雲跳【うんちょう】

あの雲を跳び越えたなら

雨の日の敗人

2006-07-16 | 友人
 鬱々と降り続く雨を横目に、僕らは黙々と盤上に駒を並べていった。

 今日のKは、いつもと少し様子が違った。前回の敗北がかなり響いているらしく、いつもなら僕のほうが先に待ち合わせの場所に着いているのだが、今日は逆だった。僕はガラス越しにKの後姿を見つめ、その意気込みを感じ取った。と、同時に彼も僕に気付き、軽く手を挙げた。
 何だかお互い、緊張気味だ。陰鬱な空模様のせいもあるのだろう、僕らのいつもの軽口が今日は何だか白々と空転している。

「お願いします」
 戦いが、始まる。
 したたかに窓ガラスを叩きつける雨。
 Kの緊張の初手から、およそ三十分・・・僕はあっさり敗れた・・・。
 次も、敗れた。二連敗。
 雨は激しさこそ収まったものの、執拗に降り続いている。
 やはり、この雨模様では人出も少なく、いつもより静かな図書館の休憩所の片隅で、僕らは少女たちのはしゃぐ姿を夢想する。
 しかし、気だるい夢想はすぐさま雨音に掻き消されてしまう。
 僕らは終わりなき戦いに挑むべく、反省点を述べあう。
「やっぱり雨の日はダメだ。極端に少女率が低い。少女率が低いとテンションも低くなる」
「夏休みに入ると、どうだろう?」
「制服率は下がるだろう・・・」
「でも、部活があるだろうし」云々・・・。

 僕らの真の目的が、少しずつ明らかになった雨の日であった。
コメント (4)
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