風に吹かれて旅ごころ

はんなり旅を楽しむはずが、気づけばいつも珍道中。

茨城4市のお寺巡り 2

2017-09-06 | 北関東(茨城・栃木・群馬)
その1からの続きです。 

お寺や神社といったら、日常の喧騒から離れて静かな時が流れている、落ち着いた場所。
でも雨引観音にはたくさんの動物がいて、なかなかにぎやかでした。

● バッタ、ニワトリ、クジャクにコイ

まず見つけたのは、本殿の金の宝珠に停まっていた大きなバッタ。
そばにいた赤ちゃんが、ママの腕の中から身を乗り出して、興味津々でのぞきこんでいました。
将来は虫好きになるんでしょう。



突然、多宝塔の方から「コケーコッコー!」と高らかな鳴き声が響き渡りました。
きょろきょろすると、ニワトリがテントの上に飛び乗って、時を告げていました。
お寺にニワトリがいるの?しかも、放し飼いになっているの?



気が付くと、境内にはその一羽だけでなく、何羽もニワトリがいました。
山の斜面のところにたむろしています。ニワトリって傾斜が好きなんでしょうか。
トサカ持ちばかりで、みんなオスでした。
男子会をしているみたい!



ニワトリのグループに驚きながら歩いていると、今度はクジャクに出会いました。
放し飼いされていたので、びっくり。
お寺にクジャクって、あまりイメージが湧きませんが、これはインドクジャクで、仏教はインドから来たから、ルーツが同じでイイということかしら。
それにしても賑やかで華やかなお寺です。



こちらもオス。まさかとは思うけれど、かつてお寺が女人禁制だったから?



クジャクは、私たちに目もくれずに一心に羽づくろいをしていましたが、私たちが「きれい~」とため息交じりに言うと、そのたびに顔をあげてこちらを見ました。



2人で思わず吹きます。
「絶対自分のことだってわかってるね!」「言われ慣れてる!」



人にも慣れていて、近寄っても逃げませんでした。



池には金色の鯉がたくさん。カモよりも大きいサイズに育っています。
カモが小さいのではありません。



● 小さな力持ち

本堂前で「あっ!」と香炉に駆け寄って、しゃがみこみました。



突然の行動にミライさんは驚いたかもしれませんが、私が見つけたのは、香炉を支えるこの人たちです。
邪鬼でしょうか、力士でしょうか?



一人は、つま先立ちして支えていますね。芸が細かいわー。

● 謎の観音様

境内にある格納庫のような建物の軒下に、観音様の胴像が立っているのが気になりました。



なぜ外に置いてあるんでしょう。
中に入れ忘れたわけじゃないでしょうし…。
なにも説明がありませんが、よく見ると、観音像の足元に「延命観世音前立為」と書かれていました。
なるほど、この建物の中には、延命観世音さまの像があり、これはそのお前立なんですね。



本堂の横にある建物なので、本堂にあがった時に、横から見られました。
なんと、観音像はレールの上に立っていました。



なるほど、いつも真正面にあったら、扉を開ける時に邪魔なので、可動式にしてずらせるようになっているんですね。
便利なカラクリがわかりました。

見どころがいろいろある楽しいお寺でした。坂東観音巡りの巡礼者だけでなく、観光気分で家族でやってくるのもわかります。
女性の方にとても流麗な字で御朱印を書いていただき、見てうっとりしました。


境内からの眺望


お寺は結構な山の上にあり、緑が続くいい見晴らしが望めました。

● 笠間の名物は

お寺を出て、次は笠間に向かいました。
JRでは、2駅分隣になります。



途中で、何かの行列を見かけました。
提灯を持った大人が交通整理をしています。
おそろいの青いはっぴを着た、子供みこしでした。



時間は2時近く。そろそろお昼にしないと、タイミングを逃してしまいそうです。
事前に、母に「笠間で有名なものと言ったら、なに?」と聞いたら「笠間稲荷」と言われました。
「じゃなくって、食べ物とかで」
「うーん、特にわからないわ。笠間稲荷しか」
「ほかにはないの?」
「秋には菊祭りが有名よ」
「・・・」

きっと母が知らないだけだろうと思って、笠間の特産を調べてみたら「笠間焼」と出ました。
・・・じゃなくて、食べ物~!
結局、見つけられませんでした。

● ランチタイム

その話をミライさんにしたら「うーん、じゃあ蕎麦かなあ」
そこで手打ちそば屋の「そば処のざわ」に入りました。



ミライさんは、お店お勧めの美明豚の肉汁つけ、私は鴨南蛮盛り。
美明豚(びめいとん)とは行方産の良質のSPF豚肉です。



鴨南蛮は好きですが、盛りそばと一緒に食べたことがなかったので、新鮮でした。
ふぞろいの手打ちそばは、やっぱりおいしいです。
お互い、手打ちそば体験をしたことがあると判明。
「力がいって大変だった~」「腕がつった~」と言い合いました。

● 笠間の正福寺

さて、ランチを済ませて、お次は笠間のお寺へ向かいます。



道路にかかる大きな鳥居をくぐって、笠間稲荷の神域に入りました。
ここは日本三大稲荷の一つで、大きな門前町ができています。
でも今回の目的は、お稲荷さんではなく、その傍にあるお寺。車中からの参拝となりました。



鳥居の横には、ワイヤーで作られた大きなお狐さんがいました。
なんだかアートだわ。トリエンナーレの作品にありそう。



次に向かう坂東23番目の正福寺は、笠間稲荷の陰にひっそりとたたずんでいるお寺。
車を停めて、またもや石段を上っていきました。



小さめのお堂で、辺りはとても静か。
数名の参拝者は、みんな坂東の巡礼者で、御朱印を待つ列ができました。



● 巡礼者トーク

ご年配夫婦の番になり、旦那さんが住職に「坂東を周ってるんだけど、周り終えたらなにか証明してもらえるのかな」と聞きました。
ただ、うまく伝わらなかったようで、おじさんはいろいろ説明してみます。
すると、私たちの前にいた別のおじさんが「御礼参りもあるからね」と言いました。
「善光寺と北向観音にも行かないと」

「この前善光寺には行ったけど、北向観音には行かなかったわ」とおじさんの奥さん。
話がそれかけたので、私が「坂東33所を巡った証明は、最後の那古寺でいただけますよ。ちょっとお金がかかりますが」と言いました。
すると、住職が席を立って奥に行き、戻ってきて「うちでもこういうのを出していますよ」とサンプルを見せてくれました。
質問したおじさんは、「おお~」と見入ります。

「いやね、この前善光寺でその証明をもらおうとしたんだけど、そばにいた人が百観音を巡ったと聞いたら、頼む気無くしちゃって…」
黙り込んだ私の横で、ミライさんが「この人、百観音巡ってるんですよ」と言いました。
キャー、流れ的に黙っておこうと思ったら~。
時すでに遅し、そばにいたみんなが一斉に私を見ます。
おじさんが(この小娘が?)という当惑の表情で「百・・・?」とつぶやいたので、慌てて「まだ途中なんですよ。もう大変で」と言いました。

まあそれで逆に会話は進み、「私らは十数年かけて周ったんですよ」「この前やっと、一番遠い小田原の方まで行ってきた」という話を聞きました。
そうか、ここは茨城。この辺りの人たちからすると、小田原はとっても遠い場所なんですね。
神奈川県民の私にしてみれば、こちらに来る方がずっと遠いんですが。

おじさんが今回聞いたのは「坂東のお寺もいろいろあることだし、せっかくなので自分が好きなお寺から証明書をもらいたい。このお寺で出してもらえるのなら、それがほしい」という気持ちからのようでした。

このお寺でも発行してもらえるとわかった二人は、「ありがとう!」とスッキリした表情。
「これからもお互いがんばりましょう」と言い合って、お別れしました。

順番の最後になった私たちが御朱印をいただき、石段を下りて車道に着いたところで、プップーとクラクションが鳴りました。
そちらを見ると、先程のご夫婦が車の中から手を振ってくれていました。
2人とも振りかえします。「お元気で~!」

● 土浦の清瀧寺

さて、このエリアには、もう一つお寺があります。
土浦市の26番、清瀧寺です。
「ここも行けそうなら行っていい?」とミライさん。
「もちろん!」と言いながら、私は以前このお寺を訪れた時のことを、思い出していました。

その時は、この日最初に訪れたつくばの大御堂からバスで土浦の方まで来て、そこからコミュニティバスに乗り換える予定でした。
ただ、その年からコミュニティバスが無くなっており、タクシーも通らないため、お寺まで1時間の距離を歩くことになったのでした。
初めからわかっていたら、まだ覚悟もしていましたが、その場で知ったため、落胆で足取りが重く、郊外すぎて、ほかに歩いている人もいません。
工場やお店もぽつぽつとしかないため、コンビニを見かけるたびに、お寺の場所を聞いてみました。

ただ、地元の人にもほとんど知られていないお寺で、かなり不安な思いをしながら、なんとかたどり着いたお寺。
お寺の人に帰り方を聞いても、やっぱり歩くしかないとのことで、結局同じ道をまた1時間かけて戻ったのでした。
あれは心身きつかったわ~。
思い出して、ちょっとしびれます。

「そんなハードな思い出のところにまた連れて行くなんて、申し訳ない」
「いいえ、こっちも記憶の塗り替えをしたいところだから」

ただ、なんということでしょう。車だとスーッと、あっさり着いちゃいました。
ええ、もう、サーッと。
遠くから「あの山のふもと辺り」と言いましたが、気がつけばもうお寺の駐車場に到着していました。


仁王門・表


車って、なんて楽なのかしら~!
前回の西国巡礼の観音立寺でも思いましたが、車と公共機関で巡る人とでは、体感するハードさがかなり違います。


仁王門・裏


まあ、そんなわけで、今回は大変な思いもせずに到着できました。
ほかに境内に参拝者はおらず、私たちだけ。



山の中の静かな場所なので、鐘を鳴らします。
重々しい音が朗々と響き渡りました。



ここはかなり渋い場所で、巡礼以外の目的で来る人はあまりいなさそう。
それでも、坂東の札所になっているので、参拝者が切れることはないでしょう。



境内には、前に見た時と同様に、古い狛犬さんたちがいました。
引退狛犬ホームみたい。



● のぶ代さん千社札

先日、鎌倉にある2番札所の岩殿寺まで自転車で出かけたというミライさんに「大山のぶ代の千社札、見つけた?」と聞きましたが、「NO」とのことでした。
たしかこのお寺にもあったはず…。
探し出して、ミライさんに教えてあげます。



「坂東のお寺では、時々見つけるのよ」
彼女も巡礼していたのかもしれません。
長い間、ドラえもんの声で子供たちを幸せにしてきたのぶ代さん。彼女も幸せになりますように。

● 車と電車バス

参拝を終えると、時間は16:45。
通常、お寺は17時に閉まるので、頃合いもピッタリです。

この日は4つのお寺を参拝しました。
なんて効率がよかったんでしょう。
やはり車は違うわ・・・ (´;ω;`)ブワッ

でもミライさん、「お寺の寺務所に『車で巡る坂東三十三観音巡礼』という本がよくあるけれど、それは買わないでおこうと思ってるんだ」と、ポリシーはあるようです。
自転車巡礼もしている人なので、大丈夫。

さて、あとは帰途に着くことにします。
目的を済ませたあとは、急ぐ旅ではないので、のんびり。

と思いましたが、とつぜん道路が混んで、じりじり動かなくなりました。
高速情報から、常磐道で事故が起こり、通行止めになったと知ります。
それで車が普通道路に降りてきて、混んでいるのでしょう。

様子を見てみても、ずっと混雑は続きそうなので、コースアウトして別のルートを取ることにしました。
そのうちスムーズに動くようになったので「今のうちに常磐道を抜けよう」と先を急ぎ、帰りは休憩なしで横浜まで着きました。



● 雲からちょっと虹

茨城にいる間はずっと、小雨が降ったりやんだりしていましたが、東京に入るとピタッと雨は止みました。
雨引観音の雨を降らせるパワーだったのかしら。
東京は、今年は雨不足問題は大丈夫かしら。



雲の隙間から、ほんのちょっとだけ虹が見えました。
おお、レインボー!

● 普通車のホンダビート

信号待ちの時に、ふと目の前の車に目が留まりました。
ミライさんの車に比べて、ずいぶん車幅が違います。
とても小さくて、まるで軽みたい。
「前の車、小さそうだけれど、あれでも軽じゃないのね」
そう言うと「あれはホンダのビート。もともとは軽だね」と教えてもらいます。



「ビートって軽?」「そう」
「それを、軽じゃなくしたの?」「そう」
よくわからずに黙り込むと「普通車用のエンジンに変えて、馬力を上げたので、ナンバープレートも換えたってことだね」と説明してくれます。
「へえ、そういうことって、できるのね~」
「できるけど、普通はあんまりしないね。いろいろ大変だし」
手間もお金もかかるようです。
「それでもビートを普通車にしたってことは、これはもう、持ち主の愛なのね」
「そうだねー」

ビートなら、確かにファンが多そう。エンジンを変えると乗るのも楽になりますしね。
初めて見た、バージョンアップ版。
青信号になったら、パワフルになったビートは一気に加速度をあげて走っていきました。

● epilogue

猛暑が続く暑い夏でしたが、珍しく曇りで動きやすかったこの日。
お互い、前の旅の疲れが多少身体に残っており、あまり外出向きではありませんでしたが、ドライブは快適で、長時間でもこたえることはありませんでした。



今回は、茨城県内のつくば市・桜川市・笠間市・土浦市にある4つのお寺を訪れました。
新しいお寺2つに、かつて詣でたお寺2つ。地図の青い星のところです。
再訪したお寺の一つは、以前あったお堂が忽然と消えてプレハブになっていたことにビックリ。
もう一つは、ものすごくアクセスが大変でしたが、車で行くとスムーズだったことにビックリ。
でも何より驚いたのは、ミライさんが新車を買い換えて、違う色の車でやってきたことでした!

これで94/100観音。坂東のお寺巡りは、残すところあと2つ。
ようやく、ゴールが見えて来たようです。




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