建築士試験のように、約1時間でエスキースをして、4時間半の中で作図を完成させるというのは、実務の中ではあり得ない話です。そのありえない状況の中で
いかに減点の少ない作図をするか、、、、ということを私は教えているわけですが、そのために編み出された様々なセオリーを使って設計されたこれらの設計
は、実際には住みにくく、実情にあうものではありません。一般の方がこれを見て、私がこんな設計をする設計士だと思わないでくださいねえ。これはあくまで
も試験用の答案例です!
というわけで、建築士試験に興味のある方のみ、以下ご覧くださいませ。
SS学院で出している解答例は、奥行き7,280mmの2方下屋と、奥行き8,190mmのL型タイプです。どちらも喫茶室エリアの上に住宅が乗っています。
しかし帖数計算をしてみると、喫茶店部分が35.5帖(58.57m2)、住宅部分1Fが42.5帖(70.12m2)、住宅部分2Fが43帖(70.95m2)となり、住宅部分が2階建て、喫茶部分が下屋と考えるのが素直な気がします。
そこで奥行き8,190mmで住宅部分が2階建てというプランを考えてみました。
L型になりますが、南側突出ではなく北側突出にしているので北側に無駄なスペースができず、敷地を有効活用できます。
採点をしていて気付いたのは、今回隅きり周辺7m部分に斜線が引いてあり、「駐車スペース及びその出入り口を計画してはならない」とあるのですが、そこに建物を建ててもいけないと勘違いをしてしまった人が少なからずいました。そういう人には奥行き8,190mmや9,100mmで計画することが出来ず、苦労をしたように思います。この部分は車関係がダメ、というだけです。課題文の日本語を、焦らずしっかり読み取ることが大切です。
奥行き9,100mmのプランがこちらです。先ほどのプラン同様、住宅部分が2階建てで西側道路側によっています。
こちらは矩形で収まっているのですっきりしています。
ただ、どちらも「店舗併用住宅」という特色を考えたとき、今ひとつな気がしてしまいます。せっかくの角地ということが活かせていないからです。
店舗は広い道路側からアプローチするというセオリーから、南側からのアプローチになりますが、できればどちらの道路にも店舗が見えていた方が営業的にはいいわけです。また、配置図の特記事項イのところに「道路から玄関へのアプローチ」を記入せよ、というのは、どういうことか??アプローチが長くなるというヒントかも知れません。そんな考えから作成したプランが奥行き8,190mm雁行プランです。
このような雁行プランはSS学院の講習の中では練習しませんでしたが、数名の受講生の方が、この手法を用いて解答案を作成していました。
住宅部分に関してはSS学院のセオリー通りです。
住宅と店舗を行き来させる部分が少々苦しくなっていますが、2階建ての住宅部分というプライベートでボリュームのある部分が奥へ行き、店舗というパブリックな部分が角地を有効に利用して配置されているので、このような配置の方がより適切な気がします。
設計には正解と言うものがありませんので、どれも一長一短。後は採点者がどう判断するかということですが、、、。
それにしても今回の課題は難しく、1時間でエスキースをあげたという人はほとんどいなかったようです。ある教室では試験官の方が、「今年の課題はとても難しくなっています。これも姉歯事件のせいです。」というようなお話をしたとも聞きました。試験もとが、合格率を下げて建築士を精査するという目的で高難易度な出題をしたとなると、、、結果が心配ですね。