風に吹かれて旅ごころ

はんなり旅を楽しむはずが、気づけばいつも珍道中。

お城と水と火の国へ(三角) 3-(2)

2015-09-23 | 九州
3-(1)からの続きです。

○ 西と東の三角港

三角の旧裁判所と旧郡役所を見たあと、高台から下りて磯の方へと向かいました。
ここは三角西港。三角港じゃないの?と思ったら、東港と西港に分かれているそうです。
東港はどこかといったら、先ほどバスに乗った駅前のところ。
気がついていませんでしたが、あそこだったのね。

明治32年に開通した鉄道と接続のいい東側に港湾機能が移ったため、三角港といったら東港を指し、こちらは旧港になるそうです。
この辺りは、すべて「旧」がつくんですね。
古めかしい、すてきな港です。港といってもこぢんまりとしており、湾岸は遊歩道になって、人々が釣り糸を垂れています。



明治20年に開港した西港は、日本最古の近代的港湾。
宮城県の野蒜築港、福井県の三国港とともに明治の三大築港と呼ばれるそうです。

宮城の野蒜海岸には、子供の頃サマーキャンプに、そして震災後の被災地視察に訪れており、あの辺りに港があったかしらと思いましたが、今はありません。
建築途中で計画が中止になり、幻の港となってしまったそう。

○ 祝、世界遺産登録決定!

ここは、東港に機能が移ってから、西港は時代に取り残されてさびれてしまいましたが、逆に埠頭や水路・橋などの当時の施設がほぼ原形のままで残されている全国唯一の港湾史跡として評価されるようになり、このたび世界遺産に正式登録されました。
世界文化遺産に認定されたのが2015年7月。そう、まさに決まったばかりの時だったのです。
おめでたいことだわ~。辺りにはのぼりがはためき、明るいムードが漂っています。
旬の話題の場所に来られて嬉しいです。



○ 洋館だけど浦島屋

港そばには、これまた素敵な洋館がありました。
短期間だけホテルだった浦島屋。洋館の割に渋い名前ですね。
北海道の旧函館区公会堂に似てるなと思いました。



函館の洋館は入場料がいりますが、西港の洋館はどこも入館無料。太っ腹ですね。
今後、観光客が爆発的に増えていくと、どうなるかはわかりませんけれど。



2階のバルコニーからは港がまっすぐ見えます。ああ、いい眺め。
小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)がここに滞在して「夏の日の夢」という紀行文を書いたそうです。
この景色を見ていたら、たしかに文豪になれそう。



○ ムルドルハウス

城壁の、住みたくなるようなかわいい洋館。
築港時の外国人技師、ローウェンホルスト・ムルドルにちなんで建物の名前がつけられたそう。
オランダの人で、本名はアントニー・トーマス・ルベルタス・ローウェンホルスト・ムルデル(Anthonie Thomas Lubertus Rouwenhorst Mulder)といったそうです。
キャー、長すぎなーい? ジュゲムジュゲム…。



今では物産館になっています。



この洋館の横にあるのは、先程の旧裁判所の方から海に真っ直ぐ続く石積水路です。



○ 旧高田回漕店

白い洋館の隣にあるのは、対照的な和風建築。
こんなに渋い木造の建物もありました。
沿岸航路で旅客や貨物輸送の取り次ぎをした、回漕問屋(どいや)だったそうです。



○ 遊歩道散策

ウォーターフロントを散歩します。
港からは、天草五橋の一つも見えます。いい長めです。





ピントがあっていませんが、チョウチョが3匹もふわふわ飛んでいました。



潮風を胸いっぱいに吸い込みます。
すがすがしくて、気持ちいーい!
ここの港の雰囲気、好きだわー。







晴れ上がった夏の日差しの下、キラキラと輝く静かな海。
潮風を受けて、すっかりリラックスできました。

○ オランダカフェのテラス

海沿いに埠頭の端まで歩いて行き、Uターンして町の中心部に戻りました。
ランチにしようと、蔵を改造したレストラン、オランダカフェに入りました。
ここは荷役倉庫として使われていた土蔵造りの建物で、入るとひんやりと涼しさを感じます。



中ではグループサウンズ風のバンドがハワイアンソングを歌っていました。
ライブ中だったようで、「入れますか?」と聞いたら、店内ではなく、テラス席に案内されました。
外なので、暑いなあと思いましたが、日陰になっているのでじきに慣れ、潮風が心地よく感じます。
テラスのすぐ目の前が海なので、広々と見渡せて、気分爽快。



このお店の特製ビーフカレーセットにしました。
きれいな海がすぐ目の前にあり、いい眺めです。
こんなにいいロケーションのお店は、首都圏ではなかなかお目にかかれないし、あったとしても行列ができて、いい席をとるのが大変でしょう。
デザートはレアチーズケーキ~。



○ 古代船あらわる

すばらしい景色に見とれていると、遠くからなにやら不思議な船が近づいてきました。
あれは・・・なに?



人が大勢乗って、めいめいに櫂を漕いでいます。
その船を先頭に、他の船もついてきて、なんだか賑やか。撮影をしているようです。



お店の人に聞いたら、古代船だそうです。
初めて見る古代船。エジプトの太陽の船のようです。



まっすぐ私たちの方へと向かってきました。



○ 船乗りたちを祝福

岸のすぐそばまで来ると、テラスにいる私たちに向けて、なにやら布を見せます。
それには「祝!三角西港世界遺産認定!」と書かれており、船乗りはみんな、水から上げた櫂を掲げて挨拶してくれました。
岸にいる私たちみんなは、拍手で祝福しました。
おめでとう~!



こんな光景が見られるなんて、感激。テラス席にいて大正解だったわ。
素敵な場所で、すっかり腰を落ち着けた私たち。
暑さをしのいでのんびり過ごし、またバスに乗って、三角駅まで戻りました。

○ 三角東港を散策



何回見ても、絵になる駅ですね。
電車が来るまで少し時間があったので、駅前の三角東港を散策します。
先ほど見た、巻貝の灯台のようなパビリオンのそばに行ってみましたが、まだ工事中で中には入れませんでした。



世界遺産に認定されたのは、なんといってもまだ今月のことなので、これからいろいろ観光整備をしていくんでしょうね
はしりの時に来られてよかったです。まだ観光地ずれしていない、素敵な場所でした。

○ マドロスごっこ

再び海際にやってきた私たち。さっちゃんが「マドロスごっこしたい」と言い出します。
前々から、マドロスが片足をかけるにいい出っ張りを探していたのだそう。
「この前来た時にチェックしておいたのよ~♪ ね、いいでしょ?」



ということで、さっそく撮影会に入りました。
出っ張りに足をかけてポーズをとるさっちゃん。
「いいね、いいね~!」と、うさんくさいカメラマンになりきって激写する私。
ほかの人が見たら、笑える2人だったことでしょう。



がんばった甲斐あって、バッチリいい写真が撮れました!
さっちゃんは満点です。ポーズを研究していただけあって、堂に入っています。
なんといっても、念願のマドロスごっこができたという、嬉しそうな笑顔がイイ!
対して私は、腰が引けていてまるでダメダメでした。

さっちゃんは、「ボーダーシャツじゃないとダメね」と服装を反省しています。
「嬉しそうすぎて哀愁がないねー」「ニヒルな表情をしないと」「もっと垂直に立つ方がそれっぽいかな」
真面目な反省会になった挙句、2人とも声を合わせて「また撮らなくちゃ!」と言いました。
結局そうなるのね~(笑)。

足をかけた、綱を引っ掛ける出っ張りは「ビット」というと、彼女が調べて教えてくれました。
知りませんでしたが、特に困ることはなかったわ。
たいていの人にとっては知らなくてもいい言葉ですが、マドロスごっこをする人は覚えておいた方がよさそうですね。

○ バールのようなもの

この「ビット」から、なぜか「バールのようなもの」に話題は移り、「なぜニュースの事件報道の時に、"被害者はバールのようなもので殴られた"って言って、バールとはっきり断言しないんだろうね?」と、頭をひねりながら電車に乗り込みました。
そのことがなんとなく頭に残っていて、今、清水義範著『バールのようなもの』を読んでいます。



駅の傍にあったレトロな建物。
三角海運株式会社という名前がまたいい感じです。
3-(3)に続きます。


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