東京湾景 (新潮文庫) 価格:¥ 500(税込) 発売日:2006-06 |
前に510先生が「さよなら渓谷」がいい、と吉田修一を評価していたのと、新聞の「東京物語散歩」で紹介されていたので、図書館にリクエストしてみた。ラブストーリーを読む歳じゃなくなってしまったのかな?やっぱり殺人とか強盗とか事件が起きてもらわないと、盛り上がらないなあ。
アマゾンで検索していたら、同名のドラマが仲間由紀恵主演であったようだが、そちらは全く原作とは関係ない展開らしく、評価も散々でしたね。
でも、そんな感じの、メロドラマとか女性マンガに展開しそうな雰囲気を持っていて、それがちょっと、私の好みじゃないんだなあ。
もう、これにて吉田修一は打ち止めにしようかな?と思っていたけど、「解説」を読んでいたら「吉田修一はじつに多様な小説を書いているんだ。だから、どの小説を最初に読むかで、彼の印象もかなり違ったものになる可能性がある。」とあったので、「悪人」は読んでみようかなあ?
それから、「さよなら渓谷」の時にも感じたことだけれど、場所、というか、風景の描写は、ピカイチです。あたかも自分がその場にいるような、音や臭いまでするような描写力は、すごいと思う。東京湾に面した東京や千葉の埋め立て地にいると、ふと模型の中を歩いているみたいだ、と感じることがある。なぜ「模型」なのか?体温が感じられないから?ヒューマンスケールじゃないから?「自分が小人になっていくような気がする」という亮介の感覚が、「ああ、それそれ」と共感できる。その辺は好きなんだけどね。