http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120811-00000093-san-bus_all
消費税増税を柱とする社会保障・税一体改革関連法が10日成立し、経済界からは歓迎する声があがった。ただ、販売価格の値上がりなどで買い控えが起こり、消費が冷え込むことを懸念する声も根強い。増税で景気が悪化すれば、税収も増えず、財政健全化の取り組みは頓挫する。政府は早期に日本経済を成長軌道に乗せる政策を実行する必要がある。
[年収別で見る] 消費増税で家計の負担は年間どれだけ増える?
日本商工会議所の岡村正会頭は「将来世代に負担を先送りしないためにも改革は不可避で、法の成立は第一歩」と評価。経団連の米倉弘昌会長も「国益を重視した3党党首の努力の結果、法案が成立したことを高く評価する」とのコメントを出した。日本の財政状況は先進国でも最悪水準で、日本経済のリスク要因になっている。一体改革で改善に向かい、持続可能な社会保障が国民の将来不安の解消につながるとの期待は大きい。
一方、デフレ下で価格競争にさらされる小売業界では、「買い控えで売り上げが減少するのではないか」(三越伊勢丹ホールディングス)と警戒感が広がる。また、住宅など高額品ほど税率引き上げで販売価格が上がるため、大和ハウス工業の樋口武男会長は「(増税前の)駆け込み需要とその反動による需要減は業界に大きな影響を与える」と懸念する。
平成9年度に税率が3%から5%に上がった際、直前の8年度の新設住宅着工戸数は前年度比9・8%増の163万戸だったが、9年度は17・7%減の134万戸と急落した。9年度は実質国内総生産(GDP)成長率も0・1%で、前年度(2・7%)から失速。10年度はマイナス成長に陥った。
ニッセイ基礎研究所の試算では、税率を平成26年4月に8%、27年10月に10%に引き上げた場合、25年度はGDP成長率を0・7%押し上げるが、26年度は2・1%、27年度は0・1%それぞれ押し下げる。斎藤太郎経済調査室長は「26年度はマイナス成長になる可能性が高い」と警鐘を鳴らす。
野田政権は7月、32年までの経済の成長に向けた「日本再生戦略」を閣議決定した。財政健全化と経済成長を両輪で実現するためで、古川元久国家戦略担当相は「消費税引き上げにあたって、経済状況を良くしていく。一日も早いデフレ脱却を実現しないといけない」と決意を語る。
ただ、再生戦略は経済連携の推進を打ち出しているにもかかわらず、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の参加を明言していないなど、具体策への言及は少なく、効果には疑問の声も多い。経済同友会の長谷川閑史代表幹事は、政府に対し、「景気回復・経済成長への足取りを確かなものとするために全力を尽くすべきだ」と注文を付ける。増税が景気に与える影響を可能な限り緩和するためにも、政府は実効性ある政策を打ち出すことが不可欠だ。