ違いました。
「彼らもやっぱり嵐の中を岬まで行く、命知らずの人たちなのかな?」
「もしくは近くの集落に帰る住民かも。」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0d/fd/6ea585a1032f84c36514391960b6bd92.jpg)
考えを巡らせる余裕は、もうありません。
左の海からは荒波が道路を濡らすほどの高さになって押し寄せ、気がつくと、右側の山からは土砂が崩れだして、道路に水が流れ出していました。
「道路が冠水してる!」
梢さんはかなりショックを受けています。
私も呆然。さきほど左の道を通ってきた時には、何事ともなかったんですが、このちょっとの時間の間に地盤が緩んでしまったんでしょう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/30/d4/67f06029f6761d140df85ba98afff551.jpg)
「大きな土砂崩れが起きたら、この道路封鎖されちゃうかも」と、切羽詰まった声の梢さん。
ほかに迂回ルートは十勝方面行きしかなく、そうなったらもう一泊するしかないとのこと。
「とにかく、道路が水没する前に、なんとか帰らないと」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0b/b9/0cff9d6c4d5820ddbe44dc7fd6362b8f.jpg)
緊急事態です。反対車線からやってくる車は、泥水の中を走っており、トラックなどの大型車によるしぶきが私達の車にかかると、一瞬前が何も見えなくなります。
雨で夜になるのが早く、視界が悪くなりそう。
道路には電灯も少ないし、二次災害に巻き込まれるのは避けたいです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5e/e6/2f11a07b9d1a516178d95f85ddb7bf64.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/42/23/d6e906746735df6cd97063d27fdb03fb.jpg)
左は荒波、右は土砂崩れ。
だくだくと土砂が流れ出している横を、走っていきます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/36/4c/b87b9c3278884b2bab6fdac98c5cdf79.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/53/98/ec52150674f01ee0dbd1a84e4f8bbe56.jpg)
かなり追い詰められています。
本当に、危機を感じました。
でも、なにより怖かったのは、土地勘があってハンドルを握っている梢さんでしょう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/60/f5/968401ea830056a30569c607cb0e2967.jpg)
カーブに差し掛かり、見慣れないものが目に入りました。
「あっ、土嚢!」
さっきはなかったものが、ずらりと並んでいました。
この短期間に、仕事が速いわ。防災は迅速さが第一です。
「きっと開発局だわ」と梢さん。
北海道開発局ですね。さっきから、あちこちで開発局の車が停まっているのを見ています。
言葉しか知らなかったけれど、行動が早くて、道民の生活に根ざしているようです。
◯ 浦河神社の石段
町に差し掛かったと思ったら、そこは浦河町でした。
パトカーと消防車が出てきてる・・・と思ったら、メインルートと思われる大通りが、冠水で水没していました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/62/f9/9ad1c26b54c2f321ed4ed0aea1009e2a.jpg)
「ああっ!」と悲壮な声を上げる梢さん。
お友達が、この町にいるそうです。
「大丈夫かな。休日だから、うっかり買い出しに出かけて、帰れなくなってたりしないかな」と心配しましたが、自分たちの安全も大事。
通り沿いに、大きな神社がありました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/20/b1/ec5dbdc5e9264c62b337b98eca97ee69.jpg)
「この浦河神社の石段を馬に乗って上がるお祭りがあるの」と教えてくれました。
「神社好きのリカさんを連れて行きたかったけど・・・」
今回は、見送ります!馬も大嵐におびえて、馬小屋で震えているでしょう。
喜んで「東京の愛宕神社には、"出世の階段"と言われる石段があってね・・・」と、ひとしきり説明をしましたが、特に興味のない梢さんには「ふーん」と華麗にスルーされました。
梢さん、馬に乗れる人だから、出世の階段を馬で登りきる勇者になれそうなのに。
◯ 倒木
しばらく行くと、スコップ片手に交通整理をしている人がいました。
「あっ、開発局」と梢さん。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/35/15/005c4b38301a2438cb5ff463da37f5f4.jpg)
どうしたんだろうと思ったら、反対側の道路に、沿道の家の木が、倒れていました。
根こそぎです。
作業をしている人々の横から、土砂が激しい勢いで流れだしていました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/65/67/efdc150d5f53c0cd23bc46b5c229f19c.jpg)
「うわ・・・」としか言えなくなり、あとは押し黙るしかない私達。
衝撃的な光景を、見すぎました。
◯ 台風ショック
あまりの荒天に、さすがに異常事態を感じた梢さんは、途中道の駅みついしに立ち寄り、ネットをチェックました。
「これ、前触れの嵐じゃなかった。本当の台風だった・・・!」
「えっ・・・??」
しばし絶句する私達。
台風って、この日の夕方時点で、東北辺りじゃなかったの?
もう襟裳岬まで来ていたの?
すごく速い速度で、北上したため、私達の訪れとタイミングがぴったり合ってしまったようです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/36/e6/9bb460a68349d043d2458cb5182d2b88.jpg)
普段は、台風がたいてい北海道に辿り着くまでに温帯低気圧に変わるため、あまり台風の経験がない梢さん。
動揺して呆然としています。
でもとにかく、帰りを急がないと。
この日、「道の駅三石の温泉」か「新冠のレコードの湯」に立寄る計画を立てていてくれた彼女。
「露天風呂から海に沈む夕日がきれいな場所なの。夕日は無理でも、海くらいは・・・と思っていたのに~」と残念そう。
ここで夕食も取る予定だったそうです。
私も残念!でもこうなったら、無事に帰ることが最優先!
行きに見た新冠の大きな馬の岩絵が消えていないか、そしてあの大岩が崩れ落ちていないか、梢さんは気にしましたが、帰りに見たらちゃんと残っていて、ほっとしました。
◯ 命からがら
ようやく苫小牧市内に入って、二人で「は~~っ」と安堵のため息をつきます。
とりあえず、海に面した道路から離れて、車ごと波や土砂に流される危険はなくなりました。
無事に台風からも逃げ出せたようで、気がつけば、雨もすっかり弱くなっています。
あー、命拾いした気分。
◯ 白老牛ステーキ店「びび」
梢さんが連れて行ってくれたのは、白老牛のステーキ屋さん、和牛レストランログハウス「びび」でした。
すてきな森のなかのログハウスといった雰囲気のお店。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2c/0f/6799b85f5c6c97c96bad4e147cb9dde4.jpg)
あたたかい明かりを見ると、緊張がほどけて涙がじんわり浮かんできます。
ああ、無事に帰れてよかったわ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/07/f7/c04bd1a6bac6110dbc95a6366970701a.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/30/08/d19fbf56ef0a3542192d4cb894ba6626.jpg)
「今はほっき炙り飯の気分じゃないから、お肉ね!!」「ラジャー!」
白老牛の特上肉を頼みます。 肩甲骨の内側にあるミスジなんて希少箇所、初めて知りました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4f/cc/907a030c2c9d4fa735921e93ddc5e8a3.jpg)
いつになく、がるる状態の私達。
気持ちがほっとしたら、なんだか急激にお腹が空きました。
きっと無事に戦地の最前線から帰還した兵士が、生命に目覚めてもりもりものを食べる感じね!
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3f/de/e3b6b1d24dca8d4b522e1364503427c7.jpg)
炭焼きの炎でじっくりと焼き上げたお肉はとてもおいしく、添え物のスープやサラダ、アイスクリームも、極上の味でした。
お店の人の対応もとても柔らかく、生きている幸せを噛み締めました。(単純!?)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3e/85/57cd5377831f13b7f7a963ccbf2ff699.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/74/56/90f126bb4900814753eb89a31d6215c9.jpg)
◯ なごみの湯
車を降りた時には、雨は完全に止み、月が出ていました。
え~、さっきまでの、まっすぐ車を走らせられないような嵐は、いったいどうしたのかしら。
もう完全に、台風はいなくなっちゃったのねー。
新千歳からの飛行機が飛んでいくのも見えます。
2日目まで一緒だった純はこの日、はやぶさでゆったりと帰京する予定でしたが、電車がすべて止まったため、急遽最終便のフライトで帰ったとのこと。
飛行機が飛べなかったため、空港は人であふれかえっていたそうな。
あとで聞いたら、飛行機が遅れに遅れて、羽田に着いたのは真夜中2時過ぎだったそうです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/24/d2/20b653e0b4a7b18fc04fe0ffaffed743.jpg)
身体を温めようと、市内の「なごみの湯」に行きました。
「三石の温泉か、レコードの湯がよかったのに・・・タオルも持ってきたのに・・・」と、がっかりしている梢さん。
入口を入ったところにあった液晶大型TVで、台風特別情報が流れていたため、まずはソファに座ってかぶりつきで見入ります。
えりも岬では、なんと風速35.4kmだったそう!!
私達が現地を訪れたほんの少し後の測定値です。
風の館では風速約25m/sを体感できるそうですが、今回、はるかに激しい風を、期せずして体験したことに。。。
えりも岬からの道は通行止めになっているそうです。やっぱり・・・。
帰りの、冠水した道路の恐怖を思い出しました。
大風、大雨など、記録的大雨による初の特別警報がずらりと出ていました。
今回から新たに設定された警報だそうです。
今回の台風18号は、日本中に大きな被害を与えたものでしたが、北海道もまた、その猛威にかかり、避難した人もいたということでした。
◯ 夜のはくちょう饅頭
温泉で、ぽかぽかと身体を休めて、無事に帰宅しました。
すっかり雨も上がって、月が綺麗。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/74/9f/f8c7c700afdf097d10b5df57b8789416.jpg)
車から荷物を出すときに、はくちょう饅頭の袋を発見。
行きのウトナイ湖畔で買ったものです。車の中では、ものを食べるどころではなくて、すっかり忘れていました。
緊張していたので、ドリンクはからになったんですが。
帰宅してからデザート代わりに食べました。
ああ、白鳥の町、苫小牧に帰ってきたわー。
一日ドライバーでハンドルを守ってくれていた梢さんは、大変な一日を無事終え、疲れ切って12時前にコテンと寝ました。
私は、日記を書いてから寝ようと思いましたが、やっぱりクタクタで、彼女とほぼ一緒の時間に就寝。
風速35.4km。忘れられない数値になることでしょう。
すごい一日だったわ~。
最後、5日目に続きます。
◯ 一路えりもへ
◯ えりも岬到着
◯ 帰りはこわい
◯ 浦河神社の石段
◯ 倒木
◯ 台風ショック
◯ 命からがら
◯ 白老牛ステーキ店「びび」
◯ なごみの湯
◯ 夜のはくちょう饅頭
4-(1)からの続きです。今回は、怖い思いをした話です。
◯ 一路えりもへ
シベチャリ橋を通った後、車はさらにえりも岬を目指して走りつづけました。
だんだん雨がひどくなってきます。
海沿いの道なので、波の荒さをダイレクトに感じ、(やっぱり北海道は、波が高いのね)と思っていました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7a/f6/b0c253b3d886d518595ec3a912835ae9.jpg)
気がつけば、道を走る車の数も減っています。
「結構風も強くなってきた」と梢さん。
ハンドルをギュッと握りしめます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7c/ab/b661a0f3e9fad872e4d5224322f9bb14.jpg)
浦河町の辺りで、車の前を三台のバイクが走るようになりました。
全員仙台ナンバーなので「きっとえりも岬に行く旅行者だね」と、親近感を覚えました。
嵐の中の友。このまま、私達の前で、岬までリードしてほしいわー。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/71/8f/f57ad164678cc489ae631662884e2f44.jpg)
二人でどんどん心細くなり、心配を募らせていたところだったので、ほっとしました。
私達よりもタフそうな男性3人組。
旅は道連れ、世は情けです。
ただ、心の頼りにしていたバイク3台は、襟裳(えりも)前の様似(さまに)で突然ガソリンスタンドに入りってしまいました。
ええ~、いなくなっちゃうの~。
寂しくなる私達。
給油後にたらあとを追ってくるかと思いましたが、そんな様子もなさそう。
「やっぱり嵐だから、やめないかってことになったんじゃない?」
なんとなく声が震えてしまう私達。
それでも、悩みながら進んでいきます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/10/de/d309f5351ffa3a17c309ebd73e2390e9.jpg)
バイクがいなくなり、突如さびしくなった道。
車の数も少なく、私達の前を走る車がいたかとおもうと、スッと道からそれていなくなってしまいます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/18/3c/fc2bb3de8b6332653f485b182b12baa2.jpg)
大丈夫かしら・・・?
道を知っている梢さん、「もうちょっと、あとちょっとで到着するから・・・」と、うわ言のように言っいながら、ハンドルを握っています。
どんどん雨風は強くなり、ザーッという音に黙りこむ私達。
灯台がありました。灯台公園ですって。
でもそのまま通り過ぎます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/73/7d/dd5d545cfe4ed51c061b1483c615bd83.jpg)
◯ えりも岬到着
いよいよ岬が見えてきました。
荒れ狂う海がさらに近くなります。
「この辺りではアザラシが見えるんだけど、さすがに今日は無理ね」
前を走っていたライトバンがいましたが、さらに道を進んでいきました。
「この岬の下に一つ集落があるから、そこの人なのかも」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/36/c1/4501bcd5f769b3d9d3cbbcda1a2c27ee.jpg)
ようやくのことで到着した襟裳岬。
広い駐車場には、車が一台も止まっていません。
大雨が風にあおられ、アスファルトの上を、ザーッと波のように流れていきます。
ものすごい風に、梢さんの大きく頑丈な車ごと揺らされました。
ここで完全に危険を感じた私達。
「とてもじゃないけど車のドアを開けられないね。もういられないから、今すぐ帰ろう」と、車をUターンさせる彼女。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/53/28/cd13cf720f03ab6f25e2d8a57e0a8cbb.jpg)
駐車場の先には、灯台と風の施設「風の館」が見えました。
風の館には、電気が付いているように見えましたが、こんな日に人は常駐しているんでしょうか。
車がないので、点灯させているだけなのでしょうか。
動画を撮ったものの、追い詰められて切羽詰まった私達の声が録音されており、とてもここに掲載できるものではありませんでした。
観たみんなが、怖くなっちゃうから・・・!
◯ 帰りはこわい
明らかに非常事態だと、本能的に悟ります。
帰り道となり、助手席の私側が、海になると、荒れ狂う波がすぐそばに見えて怖気づきました。
でも、「こわい、風に車ごとあおられる、こんなの体験したことがない」と、相当怖がって余裕が無い梢さんのために、(自分は落ち着かなくちゃ)と心に言い聞かせます。
これまで7,8回襟裳岬に来たことがあるという彼女ですが、こんなに悪天候なのは初めてだそうです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/77/f6/57770f0165cabd93c07d784157bdc8a9.jpg)
恐怖を感じての帰り道、数台の車とすれ違いました。
「彼らもやっぱり嵐の中を岬まで行く、命知らずの人たちなのかな?」
「もしくは近くの集落に帰る住民かも。」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0d/fd/6ea585a1032f84c36514391960b6bd92.jpg)
考えを巡らせる余裕は、もうありません。
左の海からは荒波が道路を濡らすほどの高さになって押し寄せ、気がつくと、右側の山からは土砂が崩れだして、道路に水が流れ出していました。
「道路が冠水してる!」
梢さんはかなりショックを受けています。
私も呆然。さきほど左の道を通ってきた時には、何事ともなかったんですが、このちょっとの時間の間に地盤が緩んでしまったんでしょう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/30/d4/67f06029f6761d140df85ba98afff551.jpg)
「大きな土砂崩れが起きたら、この道路封鎖されちゃうかも」と、切羽詰まった声の梢さん。
ほかに迂回ルートは十勝方面行きしかなく、そうなったらもう一泊するしかないとのこと。
「とにかく、道路が水没する前に、なんとか帰らないと」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0b/b9/0cff9d6c4d5820ddbe44dc7fd6362b8f.jpg)
緊急事態です。反対車線からやってくる車は、泥水の中を走っており、トラックなどの大型車によるしぶきが私達の車にかかると、一瞬前が何も見えなくなります。
雨で夜になるのが早く、視界が悪くなりそう。
道路には電灯も少ないし、二次災害に巻き込まれるのは避けたいです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5e/e6/2f11a07b9d1a516178d95f85ddb7bf64.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/42/23/d6e906746735df6cd97063d27fdb03fb.jpg)
左は荒波、右は土砂崩れ。
だくだくと土砂が流れ出している横を、走っていきます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/36/4c/b87b9c3278884b2bab6fdac98c5cdf79.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/53/98/ec52150674f01ee0dbd1a84e4f8bbe56.jpg)
かなり追い詰められています。
本当に、危機を感じました。
でも、なにより怖かったのは、土地勘があってハンドルを握っている梢さんでしょう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/60/f5/968401ea830056a30569c607cb0e2967.jpg)
カーブに差し掛かり、見慣れないものが目に入りました。
「あっ、土嚢!」
さっきはなかったものが、ずらりと並んでいました。
この短期間に、仕事が速いわ。防災は迅速さが第一です。
「きっと開発局だわ」と梢さん。
北海道開発局ですね。さっきから、あちこちで開発局の車が停まっているのを見ています。
言葉しか知らなかったけれど、行動が早くて、道民の生活に根ざしているようです。
◯ 浦河神社の石段
町に差し掛かったと思ったら、そこは浦河町でした。
パトカーと消防車が出てきてる・・・と思ったら、メインルートと思われる大通りが、冠水で水没していました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/62/f9/9ad1c26b54c2f321ed4ed0aea1009e2a.jpg)
「ああっ!」と悲壮な声を上げる梢さん。
お友達が、この町にいるそうです。
「大丈夫かな。休日だから、うっかり買い出しに出かけて、帰れなくなってたりしないかな」と心配しましたが、自分たちの安全も大事。
通り沿いに、大きな神社がありました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/20/b1/ec5dbdc5e9264c62b337b98eca97ee69.jpg)
「この浦河神社の石段を馬に乗って上がるお祭りがあるの」と教えてくれました。
「神社好きのリカさんを連れて行きたかったけど・・・」
今回は、見送ります!馬も大嵐におびえて、馬小屋で震えているでしょう。
喜んで「東京の愛宕神社には、"出世の階段"と言われる石段があってね・・・」と、ひとしきり説明をしましたが、特に興味のない梢さんには「ふーん」と華麗にスルーされました。
梢さん、馬に乗れる人だから、出世の階段を馬で登りきる勇者になれそうなのに。
◯ 倒木
しばらく行くと、スコップ片手に交通整理をしている人がいました。
「あっ、開発局」と梢さん。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/35/15/005c4b38301a2438cb5ff463da37f5f4.jpg)
どうしたんだろうと思ったら、反対側の道路に、沿道の家の木が、倒れていました。
根こそぎです。
作業をしている人々の横から、土砂が激しい勢いで流れだしていました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/65/67/efdc150d5f53c0cd23bc46b5c229f19c.jpg)
「うわ・・・」としか言えなくなり、あとは押し黙るしかない私達。
衝撃的な光景を、見すぎました。
◯ 台風ショック
あまりの荒天に、さすがに異常事態を感じた梢さんは、途中道の駅みついしに立ち寄り、ネットをチェックました。
「これ、前触れの嵐じゃなかった。本当の台風だった・・・!」
「えっ・・・??」
しばし絶句する私達。
台風って、この日の夕方時点で、東北辺りじゃなかったの?
もう襟裳岬まで来ていたの?
すごく速い速度で、北上したため、私達の訪れとタイミングがぴったり合ってしまったようです。
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普段は、台風がたいてい北海道に辿り着くまでに温帯低気圧に変わるため、あまり台風の経験がない梢さん。
動揺して呆然としています。
でもとにかく、帰りを急がないと。
この日、「道の駅三石の温泉」か「新冠のレコードの湯」に立寄る計画を立てていてくれた彼女。
「露天風呂から海に沈む夕日がきれいな場所なの。夕日は無理でも、海くらいは・・・と思っていたのに~」と残念そう。
ここで夕食も取る予定だったそうです。
私も残念!でもこうなったら、無事に帰ることが最優先!
行きに見た新冠の大きな馬の岩絵が消えていないか、そしてあの大岩が崩れ落ちていないか、梢さんは気にしましたが、帰りに見たらちゃんと残っていて、ほっとしました。
◯ 命からがら
ようやく苫小牧市内に入って、二人で「は~~っ」と安堵のため息をつきます。
とりあえず、海に面した道路から離れて、車ごと波や土砂に流される危険はなくなりました。
無事に台風からも逃げ出せたようで、気がつけば、雨もすっかり弱くなっています。
あー、命拾いした気分。
◯ 白老牛ステーキ店「びび」
梢さんが連れて行ってくれたのは、白老牛のステーキ屋さん、和牛レストランログハウス「びび」でした。
すてきな森のなかのログハウスといった雰囲気のお店。
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あたたかい明かりを見ると、緊張がほどけて涙がじんわり浮かんできます。
ああ、無事に帰れてよかったわ。
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「今はほっき炙り飯の気分じゃないから、お肉ね!!」「ラジャー!」
白老牛の特上肉を頼みます。 肩甲骨の内側にあるミスジなんて希少箇所、初めて知りました。
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いつになく、がるる状態の私達。
気持ちがほっとしたら、なんだか急激にお腹が空きました。
きっと無事に戦地の最前線から帰還した兵士が、生命に目覚めてもりもりものを食べる感じね!
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炭焼きの炎でじっくりと焼き上げたお肉はとてもおいしく、添え物のスープやサラダ、アイスクリームも、極上の味でした。
お店の人の対応もとても柔らかく、生きている幸せを噛み締めました。(単純!?)
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◯ なごみの湯
車を降りた時には、雨は完全に止み、月が出ていました。
え~、さっきまでの、まっすぐ車を走らせられないような嵐は、いったいどうしたのかしら。
もう完全に、台風はいなくなっちゃったのねー。
新千歳からの飛行機が飛んでいくのも見えます。
2日目まで一緒だった純はこの日、はやぶさでゆったりと帰京する予定でしたが、電車がすべて止まったため、急遽最終便のフライトで帰ったとのこと。
飛行機が飛べなかったため、空港は人であふれかえっていたそうな。
あとで聞いたら、飛行機が遅れに遅れて、羽田に着いたのは真夜中2時過ぎだったそうです。
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身体を温めようと、市内の「なごみの湯」に行きました。
「三石の温泉か、レコードの湯がよかったのに・・・タオルも持ってきたのに・・・」と、がっかりしている梢さん。
入口を入ったところにあった液晶大型TVで、台風特別情報が流れていたため、まずはソファに座ってかぶりつきで見入ります。
えりも岬では、なんと風速35.4kmだったそう!!
私達が現地を訪れたほんの少し後の測定値です。
風の館では風速約25m/sを体感できるそうですが、今回、はるかに激しい風を、期せずして体験したことに。。。
えりも岬からの道は通行止めになっているそうです。やっぱり・・・。
帰りの、冠水した道路の恐怖を思い出しました。
大風、大雨など、記録的大雨による初の特別警報がずらりと出ていました。
今回から新たに設定された警報だそうです。
今回の台風18号は、日本中に大きな被害を与えたものでしたが、北海道もまた、その猛威にかかり、避難した人もいたということでした。
◯ 夜のはくちょう饅頭
温泉で、ぽかぽかと身体を休めて、無事に帰宅しました。
すっかり雨も上がって、月が綺麗。
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車から荷物を出すときに、はくちょう饅頭の袋を発見。
行きのウトナイ湖畔で買ったものです。車の中では、ものを食べるどころではなくて、すっかり忘れていました。
緊張していたので、ドリンクはからになったんですが。
帰宅してからデザート代わりに食べました。
ああ、白鳥の町、苫小牧に帰ってきたわー。
一日ドライバーでハンドルを守ってくれていた梢さんは、大変な一日を無事終え、疲れ切って12時前にコテンと寝ました。
私は、日記を書いてから寝ようと思いましたが、やっぱりクタクタで、彼女とほぼ一緒の時間に就寝。
風速35.4km。忘れられない数値になることでしょう。
すごい一日だったわ~。
最後、5日目に続きます。
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