風に吹かれて旅ごころ

はんなり旅を楽しむはずが、気づけばいつも珍道中。

りんご王国おためし暮らし 5-3

2016-10-12 | 東北
その2からの続きです。

○ 勝手に飲み会集合

夕方になっても代表から特に連絡はありませんが、ヒヤマさんのラストナイトなので、この日も飲み会決定でしょう。
というわけで、私たちは確認することもなく、事務所に向かいます。
毎度のことなので、もはやこの状況に慣れっこです。

ただ2人はバス、私は自転車でりんご公園まで来たので、一緒には行けません。
バスに乗って去っていく2人をハンケチを振りながら見送って、私はひとり赤べこ号を走らせます。

○ 禅林街を通り抜け

地図を開くと、近くにお寺が集まっている場所がありました。
禅林街という寺町で、ずいぶん大規模です。
そこを通り抜けてみることにします。

まず訪れたのが、長勝寺。
立派な門構えに、足を止めます。



弘前城主の津軽家の菩提寺で、入り口の三門は重要文化財。
もう夕方で、拝観時間は終わっていたため、どっしりとした古刹を外から眺めました。



その横は禅林広場という公園になっており、大きな忠魂碑と陸軍墓地がありました。
ここにある石は、碑の建立のために、下を流れる岩木川から人々が重い思いをして運んできたものだそうです。



お祈りをしようと近くまで行くと、夕日が差し込んできます。
そこは、たそがれゆく空と岩木山がよく見える場所でした。
きっとこの見晴らしのいい場所を選んで、慰霊碑が建てられたのでしょう。



このお寺からまっすぐの道路左右に、ずらりと33のお寺が並んでいます。
津軽藩主第2代信枚が領内から集めた、曹洞宗の寺院がずらり。
少し坂になっているため、この道を赤べこ号でさーっと通っていきます。
道の左右に立ち並ぶ寺院群が、壮観です。

しばらく行くと、黒い門が見えてきました。
その名も黒門。
その横には、赤い変わった形の御堂がありました。
これは栄螺堂(さざえどう)。



六角形に見えるこの建物、中に入ると実は八角形になっているんだそう。
ええと、どういうことでしょうかね?
大飢饉の供養のために、豪商が寄進したそうです。

○ 夕焼け探し

お寺も気になりますが、それよりもこの時は、空が気になりました。
見上げると、どんどん赤みが増す、紅の夕焼け空。
どこかきれいに岩木山が見えるところはないかしら。



キョロキョロと探しながらどこかの細道に入り込んで、若干アクロバティックなこともして、見つけたのがこの場所。
胸が締め付けられるほどの美しさです。
刻々と変わりゆく、つかの間の夕焼け空を楽しみました。



私がそんな風に予定外の場所で油を売っているところに、ヒヤマさんから連絡が入りました。
「今酒屋で買い物中です」
「私は寄り道中です」
撮ったばかりの画像を送りました。

○ お酒買占め

それからはひたすら坂を下って行き、2人と途中で合流。
2人は酒屋に寄って、お店が慌てるほど大量のお酒を買い込み、自宅に送ったそうです。
お店をひやひやさせるレベルって、相当ですよね。2人とも酒屋ジャックでもしたんですかい?

「特にyumさんがそりゃもうたくさん」とヒヤマさん。
「あはは、散財しちゃいましたよ」
否定しません。さすがキャプテン。

○ 陸奥新報にメンバーが

事務所に行くと、本日版の陸奥新報がありました。
地方新聞のローカル色が好きで、ぱらぱらとめくっていたら、メンバーのヤマモトさんとせのおさんが写真付きで載っていました。
カラーですよ!すごーい!



ビックリしていたら「地方の新聞は、ちょっとがんばったらすぐに載るからさ」とスタッフ。
その「ちょっと」が大きいんですよ~。
せのおさんの描く市のキャラ、たかまるくんの漫画も載っていました。



事務所のスタッフは、キッチンスペースでなにやら大量の料理を作っているところでした。
鍋パーティの準備をしているようです。なんてヘルシーなメニューなんでしょう!
そして毛豆がすごーい!



この日は会社の食事会があるそうです。
そちらに出るべきなのに、代表はまず私たちの方に参加してくれます。

○ かだれ横丁

私たちの読み通り、やっぱりこの日も食事会。
みんなでぞろぞろとかだれ横丁に行きました。



八戸には弥勒横丁というレトロな飲み屋街があります。
そこのような盛り上がりを目指して、最近できたところだそう。



赤べこ号のタイヤの空気を入れたいなと思い、町の自転車屋さんはどこにあるのかと代表に聞いてみました。
すると代表は、おもむろに近くの屋台にいたお客さんに話しかけ出しました。
「??」と思っていると、一言二言の話が終わり、代表がこちらを向いて
「国際ホテルで空気入れOKにしてもらったから」と言いました。
はい?ホテル?
何とそのお客さんは、国際ホテルの支配人でした。
ビックリ!代表、顔広ーい!

その方は屋台から私たちのテーブルに移動して、驚いて固まっている私に名刺を下さいました。
たしかに支配人さん!私服だと、どんな仕事かわかりません。
「明日来る?スタッフに言っておくからね」
「お、お願いします」

人生って、どう流れていくかわかりません。
自分が泊まっていないホテルに、自転車の空気入れを借りに行く日が来ようとは、思ってもいませんでした。
ライフイズワンダフル!



さらに、先程新聞記事で見かけた、せのおさんも合流しました。
弘前キャラクター・たか丸君の生みの親です!このお店の前にもイラストが飾られています。
なにか粗相をして、先生のご気分を害したら、どうしましょう!
でもとても明るく気さくな方で、ぎっとも怖くありませんでした。

○ 明朗会計

たくさんの小さな居酒屋が並ぶ、かだれ横丁。
その通路の真ん中にあるテーブルに座った私たち。
「ここの仕組みは、まずこの籠に一人3000円ずつ入れます。
注文を受けたお店が、料理と引き換えに料金を持っていくシステムです」
なるほど、明朗会計ですね。



手前にあるのは、私が頼んだのはレモンサワー。
飲めない私は、後輩の教えに従って今回「レモンサワーの女」を邁進中。
ここのは、生レモンの果汁入りで、おいしかったです。

外せないご当地ビール、青森絞りの瓶ー。



yumさんお気に入りの貝焼き味噌。
今回はちゃんとホタテ貝の殻に乗ってきました。
やっぱりこうでないとね!



貝焼き味噌は、溶き卵が半熟状の時に火からおろして食べるのが正解だそう。
後で知って、yumさんは「ああ~、あの時卵固めちゃった」と後悔していました。
まあ、おいしいならいいんです。

いがめんちは、やっぱりどの店でも味が違うものですね。
ヒヤマさんが気になるといった、けの汁もやってきました。
絵的にはイマイチですが、中に野菜がたっぷり沈んだ、具だくさんのお味噌汁です。



オムソバ。卵ぷるぷるでおいしかった~。



チーズピザ。そろそろおなかいっぱいになってきました。
二皿頼んだどちらのソースにもB.C.と文字が入っていましたが、どんな意味なんでしょうね。紀元前?



冬の風物詩、みがきにしん。
我が家では、冬には普通に家にあるものですが、ヒヤマさんもyumさんも、初めて食べる様子でした。




代表に、シードル工房kimoriの高橋代表のお話を聞いてきたと報告しました。
「おっ、会えたのね。それはよかった」
ノーアポでしたから、本当に良かったです。
これでミッションクリア。

こちらの人たちで「彼、最近みちのく銀行のCMに出てるよね」と話しています。
後でみちのく銀行のサイトを調べてみたら「アグリビジネス篇」のCMに確かに登場していまた。
よっ、地元の顔!

さっき高橋さんが教えていたお店のことを、話題に出しました。
「蓮(レン)という酒場に、津軽弁でシャンソンを歌うおばあちゃまがいるそうですね。
"すさんだ心の人ほど、涙が止まらなくなる"って高橋さんがお話してくれました」
「そうそう、みんな泣くんだよ」
えー、気になるー。私も号泣したりしてー。

津軽弁ってフランス語に似ているって言われますね。
どんな感じなのか、一度聴いてみたいものです。

○ クレイジーモンスター

いろいろな津軽の味をいただき、おなかいっぱいになって、立ち上がります。
でもそれは帰宅ではなく、二次会への移動なのです。これも毎度の流れ。

yumさんが入り口の壁画の前で足を止めたので、私も目をやりました。
初めは何も気になりませんでしたが「この絵すごーい」と彼女が言うので、よく見てみました。



上の赤囲みの馬の部分が、こちら。
見れば見るほど細かいイラストで、あまりの細密ぶりに、肌がぞわぞわしてきます。
たぶん、服の下で、鳥肌が立っています。



描いたのは、ペン一本で気迫に満ちた力作を次々に生み出していく、地元出身のクレイジーモンスター・GOMAさんというアーティストでした。

○ カクテルバー侍庵

二次会は、かくみ小路にあるオーセンティックなバー侍庵 (タイアン)。
代表が事務所の会に混ざったきり戻ってこないため、地元の人たちと「人質だ」と言いながら彼の鞄を持って移動します。



せのおさんが飲めないと知り、仲間を見つけて、勇気が出る私。
2人でノンアルカクテルにしました。シャーリーテンプルとなにか。(忘れちゃった)



いろいろな方のサインが飾られていました。
伊集院静氏との2ショット写真もありましたが、一番(おお)と思ったのは、角野卓三さんの直筆メッセージでした。


味のある字ですね


こちらはヒヤマさんがオーダーした、弘前りんごのカクテル。
メニューには、ブラッディ・マリーならぬ「ブラッディ・タメノブ」もありました。
タメノブとは、津軽地方を平定した津軽為信のことですが、そのためにかなりあくどい手を使ったと(おもに南部地方から)言われています。
単なる英雄賛歌をしないところが、弘前のちょっとシュールなところ。



ここではみんな2杯ほど本格カクテルをたしなみ、代表が戻るのを待って、再び夜の町へと繰り出しました。
古き良き昭和の香りあふれるかくみ小路は、こんなレトロな街角です。



「サユリ・ヨシナガー!」と声を上げるyumさん。
気持ちよさそうに言っていたので、これからはあの大女優をそう呼んでしまいそう。
青い山脈は青森が舞台?青がつくと、とりあえず青森かと思ってみます。



前日は私が胃腸疲れ、この日はyumさんが普通の疲れで眠そうだったので、私たちだけ先にハウスに送ってもらいました。

○ 真夜中のカツカレー

私たちを送ってくれた後、せのおさんとヒヤマさんは、再び車で繁華街へ。
「本当に行くんですね。お気をつけて~(主におなか)」
私には、彼らの無事を祈って見送ることしかできません。
「あ、一緒に来ませんか?」
「いえ、けっこうです!!」

彼らが向かった先は、ふぁーすとというお店。
飲みの後はラーメンで締めるのがのんべえの定番ですが、弘前ではラーメンではなくふぁーすとのカツカレーで締めるんだそうです。
なぜにカツカレー?
聞いただけで胃もたれ起こしそう!

昔からの伝統では全くなく、どうやら仲間内のコバヤシさんがそれを広めだしたんだそう。
弘前の男性陣はみんなその儀式を受け、みんな動けなくなるそうです。

yumさんが寝たあと、リビングで少し作業をしていたら、死にそうな顔をした二人がおなかをさすりながら戻ってきました。
ゾンビ襲来!?
食べて飲んでもういっぱいのおなかを抱えて、丑三つ時の2時にこれを食べて来たそうです。


ドドーン!

注・体調管理に気をつけて食べましょう

せのおさんから画像をいただく際に「上の注釈つけてね」とのご希望をお受けしましたが、せのおさん、それはまずあなたへのメッセージですよ(笑)!

本当にボリュームのあるものを食べてきたんですね。
普通に見るとおいしそうですが、勘違いしてはいけません。
真夜中過ぎの満腹時に、これが目の前に出てくるんですからね!!
どうやっても罰ゲームにしか思えませんが、みなさんなぜかやめられないそうです。
謎の中毒性。魔性のカツカレーですね。

くだんのお店は、おばあちゃんが夜だけ開けており、この日はもう閉めたかったらしく、ほかのお客さんが来ると「もう締めますから」と断っていたそう。
でも顔見知りのコバヤシさんとその仲間たちのことは、断れなかったそうです。
その仲間たちに含まれる、せのおさんとヒヤマさんも、カツカレーの注文を断れなかったそうです。
みんな断っていいのよ~。断ろうよ~。
やっぱり魔性にはかなわないのね~。

弘前は繁華街の夜が長い町。こちらの女性は一人でも夜のお店に入っていくとのこと。
カツカレーの店内にもおひとりさま女子が食事をしていたそうです。丑三つ時に!
きっと治安がいいんでしょうね。それは住民にも観光客にも嬉しい話ですが、それにしてもちょっと遅すぎ~。

○ ラストナイト・ラストTV

リビングで、ヒヤマさんとしばしお話しました。
これがラストナイトなので、さすがに淋しそう。
一緒にスタートしたヒヤマさんがいなくなると、私も淋しくなります。

「帰ってからも、また連絡を取り合いましょう」と話しました。
でも酔った時の約束ですから、朝にはもう忘れているかもしれませんねー。
しかも真夜中過ぎのカツカレー。せのおさん共々、明日は胃もたれになっているかもー。


ヒヤマさん撮影

そのうちに、青森朝日放送の放映時間終了のアナウンスが流れ、TVは静止画面に変わりました。
「あ~、TVも終わっちゃった」と悲しげな声を上げて、その画面を真剣に撮影するヒヤマさん。
えっ、それを撮るの? やっぱり酔ってますね(笑)!
「いやー、本当にあっという間でした。こんなに短いなんて思わなかった」
確かに想像以上にいろいろなことが起こって、飛ぶように去っていった5日間でした。

6日目に続きます。


りんご王国おためし暮らし 5-2

2016-10-11 | 東北

その1からの続きです。

○ リンゴ園見学

yumさんとガイド付きの園内見学を申し込みました。
受付で「所要時間はどのくらいですか?」と聞くと、
「どのくらいでもいいですよ。好きな時間を言ってください」と言われました。
なんて太っ腹なんでしょう。
「え、えーと、じゃあ2,30分で」
「はい。じゃあ行きましょう」
すぐにガイドが始まりました。


落とさないでね~


○ 2度目の眺望  

リンゴ園を巡りながら、マンツーマンで解説してもらうという贅沢な機会。
まずは先ほどの展望台に再び上りました。
今度はyumさんとガイドさんも一緒。さっきよりは岩木山がきれいに見えていました。



整腸、ストレス解消、美容などに効果があるリンゴ。
日本一のリンゴ王国である弘前市では、6000戸のリンゴ農家が312万本のリンゴの木を育てており、年間16万tの収穫量があるそうです。
この公園には80品種のリンゴが1500本あるのだそう。
見下ろすと、リンゴ畑ははるか岩木山のふもとの方まで広がっていました・・・
「そう見えるでしょう。実際はそこまで広くなくて、そこの道から先は、ほかの個人の畑なんですよ」



縦に伸びるおもしろい形。一見リンゴの木とは思わなさそうです。

昔からリンゴ畑に柵はないそうです。
お隣さんの畑との境界には、ブルーベリーやスグリなど、違う植物を植えて目印にしていたとか。



『アメリカン・ビューティー』って映画にもありましたね。
映画の方は、薔薇の名前からとったものでした。
つまり、リンゴにもバラにもある名前なんですね。



「マンチュリカ」ってかわいい響きだな、と思います。ポカホンタスみたいな。
スミレのことをマンジュリカっていうんですって。
もっと詳しく言うと、日本種スミレのことをそういうそうです。
減産が満州だから、マンチュとかマンジュとか?
リンゴの品種名の説明にはなっていないんですけどね~。



印度リンゴはインド産ではありませんでした。
確かに、冷静に考えてみたら、そんなに暑い国ではリンゴは育ちませんね。
アメリカのインディアナ産なんだそうです。うーん、そっちだとは思わないなあ。

ニュートンのリンゴがありました。
「ケントの花」というそうです。「花」まで品種名になっているなんて、当時は実よりも花がメインだったんでしょうね。



気候が温かいからか、うっかり季節をかん違して咲いている花もありました。
今は秋ですよー。実がなる頃には冬になっちゃうよー。



リンゴの収穫期は、8月上旬から11月中旬までと長期に渡ります。
品種によって熟する季節が違い、まずは8月1日から「夏緑」のもぎ取りが始まります。
「わあ、夏緑なんて、きれいな名前」「聞いたことないでしょう」
「星の金貨」や「恋空」という名前もありました。
作った人が名付け親になるので、統一感はあまりないんだとか。



甘さも大きさも「世界一」だと名付けたら、今はもっと大きなものが出ているそう。
「大きさがわかるものないかな」とバッグの中を探しかけたら、ガイドのおばさまがスッと自分のスマホを出してくれました。
すばやい!キティちゃんかわいい!



ガイドさんは、園内の80品種すべてを食べたことがあるそう。
私もここで働かせてください!

いろいろな品種の解説をしながら「これはまずい」と結構言います。
どれも見た目は美味しそうなんですが。古い品種は仕方がないですね。

○ リンゴもぎ

見学しながら、リンゴもぎの収穫体験も行いました。
今、旬なのは「彩香(さいか)」。あかねと王林のかけあわせです。



楽しかった園内見学。歯に衣着せぬ解説がおもしろく、あっという間の時間でした。
わきあいあいと、ちょっぴり時間長めに、説明してもらいました。



終了後、yumさんに「どうしてそんなにリンゴの品種に詳しいんですか?」と聞かれました。
「えー、わからないのも結構ありましたよ」
「私、ぜんぜんわからなかった…」
毎年冬が近づくと、親戚からリンゴが箱で届き、親に「これはゴールデンデリシャス、これは黄王」などと教えられながら食べています。
知らぬ間に覚えていたんですね。ほかのフルーツは全くわかりませんが。



ヒヤマさんから連絡が入りました。駅の方での用を済ませて、これからリンゴ公園にやって来るとのこと。
合流できるかな?

○ シードル工房kimori

次はシードル工房kimoriへ。
数日前、代表にここの高橋社長のお話を聞くように、勧められたので、伺ってみたいところ。



リンゴ園の中にある、真っ白な三角屋根の建物。とってもステキ。
リンゴ箱が重ねられています。



アポなしだったので、ダメモトで係の女性に聞いてみると、やはり今は留守で、いつ帰るのかわからないとのこと。
ご多忙な方なんですね。



○ リンゴ園で飲むシードル

ガラス越しに、シードル工房の大きなタンクが見られました。
ここでkimoriのシードルが無ろ過製法で作られています。
お酒大好きのyumさんの食いつきたるや、半端ありません。

ここで醸造したてのシードルが飲めるということで、彼女が試してみることに。
「甘口と辛口がありますが」
「どちらもいただきます!」
さすがキャプテン!



私もひと口いただきました。どちらもおいしい。
両方から告白されたら、悩んじゃうわ~。(なに言っとる



「ウッドデッキへどうぞ」と勧められました。
リンゴ園の中のオープンデッキ。絵になるわ~。
かわいらしいテーブルと椅子は、リンゴ箱を使っており、椅子の高さはちょうどリンゴ箱一つ分、テーブルはリンゴ箱二つ分になるように作られているそうです。
細かなこだわりですね。



○ チルアウトタイム

醸造所をぐるりと囲むリンゴ園には、ハンモックがかかっています。 
ゆったりのんびりくつろげる空間。
揺られながら、枝越しに空を見上げます。
とても心地いいチルアウトタイム。ここで真っ赤なリンゴが色づくときに、シードルパーティをしたら最高だろうなあ。



リンゴ園を眺めて試飲をしながら女性と話しているところに、ヒヤマさんが合流。
これでハウスの3人が揃いました。

○ 木守りのお話

そうこうしているうちに、代表の車がやってきました。
すぐに会っていただけることになりました。
アポなしでお会いすることができるなんて、とってもラッキー。

シードル造りの全工程を自分たちで丁寧に行っているという高橋社長。
熱くリンゴ栽培について語ってもらいました。
「実は、リンゴの木は自然に伸びているわけではないんですよ」
なんと!
ほおっておくと、てんでバラバラに枝が高く伸びてしまうため、剪定が必要なんだそうです。
リンゴの木一本一本を。大変ですね。



「枝も、場所によって伸びるところと伸びないところがあり、栄養のいきわたり方が違います」
リンゴの土の下にはいろいろな植物がいて、様々な栄養を作り出しています。
加えて剪定の仕方によって、味まで変わってしまうんだとか。
木が育っていく場所、いい実がなる場所は、もうあらかた決まっていて、リンゴ農家はそこをうまく伸ばして育てていくのだそうです。

「さっきもいだ彩香の種を、植えて育ててみて下さい。
きちんと手間をかければ、きちんとリンゴがなりますよ。20年後くらいにね」
種を植えて、苗が育って幹となり、実を付けるまで、リンゴの木は20年かかるそうです。
長い付き合いです。



高橋さんのお話はどれも括目することばかりでしたが、一番驚いたのが「もともと青森はリンゴ栽培に向いていません」ということでした。
えーっ?青森といえばリンゴ、リンゴといえば青森。
なのに、向いていなかったって、どういうことですか?

「青森は寒すぎて農業に適さず、リンゴも始めは育ちませんでした。
でも、他の作物が全部失敗してしまったので、もう後がなくなってしまい、これでやっていくしかないという土壇場の状況から始めたんです」
もう後がなくなった・・・。
当時の追い詰められた北の民の、悲愴な決心がしのばれます。
そんな大変な歴史があったとは、知りませんでした。
北の大地は、リンゴにピッタリの土壌かと思っていましたが、寒すぎたなんて。

その大きなデメリットを克服すべく、人々は研究と改良を重ね、今に至ります。
機械化の進んだ今でも、手間をかけて人の手で一本一本、面倒を見ているんだそう。

「人間に接するのと変わりませんね。毎日木と対話しながら向き合っていると、恋をしているような気になってきます」
少年のように目を輝かせる彼。
恋する木守りとリンゴの木のおはなし。そうしてできるリンゴが、おいしくないわけがありません。



欧米のリンゴは小さいので、手でもがずに木ごと揺らして地面に落とすそう。
結構乱暴ですね。だから海外からの視察団が日本の収穫方法を見ると、とても驚くそうです。
一つ一つ手でもいでいくわけですからね。

また、後継者問題の話にもなりました。
kimori醸造所はリンゴ畑に囲まれていますが、その隣には広大な空き地が広がっています。
そこも、以前はリンゴ畑だったのですが、後継者問題で続けられなくなり、農家が手放したのだそう。

リンゴは接ぎ木なので、実質的には永遠に育つそうです。
それなのに、すっかりさら地になってしまった土地。
昔を知る人々は、切ない思いで眺めていることでしょう。

弘前は日本一リンゴ農家が多い町ですが、そのうち跡継ぎが決まっているのは2割、決まっていないのは5割、はっきりしないのが3割。
このままだと、数十年後には多くても今の半分に減ってしまいます。
そこに危機感を感じ、未来のためにもリンゴ栽培の魅力を伝えようと、高橋さんは日々飛び回っているそうです。



建物の横には、薪が積んでありました。
リンゴの薪です。
とても香りがよくて、アメリカでは大統領の客人がきたときなどにリンゴの薪で暖炉に灯をつけるんだそう。 
落ち着きそうですね。
次の週末には、このリンゴ園にテントを張り、薪ストーブをたくそうです。

ブランド名kimoriとは、豊作を願って数個の果実を木に残す風習から。
「木を守る人」の意味にも思えます。
高橋さんの熱いお話を聞いて、大感激した私たち。
彼のソウルが、まっすぐ伝わりました。

○ リンゴの惑星

「未来の代の子供たちに伝えることも、大きな役割だと思いますよ」
「リンゴの惑星、大阪でやらはりますね」とヒヤマさん。
そのポスター、事務所に貼られていて、三度見くらいしました。
だって『PLANET OF THE APPLES』ですよ。
『PLANET OF THE APES(猿の惑星)』に似せるなんて、おもしろいこと考えつきますね!



「僕も子供に混ざって聞きに行こうかな。年齢制限、あります?」とヒヤマさん。
「大丈夫。じゃあ"大きいお兄ちゃん"に当てるから、今日話したことちゃんと答えてね」と高橋さん。

私の祖母の実家は、青森市内にあるリンゴ園。
毎年そこのリンゴが送られてくるため、ついぞスーパーでリンゴを買ったことがありません。
送られてくるものの方が、ずっとおいしいですから。

遠い親戚もまた木を守っている人なんだなあと、改めて思います。
子供の頃に遊びに行ったきりですが、久しぶりに今度訪ねに行こうかな。

○ 3度目の眺望

お話を聞かせていただいたお礼を言い、2人に手を振って工房を出た時には、もう閉園の5時近くになっていました。
まだヒヤマさんが上っていないので、yumさんと3人でまたまた展望台へ。
私はこの日3回目。展望台への階段はけっこうきついし、私の場合は上りすぎですね。
毎回、一緒に上る人が増えているから、いっか。



岩木山がさっきよりもくっきり見えました。
反対側の景色もきれい。



ここを訪れた時には、それほど長居はせず、ひとしきりまわったら他の場所へ移動するつもりでしたが、お昼にyumさん、午後にヒヤマさんと合流し、園内見学をして高橋代表の話を聞いていたら、もう夕方。
二人に「途中で移動するから、すれ違いになって公園では会えないかも〜」と事前に言っておきながら、閉園までいたので「結局今日はどこにも動かず、ずーっとここにいましたね」と、笑いながら「主」扱いされました。
だって予想以上におもしろい場所だったから〜。
いろいろとリンゴのことを知った、実り多い一日でした。



リンゴ畑でチルアウトするのは、人間だけではありません。
ネコたちものんびりー。



帰り道で、収穫している方を見かけました。
一つ一つ手作業で育つリンゴ。
愛情が無ければやっていけません。
おじさんに感謝の気持ちをささげたくなる気分。
三人とも黙って足を止めて、彼の作業に見入りました。



下にアルミを敷いたリンゴ。なぜ敷いているのかは、青池ドライブのときに代表に教えてもらいました。
食べごろになって、収穫の時を待っています。



真っ赤っかでおいしそう。手にとる人を喜ばせてあげてね。



その3に続きます。

りんご王国おためし暮らし 5-1

2016-10-10 | 東北
4日目からの続きです。

○ それぞれの朝

昨日寝たのが遅かったので、ゆっくり目に起床。
食パンはもちろん、クドウパンのイギリストースト。
味つきのイギリストーストでえはない、プレーンのものです。

焼こうとしたら、このハウスにはトースターがありませんでした。
電子レンジのオーブン機能を使ってみましたが、いまいち中まで火が通っていません。
とろけるチーズをのせたのに、とろけずに上の方が焼けちゃってる~。
ベイクドチーズ生焼けトーストになりました。



ヤマモトさんとNekoさんが、今日でさようなら。
ここのところ、連日人をお見送りをするので、寂しいです。
ヒヤマさんとyumさんは、駅の辺りへ行くと言ってバスに乗っていきました。

○ 赤べこ号

4人を見送った私は、初めてハウスの自転車「赤べこ号」に乗ってみました。
これでりんご公園を目指します。
ハウスから見て駅は東、りんご公園は南にあり、みんなと方向が違ったのです。

地図を見ると、りんご公園への道が途切れている箇所があります。
前の日に観光案内所の人に尋ねてみたら「この辺は森なので、ちょっとどうなっているのかわかりませn」と言われました。
地元の人はみんな車移動ですものね。

行けるのかよくわからないまま、見切り発進で出発。
地図上で道が途切れている辺りにに行くと、山のカーブに沿った急坂になっており、登った先の様子がわかりません。
近くで除草作業をしていたおじいさんに聞くと、機械のモーターを止めて、道まで出てきて教えてくれました。
赤べこ号を引いて、急坂をふうふう登って行きます。



○ 丘の上のりんご畑

坂の上にはリンゴ畑が広がっていました。
青いリンゴ、真っ赤なリンゴ。袋に入っているものもあります。







単純に見ると(わあきれい)と思うだけですが、先日、袋入りリンゴについてのリアルな話を聞いた後なので(これは保存用に蜜を止めているものね)と複雑な気持ちで見つめます。
でもリンゴに罪はありません。美味しく育ってほしいなあと思います。



コスモスとりんごって合いますね。秋が来たんだなあと思います。



○ リンゴ公園

ふと見ると、カーブミラーが赤いりんご。



赤いポストの上には、赤いリンゴ。
サンリオの世界に入ったみたいなメルヘンタウンです。



迷いながらも、無事にリンゴ公園にたどり着きました。
子供たちの遠足の団体がいましたが、平日なのでそんなに混んでおらず、割と静か。



つやっつやのおいしそうなリンゴ!



○ 1度目の眺望 

まずは展望台に上ってみました。
予想以上に結構な高さ。岩木山の絶景が望める場所ですが、この日は残念ながらうっすらとしか見えません。
お山はどこ~?



反対側には、時代が止まったかのようなレトロな光景が広がっています。



○ 津軽人の生活

それから下に降りて、園内の古い民家を見学しました。



きっちりと編み込まれた、これは、いずめこの籠?



青森出身の父母が東京で知り合い、生まれたのが私。
自分が青森に住んだことはありませんが(しいて言えば今この時かな)、もし父母が青森で出会っていたら、私はこの地で生まれ育ったことになります。
そう考えながら見ると、青森の文化のどれもが(もしかすると身近だったかもしれないもの)として、なにやらなつかしく思えてくるのです。



○ リンゴ王国

別の建物に入ると、かわいい王子様が迎えてくれました。
ここ弘前はりんご収穫日本一の町、つまりりんご王国だと、改めて知りました。



そうなんだあ。普段青森市のりんごを食べているので、そっちが一番かと勝手に思っていたのですが、ナンバーワンはここ弘前だったとは。
リンゴって食べるに美味しいし、栄養価たっぷりだし、形もかわいくてインテリアにいいし、理想の果物ですね。



○ リンゴラーメン?

建物内に入ると、リンゴ酢の試飲ができました。



うすい黄色で、飲むと甘酸っぱさが口の中に広がります。
フルーツなので、ほかのビネガーよりも飲みやすい感じ。
メルヘンなりんご王国では、お酢までマイルドな味になるんですね。



園内のレストランでランチにします。
そう、ここは出発前に弘前出身の友人から聞いていた、リンゴラーメンがある場所なのです。
予定通りに食べようと思いましたが、見本写真は至って普通のラーメン。
リンゴはどこ?
麺にリンゴとリンゴ酢が練りこんであるもので、具にはリンゴは入っていないと知って、ちょっと決心が鈍ります。
味噌カレー牛乳ラーメンに匹敵するインパクトを持つかと思ったんですが、あれ、ちょっと待って。

○ 利きリンゴジュース

迷っている目に、「リンゴジュース5種の飲み比べ」のポスターが飛び込んできました。
なにそれ、おもしろそう。
さっそくそちらを頼んでみることにします。



となるとアップルパイも一緒に食べたいなあ。
4種ある中で、形が丸くてかわいらしい、夢りんごファームのものにしました。



利き酒なら時々ありますが、利きジュースなんて初めて。
我が家では、アオレンかシャイニーを愛飲していますが、それ以外のメーカーもあります。
よーし、自分の好みの味を見つけるわー。





すべてのグラスから、少しずつ飲んでみました。
でも、正直よくわかりません。
それぞれ味の違いがあるということはわかりますが、どれがお気に入りかと言われると、甲乙つけがたく、はっきり言えないのです。
うーーん。

リンゴ畑を眺めながらりんごを食するなんて、なんて贅沢。



○ メンバーと合流

ランチタイムを過ぎ、いつしかカフェテリア内には私一人。
それでも利きジュースに集中しているので、まったく寂しさは感じません。
真剣に違いを味わっているところに、誰かが近寄って、肩をぽんと叩きました。
yumさん!
「ハウスを出てから、バスに乗って市街地のスタバに行って、ちょっと仕事して、こっちに移動してきたんです」
おお、私よりも動いているわー。

リンゴラーメンの話をしたら、彼女はメニューも見ずに「じゃあ私、それにする」と言いました。
キャプテン、その決断力がかっこいい!
また、しぼりたて生リンゴジュースも頼みました。
こちらも気になっていたものですー。



ラーメンも生ジュースも、ちょっとずついただいきました。ありがとキャプテン!
うん、リンゴラーメンはマイルドなお味。
リンゴ麺も抵抗なく食べられます。

しぼりたてでビールのように泡立った生リンゴジュースは、市販のジュースとは比べ物にならないほどに新鮮で濃密でした。
これはおいしい!利きジュースの一番は、これでーす!やっぱり生搾りにはかないませんね。
どちらも味見ができて、ラッキー。

その2に続きます。


りんご王国おためし暮らし 4-2

2016-10-09 | 東北
その1からの続きです。

○ キャプテン登場

この日の夜も歓迎会。連日連夜続いています。
事務所に行く途中に見た夕焼けははっとするほどにきれいで、道行く人々はみんな足を止めて撮影していました。





台風で飛行機が飛ぶか危ぶまれていたデグチ先輩。大阪に降りれず福岡まで行ったフライトもあったそうですが、彼の乗った便は無事に伊丹空港についたそうです。よかったよかった。
デグチ先輩とtomさんがハウスを離れたのと入れ違いに、この日から新しい女性がメンバーが来る予定。

午前中に事務所ですでに会っているヒヤマさんに「どんな方でした?」と聞いたら、
「キャプテンでした」
ん?
名刺にキャプテンと書いていたとのこと。
「ハキハキしていて、実際キャプテンっぽかったです」

その前情報から、初顔合わせのときには(キャプテン・・・フック・・・クック・・・EO・・・)と思いながら挨拶しました。
でも海賊帽なんてかぶっていない(当たり前か)、yumさんという凝ったネイルの歯切れのいい方でした。

○ 美しい毛豆

事務所にはいつ来ても、立派な毛豆が飾られています。



芸術的!おいしそう!
まさか毛豆に美を感じる時がこようとは。



ほかのメンバーはつかまらなかったとのことで、4人で食事に出かけます。

○ 四季亭

連れてきてもらったお店は、外は静かですが中はとても賑やか。
「一見喫茶店みたいな外観で、まさか居酒屋とは思わないでしょ」と代表。
ガイドブックに載っていなさそうなお店です。



乾杯後、代表は「ほかの飲み会にちょっと顔を出してくるから」と、その場を離れました。
常に多忙そうですが、飲み会掛け持ちって、タフ!

代表がいなくなると、私たち3人はよるべないよそ者気分になります。
ネイティブの津軽弁が威勢よく飛び交う店内。周りのお客は、ほぼ全員地元の人だったようです。



○ 地元の味

でも、乾杯したらそういうことはすぐ気にならなくなります。
ヒヤマさんとyumさんは、豊盃で乾杯。2人とも飲み口です。
次々と料理が届きました。

しめ鯖!



サンマ刺し!
前日には塩焼きを食べたので、今回は生で。旬ですから。



しいたけの網焼き。秋の訪れですねえ。



イカメンチステーキ!なんかパワーアップしてるー!!
揚げずにハンバーグのように焼き、上にバターを乗せたものです。
ふわふわの柔らかさとイカの歯ごたえを楽しみました。



貝焼き味噌を注文したら、おかみさんが「今ちょっとホタテ貝には載せられないんだけど」と言いました。
出てきたものは、確かに違う器に入っています。
この料理は、見た目にもやっぱり貝がいいですね~。



○ ホヤとミズ

ホヤとミズも頼みました。もはやすっかり定番のカップリング。
ホヤは、珍しいにしても、北海道や東北で食べられるものですが、ミズは、みんな知りません。
「ミズ?ミズっていうんですか?」
みんな「ミズ↑? ミズ↓?」と、たどたどしく繰り返しては、イントネーションに困っています。
日本語を覚えたての留学生のようで、ほほえましいわ~。



我が家では親戚に送ってもらうため、家でも食べ慣れています。
つるっと喉通りがよくて、ふきより好き。
なので、ここまで他県の人が知らないとは思いませんでした。
そういえば、横浜の八百屋で売られているのを見たことないなあ。

子供の頃は「なんでお水じゃないのに、ミズっていうの?」と質問攻めして、親を困らせたものでした。
実は今でも、この疑問は解決していません。なぜ、なぜなのー?



具が大きいカニチャーハン!
見ただけで幸せ~。食べて二度幸せ~。

○ そろそろおなか休め

少し食べただけで、おなかいっぱい。
明らかに日々の食べ過ぎが積もり積もってきています。
料理はどれもおいしいけれど、若干胸やけ気味なので、この辺りでいっぺんおなか休めをしたいもの。

当然のように二次会もあり、一次会欠席のヤマモトさんとNekoさんが合流するそうなので、人数的にも問題なさそう。
ということで、代表が戻ってお店を変える時に、私は二次会をパスして先に帰ることにしました。
私の分も、飲んで弾けてきて~。

○ 夜の洋館

帰る途中に見かけた、旧東奥義塾外人教師館(明治33年)。
青森県初の私立の学校だそうです。



こちらは旧弘前市立図書館(明治39年)。
八角形ドームのツインタワー。



冬には町の歴史的建造物がライトアップされるんだとか。
雪の中の洋館、すてきでしょうね~。すごーく寒そうですけど。

○ ひとりは寒い

ハウスに戻り、みんなが帰ってきてからお風呂の順番が詰まらないように、先に入浴しました。
それでもしばらくみんな帰ってきません。
がらんとしたハウスの中に一人でいると、寒いしさびしーい。
咳をしてもひとり。実際にも気温が下がっていました。
こちらは、秋が来るのが早いですね。
東京の方はまだ夜になっても暑いですが、青森は日中は暑くても、朝晩はぐっと気温が下がります。

そこで、初めてヒーターを付けました。
わー、あったかい~。
ひとり両手をかざしてみたりして、気分はマッチ売りの少女です。

○ ごきげんご帰還

1時過ぎに、4人がわいわいとタクシーで帰ってきました。
みんな紅潮した顔で、すごく楽しかったと口々に教えてくれます。
話を聞くと(やっぱり一緒に行きたかったなあ)と思いますが、ハイボールが1Lジョッキで来たとyumさんに聞いて(ううむ、それは無理だなあ)とも思います。
ちょうど滞在の折り返し地点ですし、連夜の飲みの胃疲れを一段落させる、いいタイミングだとしましょう。

みんなといろいろ話をして、寝たのは4時。もうすぐ朝・・・。

5日目に続きます。

りんご王国おためし暮らし 4-1

2016-10-08 | 東北
3日目からの続きです。

○ 朝はのんびり

連日の飲み会で毎晩就寝時間が遅く、とうとうこの日は早く起きられませんでした。
無理せずゆっくりの朝にします。青森ブランド、クドウパンのイギリスパンで朝食。

デグチ先輩とtomさんが帰宅してしまいます。
2人ともいなくなっちゃうなんて、不安だわー。
ハウスからお見送りしますが、事務所のコワーキングスペースでギリギリまでお仕事をするそうです。IT戦士だから!
この日は、ヒヤマさんと田舎館村の田んぼアートに行くことにしました。
午前中、ヒヤマさんはコワーキングスペースで、私はハウスで作業。
昼に駅で待ち合わせます。

○ お城の公園をさまよう

天気もいいし時間もあるので、駅まで歩いていくことにしました。



先日おまわりさんに教えてもらったルートが一番わかりやすい道ですが、車道沿いなので、少し遠回りになっても静かな弘前公園を通っていくことにします。
初日に歩いた道をたどれば着くはず。
記憶をたどりながら、西壕まで快調にたどり着きました。



公園内に入り、さらに初日のルートをたどろうと思いましたが、似たような光景でわからなくなっていました。
別の道へと行ってしまっては(この道知らない)と、何度も引き返します。
地図を見てもよくわからないので、もう土地の人に聞くしかなさそう。
でも会社員風の人に聞いても、犬を連れた人に聞いても「地元の者じゃないのでわかりません」と言われました。
犬を散歩させていても旅行中なんて、見分けがつかないわ。
今日びの旅行者は、みんな地元民化しているのかしら?



アイスを売っていましたが、やはり「チリンチリン」ではなく「カランカラン」。
うーむ、この違いはいったいなんだろう?
まだ状況視察中なので、今回も深入りはやめておきます。

○ 遅れられません

公園の中を彷徨っていたので待ち合わせ時間ぎりぎりに着くことになりそうだと、急ぎ足で向かっていると、駅前のあたりでヒヤマさんが後ろから走ってきました。
青森市からすると、田んぼアートはちょっと遠くて(あー行くの億劫だなあ)という印象ですが、弘前からだと電車一本で行けます。
ただその電車は、1時間に1本しかこないため、それを逃すと大きなダメージが。
自分たちが間に合わせるしかありません。



無事予定の電車に乗りこんで少し行くと、両側にリンゴ畑が広がりました。
弘前は青森よりもリンゴ畑が街に近くて身近です。

○ 出張合間の観光

向かいはスーツ姿の男性2人。年齢もかなり離れており、いかにも上司と部下といった感じ。
仕事だと思っていたら、おもむろに年配の人の方が立ち上がり、私たちの肩越しの風景を撮影しだしました。



なんだろうと振り返ると、そこには岩木山。
私たちも撮り出します。連れの部下も撮り始めます。4人とも無言の撮影大会です。



この2人は、よその人なのかな?
じきに田んぼアート駅に到着。
田んぼアートのためだけに作られた駅で、停車するのは開催期間中のみ。
たしかにすぐに撤去できそうな、簡易な作りです。

二人もここで一緒に降りて、そそくさと会場の方へと向かいます。
ちょっとした空き時間を使ってのことかもしれません。
私たちは彼らの後姿を見ながら、ゆっくりとタワーの方へ。



ネットに「田んぼアートには行列ができていて40分くらい待つ」と書かれています。
話題が話題を呼び、年々訪問客が増えていると聞いています。
あまりに並ぶことになると、どちらか一つしか見られないかもしれません。

行列はなく、そんな心配はいりませんでした。
待たずにすんなりタワーの上に案内されます。もうシーズンオフなんでしょう。

10月2日には1300人体制で、一斉にここの稲刈りを行うんだそう。
その前に滑り込みセーフです。

○ 巨大なゴジラ

まずは第2会場に上りました。
田んぼアートのためだけに造られた展望台の上に上って見下ろすと、眼下にシン・ゴジラが現れました。
『わあ!』声が上がります。大迫力です。



○ ストーン・ケンそしてユウジロウ

その横には、高倉健と石原裕次郎を石で作った巨大な絵が。


健さん!



ユウジロウ!


上から見下ろすときっちり平行線で作られていますが、下から見ると長方形はかなり歪んでいるのがわかります。
上の展望台から完璧な形で見えるよう調整しているためです。

見下ろしていると、下の道を先ほどの2人が駅に戻っていくのが見えました。
さくっと見て、再び駅に戻った彼ら。出張の合間に(おい、ちょっと田んぼアート見に出かけるぞ)(はい、課長)と言って来たのかしら。
上司の方がノリノリで、部下はやれやれと付き合っているという感じが、背中から漂っています。
電車に乗って弘前に戻っていったデコボココンビ。さよーならー。



○ ノマドは場所を選ばず

ここでヒヤマさんがごそごそと荷物からMacBookを取り出しました。
「今回の旅の趣旨に沿うよう、ノマドワーカーの写真を撮ろうと思って」
「え、ここで?」
「デグチ先輩、いろんなところでのPC画像を残してましたよね」

確かに彼は(なぜそこで?)というような海岸などで仕事をしていました。
「後に残った者として、僕らも彼の姿勢を継がなくては」
「ラ、ラジャー!」
こうやって謎の伝統が受け継がれていくのですね。

いろいろ撮っているうちに、ありえない様子がなんだか楽しくなってきて、私も同じ構図で撮ってもらいました。
明らかに変な二人でしたね!

なぜか馬がいました。孔雀も数羽。牧場なのかしら?
ちょっと人見知りのようで、呼びかけてもピクリともしませんでした。



○ 田んぼアートの稲

上からの作品を堪能した後で、下に降りて絵を構成している稲の様子を観察。



何種類もの色が違う稲が育っていました。
こんな風になっているんですね。



○ Ta Survey Go

見るのにそれほど時間がかからなかったので、第1会場にも行けそうです。
両会場をつなぐシャトルバス「たさあべ号」に乗りました。
たさあべってなんだろう?
車体には「Ta Survey Go」と書いてあります。なんだかおしゃれ。
でもこんな英語ありませんね。
いくら考えても意味が分かりません。気になる~。
 
こちらの人は、一見(しゃべりかけるな)オーラが出ているように感じるけれど、それは少し人見知りなだけで、実際には暖かい人たち。
運転手は無口な感じですが、勇気を出して意味を聞いてみました。
「田んぼさこいへ。って意味さ」

わー、人の名前かと思った(田佐安倍さんとか?)ら、やっぱり津軽弁ー!
聞いてよかったです。



この近くから、古代の水田跡が見つかったそう。
そのせいか、マンホールの柄は古代チックです。



○ 天守閣つき第1会場

第1会場は天守閣つきの役場ですよ!
話には聞いていましたが、水田の前に立っていると、本当に一瞬タイムスリップしたような気になります。
代官様、今年は日照り続きで年貢は納められねえですだ!



第1会場の絵は真ん中から二つに分かれているため、第2会場の方が迫力があるのかと思いましたが、第1会場の方が総面積は広く、どちらも絵が飛び出て迫りくるようです。



青天の霹靂じゃー!いえ、真田丸のセリフじゃなくてお米の銘柄です。



遠方には彼らを見下ろす岩木山。



観覧場からさらに上の天守閣展望台もあります。
でも、この観覧場から見た時が完璧になるような遠近法で作ってあるとのことなので、上には上りませんでした。



○ 青天の霹靂入り

ここでもノマドワーク撮影会。
こんな感じで。こんなリアルノマドはきっといない・・・(笑)。



満足して下に降り、またもや稲のところに近づいてみました。
興味があるのは、鳴り物入り特Aクラスの「青天の霹靂」です。
おお、君たちがおいしいお米なんだね。



○ 黒石つゆ焼きそば

会場向かいには、特設屋台コーナー。
黒石つゆ焼きそばを頼み、出来上がるまでそばの足湯につかっていました。



つゆ焼きそばは、視覚的にも味覚的にも、さほどカルチャーショックを感じませんでした。
まあ黒石のそばで食べられたので、地元グルメを食べたとしましょう。



ここでもカランカランアイスが売っていましたが、少し肌寒く、食べる気分ではありません。
なにより、やっぱりカランカランなんだなあと思います。
弘前はカランカランの町なのかも。まだ調査は続きますよ。

○ さびしいノマド

畑が広がる駅前。岩手山が良く見えます。
ここでもノマドワーク撮影会をしたら、ぼっち度半端ない写真ができました。
見てるだけでさびしくなるー。



○ うっかり黒石へ

やってきた電車に乗ったと思ったら、終点のアナウンス。
帰りは弘前まで早いなと思ったら、そこは黒石でした。
単線で、黒石行きに乗ってしまったのです。
車掌さんに申告して、切符を変えてもらいました。
車体には、行先は書いていなません。これはビギナーには難しいわー。



まあ、急ぐ旅でもないので、予定外に来た黒石駅を見学。
レトロな構内です。



切符切りの人が、私たちが改札を出るのをさりげなく待っていてくれたようですが、運転士さんが事情を説明したらしく、少しするといなくなっていました。
すると周りに人けがなくなります。乗客はあまりいないのかしら。



○ ほのかな懐かしさ

「あの電車に乗って」と言われた車両に乗ります。
車内を見まわして、なにか感じます。
なんだろう、このデジャ・ビュ感・・・。
どこか懐かしいような・・・。

そこで、黙って車両内を探し出しました。
見つけたー!



嬉しさのあまり、ヒヤマさんに説明します。
「この電車、前は東急線だったんですよ!」
「なるほど、ここは第二の人生なんですね」
「そう、前に南海高野線でも東急の車両を見つけました!」
昭和39年のもの。どうりでレトロなはずです。
改めて見回すと、北国で長年頑張っているいとしさがこみあげてきました。

ヒヤマさんも同じらしく「鉄っちゃんじゃないんだけど、なんか撮りたくなってきたー」と、車内撮影会になりました。



東京から遠く離れた雪国で、これからも人々の足になっていってねー。



しばらく撮影会をしても、まだほかに人が乗ってきません。
「今がチャンス!」
またもやIT撮影会をし、またもやぼっち感満載の写真ができあがります。



じきに人がわらわらと乗り込んできたので、そこで謎の撮影会はおしまい。
後になって考えるに、出発の少し前まで、改札が閉じていたようです。
乗客はそこが開くのを待っていたのでしょう。

ただ私たちは、そのまま車両にいたので、その間貸し切り状態でいられたというわけです。

近くに女子高があるらしく、女子高生がたくさん乗り込んできました。
でもにぎやかにはならず、みんな静かにスマホを見ていました。
これは日本どこでも変わらない光景です。外にはきれいな岩木山が見えているんですけれどね。

その2に続きます。