当地方午後から雪模様散歩日和とは程遠い寒さ、然し1歩も外へ出ないのも良く無いと思い少し厚着をして一人玄関を出る、入り口の傘入れから1本の傘、見送る妻(一緒しない時は必ず見送ってくれる、近頃私が呆けた呆けたと口癖になっているから、だがチョッと煩わしい)「何本も有ったのにそれしか無いのよ」余り使った覚えのない男物の新品に近い傘、外へ出たらみぞれ模様の雨が降っていた、早速傘を開く、暗い夜空に傘さして、さてどちらへ駐車場のウイングロードを見に寄る、薄っすらと正面ガラスに積もった雪を払い落して五香方面に駅手前のアーケードの下で、傘を畳もうと開いた傘の下基の部分を引っ張って・・「オヤッ畳めない、オカシイな、二度三度強く引っ張っても傘は開いた儘、アーケードの真ん中辺り、向こうから来る人は皆傘をつぼめて来る、私は焦る、初めての此の傘、閉じ方が違う仕組かも?で明るい店先で傘を横にして基の丸い部分を良く見たが特別の仕掛けは見当たらない、やがてアーケードを通過して、又雪の中駅前からUターン、帰りはアーケードを避けて裏通りへ、雪が雨が降っていれば傘をさして普通の姿・・暗い裏道を家路へ、道々考えてしまう、言葉には出さないが「此のところ毎日、1度は何か失敗をしている私、どうかしてる私、完全に呆けたかな」帰って妻に「此の傘オカシイ」と言って、もし妻が「お父さん、こうすれば開くのよ!」と言われたら・・「俺は終わりだ、遂に呆けたのだ」途中生協の前を通る、「そうだ、買い物をして見よう、呆けたかどうか釣り銭貰って確かめよう」開いたままの傘を入り口の遥か隅の所へ引っ掛けて店内へ、「オッ流石生協売店小粒ミカンが有った、これは嬉しい、続いて惣菜売り場へ、「有ったコロッケ、カキフライも良いな2個、小さなソースの袋も忘れずにと」この瞬間サッキまでの呆けたか呆けた無いかは忘れていた(堂々男の買い物である)コロッケとカキフライの入った2円の袋を傘の柄にぶら提げて帰宅・・幸い妻はお風呂に入っていた。開きっぱなしの傘は狭い玄関をいっぱいに占領して、私は辛うじて自分の部屋へ戻ったのである。
やがて風呂から上がった妻に、「此の傘オカシイか、俺がオカシイのか」と玄関一杯に広がった傘、見ていると、おもむろに傘を取り上げた妻も、私と同じ基の部分を引っ張っている、「駄目みたい・・」この瞬間私は自分を取り戻した。「ヤッパリ駄目だろう、此の傘、薬屋さんから景品で貰ったんだよな~」別に景品だから駄目、安物と言う訳では無いのだが、お金を出した自分の物とはやっぱりちがうのか、どうでも自分が呆けて無い(今の所は)のが証明されたようで良かったと思っている。
居間に戻った私だが、その後玄関で傘を弄繰り回していた妻が「アレッお父さん傘がこんなにナッチャッタ!」二人大笑いで幕となりました。
妻「今晩の内にベランダへ片付けよう」後は妻のお仕事である。キャベツをタップリ添えてコロッケ&カキフライの夕ご飯、今日は折角の妻の料理が霞んで見えた。明日朝、久し振りの小粒ミカンも楽しみです。